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INTERVIEW

2023.04.20

水瀬いのり、新たな表情を見せた「アイオライト」リリース!自身も「挑戦だった」と語る本作を紐解く

水瀬いのり、新たな表情を見せた「アイオライト」リリース!自身も「挑戦だった」と語る本作を紐解く

水瀬いのり、通算11枚目のニューシングル「アイオライト」は、これまでになくクールな世界観を開拓した野心作。自身もヒロインの崎宮ミサキ役として出演するTVアニメ『デッドマウント・デスプレイ』のEDテーマとして、作品のダークなテイストに寄り添いつつ、彼女らしさもしっかりと刻み込まれていて、多面的な魅力を持っているところは、まさに見る角度によって色味を変える特性を持つ宝石・アイオライトそのものだ。前作の4thアルバム『glow』と同作を携えたツアーを経て、新たな輝きを得たアーティスト・水瀬いのりの今に迫る。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)

『デッドマウント・デスプレイ』が背中を押した挑戦

――今回のシングル「アイオライト」ですが、ダークなサウンドやマニッシュなビジュアルを含め、今までにない世界観を打ち出されていて、正直驚きました。

水瀬いのり 受け取った皆さんがそう感じてくださるのであれば、私としても挑戦した意味があるなと思います。とはいえ、実は自分が普段聴く音楽の世界観に近いものがあって。私は元々、ファンタジックなものや、激しさではなくかっこ良さのあるダークな世界観が好きで、いつかそういう楽曲に挑戦してみたい気持ちがあったんです。

――それは意外でした。

水瀬 ちょっとゴシックでハロウィンっぽい、妖しげな雰囲気のある音楽が好きで、よく聴いていたりもしていて。私は今まで、爽やかでみんなの背中を押すようなエール系の楽曲を歌うことが多くて、もちろんそれも私の側面の1つなのですが、普段の私は結構ネガティブな体質で、「頑張ろう!」というよりも「まあほどほどに頑張っていこう」みたいなテンション感なんです(笑)。今回の「アイオライト」は、自分のそういうテンションともマッチしていて、プレッシャーを感じることなく制作できました。

――前作の4thアルバム『glow』とそのツアーを経た今のタイミングだからこそ、ここまで振り切った新しいことに挑戦できたのかなとも思いました。

水瀬 その通りだと思います。『glow』では自分がどういうアーティストでありたいか、その方向性を提示するような作品だったのですが、そのなかで「Melty night」という少しジャズっぽい楽曲にも挑戦させていただいて。その経験が今回の「アイオライト」にも少し引き継がれている気がしますし、11枚目のシングルという意味でも新しい挑戦がしやすいタイミングだったと思います。

――なおかつTVアニメ『デッドマウント・デスプレイ』のタイアップ曲ということも大きかったんでしょうね。ダークファンタジー要素のある作品なので。

水瀬 はい。『デッドマウント・デスプレイ』は普通の概念を覆す特殊な世界観の作品で、今までにないことに挑戦する題材としてはピッタリだったので、作品の力に背中を押されて助けられました。

――水瀬さんは本作にヒロインの崎宮ミサキ役で出演もされていますが、作品の印象についてもう少し詳しく聞いてもいいですか?

水瀬 ミサキ役にはオーディションで決まったのですが、私は個人的に成田良悟先生の『デュラララ!!』が大好きで、当時、『デュラララ!!』の影響で池袋の街に憧れて、お小遣いを握りしめてサンシャイン通りやアニメイトに遊びに行っていたくらいなんです(笑)。『デッドマウント・デスプレイ』も池袋と同じくらい賑わいのある新宿が舞台で、ミステリー要素や犯罪の匂いがするところ、それと首無しライダーではないですけど摩訶不思議感があるところは、『デュラララ!!』に通じる部分があると思います。それと今作は(四乃山)ポルカくん、ミサキちゃん、(繰屋)匠くんの3人がメインなのですが、『デュラララ!!』もメインは男の子2人と女の子1人のキャラクター構成だったので、「先生は3人組にこだわりがあるのかな?」と勝手に想像したりしています。

――主人公のポルカは、異世界から転生してきた死霊使い・屍神殿の魂を肉体に宿している少年で、水瀬さん演じるミサキは彼と行動を共にする「殺し屋殺し」と呼ばれる女の子。かなりクセのあるキャラクターなので、演じるにあたって苦労もあるのでは?

