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INTERVIEW

2023.02.07

【対談】ナノ×堀江晶太、「No pain, No game」での初タッグから10年を経た今、再会の握手を交わす――10周年記念アルバム『NOIXE』へ込めた想いを語る

【対談】ナノ×堀江晶太、「No pain, No game」での初タッグから10年を経た今、再会の握手を交わす――10周年記念アルバム『NOIXE』へ込めた想いを語る

2月8日(水)にバイリンガルシンガー・ナノのメジャーデビュー10周年記念アルバム『NOIXE』がリリースされる。今作の収録曲のうちの2曲目「FIGHT SONG」は、作曲・編曲を堀江晶太、作詞をナノが手がけたコライト楽曲となっている。

2人の出会いは、ナノのデビュー年の2012年。TVアニメ『BTOOOM!』のOPテーマとして堀江晶太が塚本けむ名義で作曲・編曲を手がけた「No pain, No game」からだった。同作のカップリング曲「Crossroad」、TVアニメ『CONCEPTION』のOPテーマ「Star light, Star bright」の共作も経て、初のタッグから10年越しに再会の握手を交わした2人。今、「FIGHT SONG」の奥底に隠れた本当の魅力が2人の言葉を伝って輝きを放ち出した。

INTERVIEW & TEXT BY 小町碧音

昔から変わらない良いところを大事に

――お二人が実際にお会いしたのは今回で何回目ですか?

堀江晶太 「No pain, No game」のときは、顔を合わせることはなく、楽曲と歌のやり取りのみでした。実際に顔を合わせて曲を作っていったのは前回の「Star light, Star bright」からなので、今回と合わせて2回目になりますね。

ナノ 特にボカロ界隈では当然のように自宅で楽曲制作することが多いので、最初の頃は色んなクリエイターさん含めてスタジオで会うことはなかったんですよ。10年間やってきて、改めて自分の引き出しを増やしたい気持ちがあったので、今回はほとんどのクリエイターさんにスタジオで立ち会ってもらいボーカルディレクションをお願いしました。

――堀江さんや__(アンダーバー)さん含めた多種多様なクリエイターさんとのコライト作品になっていますよね。

ナノ 今回のアルバム『NOIXE』は自分の10年間を振り返って、今の自分がどうしてこうなって、どうしてこんなに歌が大好きで、どんな人たちに支えられてきたかをちゃんと音で示すアルバムにしたくて。究極に自分の感謝を伝えたかった人たちに声を掛けました。

――堀江さんにはナノさんサイドからどのような経緯で、今回のお話がきたんですか?

堀江 最初にナノさんの担当の方から「またCDを作るので、久しぶりに一緒に曲を作ってくれませんか?」とオファーをいただきました。前回ご一緒したこともあるし、ナノさんの新曲は僕も興味があったので、「もちろんです。1回話し合いましょう」とお返事をして。実際に音楽の話になったのはオンラインでの打ち合わせからでしたね。ナノさん本人にも参加してもらって、ここ最近の音楽的なこととか、今までやこれからのナノさんのことを聞いていくなかで、どういう曲がふさわしいのかなと僕なりに考えて。

――そこではナノさんと具体的にどんな話をしたんですか?

堀江 何年か経ったのもあってお互いに新しく培ったものもあるだろうし、一方で昔から変わらない良いところもあるだろうし。両方を上手く融合させた曲にしたいねと話をしました。当然新しいこともしたいですけど、ただ新しさに目が眩みすぎて、元々持っていた良いところをなくしちゃうのは惜しいなと思ったんですよ。それこそ「No pain, No game」は、すごく良い曲だったと思っています。あの良さと新しく培ったものをお互いぶつけ合おうって気持ちのまま打ち合わせが終わって、そのあと僕が曲を作って、ナノさんに歌詞を書いてもらいました。レコーディングの時は現場で僕がナノさんにボーカルディレクションをしたり、話し合いながら録っていったので、今までで一番ナノさんと密にやり取りをしながら作れた作品だったのかなと思います。

ナノ 特に堀江さんとは付き合いがすごく長く、色んな音楽を一緒に作ってきたなかである程度堀江さんの中にナノ像があると思ったので、最初は自由に「堀江さんが思う今のナノに合うベストな曲をお願いします」とお願いしました。普段、作詞するときはデモを聴いて、「あ、これは良いメッセージの曲だな」と自分の中で消化して歌詞を書くんですけど、今回も湧いたインスピレーションをすごく大事にしたいと思って。特に今回はアニメタイアップじゃないからこそ、より自由に歌詞も書けましたね。

お互いに感じていたワクワク感

――そもそもナノさんからこのタイミングで堀江さんに曲作りをお願いしようと思った経緯はなんだったんですか?

