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INTERVIEW

2023.08.31

「出逢ってくれてありがとう」――ReoNa初の武道館ワンマン“ピルグリム”に込めたメッセージとデビュー5周年の想いにロングインタビューで迫る!

「出逢ってくれてありがとう」――ReoNa初の武道館ワンマン“ピルグリム”に込めたメッセージとデビュー5周年の想いにロングインタビューで迫る!

今年8月29日にデビュー5周年を迎えた“絶望系アニソンシンガー”のReoNaが、自身初の日本武道館ワンマンの模様を収めたライブ映像作品『ReoNa ONE-MAN Concert 2023「ピルグリム」at日本武道館 ~3.6 day 逃げて逢おうね~』をリリースする。本人の歌や共にツアーを回ったReoNaバンドによるパフォーマンス面のみならず、セットリストや演出も含めてそれまでの活動の集大成となった本公演に、彼女はどんな思いで臨んだのか。そしてデビューから5年が経った今、アーティスト・ReoNaとして見つめる過去・現在・未来とは?

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

集大成にして未来を感じさせるものに――初の日本武道館ワンマンを振り返って

――今回、映像化される日本武道館ワンマンは、ご自身にとってどんなライブになりましたか?

ReoNa 今振り返ると、“ピルグリム”に到達するまでのReoNaのこれまでが詰まったライブだったと思います。映像作品をリリースするにあたって、私も映像で観返したのですが、自分でも「このときはこんな表情をしていたんだな」と思うことがあって。初めての日本武道館でのワンマン、その開催を発表してから10ヵ月の間、走り続けて、色んな人と「この日に集まろうね」と約束して到達した、あの日に届けたいことを、ちゃんと出し切れたんじゃないかと思います。

――あの日、どんな気持ちでステージに立ったのでしょうか。朝、起きて、緊張していたのか、あるいはいつも通りの気持ちで迎えることができたのか。

ReoNa 大きい舞台だからといって、それを言い訳にせず、いつも通りのReoNaを届けたかったので、努めていつもと変わらないように意識していたのですが、多分、その時点でいつもとは違っていて。会場に向かうときに、私も好きなアーティストさんのライブを見にきていた武道館という場所が、今日はまるごとReoNaのライブになるということを実感して。私が会場入りする前から来てくださっているお客さんの姿も見えたんです。そのときに今日という1日を“ピルグリム”のために割いてくれている人がいることを感じましたし、“ピルグリム”を一緒に作ってくださる方、一緒にステージに立つ人やスタッフの方たちとも、なるべくコミュニケーションを取るようにしていました。

――ステージに立ったときはいつもの気持ちでいられましたか?

ReoNa ……努めてそうするようにしていました。でも、武道館は“リスアニ!LIVE”でも何回も立たせていただいた会場ですけど、初めて自分のワンマンライブとしてあの場所に立ったことで、今までのライブを思い返す瞬間が多かったです。特に「HUMAN」で過去の映像や写真を編集したムービーを流したとき。初めてのワンマンライブは100人もいないくらいの規模で、ましてや最初のライブは本当に数人くらいしか人を呼べないくらいだったのに、満員の武道館の1人1人がみんなReoNaのライブを観に来てくれていることを、すごく噛み締めました。

――セットリストもそれまでの代表曲を網羅しつつ、特別感を感じさせるものでした。

ReoNa セットリストを決めるにあたっても、色んな人の想いがあって。このライブが必ず、今までの集大成になると感じていたなかで、ReoNaが今まで歩んできた道はお届けしたいけど、ここが新たなスタート地点として、ここから先のReoNaも一緒に思い描いてほしくて。未来を感じさせられるようなライブにするために、色んな人の意見がぶつかり合った結果のセットリストでした。

――今までの集大成ということは、オープニングが「こえにっき」の映像から始まったところからも感じられました。デビュー当初のライブでは恒例の演出だったので。

ReoNa 「こえにっき」は、ReoNaのライブの始まり方の原点でもあるので、私のライブを昔から見ていただけている方は、あの始まり方に感じるものがあったと思います。今回も昔と同じく毛蟹さんに音を作っていただいて。私もリハーサルのときから「この空気、久しぶりだな」と思って、懐かしさを感じました。

――また、ReoNaさんの活動の原点と言える楽曲もセトリに多く組み込まれていて。特に1曲目、ライブタイトルにもなっている「ピルグリム」で幕を開けたのは、ある程度予想できたとはいえ、やはり感動しました。

ReoNa ライブの内容を考えるときは、始まり方と終わり方や、ライブ全体の核になるところから組み立てることが多いのですが、今回、終わり方は全体の流れも含めて悩む瞬間もあったなかで、「ピルグリム」で始まることに関しては満場一致で決まりました。私の声とギターから始まる曲なので、いざ決まったときは責任重大だなと思ったんですけど、その日のライブを一緒に作ってくださる方々の想いも一身に担ってスタートすることができました。

