――ちょうど今回の映像作品がリリースされるタイミングで、ReoNaさんはデビュー5周年を迎えるわけですが、改めてどんな5年でしたか?
ReoNa なんか、生まれ直したんだなあという感覚があります。人間としての根本はもちろん変わっていないつもりなんですけど、それまでに培ってきた常識や当たり前に思っていたことを、色んなところで塗り替えられていって。19歳になるまでに出会った人の数と同じくらい、デビューしてからの5年でたくさんの人と出会ったし、「私、まだこんなに知らないことがあるんだ」と思うことがたくさんあったんです。過ぎ去ってみるとあっという間でしたけど、振り返ると、本当に5年間に収まっていたのかなと思うくらい色んな出来事があって。本当に濃度と密度の濃い5年間でした。
――根本は変わっていないと感じつつ、生まれ直したような感覚があるということは、自分自身としても変化を自覚する部分があるのでしょうか。
ReoNa これはパーソナルな話になるのですが、基本的に褒められることが得意ではなかったんです。仮に褒められたとしても、「本心じゃないんだろうなあ」みたいなことを思ってしまうし、要はすごく卑屈だったんです。言われた言葉をそのままの意味で受け止められなかったりとか、人のことを疑うようなところがすごく多くて。でも、アーティスト・ReoNaに対する誉め言葉は、すごく真っ直ぐ受け止められるんです。それは、一緒にReoNaというアーティストや楽曲を作ってくれる人たちがいてくれるからだし、実際に出来上がった楽曲の1つ1つがすごく誇れるものだからこそで。なのでその卑屈さみたいなところはすごく変わったと思います。
――言葉尻を捉えるようで恐縮ですが、アーティストとしてでなく、ReoNaさん個人として褒められたときも、今は素直に受け止められるのでしょうか?
ReoNa うーん……。でも、そこは表裏一体なものだと思うので、前よりは素直に受け止められるんじゃないかと思います。今はReoNaという人間の存在自体、アーティストとしてのReoNaの占める割合がすごく増えているので。
――その意味では、デビューした頃と現在を比べると、アーティストとしての心構えも変わったのでは?
ReoNa 変わってきていると思います。当時は何も知らなかったからこそ怖かったし、何も知らなかったからこそ「できる」と思っていたことも多くて。もちろん年を重ねることでできることも増えていったのですが、「私、これはできないんだ」と気づくことも増えていって。責任の大きさをどれだけ認識できているかも変わったところだと思います。
――「できる」と思っていたことを「できない」と気づいたときに、ちゃんと受け止められるものですか?
ReoNa いや、悔しいですね。でも、一生をかけてでも全部をできるようになることはないと思っていて。何かができるようになっても、次のできないことが出てくるし、ライブも毎回、どれだけコンディションが整っていてすごくいいライブができたとしても、それで満足してはいけないし、できてなかったところに目を向けなくてはいけなくて。その繰り返しですね。
――まさにピルグリム、終わらない巡礼の旅ですね。
ReoNa その巡礼の旅も、自分が思っていたよりも色んなことがあるということを知ったのも、5年前と今では違うところかもしれないです。
――例えその道のりが大変で、やりたいことを全部できるようになるのは無理だと認識していたとしても、歩みを止める気持ちはない?
ReoNa ないですね。逆に止まれちゃうときが来るのが怖いです。
――よく「終わり」が苦手というお話をされていますが、その感覚とも近い?