ナノ 元々自分がWEST GROUND(ナノのプロデューサー)さんと曲を作るようになったのが、「SAVIOR OF SONG」(MY FIRST STORYとの共作)くらいからなんですね。それ以前は特にナノサウンドと言えるものはなくて。そんななかで、自分の中では一番と言っても過言ではないマイルストーンになった曲が「No pain, No game」だったんです。アニメ『BTOOOM!』とのタイアップが決まってからどの曲にしようと色んなデモを平等に聴いていくなかで、「No pain, No game」のデモを最初に聴いたとき、心にものすごい刺さった感覚があって。堀江さんが書いたことはもちろん知らない状態で聴いたんですけど、ワクワクっていう言葉が一番合っているのかな?「うわ~!」と鳥肌が立って、「あ、これ歌いたい!」とボーカリストとしてのワクワク感をすごく煽った曲だったんです。良い曲はたくさんいっぱいあるし、歌ってきました。でも、あの感情を味わうことは滅多になくて、今でも鮮明に覚えているんです。だから、自分にとってデビューに続くくらい大事なアルバムになる今回のアルバムでは、絶対堀江さんと一緒に音楽をやりたいなと思っていました。

堀江 人と作品を作るのはすごく面白いな、とここ1、2年で感じています。昔は新人だったこともあって、人づてに仕事をもらって曲を作ることができればどんな条件でもいいという気持ちがあったんです。でも、今は基本的に楽曲制作の依頼を受ける場合は、自らアーティスト本人とお話させていただくことをなるべく徹底するようにしていて。アーティストがいるならアーティスト本人、例えばアニメ、ゲームタイアップならその作品を作っている人たちの言葉がないと曲を作り辛いとすごく感じるんですよ。作品の中心にいる人と話をしたほうが、僕もその人もモチベーションが上がるでしょうし、何よりも本人がなんとなく口にしたワードとかにヒントがあることが多いんです。今回ナノさんと話したときに、ナノさんの話の温度感から「ワクワクしたそうな気持ち」をすごい感じたんですよ。やっぱり僕はアーティストと直接話して作るほうが好きです。お互いが平等に作る楽曲を背負うというか……僕たちで作ったんだと言いたい。ナノさんとの打ち合わせのあとは、ワクワクするってなんだろうと考える工程が作れたので、大事な時間だったなと感じます。

ナノ 実際に「FIGHT SONG」のデモを聴いたときに「うおー!歌いたい!」という気持ちが湧いてきたんです。それはやっぱり相性なのかもしれないし、素で堀江さんの持っている音楽の感性というか、サウンドが大好きなんだと思います。でも、音が進化しているのはすごい感じましたね。あと、さっき堀江さんが言っていたように、「FIGHT SONG」は、昔から変わらない良いところを絶対に残したいという想いの元完成した作品だと思うので、良い意味ですごく懐かしさもあるんです。

――昔から変わらない良いところというと?

堀江 「No pain, No game」のときの話ですけど、僕がナノさんにメロディを打ち込んだデモを送って、歌詞を書いてもらったあとに、1回練習がてら歌ってもらったんですよ。

ナノ 自宅の電話を通してね(笑)。

堀江 シンガーに自分の曲を歌ってもらうときはその人のパフォーマンスを最前列で観るみたいな感じがあるんですけど、ナノさんってシンガーを僕の曲という土俵で目の当たりにしたときに、「あ、この人すごいんだな」とワクワクしたんです。僕が初めて衝撃を受けたあのナノさん像をもう1回思い出すというか。忘れないようにって意識しながら「FIGHT SONG」を書きました。

次ページ:「初めて予想以上のものを打ち返してきてくれたのが、ナノさん」

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