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2023.10.14

星街すいせい、野外音楽フェス“阿蘇ロックフェス”でこれまでで最も“星”に近いステージに立つ――インターネットを越えてあらゆる場所へ広がるバーチャルの世界

星街すいせい、野外音楽フェス“阿蘇ロックフェス”でこれまでで最も“星”に近いステージに立つ――インターネットを越えてあらゆる場所へ広がるバーチャルの世界

より多彩に、より広がりを見せる2023年の星街すいせい

VTuber界の歌姫として人気を集める、ホロライブ0期生の星街すいせい。彼女が9月30日~10月1日に開催された野外音楽フェス“阿蘇ロックフェスティバル FIRE 2023”(以下、阿蘇ロック)に出演した。星街は9月30日に出演し、BLUE ENCOUNT、SHE’S、ZAZEN BOYS、スチャダラパー、天月、BEGIN、サンボマスター、小泉今日子といった出演者の中でトリを努めた。今回の“阿蘇ロック”は、VTuber初の野外ロックフェス出演となる。

2023年の彼女は、長年続けてきた音楽活動を更に充実させるような出来事が続いている。1月には2ndアルバム『Specter』をリリースし、2度目の単独ライブ“Shout in Crisis”を開催。3月に行なわれた“hololive 4th fes. Our Bright Parade Supported By Bushiroad”では、1日目に不知火フレア、尾丸ポルカ、さくらみこ、白銀ノエルが出演した不知火建設のステージにメンバーとしてサプライズ参加し、2日目にはソロ曲や全体曲に加えて湊あくあ&常闇トワとのStartendでも出演。両日のユニットパートの最後を努めたことも記憶に新しい。

一方で、VTuber界を代表する歌姫の1人として外部メディアに出演する機会も増え、1月にVTuber史上初となるYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に出演した他、7月には日本テレビ系音楽特番「THE MUSIC DAY」に出演。音楽番組「バズリズム」が開催する初のバーチャルライブ“バズリズム LIVE V 2023”にも出演し、ヘッドライナーを担当してフジファブリックと共演したことも話題となった。9月にはお馴染みのTAKU INOUEとのユニット・Midnight Grand Orchestraで新曲「夜を待つよ」も発表するなど、活動がより多彩になった印象だ。

また、パーソナリティーを務めるNHKラジオ「ぶいあーる!〜VTuberの音楽Radio」では、毎回様々なゲストに迎え、事務所やグループの垣根を越えてVTuber/バーチャルシンガーの楽曲を紹介。自身の音楽だけでなく、個人/企業勢ともに色々なバーチャルアーティストを紹介している。そんな彼女にとって初の野外フェス出演となったのが“阿蘇ロック”だ。

VTuberやバーチャルシンガーが大型フェスに出演した例はこれまでにもあり、バーチャル空間でのフェスやリアル会場でのフェスなどその種類は多岐に亘る。なかでも、今回と同じくリアル会場で開催された大型フェスとして印象的だったのは、“SUMMER SONIC 2019”のKizuna AI。ここでは入場規制になるほどの観客を前に、TeddyLoidやYunomiといったトラックメイカーたちとパフォーマンスを披露。中田ヤスタカ×きゃりーぱみゅぱみゅのライブにもサプライズ参加して話題となった。当時はあくまで野外フェス内の屋内でのステージへの出演だったものの、VTuber史にとって重要な一歩だったことは間違いない。

また、人気アイドルフェスへの出演という意味では、“TOKYO IDOL FESTIVAL”関連の一連への出演も印象深い。そのきっかけとなったのがコロナ禍の影響を受けてオンライン開催となった2020年のステージの1つ“バーチャルTIF”だ。ここでは指原莉乃のバーチャル体・Rinoちゃんがチェアマンを担当し、ホロライブのときのそらがステージMCを担当。同じくホロライブから出演したときのそら、夏色まつり、AZKi、そして星街すいせいを筆頭に、様々なバーチャルアイドル/アーティストがパフォーマンスを繰り広げた。このステージは2022年まで続き、現在も形を変えてバーチャルアイドルの出演に繋がっている。

