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INTERVIEW

2023.01.10

6つのユニットと、チームから湧き上がるアイデアを“繋いだ”アニメに!『D4DJ All Mix』放送記念・水島精二総監督インタビュー

6つのユニットと、チームから湧き上がるアイデアを“繋いだ”アニメに!『D4DJ All Mix』放送記念・水島精二総監督インタビュー

DJをテーマにしたメディアミックスプロジェクト『D4DJ』。そのTVアニメシリーズ第2期にあたる『D4DJ All Mix』(以下、『All Mix』)が、1月13日からいよいよ放送される。そこでリスアニ!では、同作の総監督・水島精二へのインタビューを敢行。『All Mix』の制作へのこだわりはもちろん、『D4DJ』との今の関わり方やプロジェクト全体から感じることなど、多岐に渡る話題を丁寧に、かつ熱く語ってくれた。

INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次

水島精二

水島精二

総監督として、そしてスーパーバイザーとして見る今の『D4DJ』

――『D4DJ』がお披露目になってから、約3年半が経ちました。その間のプロジェクトの広がりや出演者の皆さんの成長は、水島監督にはどのように映っていますか?

水島精二 スタートしたときには木谷(高明・株式会社ブシロード社長)さんから「アニメとゲームとライブを同時進行に、加速度的にコンテンツに勢いをつけていく」というお話をいただいたのですが、コロナ禍もあってそのグランドデザイン通りにはいかなくなってしまいました。でもそのなかで、それぞれの人がそれぞれのポジションで、やるべきことをしっかりやってきた印象があります。特に演者たちは、本来ライブなどで発揮するべきパワーを配信に傾けたことで、露出も当初の想定より増えたはずなんですよ。

――確かに。毎週金曜日に生配信をしていましたからね(※現在はイベントのアーカイブを配信)。

水島 個々のキャラクターへの思い入れや自分自身と重ね合わせるような部分も含めて、色々な工夫をしてくれていましたよね。だから僕らは、それをアニメの部分でどう活かせるかを考えながら、コンテンツに対して前向きに取り組んできました。ただ、逆にアプリゲーム(「D4DJ Groovy Mix」)のほうはコロナ禍の影響をそれほど受けることなく進んでいくので、そこに向けた楽曲制作などは元々の予定通りだった。だから実際に物事を動かさなければならないセクションの方々は、すごく大変な時期を経て今に至っていると思いますね。

――その後、アニメには新キャラ・新ユニットが登場するなど、『D4DJ』の世界はさらに広がり続けています。

水島 本当に色々な変化をしてきていますよね。自分もプロジェクトの立ち上げの頃はコアメンバーとしてご一緒させていただきましたが、結局現場を動かしているのは担当の若い方たちなので、今はもう少し引いた目線で全体を見ています。2022年に入ってからは『D4DJ』全体のスーパーバイザーというお仕事を正式にいただきまして、若いスタッフの方たちのアドバイザー的なことをしているんですよ。

――アドバイザー的な、というと?

水島 相談してくれればアイデアを考えて「こんなんどう?」と提案する、「クリエイティブの分野で相談に乗る人」という感じです。若い方たちにとって“老害”にはならないように(笑)、「誰の意見も、頭ごなしに潰さない」ということは強く意識していまして。担当の方たちがアイデアを出してくれたら、「そのアイデアなら、例えばこういうアプローチもできるんじゃない?」みたいにアドバイスをする……というような協力をしています。

中山雅弘統括プロデューサー 水島監督にはこれまでにもアニメやゲームはもちろん、ライブの音楽作りや画作り、構成に至るまで、クリエイティブ全般にアドバイスをいただいていたんですよ。元々アニメ監督の枠を超えて活動されている方なので、そういった意味で木谷が水島監督にお仕事をお願いしてから3年以上経った今、こういう形でタッグを組めていることはとても嬉しいですね。

