リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2023.02.07

【対談】ナノ×堀江晶太、「No pain, No game」での初タッグから10年を経た今、再会の握手を交わす――10周年記念アルバム『NOIXE』へ込めた想いを語る

【対談】ナノ×堀江晶太、「No pain, No game」での初タッグから10年を経た今、再会の握手を交わす――10周年記念アルバム『NOIXE』へ込めた想いを語る

「初めて予想以上のものを打ち返してきてくれたのが、ナノさん」

――堀江さんも堀江さんでナノさんの歌声にワクワクしていたとは(笑)。電話越しに感じたナノさんの凄さとはどんなものだったのでしょう。

堀江 僕の書いたメロディにナノさんの歌詞と歌が加わると、メロディが僕の予想以上にかっこよく聴こえたことですね。その頃、僕は作曲家としては新人で経験も浅かったんです。そんななかで僕が書いた曲に対して、初めて僕の予想以上のものを打ち返してきてくれたのがナノさんでした。当時、僕は音符でメロディを書いていたんですけど、その1個1個の音符の中にナノさんの情感とかニュアンスとか発声とか色んな要素を入れてくれて。自分の指定した通りに歌ってくれるボカロとは違って僕が意図していない方向にメロディがいくんだけど、僕から見てもすごくかっこよかった。そこで初めて、僕が気づいていなかったメロディの魅力をボーカリストが気付かせてくれることもあるという経験をしたんです。だから、今回も僕の考えている音符にどんな表情をつけるかはナノさんの書く歌詞、歌に任せてみようと思いましたね。色んな素晴らしいシンガーがいますけど、メロディを身体で消化したり、1つ上の次元に昇華してくれるのはナノさんだけだなと思います。

――ナノさんと堀江さんはボカロ文化を出自としていて、それぞれボカロ界隈で活躍されてきましたが、ナノさんは当時kemu(堀江晶太のボカロP名義)の楽曲も聴いていたんですか?

ナノ 自分は歌い手活動をしていた期間がすごく短いんです。歌い手さん同士の横の繋がりとか、ボカロPさんとの繋がりもまったくなくて、歌い手に染まった感がないままデビューしたんですね。だから、堀江さんがkemuとしてのユニット(KEMU VOXX)で楽曲を出していたのは聴いてはいたんですけど、実際には歌う機会がなかったんです。もちろんkemuがボカロ界を一世風靡したのは、目の当たりにしていました。音もすごく最新で好きなサウンドでした。ただ絶対歌えないなと思っていました(笑)。

――(笑)。ナノさんはクリエイターさんから提供された楽曲に対して期待を超えて返そうと意識されているんですか?

ナノ 例えば与えられた楽曲に歌詞を書いたり歌を入れたりすることになったときに、きっとこれを期待されているんだなと感じることがあって。でもできれば何かそれ以上のサプライズとか、自分にしか生まれなかったナノ要素は入れたいなと思っています。それは楽曲に対しての愛情でも感謝の気持ちでもあるんです。一方で、「その通りに歌ってください」とか「こういうボーカルを求めています」とおっしゃるクリエイターさんもいるので、期待を超えることが必ずしも良いわけではなくて。それこそ、負けず嫌いなので、自分の色をあまり出せないときは、泣きながらレコーディングして泣きながら家に帰るくらいに苦戦しますね。そういう意味でも堀江さんは、すごく気持ち良く歌えるタイプの楽曲を持ってきてくれるんです。もし、堀江さんに「こう歌ってください」と厳しく言われたら正直困ると思う…(笑)。楽しいから何度でも一緒に音楽をやりたいと思えるのかもしれないですね。

この先の10年を世界中の人と一緒に戦うために必要な曲

――どうして「FIGHT SONG」というタイトルに?