――自分の声とギターだけで武道館ライブの幕開けを飾れたのは、これまでの5年間の積み重ねがあったからこそできたことなのかなと。

ReoNa 逆に言うと、「ピルグリム」以外の楽曲ではできなかったようにも思います。神崎エルザ starring ReoNaとしてデビューした頃、私がギターを始めたての頃から、ずっとギターと一緒にお届けし続けてきたお歌なので。

――2曲目はReoNaさんが最初に作ってもらったオリジナル曲「怪物の詩」だったところも、原点を感じられて良かったです。そこから「forget-me-not」「SWEET HURT」「ANIMA」「生命線」「Alive」と人気のタイアップ曲が続き、その後の「ないない」「シャル・ウィ・ダンス?」「トウシンダイ」のブロックではダンサーを迎え入れた演出は、エンターテインメント感を意識したステージングの集大成という印象もありました。

ReoNa 「シャル・ウィ・ダンス?」はリリース当初からダンサーさんと一緒にお届けしてきたのですが、「ないない」をダンサーさんと一緒にお届けしたのはこれが初めてで。実は“De:TOUR”(「ReoNa ONE-MAN Live Tour 2022“De:TOUR”-歪-/-響-」)をダンサーさんと一緒に回るなかで、ダンサーさん側からもいつか「ないない」でも踊りたいとラブコールをいただいていたんです。それを実現できたのが武道館で。「ないない」から「トウシンダイ」の冒頭の演出は、1つの物語のようなものが見えるブロックになりました。

――なおかつ「ないない」で登場した4人のダンサーさんは、アニメ『シャドーハウス』に登場するキャラクターたちに寄せた格好をしていましたね。

ReoNa ちょっとした遊び心として、『シャドーハウス』に出てくる“3階の住人”と呼ばれるキャラクターたちをモチーフに、衣装やヘアメイクも作品の世界観を匂わせる感じで作っていただきました。それと実は「ないない」で踊っていただいたダンサーのゲッツさんと松下莉子さんは、元々振り付けや演出としてReoNaチームに関わっていただいていた方なんです。MVの撮影時にはカメラの後ろで誰よりも踊ってくださっていたり、ライブでも熱をもって演出をしてくださっていた先生たちなのですが、今までステージで一緒に立ったことはなかったので、今回、私のわがままで「一緒にステージに立ちたい」とお願いしたんです。

――素敵な話じゃないですか。続く「シャル・ウィ・ダンス?」では、MVでもご一緒されたREAL AKIBA BOYZと学生ダンサーの皆さんも一緒にステージに上がって、客席もみんな一緒に踊って大ダンスパーティーとなりました。

ReoNa このライブを作るにあたって「ReoNaはどうしたい?」と聞かれたときに、まず「これまでご一緒してきた人たちと一緒にステージに立ちたい」ということを言わせていただいたんです。「シャル・ウィ・ダンス?」のリリース前はみんなが一緒に踊ってくれるかドキドキしていたのですが、今や本当に皆さんが一緒に踊ってくれる楽曲になったので、この楽曲のテーマの1つである「今だけはすべてを忘れて踊りましょう」というのが叶いつつあるように思います。

――そして「トウシンダイ」では、ダンサーの1人がステージのヘリの部分に一揃いの靴を置いて、楽曲で描かれる物語をより鮮明に演出する場面もありました。

ReoNa 「トウシンダイ」は“半歩先の世界”に飛び立った少女のお歌で、今まではステージ上手の誰もいないところにスポットライトを当てて表現することが多かったのですが、今回、私が「シャル・ウィ・ダンス?」で履いていたタップシューズで、初めてああいった演出にしました。歌詞のもう一歩深いところに踏み込むと見えてくる絶望がある楽曲なのですが、視覚的にもう一歩踏み込んで、楽曲の世界を伝えるものになりました。

“逃げて逢おう”という約束の先にあった光景、“1人ぼっち”ではないということ

――先ほど話題に上った「HUMAN」では、ご自身のこれまでの活動や出会ってきた人々を映した映像や写真で構成されたムービーを背に歌われたわけですが、やはりいつもとは心持ちが違いましたか?