こうした過去のフェス出演と同じように、今回の星街の“阿蘇ロック”出演は、VTuber史にとって印象的な出来事になるだろう。今回のポイントと言えるのは、「VTuber初の野外ロックフェス出演」、文字通りVTuberが大自然の中でライブパフォーマンスを披露したことだ。

阿蘇の夜空の下、「天空のロックフェス」のステージに

“阿蘇ロック”は、2014年の阿蘇山大規模噴火を受けて地域活性のために始まった野外音楽フェスティバル。その趣旨に賛同したミュージシャン・泉谷しげるが初年度から発起人として参加しており、運営が軌道に乗ったことを理由に2021年に彼が勇退して以降も開催が続いている。会場となる熊本県野外劇場アスペクタは自然豊かな阿蘇南外輪山にあり、見上げると空が近くに感じられることから別名「天空のロックフェス」と呼ばれている。

一方で、星街すいせいといえば、自身が作詞をした楽曲も含めて、オリジナル曲の中に「夜空」や「星」のモチーフを多数散りばめていることで知られている。今回は初日のクロージングアクトとしての出演とあって、彼女の出演時には綺麗な月や阿蘇の夜空があたり一面を覆っている。自身初の野外フェスであると同時に、「これまでで最も星に近い場所」でのライブとなった。

ライブは全編、フェスらしい熱気や一体感が印象的で、「阿蘇ロック!盛り上がっていけんのか!?もっと声を聞かせてください!」と煽ってスタートした1曲目「みちづれ」から観客が一緒にサビを大合唱し、間髪入れずに2曲目「灼熱にて純情(wii-wii-woo)」が始まると、「もっと、もっと、もっと声が聞きたいー!!!!!」という声に観客がさらに盛り上がり、観客が「オイ! オイ!」と合いの手を入れながらジャンプして一体感を増していく。冒頭は青一色だったペンライトがこの曲では赤に変わるなど、彼女の音楽のファンが明らかに現地にも足を運んでいることも印象的で、VTuberの音楽の広がりを感じるようだった。

MCでは初めての九州/熊本滞在中の思い出を振り返り、山で道に迷ったエピソードを披露。熊本のゆるキャラ・くまモンとMCのスマイリー原島とのやり取りで会場を湧かせると、以降はこれまでの活動をまとめたダイジェスト映像を挟んで、自身がボーカル参加したTAKU INOUEの楽曲「3時12分」や、エッジの効いたロック曲「GHOST」を披露。最後に代表曲「Stellar Stellar」を歌い、「月が綺麗な夜に、みんなに会えて嬉しかったです! See you again!」と伝えて大歓声の中ステージを終えた。

VTuberやバーチャルシンガーの活躍の舞台は、近年インターネットを越えてあらゆる場所に広がりつつある。今回の野外フェスへの出演は、その魅力を改めて伝えてくれる出来事だった。もちろん、こうした試みはまだ始まったばかりということもあり、ホロライブの全体ライブで恒例となっている生バンドを加えたARライブのような、業界最先端のテクノロジーが体感できるものではまだない。けれども、こうした機会が積み重なっていくことで、「初めて」はいつか「当たり前」になり、より豊かなライブ体験が楽しめる場所になっていくことだろう。本格的な野外音楽フェスで、大自然を舞台にバーチャルシンガーが会場を盛り上げたこの日のステージは、バーチャルな音楽がより広がる機会の1つになりそうだ。

TEXT BY 杉山 仁
photo by TOYOHIRO MATSUSHIMA


●イベント情報
ASO ROCK FESTIVAL FIRE 2023
(阿蘇ロックフェスティバルFIRE 2023)

開催日程:2023年9月30日(土)10月1日(日)
会場:熊本県野外劇場アスペクタ

関連リンク

阿蘇ロックフェスティバル 公式サイト
https://aso-rockfes.com/

星街すいせい
公式X
https://twitter.com/suisei_hosimati

公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UC5CwaMl1eIgY8h02uZw7u8A

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