水瀬 私はクセが強かったり、物語の途中で豹変するキャラクターを演じることが多いので、ネジを外す作業は得意というか(笑)、ミサキに関してはあまり考え込むことなく演じることができています。ただ、「キヒヒ」という特徴的な笑い方については、アフレコ前にどう発声すればいいか少し悩みました。試しに何テイクも録ったうえで、スタッフさんたちの解釈に一番近い「キヒヒ」を選んでいただきました。今まで「キヒヒ」と笑う子を演じたことはなかったので。

――その意味では声優としても新しい挑戦ができているわけですね。

水瀬 ミサキはポルカくんよりも少しお姉さんっぽいポジションなので、「幼い狂気」ではなく、ちゃんと年相応の大人に近づいた感性を持ちながらも、狂気のある部分を演じるのが、自分の中では新鮮さを感じています。最初は「普通」を知らない子だと思っていたのですが、物語が進んでいくと常識人っぽい部分も見えてくるので、彼女は「普通」を知っているうえで、自分からそれを捨てているんですよね。そういう狂気を持っていることに、私も演じていてハッとさせられました。

「アイオライト」のダークな輝きが映し出したもの

――そんな『デッドマウント・デスプレイ』のEDテーマとなる「アイオライト」ですが、楽曲自体はコンペで選んだらしいですね。

水瀬 はい。「アイオライト」はイントロからすごく興味をそそられるサウンドで、ダークなんだけど振り切った世界観が感じられると言いますか、怖いものほど指の隙間から見たくなる感覚を音楽でも味わったような気がして。それは『デッドマウント・デスプレイ』の世界にもリンクしていると思いますし、私自身も「こういうアプローチで歌ってみたい」とイメージを刺激されたので、この曲を選ばせていただきました。

――その時点で歌詞は付いていたのでしょうか?

水瀬 仮の歌詞が付いていたのですが、その歌詞自体もすごく素敵な内容で。この楽曲は、志村真白さんという、初めてご一緒する方に詞も曲も書いていただいたのですが、原作を熟読したうえで歌詞を書いてくださったんです。その歌詞が、作品らしさはもちろんありつつ、私の歌心的にも一致している内容だったので、ほぼ一発OKで進みました。

――志村さんのプロフィールを拝見すると、1996年生まれと書かれていたので、水瀬さんよりも年下なんですよね。

水瀬 いやあ、だんだんそういう感じになっていくんですね(笑)。レコーディングでは編曲のEFFYさんがディレクションをしてくださったのですが、志村さんも立ち会ってくださって。ご本人はシャイだけどすごく優しい方で、ご挨拶するときは少し緊張されていたみたいですが、楽曲が完成していくところを後ろで見届けてくださいました。

――歌詞の話に戻りますが、どんなところに作品らしさを感じましたか?水瀬さんは本作のタイアップ発表時に「ポルカくんがこの世界で出会い見つけた一色では無い光や愛を歌えればと思い、レコーディングに挑みました」とコメントされていましたが。

水瀬 歌詞の中に“遥か過去に捨てて”た“何千と何億の時を越えて「孤独」と寄り添った”というフレーズがあるのですが、それはポルカくんの中に入っている屍神殿だからこそわかる時の流れで、そこに転生ものの要素が感じられたりもしますし、“「それでも、生きるよ」”も屍神殿の入ったポルカくんっぽいフレーズだと思いました。彼は生きることに対して特段執着がない性格なのですが、でも命の重さやそれに対する正義感は持っていて。本来目には見えない魂や怨霊が見えてしまう力があるからこそ、そういうものがたくさん蠢いている新宿や世界にあまり希望を見出してはいないと思うのですが、それでも歩みを止めないポルカくんらしさをこのフレーズに感じてお気に入りです。

――なおかつ、今まで水瀬さんが自分の楽曲を通じて歌ってきたこととも繋がる印象があります。

水瀬 ですよね。私も「自分のペースを大切に歩いていこう」っていうちょっと保守的なタイプなので(笑)。やっぱり自分に余裕がないと人になかなか優しくできないので、まずは自分自身を認めてあげて平穏でいることが、上手に生きていくコツだと思うんです。それと“「宝石みたいな色は無くたっていい」”も私っぽいフレーズだなあと思いました。私は目に見えて輝いているものにはあまり興味がないので(笑)。そうではなく、目に見えない光を感じ取れるような人でありたいなあと思っていて。

――それはまさに『glow』のインタビュー時にもおっしゃっていたことですね。

水瀬 そうですね。きっと志村さんは私のこれまでの活動も踏まえたうえで作詞してくださったんだろうなと思いますし、そのことは歌詞の端々からもすごく感じました。

――この曲ではいつもよりクールな歌い口が印象的ですが、レコーディングはいかがでしたか?