ReoNa 全然違いました。この5年間、本当にたくさんの出会いと別れを経験しながら歩んできたなと思っていて。心の中では絶対に忘れないし、ふとしたときに思い出すことはあっても、ああやって映像になることで、そこから紐づくように、芋づる式に心の中が引っ張られていく感覚がありました。あの映像に映っていたのは、ReoNaというアーティストにまつわる人たちだったんですけど、きっと観ている方も自分の思い出を呼び起こされた部分があるんじゃないかなと思っていて。あの日の「HUMAN」はすごく特別でした。

――「HUMAN」という楽曲のメッセージ性と重ねると、より人生の重みや深みを感じられる瞬間でした。

ReoNa 人間って、ひと言で語れないし、ひと言で済ますことのできない存在で。最初は本当に1人で、「音楽がやりたい」と思って勝手に歌ってきたなかで、こんな日が迎えられるなんて当時の私は思っていなかったですし、あの日があるのも、そこにいてくれた1人1人のおかげで。人生って本当に不思議ですよね。あの日、あの瞬間にいた1人1人が、人生の1ページとしてあの空間を共有して、みんなが同じものを観て過ごして。ライブというのは、すごく不思議で尊いところだと思います。

――そして演出面で特に印象的だったのが、「Till the End」。ステージ後方の幕が落ちて、120人におよぶクワイアが登場したときには本当に驚きました。「Till the End」は過去にもライブでコーラス隊と共に披露されることがありましたが、今回、あれだけの大人数を迎えたのは?

ReoNa ReoNaチームはサプライズ好きなので(笑)。あれだけの方々に参加していただいた経緯を説明すると、実はコーラスとして参加していただいたコーシーズ マス クワイヤという方々は、私がデビュー前からお世話になっているボイトレの先生のコーラス隊なんです。

――えっ、そうだったんですね。

ReoNa 今回のクワイアは、その先生たちが普段教えていらっしゃる生徒の皆さんと、「シャル・ウィ・ダンス?」でご一緒したTSM(東京スクールオブミュージック&ダンス専門学校)の生徒さんにも加わっていただきました。MVではダンス学科の方々にお世話になったのですが、今回はボーカル学科の方々はじめ、すごくたくさんの方々が参加してくださいました。普段は楽器演奏を学んでいる生徒の方も含めて、何回も練習をしたうえで参加してくださいました。

――あのクワイアもまた、ReoNaさんの活動に関わってきた人たちだったんですね。そしてライブの最後を締め括ったのが、神崎エルザ starring ReoNa名義で発表された楽曲「Rea(s)oN」でした。

ReoNa まず、私がこのライブを通して一番伝えたかったメッセージが、「出会ってくれてありがとう」だったんです。私の中では、ここに至るまでの5年間、そのすべての始まりのお歌は「Rea(s)oN」という気持ちがあって。“ここに生きるReason それはあなたでした”と歌うとき、これまで私にとっての“Reason”、出会えた“あなた”という存在は「お歌」とずっと言い続けてきたし、今も私にとって人生をすごく変えてくれた存在は「アニメ」や「お歌」というのは変わらないんですけど、でも、この日だけは、それだけでなく、ここにいる“あなた”に向けて歌いたい。そういう想いと共に「Rea(s)oN」をお届けさせていただきました。

――しかも「Rea(s)oN」は、アニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン(以下、GGO)』の最終話で、神崎エルザがステージに立って弾き語りで披露した楽曲でもあって。その姿が、武道館でこの曲を弾き語るReoNaさんと重なって見えたんですよね。

ReoNa 嬉しいです。あそこにいたみんなが、あのときのレンちゃんになってくれたらいいなと思います。

――それとぜひ聞きたかったのが、終演後のMCのことです。ReoNaさんはステージに立っているとき、あまり感情の高ぶりを見せることはありませんが、あのときは珍しく、涙をこらえるような瞬間がありました。

ReoNa 私は泣くことによって、歌えなくなったり、伝えたいことが伝えられなくなったり、本当であれば届けられたはずのものが届けられなくなることが、すごく嫌で。なので、自分の中ではすごく気持ちが高ぶっていたとしても、伝えることを最優先にしてきたんですけど、あの日は多分、すべての曲を届け切ったことの安心もあったんでしょうね。それと客電が付いて1人1人の顔がより鮮明に見えたことも相まって、どうしても心にくるものがありました。

――あのときのMCで、「それぞれの人生があって、みんな1人だけど、今日は1人ぼっちじゃなかったって思ってくれるかな?」と呼び掛けて、ファンの方々は万雷の拍手でそれに応えていましたが、自分の届けたい想いが伝わった感覚はありましたか?

ReoNa その実感はすごくありました。“逃げて逢おうね”と言い続けてきたなかで、私も逃げてライブに行っていた人間だったので、あの場にいた1人1人に自己投影していたところがあって。嫌な現実を忘れたくて音楽に逃げ込んだり、学校に行きたくなくてライブハウスに行ったり。だからライブや音楽は、目の前のことはいったん置いて没入できる場所であってほしいと思うんです。そんななかで、1人1人事情は違うけど、同じ音楽が好きで、同じ時間や空間を共有していたのがあの場所で。その1人1人が、せめて1人ぼっちじゃなかったらいいなというのは、自分も重ねての言葉だったし、本当にそうであってくれたらいいなと思います。

――あの日、ReoNaさんは1人ぼっちではなかったですか?

ReoNa 1人ぼっちではなかったですね。色んな人とReoNaができたと思います。

アーティスト・ReoNaが5周年を迎えるなかで変わったこと・変わらないこと

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