ここからは2曲連続で、明るい楽曲を歌唱。まず「ノリノリな感じで歌っちゃってください!」との前フリから始めた「Sweetly Lullaby」では、ジャジーなムードに乗って軽快に披露。間奏では曲のリズムに沿って身体を揺らしたり、歌詞通りにスカートをふわっとさせるようにスピンをしてみたりと、楽しんでいる姿を明示する。スキャット部分も軽快に乗りこなし、落ちサビなど音域高めの部分ではファルセットも上手く駆使してこの曲ならではのエッセンスを活かしていくと、ラストにはにぱっと笑顔を見せる。そして観客に「ペンライトも置いちゃって!」と声をかけて起立を促し、「STEP&CLAP」へ。両手の空いた観客による大きなクラップの音が楽曲を彩ることで、青山へとパワーが伝わっていたのだろうか、楽曲が進むにつれて歌声のハッピーさがどんどん増していく。さらには歌詞に合わせて観客と視線を交わしたり、ハートを作って場内をさらったりと自ら“巻き込んでいく”場面も非常に多くみられ、互いの楽しさ・ハッピーさを引き出し合う“ライブで聴くべき曲”として、「STEP&CLAP」が真の完成をみたようでもあった。
曲明けには、本公演のライブBlu-rayが7月にリリースされることを告知し、さらに夜の部の初解禁情報として、この秋に新曲をリリースすることも発表!会場を歓喜の声が包む。そんな喜びの余韻残るなか、観客へのメッセージを語り始める青山。「皆さんが、今日このライブに来たことを誇れるような人になりたい」と語り、この1年ほどの自身を取り巻く環境の変化にも触れつつ、「そのなかでも変わり続けることも、変わらないことも、変われないこともあります。『なんで生きてるんだろう?』みたいなことを考えるときもたまにあるけど、私なりにここで生きていく意味を見つけていって。休むときは一緒に休んで、盛り上がるときは一緒に盛り上がって、皆さんと温かい二人三脚をしていけたら」と続け、「私らしく歩みを止めずに生きていくので、引き続きよろしくお願いします」の言葉とともに深々と礼をしてメッセージを締め括った。
最後に「この皆さんと出会って、こうやって歌えている・生きている幸せをかみしめながら歌いたいと思います」と語ってから、彼女の内面を描きとったナンバー「透明人間」を、本編ラストの1曲として歌い始める。
この曲では冒頭から、渦巻く感情を歌声に強めに乗せていたという点で、ほかの曲とは一線を画した表現に。なので正直、最初は「終盤、起伏がつくのだろうか?」とにわかに思ったのだが、結論から言えばこれは完全に杞憂でしかなかった。歌詞に描かれた想いに加え、この場で歌うなかで湧き上がる想いも込めつつ、綺麗さも両立させた独りよがりでない歌声を響かせる青山。そのある程度制御された部分があるからこそ、感情を叩きつけるような場面も垣間見えた終盤部分のエモーショナルさがより生きる。歌唱後にたたえた微笑みには、大事な曲を全力で歌いきった瞬間の達成感が表れていたようだった。
歌唱後に青山がステージを降りると、その瞬間から客席からはアンコールを求めるクラップが鳴り続ける。それに応えて再登場した青山、バンドメンバーを呼び込んだはいいものの「何も予定していない」と明かす。そんななか、バンマスを務める木原良輔(Gt.)に「言ったらなんでもできるんですか?」と問いかけ「もちろん」との返答されたところで、杉直 樹(Key.)が弾き始めたのはなんと「Happy Birthday」!実はこの日、彼女には内緒で客席には、スタッフからのバースデーサプライズのお願いが。それに快く応じたファンから大合唱が起こると、青山も楽曲中盤からはその歌声を指揮するという抜群の対応力を発揮する。歌唱後には、ステージセットの中に黒のラッピングをされて自然に置かれていた高級シャンパンがプレゼントされ、満面の笑みをみせていた。そしてアンコールの演奏曲について「夜公演でやっていない曲を……」と方向性を導き出すと、観客から挙がった声もあって、昼公演で披露した「転がる岩、君に朝が降る」をカバーすることに。
「キャラへの愛情もですけど、色んなものに対する愛情を最後に皆さんにぶつけたい」と宣言した青山の表情はイントロ中に凛としたものへと変化し、キャラクターとしてではなく“青山吉能”として、原曲へのリスペクトを込めた節回しも織り交ぜつつ力いっぱい歌唱していく。サビの冒頭などで力をぐっと込めたりと、心の動きを素直にアウトプットしていくようなパフォーマンスだ。だからだろうか、この曲を歌いきったときの表情は、実に晴れやか。思い切り拳を振り上げ、達成感のなかバースデーライブを締め括った。
歌唱後、青山からの「楽しかったですか?」の問いかけには、大満足の大歓声と拍手が。そして「また来年も、皆さんと私が生きていたら、会える日を楽しみにしています!」というなんとも彼女らしさいっぱいの約束を交わして、変わったもの・変わらないものの両方を、“今の青山吉能”を見せるワンマンライブは幕を下ろしたのだった。
ジェットコースターのように感情を目まぐるしく揺れ動かすセットリストを眺めながら、本編終了後に観客に手を振ってステージを歩きつつ「みんな、生きてるって感じするなぁ」と嬉しそうにこぼした青山の姿が、不意に浮かんだ。そう、彼女はこのセットリストを通じて、この場所・この時でしか生まれない感情を観客全員に抱かせることを見事に成し遂げていたわけだ。曲ごとにガラリと変わる表現も、茶目っ気たっぷりなMCも、一緒に心を動かしこの瞬間を楽しむためのもの――だからライブ最後の言葉にも、実は何の不自然さもなかったのだ。
これからも自身の心が赴くままに続いていくであろう、青山吉能の音楽活動。その1曲1曲が、そしてライブでの一瞬一瞬が、これからもきっと私たちの心を動かし続け、“生きている”ことを実感させてくれるはずだ。
青山吉能Birthday LIVE「されど空の青さを知る」 夜公演
2023.05.13@横浜ランドマークホール
【SET LIST】
M01. Sunday
M02. My Tale
M03. Mandala
M04. 恋の旋律(※キャラソン)
M05. 鎌倉グッドバイ(※カバー)
M06. わたしの樹
M07. 解放区
M08. Page
M09. moshi moshi
M10. ツギハギ
M11. あやめ色の夏に
M12. Sweetly Lullaby
M13. STEP&CLAP
M14. 透明人間
EN1. 転がる岩、君に朝が降る(※カバー)
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