ReoNa 近いと思います。終わりを考えたくないし、終わりを考えさせたくない、終わりを感じてほしくないので。
――この5年間の活動で、特に心に残っていることを挙げるとすれば?ライブや様々なアニメ・ゲーム作品との寄り添いがあったわけですが。
ReoNa 本当にたくさんの出会いがある中で、今この時期にどうしても思い返すのは、やっぱり『GGO』のことですね。あれからちょうど5年経つんだなあと振り返ることが多くて。当時、夜中にも関わらずスタッフみんなで集まって『GGO』を一緒に観たりしていたんです。初めてエンドロールに「神崎エルザ starring ReoNa」という名前が出た瞬間、みんながスマホを取り出して写真を撮っていて。
――武道館ワンマンも「ピルグリム」で始まって「Rea(s)oN」で締める構成でしたし、2ndアルバムを引っ提げた先日のツアー(「ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2023 “HUMAN”」)でも「ALONE」を披露されて。やはり神崎エルザ starring ReoNaとしての楽曲は、ReoNaさんにとって今もずっと大切なものなんですね。
ReoNa はい。これはエルザの楽曲もReoNaの楽曲もなんですけど、どんなに時間が経っても色褪せていく感じがしないというか、何年経っても昔の楽曲という感覚にはならないんです。ライブでも毎回「今届けられるこの曲」という感覚で歌っているので、今でも伝えたい想いとしてすごく自然にある感じがします。
――“絶望系アニソンシンガー”としてアニメに寄り添った楽曲を歌うなかで、「ReoNaとして何を届けるか?」という意識もこの5年で変化しましたか?
ReoNa そこは“変わった”というよりは、より考えることが増えた感覚があります。ただ作家さんにお任せするだけじゃなく、自分が思ったことや感じたことを共有しながら楽曲を作っていきたくて。意味がわからないことは歌えないですし、意味が伝わらないものは届けたくない。でも、そこに関してはまだまだだなと感じています。自分も作詞に携わるようになった今だからこそ、作品と自分の重なるところを紡ぐ難しさを改めて感じていて。歌詞を書くからには、私じゃないと出てこない言葉、私が携わる意味みたいなものが必要だと思うんです。その意味では、もっとオタクになりたいのかもしれないです。自分なりの解釈や考察があって、自分なりの伝えたい想いが作品とリンクしている。そういう深度をどんどん上げていきたいです。
――ReoNaさんの身近には、毛蟹(LIVE LAB.)さんという最強のオタククリエイターもいらっしゃいますし(笑)。
ReoNa そうですね(笑)。毛蟹(LIVE LAB.)さんというオタクであり博士がいるので、その背中は私なりに追いかけたいです。
――この5年で色んな“絶望”をお歌で表現してきましたが、絶望との向き合い方にも変化を感じたりはしますか?
ReoNa そうですね。絶望にも色んな顔があるんだなと思って。病気とか、いじめとか、離婚とか、そういう名前の付く絶望もありますけど、、それこそ『unknown』(2020年リリースの1stアルバム)を制作しているときに、名前すら付かないような小さな絶望もきっとあるなあと思って。例えば、朝にすごくきれいに身支度を整えて外出したのに、大雨に振られてぐしょぐしょになってしまうことも絶望だし、タンスの角に小指をぶつけるのも絶望だし。そういうところから「あしたはハレルヤ」という楽曲が生まれて。絶望に対する切り口やグラデーションを色々考えてきたことでどんどん変化した5年間だと思います。
――個人的にはその“絶望”の幅広いグラデーションの中に、ある種の“希望”を見いだせる表現も生まれているような気がしていて。それを特に感じたのが、先日のツアーで「ライフ・イズ・ビューティフォー」を聴いたときだったんですよね。それを歌っているときのReoNaさんが、自分の中ではすごく輝いて見えたんです。
ReoNa 確かに「ライフ・イズ・ビューティフォー」は今回のツアーを通して、今までとはちょっと違う顔をくれたなと私も感じています。「こんなにも人と呼応できる曲なんだな」と改めて気づかされたところがあって。聴いてくれている“あなた”との1対1感みたいなものも、“HUMAN”ツアーですごく変化しました。でも、「応援をされたくない」という人に寄り添いたい気持ちは変わらないし、つらいときに明るいもの・まぶしいものを見たくないだろうなというのも変わらなくて。ただ、もしかしたら、その角度がほんのちょっと上向きになってきているのかもしれないですね。
――様々な物語に寄り添うお歌を紡いできたReoNaさんですが、アーティスト・ReoNaの活動を物語に例えるとすれば、今、どれくらいの道のりにあると思いますか?