水瀬 今までなら、新しい挑戦の楽曲を歌うときは「どうしよう?」と思って頭が真っ白になってしまうことがよくあったのですが、『glow』の制作やツアーを経てからは自分のことがより見えるようになって、「次はこうしたい!」と果敢に挑戦したり、制作をより楽しめるようになったんです。「アイオライト」でも、1番の“笑った”のところは1文字ずつ区切ってスタッカートめに歌ったのですが、今までならきっと繋げて歌っていたと思っていて。そういった新しいアプローチを随所でやり切ることができたので、その意味では手応えがありました。

――そういえばラジオ番組「水瀬いのり MELODY FLAG」で、サビの歌唱がダブルボーカルになっていることにも意味があるとおっしゃっていましたが。

水瀬 そこは先ほどお話した屍神殿の魂が転生してポルカくんの体に入っていて、2つの人格が混ざり合っていることを表したくて、ダブルでボーカルを収録しました。実はレコーディング当日にご提案いただいて試してみたのですが、すごくかっこ良くなったのでそのまま採用になりました。

――現場でアイデアを出し合いながら制作したんですね。

水瀬 アウトロもレコーディング時は仮バージョンだったのですが、個人的にはもうひと捻りほしい思いがあって、それをEFFYさんにお伝えしたところ、その場でPCを広げて色々なパターンを作ってくださったんです。それから一旦持ち帰られて、後日、4パターンくらい送ってくださった中から選んだのが今のアウトロになります。MVでもその音に合わせてキメの演出があるので、EFFYさんにはすごく感謝しています。

――そのMVでは、4人のダンサーさんと一緒にちょっとしたダンスにも挑戦されていて。ここまでしっかりとした振付のあるMVは初めてですよね。

水瀬 はい。完成した映像を観たら「これ、私じゃない人が踊ってる……?」と思うくらい、普段の自分からは解離した私がいて驚きました(笑)。衣装やピンヒールでも女性の強さやかっこよさを演出していて、凛とした雰囲気に寄せてお芝居をする感じで撮影していただいたのですが、こんなにかっこいい仕上がりになるとは思ってもみなくて。

――楽曲の雰囲気や作品の世界観にもマッチした映像ですよね。

水瀬 監督がそういう世界観を提示してくださったんです。撮影の前に振付の映像資料をいただいたときも「こ、これを覚えていくだと……」と思ってドキドキしたのですが、それを覚えて当日現場に行ったら「(振付を)追加します」と言われて「えぇー!」みたいな(笑)。

――でも、そんな焦ったそぶりは微塵も感じさせないですよね。常にクールな表情を浮かべていて。

水瀬 個人的には笑顔の撮影が少し苦手で、「撮影しまーす!」と言われてもなかなか自然な笑顔を浮かべることが出来ないので、今回は笑わなくてもOKだったのがありがたかったです。「真顔なら任せてください!」と思って(笑)。それと人形っぽさを出すために人間味をなるべく消したかったので、まばたきもなるべくしないように意識して撮影していました。

――MVの中には水瀬さんがアイオライトを手にするシーンもありますが、なぜ「アイオライト」という曲名になったのでしょうか。

水瀬 これは志村さんにご提案いただいたタイトルで、私はこの楽曲で初めてアイオライトという宝石の名前を知ったのですが、「自分を貫く強さ」という意味合いもあるとうことで、まさにピッタリだと思いました。しかも歌詞に“多色に煌めいた”というワードがあるのですが、アイオライトも角度によって色が変わる性質のある宝石なので、そこもポルカくんや作品を象徴しているなあと思って。本当にお洒落で素敵な曲名なので「私が考えました!」って言いたいくらいです(笑)。

――作品に寄り添って新しいことに挑戦しつつ、しっかりと水瀬さんらしい楽曲になりましたね。

水瀬 たしかに……ということは、私がポルカくんと近いんですかね?(笑)。でもポルカくんと一緒で私も子供好きだし、ポーカーフェイスだけど実は色々と考えているところとか、共感できる部分も結構あるので、もしかしたらそういう答え合わせができた楽曲でもあるのかも。ミサキよりもポルカだった、みたいな(笑)。

『glow』を経たからこそ歌える気持ち、伝えられる言葉

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