ナノ 「FIGHT SONG」は日本語で応援歌。でも英語では“戦う曲”って意味になるんです。だからあえて、日本人にとっては“応援”の意味を持ち、外人にとっては“戦う”の意味を持つ“FIGHT”の言葉遊びから決めました。「No pain, No game」はこれからプロとしてやっていくためには、このとんでもない世界に飛び込んでいくんだ、っていう自分への応援歌と戦うための曲だったんですね。そういう意味で、「No pain, No game」は共に10年間戦ってくれた曲なんです。いまだにライブで歌っても魔物が生きていて、何度歌っても制覇できないんですよ。でも、やっぱり10年経て多少は自分も成長しているので、改めて新しい10年に挑むときの戦う曲も欲しくて。それが、この曲になったんだなと感じています。実際に、デモを聴いて歌詞を書いていて、今まで自分になかった闘争心だったり、パワーが漲ってきたんです。普段から聴いてくれる人と自分は一体だと思っているので、「FIGHT SONG」を聴いてくれる人全員がナノになって、とんでもない世界でやっていくための力になったらいいなって。

――この先の10年も強い自分でいるために今「FIGHT SONG」が必要なんですね。今作の全収録曲を聴いたときに地獄から這い上がって何度でも立ち上がってやるぞみたいな想いが普段のナノさんの楽曲以上に強く感じられながら、ネガティブな思考に対するナノさんなりのポジティブな応援の仕方だったりも光っていてすごく良かったです。特に「FIGHT SONG」はコーラスも印象的で。

ナノ 「FIGHT SONG」のデモを聴いた段階で、イントロにコーラスが入っていたおかげで、より世界が広がった印象を受けました。「No pain, No game」は1人で戦うための曲だったんですけど、「FIGHT SONG」は1人で戦うんじゃなくて、世界中の人と一緒に戦うための曲なんだなと感じて。きっと、当時よりお互いの視野がすごく広がっているのもあって、世界を見ているみたいな雰囲気が音に出ているのかなと思いました。

――堀江さんはどういった意図でコーラスを入れたんですか?

堀江 6年前にバンド(PENGUIN RESEARCH)を組んだので、今は「No pain, No game」の頃にはなかったバンドマンの属性があって、ステージ上に生きる自分がいるのが大きいかもしれないですね。ただ、普段から無意識にライブのことも意識しながら曲を作っているとは思います。

ナノ 海外に行ってライブをやったときもお客さんがめちゃくちゃノッてくれて、コーラスのところも一緒に歌ってくれている場面が想像できたんですよ。自分も「No pain, No game」のときはライブ経験がほとんどなかったので、ライブでこの曲をどう生まれ変わらせようというところまでは全然考えられなかったんです。でも今は、自分の中では相当ライブをやってきたと思っているので、楽曲制作の段階でライブを意識して歌詞を書いたりするくらい、ライブ経験は歌にも活きてきている。「FIGHT SONG」はネット音楽としてもかっこいいんだけど、ライブ音楽としてもかっこいい絶妙な曲ですね。

――「FIGHT SONG」は、まるで、お二人の出会いから成長過程を映した鏡のような一面を持っていますね。

ナノ お互いがすごく大人になったなと思えた曲になりました。堀江さんも色んな変化球を投げてきて、負けないぞって気持ちも感じたし、最高でしたね!

堀江 嬉しい。

――今作を作り終えてご自身の中での新しい発見はありましたか?

ナノ 歌詞を書いているときの大変さが書き終えたときに達成感に変わったり、初めて楽曲が完成した時のワクワク感だったり、スタジオに入って苦戦するんだけど、最終的に終わってホッとしたり、ステージに立ってお客さんの前で初めて披露する曲を歌ってお客さんの反応を聴いた時だったり……そのすべてが大好きなんだなと、改めて今回のアルバムを作って思いました。あとは、まだまだ知らないことだらけなんだなって。この世界をできるだけ追求してもっともっと上に上がっていかないといけないと思っているので、自分がいける限界まではボーカリストとして修行して成長したいです。

次ページ:音楽で獲得できる感情はほかでは味わえない

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP