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2023.05.23

“生きている”ことを実感できる、心に刺さり、響くライブ――“青山吉能Birthday LIVE「されど空の青さを知る」”レポート

“生きている”ことを実感できる、心に刺さり、響くライブ――“青山吉能Birthday LIVE「されど空の青さを知る」”レポート

5月13日、声優・アーティストの青山吉能が、横浜ランドマークホールにて“青山吉能Birthday LIVE「されど空の青さを知る」”を開催。2022年のバースデーライブと同じ会場で開催された本公演は、自信初となる声出しOKのワンマンライブ。この春リリースの1stアルバム『la valigia』の収録曲や思い出の楽曲まで、生バンドとともに心を揺り動かすライブを届けてくれた。
本稿では、そのうち夜公演にあたる2部の模様をお届けする。

TEXT BY 須永兼次

オンリーワンの感性溢れる、心揺さぶりまくりのセトリ

この日は、開演直前の影ナレも青山自身が担当。携帯電話の電源オフにまつわるアナウンス1つとっても、「はい今!今切って!」のように遊び心を入れたりと、開演前の観客を温めるのと同時に心に留まるようなアレンジも印象的なものだった。

そして客入れBGMに乗せたクラップも起こるなかバンドメンバーが入場し、その音が消えたところで青山が入場。アルバム『la valigia』と同様に「Sunday」で幕を開ける。歌い出しと同時にステージが明転すると、灯りに照らされた彼女の表情はとても晴れやか。ゆったりと客席を見渡してクラップを煽りつつファルセットも巧みに織り交ぜて、爽やかな楽曲の空気を歌声でも表現していき、楽曲が進むとともに彼女自身の笑顔の晴れやかさも増していった。歌い終わってスッと目を伏せると、ステージを濃いブルーのライトがステージを包み、空気感が変わったところで「My Tale」の歌唱がスタート。無機質さをベースにしながらも、A・Bメロで内に秘めた感情をマグマのようにうごめかせて、サビに入ると後半に向かってそれをじわじわと盛り上げていくことで、ただの“無表情”で終わらせない歌声として聴かせていく。続けて歌った「Mandala」でも、夜の街並みの似合うサウンドにボーカルを巧みに乗せていく青山。A・Bメロは要所での歌声にぐっと力を込めてアクセントにして聴かせていき、サビへと向かうロングトーンは尻上がりに歌って観客を魅了。そんな彼女を、客席からのクラップがさらに盛り立てていった。

3曲歌ってのこの日初のMCパートでは「今日は皆さんをまるごと幸せにできるように」と意気込みを口にしたかと思えば、「今日はバースデーライブだから、一番幸せになるべくは私」とおどけつつも「みんなを幸せにすることで、私も幸せになれると思うので」とまとめるなど、軽快なトークを繰り広げていく。そんななか、次に歌う曲について「多分この曲を歌うと予想している人は、この中に10人もいないのでは?」というキャラソンであることを予告。それは、自身がプレイヤーとしてもハマっているというアプリゲーム「コトダマン」の、イフリートーン役として歌った「恋の旋律」だ。

王道アイドルソングのようなポップナンバーであるこの曲に乗せて、立ち上がった観客からコールが沸き起こりペンライトが振られれば、青山からも指鉄砲が飛び出したりと場内の熱気は高まる一方。元々ペアでのキャラソンということもあって1人で歌うには息をつけるポイントが少なく、しかも音数が多く比較的厚めのサウンドなこの曲を、歌唱後に思わず「キツい…」とこぼしてしまうほど“青山吉能”として全力で駆け抜けていった。

そんな空気を、バンドメンバー紹介やトークを挟んで一旦落ち着かせると、ギターの伴奏をバックに「ASIAN KUNG-FU GENERATIONのカバーをする」と宣言。拍手に包まれるなか穏やかな表情で「鎌倉グッドバイ」を歌い始める。いたずらに力強くはないものの、たしかに情感を乗せて心を揺さぶる歌声を響かせていく青山。自身も間奏では曲のリズムに身体を揺らしたりと穏やかなナンバーにたゆたいながら、楽曲の世界に聴く者を浸らせていった。

