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2023.04.17

CHiCO with HoneyWorks、活動休止前ラストとなる全国ツアー“LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks Zepp tour 2023『iは自由で、縛れない。』”ファイナル公演でみせた“i=愛”と“感謝”でいっぱいのステージをレポート!

CHiCO with HoneyWorks、活動休止前ラストとなる全国ツアー“LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks Zepp tour 2023『iは自由で、縛れない。』”ファイナル公演でみせた“i=愛”と“感謝”でいっぱいのステージをレポート!

2023年2月、コラボユニットとしての活動休止を発表していたCHiCO with HoneyWorksが、2月18日から4都市を巡っていた全国ツアー“LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks Zepp tour 2023『iは自由で、縛れない。』”を完走!そのファイナルとなった4月8日、愛知・Zepp Nagoya公演は、2014年夏のデビューからスピードを緩めることなく走り続けてきた“チコハニ”が、すべてのファンに“i=愛”と感謝を届けたいという熱いパッションと、デビューからの想いのすべてを笑顔たっぷりのハートフルなコミュニケーションで彩られ、最高のメモリーを刻んでくれた。そんな温かな感動を残したステージを、今一度振り返る。

TEXT BY 阿部美香
PHOTOGRAPHT BY 江藤はんな(SHERPA+)、NAKAMURA Yutaka

みんなで作る“自由で、縛れない”ステージ

春と呼ぶには少し肌寒い陽気の中、Zepp Nagoyaには、会場を取り囲むように入場口へと続いていく長蛇の列ができていた。東京公演に続いて、早々にチケットがソールドアウトしたツアーファイナル。おそらく、この日この場所に集まったファンの中に、このツアーをもってCHiCO+チコハニバンドというスタイルでのステージはしばらくお休みになること、これからはCHiCOがソロアーティストとしての活動に向かうことを、知らない人はおそらくいない。ちょっと複雑な想いで、この会場に足を運んだ人も少なくはなかったはずだ。

だが、ファン有志が華やかに工夫を凝らしたフラワースタンドがたくさん並んだ入口の前では、「我武者羅」のMVでCHiCOが着ていたものとお揃いのオリジナルスカジャンを身につけた子たちが、ツアーグッズのピンクのタオルを広げてニコニコと写真を撮っている。友達同士で楽しそうにおしゃべりをしながら、早くもペンライトを準備している人もいる。ファンを驚かせたニュースを胸に秘めながら、久々に“声出し解禁”となったチコハニライブを、みんながワクワクして待ち望んでいたこともよくわかる。Zepp Nagoyaに吸い込まれていくファンの表情は、皆明るく元気いっぱいだ。チコハニのライブではお馴染みの光景が、そこかしこに広がっていることにホッとさせられる。

会場に入っても、そのワクワク感は増すばかりだった。パンパンに膨れ上がったスタンディングエリア。オープニングBGMが鳴り出した瞬間に、ペンライトを赤く灯して総立ちになる2階席。BGMに合わせて大きく響き渡る手拍子に誘われて登場したチコハニバンドが演奏をスタートし、暗転したステージでスポットライトに照らされたCHiCOが、「行くぞ名古屋!!さぁ、ファイナルぶち上がっていくぞ!!」と力強くシャウト。割れんばかりの大歓声がZepp Nagoyaの空気を揺らすと、CHiCOが颯爽とお立ち台に足を掛けて「リベンジゲーム」を歌い出す。オーディエンスの全員が大合唱でバンドの熱に応え、オープニングから「醜い生き物」「プライド革命」と激しいロックナンバーをゴリゴリと畳みかける。

最新アルバム『iは自由で、縛れない。』を引っ提げたこのツアー。タイトルにもあるように、みんながここで思うがままに声と心を解き放ち、一緒に“自由で、縛れない”ステージを作っていこう!という決意を表したような激しいオープニングブロック。3曲目の「プライド革命」では、Hiroki169(b)が、今まで声を出せなかった観客の鬱憤を晴らすように、「全員、声出せ!!」と大声でコールしてアクセルをさらに深く踏み込む。舞台の上手から下手まで、ソフトにカールしたロングヘアを揺らしながら、軽やかに力強く歌い歩くCHiCO。時折立ち止まると、大きな声を張り上げ、ペンライトを振り上げるオーディエンスを眩しそうに見つめ、嬉しそうに大きく手を振る。迫力あるギターサウンドを聴かせるOji(g)と中西(g)、スピード感溢れるドラミングを響かせるAtsuyuK!(ds)、タイトな低音を絞り出すHiroki169、華やかなフレーズでバンドを彩る宇都圭輝(key)、そしてステージ袖で飛び跳ねながらバンドをサポートするあすきー(mnp)……全員の作り出すチコハニバンドのサウンドが、客席の熱に負けじと鳴り響いた。

