幹葉 ほかにも勉強になることがたくさんあって。アーティスト・斉藤壮馬としてやりたいことと、ファンの皆さんの求めていることのバランスが絶妙だなって思ったんです。一人ひとり楽しむスタイルがあるなかで、壮馬さんたちは誰一人置いていかない。
斉藤 そう見えていたら良かった、嬉しいですね。
幹葉 でも、それをわかりやすく言葉にするわけではないですよね。例えば「みんなで一緒に行くよ!」とか。私はそういうのをわかりやすく伝えがちなんです。そういう言葉を使わずして、空気感で全員をまとめて、でも「それぞれ楽しんで良いんだよ」という雰囲気もある。MCもちょうど良いんですよね。壮馬さんはそういうライブの作り方がお上手だなって思っています。
──その自然体のライブスタイルについても、ぜひお話伺いたいですよね。
幹葉 はい!
斉藤 大学時代の後輩が先日のライブに来てくれていたんですけど、彼が言うには「普段の壮馬さんっぽくって良かったです」と。演出っぽくないというか。いわゆるパブリックな場で求められている「斉藤壮馬」でいることも大事だと思っていたんですけど、最近は自然体でも良いかな、むしろそちらの方が良いかもしれないと考えるようになったんです。素直に喋るって、言葉で言うのは簡単だけど、意外と難しい。でも、素直に感じたことを伝えることも大切なんだなって。ファンの方からも「あなたが好きなことをやっていて楽しそうな姿が一番良いです」というお手紙をいただいて「そうだよな」と……だから、MCもノープランでした。
幹葉 気品に溢れていました。
斉藤 でもそれは声優の経験が活きているんだと思います。自分の言葉で作品の魅力を喋る機会が多いので。逆に幹葉さんはMCやるときって「こういうふうに話そう」というのはあるんですか?
幹葉 喋りすぎないをモットーにしています。
斉藤 (笑)
幹葉 私も、話す内容に関してはガッツリは決めていないんです。ラストの曲の前は「今回のライブはこういう流れで組んだんだよ」ってことを上手く言えたらとは思うんですけど、ついつい遠回りしがちで。
斉藤 でも、そのMCが好きという人が多いのでは?
幹葉 ありがたいことに「止まらないお喋りが良い」と言ってくれる方はいます(笑)。
斉藤 そこが難しいところですよね。結果的にそうなってることが良いと言われたら、「そういう自分でいたほうがいいのかな?」って僕の場合は思ってしまっていました。でも、一度シンプルなところに戻って、カッコつけないようにいたいなって思うようになったんです。もちろん演奏的にはカッコいいものをやりたいですけど、気取る必要はないのかなって。
幹葉 私、歌っていると感情が溢れてきてしまうんです。お客さんから「普段は会社や学校で我慢していることもあるけど、ライブにきたら爆発させることができる!」って言葉をいただいたことがあって。素直になるのは難しい、というのは私も感じることがあるんですけど、ライブやけんこそ、お互いに感情を出しやすいんじゃないかなって。
斉藤 たしかに。それは音源を作っているだけだと感じられなかったことだろうなと思います。
幹葉 それに今回のライブの場合は、皆さんの声を直に聞くことができて、今、最高の状況ですよね。
斉藤 ね!全然違いますよね。自分の音楽的にはコール・アンド・レスポンスがあるような曲は少なかったんですけど、逆にコロナ禍になって初めてコール・アンド・レスポンスをしたいなと思うようになったんです。いつか声が出し合えるライブがしたいな、と思うようになって、そういう曲を作って。
幹葉 私は逆なんです。逆に声が出せない状況だからこそ、しっかり聴かせられる曲を歌いたいなと思って、そこからバラードができるっていう。
──お二人の真逆の、でもどこか通ずる考え方が面白いですね。
斉藤 うん、面白い!
幹葉 お客さんの声を聴いて、やっぱりテンションは上がりましたか?