その余韻残るなか、ソファに座った青山が1人ライトで照らされてゆっくりとアカペラで歌い出したのが、「わたしの樹」。優しさに満ちた表情で場内を見渡しながら歌っていたかと思えば、サビに入ってからはより強い想いを乗せようとしてか、ぐっと力を込めての歌唱に。特にDメロ以降は歌声のボリュームも圧力もどんどんクレッシェンドしていき、それが大サビで爆発。スローでスケールの大きなバラードに、サウンドにも歌詞にもベストマッチな真っ直ぐかつ伸びのある歌声を駆使して、しっかりと想いを込めていく。そんなこの曲は、まさに“青山吉能の魅力”が存分に詰め込まれきっていたと言っていいだろう。そしてもう1曲、ソロ名義の過去楽曲「解放区」を続けて披露。一転してロックナンバー調のこの曲に合わせて観客もペンライトやコールを通じて場内を盛り上げ、それが青山の歌声にさらに力を与え、より笑顔にしていった。発表から5年以上が経ってはいるものの、今の自身に重なる部分もあるこの曲を、最後のフレーズまで拳を振り上げながら力強く歌いきる。

ここで青山は一旦降壇。バンドタイムを通じて会場をメロウな雰囲気がしばし包んでから、やや暗めのステージに再登場して歌い始めたのは、ソロアーティストとしてのデビュー曲「Page」。その歌い出しと同時にステージは鮮やかに照らされ、サビに入る瞬間にさらに明るさはぱあっと増していく。その光景はまるで「歌声で世界に光を与えている」かのようであり、またも晴れやかな表情で清々しく歌う今の青山のこの曲でのステージングには、何よりふさわしい演出だ。そんな、歌えることやこのステージに立てることへの喜びに溢れていたような歌声と表情がまた、満員の観客の心をぐっと捉えていった。

そんなこの曲に続けたのが「moshi moshi」であったことに、面食らった観客も少なくなかったのではないだろうか。だが青山の歌声は日和ることなく、歌声から一気に温度を失わせて、この曲にもまたベストマッチの歌声を……いや、セリフ調の部分も含めた“声の表現”という形で、観客をまた魅了していく。2コーラス目に入ると、その匙加減の絶妙さをさらに痛感。Aメロでは消え入りそうだった彼女の歌声は、Bメロに入ってからサビに向けて徐々に迫りくるかのように少しずつ圧を増していき、怖ささえ感じさせるものへと変貌していた。逆に、続く「ツギハギ」は、あまりにも清らかで美しい歌声での幕開け。それと、時折みられた何かを懐かしむような微笑みや歌詞が合わさることで、あまりにも切ない楽曲へとこの曲を高めている。その感情が膨らむサビでも決して暴発はさせず、楽曲の主人公として聴く者をこの曲の世界へと没入させていった。そして今度は、夏の日の思い出を描いた「あやめ色の夏に」へ。タイトル通りにあやめ色の照明に包まれながら、夏の日の思い出をそっと抱きしめるように甘めに歌い始める。この曲も清らかな歌声をもって、楽曲の展開を捉えながら、清らかな歌声で美しい情景を堪能できる1曲を表現。聴く者それぞれのノスタルジーを増幅させることで、楽曲の魅力を増大させていく。

バンドタイムを挟みながらも7曲連続で歌唱したところで、それぞれの楽曲についての想いを語る青山。特に観客を驚かせたであろう「Page」以降の4曲については「山あり谷ありの人生を表現した」とセットリストの意図を説明。相性の良い曲を組み合わせていくというセオリーに縛られない独特な感性もまた、彼女の魅力なのだな……と改めて唸らされた。そんな彼女、自身は本公演開催にあたってほかの声優アーティストの映像を観るなかで、自分にはできないことをこなしている姿を通じて少々凹んだことを素直に吐露。そのうえで「できる限り自分の全身全霊をかけて、みんなに楽しんでもらいたい」というこの日にかける想いや、「何にも比べられないような存在になりたい」という活動自体への意気込みを語って、ライブ終盤へと向かっていく。

想いを言葉と歌に乗せ、共有し、一緒に歩んでいく

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