ReoNa 最初の村は出て、次の大きい街に向かっている途中くらい?そういう例えで合ってるのかわからないですけど。でも、ラスボスまではまだ全然遠いけど、ちょっとずつパーティーメンバーが変わってきたり、装備できる武器が増えていっているところかなと思います。
――それってRPGで言うと、できることの幅が増えてゲームが楽しくなってくる頃じゃないですか。ReoNaさんも今、自分のできることが増えて楽しくなっている感覚がある?
ReoNa でも、まだまだだなと思うことがすごくたくさんあるので、期待値も込めての例えかもしれないです。「まだ見ぬ街の先に、まだまだ知らない世界やワクワクできることが待っているといいな」っていう。
――密度の高かった5年のその先、これからの5年をReoNaさん自身はどのように活動していきたいですか?
ReoNa まず、デビュー当初は5周年も迎えられるかどうかドキドキしていたので、そこからさらに5年先、10周年を想像するのは難しいんですけど、でも、ほんの少しずつでもいいから、常に前よりも良くなりたいというのは変わらなくて。時間や自分自身とも戦いながら、まだまだその先の未来も感じさせられる、一緒に未来を見てもらえるような5年間にしたいです。
――この5年で武道館のステージに立ったり、作詞も行うようになったわけですが、この先の具体的な目標みたいなものはありますか?
ReoNa 作詞や制作はもっと深度の深いところまで行きたいです。あとはこれが最後の武道館にはしたくないですし、まだまだ行ったことのない場所や見たことのない景色もたくさんあるので、大きさや場所に限らず、まだ行ったことのないところに行きたいです。知らないものを知りたいですし、5年経っても未来には知らないことがたくさんあると感じたいので。私はまだまだ巡礼の旅の途中なので、また何度でも“逃げて逢えたら”いいなと思っています。
●リリース情報
『ReoNa ONE-MAN Concert 2023「ピルグリム」at日本武道館 ~3.6 day 逃げて逢おうね~』
8月30日発売
【Blu-ray初回生産限定盤(Blu-ray+CD)】
品番:VVXL-161~2
価格:¥8,000+税
【Blu-ray通常盤(Blu-rayのみ)】
品番:VVXL-163
価格:¥5,000+税
【DVD初回生産限定盤(DVD+CD)】
品番:VVBL-197~8
価格:¥8,000+税
【DVD通常盤(DVDのみ)】
品番:VVBL-199
価格:¥5,000+税
<Blu-ray/DVD>
01. ピルグリム
02. 怪物の詩
03. forget-me-not
04. SWEET HURT
05. ANIMA
06. 生命線
07. Alive
08. ないない
09. シャル・ウィ・ダンス?
10. トウシンダイ
11. 虹の彼方に
12. Lost
13. Someday
14. HUMAN
15. VITA
16. Till the End
17. Rea(s)oN
特典※初回生産限定盤のみ収録
・ドキュメント映像:Documentary of ReoNa「The pilgrim」
・撮り下ろしフォトブックレット
・LIVE CD
<CD>
01. ピルグリム
02. 怪物の詩
03. forget-me-not
04. SWEET HURT
05. ANIMA
06. 生命線
07. Alive
08. ないない
09. Someday
10. HUMAN
11. VITA
12. Till the End
13. Rea(s)oN
●ライブ情報
ReoNa Acoustic Live Tour“ふあんぷらぐど2023”
2023年10月20日(金)愛知県 三井住友海上しらかわホール
2023年10月27日(金)東京都 品川インターシティホール
2023年11月2日(木)福岡県 DRUM LOGOS
2023年11月10日(金)大阪府 なんばHatch
ReoNa オフィシャルサイト
https://www.reona-reona.com/
ReoNaオフィシャルX(旧Twitter)
https://twitter.com/xoxleoxox
ReoNaオフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCyUhtF50BuUjr2jOhxF3IjQ
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