斉藤 めちゃくちゃ上がりました。思っていた以上のボリュームで声を出してくださって。イヤモニをしてるけど声が聴こえるっていう。それがすごく嬉しかったです。
幹葉 女性だけじゃなくて、男性の声も聞こえていましたもんね。
斉藤 そうなんですよ。自分のライブですが、音楽ってすごいなと感じました。
幹葉 ライブ会場で、『UniteUp!』の戸谷菊之介くんと山口諒太郎くんと会ったんです。2人とも顔がキラキラしていて「壮馬さん、めちゃくちゃカッコよかった!」って。
斉藤 先日、2人とちょうど会ったんですけど、たしかに、そのときも感想を伝えてくれました。嬉しかったなあ。
幹葉 今までお話を聞いているなかで、本のお話がありました。今でも本はたくさん読まれているんですか?
斉藤 そうですね。
幹葉 それは曲を作るときのインプットの1つだったり?
斉藤 曲を作るために何かをインプットしようとは思っていなくて。本以外にも、音楽、映画、小説、漫画と……色々好きなものがあるんですけど、自分がやっていることって翻訳作業に近いものがあると感じているんですね。例えば、秋の日にちょっと肌寒い時期に、紅葉している落ち葉のなかを歩いているときの感情を曲にしたとして……歩いているときに「あの小説のあの場面を思い出すなぁ」とか考えているんですよね。自分が好きなものを自分の中で変換してアウトプットしているような感覚があります。
幹葉 お洒落!
斉藤 だから言いたいことは別になくて。お天気雨ってあるじゃないですか?お天気雨の西洋風の庭の映像がパッと浮かんで、そのときはきっとこういう音が鳴ってるよな……とか、そういう感覚で作っています。
幹葉 じゃあ、歌詞はあとから付けるということですか?
斉藤 そうですね。
幹葉 この景色には、こんな音、こんなメロディーが合うのかな、って思い浮かべながら作っていくんですね。
斉藤 はい。ただ、音楽理論を体系的に学んでいないので、頭の中でなっている音を形にするのに時間がかかるんですよ。「絶対この音なんだけど、どうやって弾けばいいかわからない」っていう。歌詞も書けないときは書けないです。書くことは好きなんですけどね。幹葉さんは歌詞を書くのはどうですか?大変?
幹葉 大変(笑)!でも、私は景色から歌詞が思い浮かぶということはなくて。お寿司屋さんで曲が浮かんだことくらいしか……。
斉藤 良いじゃないですか(笑)。お寿司屋さんってアイデアが浮かぶ気がします。
幹葉 えっ、でも壮馬さんが行かれるのは回らないほうですよね?
斉藤 いやいや、そんなことはないですよ!(笑)
幹葉 高級なお寿司だったらどんな音が鳴るんだろう……高級なお寿司の歌を作ってほしい!
斉藤 コラボレーションで作ってみますか(笑)。先日、お子さんのいる友人の家に遊びに行った際に、たまたま村瀬 歩さんが出演されている「シナぷしゅ」という番組を見たんですけど、僕はあの音楽がすごく好きで。ああいうのをやってみたいと思って……あ、光景が浮かんできたかも……いつか一緒に何かやりますか。
幹葉 良いんですか!?やりたいです!というか、壮馬さんの頭の中を見てみたい。今どんな光景が思い浮かんでいるんだろうか。
斉藤 本当は歌詞とメロディが同時に思い浮かべることはできたらいいんですけどね。あまりそういうことはないけど。
幹葉 ライブではギターを弾かれているじゃないですか。ギターを弾きながらメロディーを作っていくんですか?
斉藤 僕はコードが先かもしれません、曲によってはキーボードから作ることもあるし。ギターだけで曲を作っていると、ギターの外側の発想にいけなくなってしまうんですよね。手癖で同じコードになってしまうので、狭めないようにはしたいなと思っています。
幹葉 Sakuさんと相談しながら作ることもあるんですか?
斉藤 ありますね。それこそSakuさんと黒田プロデューサーがうちに来てくれて、セッションをしたことがあったんです。そのときにSakuさんが「壮馬くんの曲は全部メジャーコード、みたいな曲はあまりないよね」と。で、1時間くらいで出来たのが「Paper Tigers」という曲。お二人にはアイデアをすごくもらっています。だから、まだ形にしていないデモは無限にあるんですよ。そのアイデアの断片を送って、2人の反応が良さそうだったら続きを作るかって感じでやっています。
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