「待ちに待ったツアーファイナル、名古屋がやってきました!」と、いつものライブ以上に声を張り上げるCHiCO。「ステージから見てもわかる、このパンパンさ!」「ライブハウスすごいね」と改めて会場を見渡し、「ソールドアウトはみんなのおかげ」と感謝を伝えて、ワチャワチャとしゃべり出すバンドをCHiCOがたしなめながら、明るく楽しいポップチューンが並ぶゾーンへと舵を切る。CHiCO with HoneyWorksとしてワンマンライブがスタートしたのは、2016年1月、東京・渋谷WWWから。デビューしたての頃からリスアニ!の取材の席でライブの話をするたびに、「緊張しぃだからMCが苦手なんです」「みんなを盛り上げるステージパフォーマンスをもっとしっかりやりたいんです」と語っていたCHiCOだが、このツアーではそれから約7年の時を経て、数々の大ステージを経験してきた彼女がフロントマンとしてバンドを導いていく成長した姿を、そんな一場面からもしっかりと感じ取ることができる。

それは、ボーカリストとしての成長にも着実に繋がっている。アイドルグループ・可憐なアイボリーのカバー曲「ハンコウ予告」では原曲よりもセクシーなボーカルを聴かせ、「ヒミツ恋ゴコロ」や「カヌレ」では打って変わったキュートな歌声で観客に笑顔を振りまく。ハッピーな元気をくれる「それいけ!サラリーマン」では、オーディエンスと一緒に振付を楽しみ、バンドメンバーの隣に走り寄って歌い、お茶目な仕草をしながら笑う。

ロックとポップ、幅広いチコハニサウンドの魅力を一気に放出したあとは、もう1つの彼らの魅力である親しみやすいMCパートもやってくる。今回のツアーは、ステージセットもアルバム『iは自由で、縛れない。』のジャケットイラストをイメージ。ステージ中央には街中のようにガードレールが置かれた道が敷かれ、ジャケットに描かれていたドリンクの自動販売機や道路標識も、電飾が埋め込まれたり、CHiCOのシルエットイラストが描かれたりとライブらしい工夫を凝らしてリアルに再現されていた。そんな賑やかなセットの中で、いつもと変わらず仲良くわちゃついたトークが繰り広げられる。自由に話し続ける中西やAtsuyuK!をたしなめるHiroki169の小競り合いを、笑いながら見守るCHiCOとOjiと圭輝。それを爆笑しながら受け取るオーディエンス。楽曲のかっこ良さとユルいMCとの激しいギャップも、チコハニだからこその幸せな光景だ。

楽しく笑いを届けたあとには、シリアスなバラードパートが待っている。一気にピンと張り詰めた空気がフロアに流れ込んできた「鬼ノ森」は荘厳で透き通ったボーカルで魅せ、複雑な大人の恋愛模様を歌った「きっと別れるよ」「あなたは恋をしてない」は、それまでのCHiCOとは表情も歌声もガラリと変わり、悲しげな想いを響かせる。静かに歌い終えたCHiCOが、「この2曲はチコハニが活動してきた8年間があるからこそ、出来上がった曲だと思います」と語ると、客席からも静かに同意する空気が満ちる。そしてこんな風に言葉を繋げた。

「〈あなたは恋をしてない〉は特に感情移入をしてしまうから、私まで泣きそうになる瞬間があるんです。チコハニがデビューした2014年に中学生だった子も、8年の時を経て社会人になり、クロスフェード動画にはこの曲がすごく心に刺さる、共感するとコメントしてくれる子も結構いて、“あぁ、みんなもう大人になったんだね、私も大人になったけど”という時の流れ、8年間の時の流れを感じます。改めて、(チコハニの曲を)たくさん聴いてくれてありがとうございます」

3月の東京公演では、あまり感傷的な言葉を綴ることのなかったCHiCOだが、この日は様々な場面でヒストリーを振り返り、今の素直な気持ちを語ってくれる場面があった。だがセンチメンタルな空気のままに終わらせることがないのも、彼女らしい。そんな言葉のあとには、また元気にステージを駆け回りながらセットを紹介。「あっという間に、もう折り返し地点です!ここから皆様の体力を持っていく怒涛のセットリストになっていますが、みんな元気そうなので心配はしていない!」と告げて、再び激しいロックチューンが畳みかけられる。

「ヒカリ証明論」「ウルフ」「アイのシナリオ」そして「我武者羅」。CHiCOは高々と拳を挙げ、お立ち台に駆け上がり、オーディエンスに手を伸ばしながらシャウトし、バンドメンバーと一緒に頭を振り、客席から湧き上がる全力の合唱と掛け声を、“もっと聴かせて!”というように時々、片方のイヤモニを外してフロアの声に耳を傾ける。“青い青いこの晴天に 願い一つ届くように”“僕らは傷つけ逢うんだ そんな風に生きてる”“決して逃げない怖くはないから”“限界を決める 孤独な弱虫になるな”……チコハニのロックナンバーはどの楽曲にもファンという名の仲間に、そしてこの8年間チコハニの曲を受け取ってくれたすべての人に向けた、強くてポジティブなメッセージが満ちあふれている。そのメッセージをCHiCOは、この名古屋ファイナルに思い切りぶつけ、オーディエンスもそれを全力で受け止めているのがわかる。圧倒的なパワーを見せつけた「我武者羅」のラストに放たれた《今は種火だって誰かを灯せるように育てて 最後に笑っていられるようにと》のフレーズは、まさに8年間のチコハニでの活動の想いの丈として、ファンに伝えたかった言葉のようにも思える。

ファンと一緒に歌うことで完成した「決戦スピリット」

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