水島 だから、その意味では自分自身はちょっと肩の力が抜けた印象があって。『D4DJ』が今後どんな方向に進んでいくのかを楽しみに見ている側面もあるんですよ。もし危なっかしいことになりそうだったら「ちょいちょいちょーい!」って言ってあげられる場所にいられたらと思っていて(笑)。今まで通り自分がやるべきことはしっかりやりつつ、今後は見守る役割も意識していきたいなと考えています。

――そのように多岐に渡ってプロジェクトに関わられるなかで、声優陣のキャラクターの理解度の高さや、思い入れの深さを感じられることもあったのでしょうか。

水島 ありました。自分が音楽プロデュースをしているPhoton Maiden以外の方と会う機会は少なくて、ゲームのアフレコでも、僕は最初の「このキャラはこんな方向性だね」みたいな確認作業に同席するくらいで、それ以降の収録はゲームチームの方を中心にやっているんですよ。だから『All Mix』のアフレコの場で久々に再会したキャストの皆さんとの、アニメの方で描いているキャラクターとゲームで培ってきたキャラクターをすり合わせるディスカッションの中では、成長もうかがえました。

――ゲーム版の物語の時間軸とのすり合わせをしてから、収録に臨まれていったんですね。

水島 そうですね。元々アニメ自体のシナリオも「ゲームのここからここまでの間の時間軸を意識して作る」みたいなハメ込み方をしているのですが、そもそもゲームとアニメは作り手が違うので、テイストを完全に合わせることはできないんですよ。だから、その差をどう矛盾に感じない程度に落とし込んで、キャラクターを定着させていくか?みたいなことは結構気を使っています。

Lyrical Lilyを軸に、6ユニットを掘り下げていく物語に

――そんな『All Mix』では、『D4DJ』という作品のどんな部分に、特にフォーカスを当てられているのでしょうか?

水島 今回の一番のテーマは、「6ユニットを漏らさず描く」ということです。物語の発端や作中全体を貫くイベントの中心にはLyrical Lilyがいますが、それをベースにして各ユニットの魅力をさらに感じてもらえるような、掘り下げるエピソードを作っていきたくて。(TVアニメ第1期の)『D4DJ First Mix』(以下、『First Mix』)のときは「音楽にかける初期衝動」や「そもそもDJとは?」みたいなところも含めた入口を作ったのですが、今回はそれらがベースとしてすでに存在しているので、新曲を作るにしても、その過程を細かく描くのではなく、さらにキャラクターに寄った、それぞれの魅力を見せられるようなアニメを目指しています。

――Lyrical Lilyを中心としながら6ユニットが関わってくるところから、『D4DJ』のプロジェクトがテーマにしている“繋がる”という要素も感じます。

水島 はい。僕もまさにそう思っているので、『All Mix』ではユニット同士の交流も描きつつ、各ユニットのメイン回を設けて、そこで新曲が披露されていく形にしました。『First Mix』はあくまでHappy Around!がメインでしたが、今回は6ユニットそれぞれのメイン回があります。

――それは『First Mix』でベースを作られた後だからこそ、できたことなのかもしれませんね。

水島 そうですね。だからこそ、6ユニット全員を描くのであれば、各キャラクターについても「この子にはこういうエピソードがあるよ」という深掘りをしたくて。物語やキャラクターの根幹に紐づくところまでしっかり作ったうえで、ユニットごとの交流にまで踏み込めるよう臨んでいます。ただ、その交流の根っこになる部分を、ゲーム版のLyrical Lilyのストーリーから持ち込めたのは、様々なメディアを横断するコンテンツだからこそですよね。あとは演じている役者さんのキャラクターとリンクしている部分をめざとく見つけて、皆さんに愛着を持ってもらえるように、フィルムの中でさり気なく表現したりもしています。

――そのLyrical Lilyはもちろん、どのユニットにもゲームで描かれた話題がサラッと出てきますが、でも説明過多じゃない……という感じなので、ディグラー(『D4DJ』ファンの総称)さんからゲーム未プレイの方まで非常に馴染みやすい印象がありました。

水島 そうですね。ゲームとアニメの両方を楽しんでもらうには、「どちらが入り口でも大丈夫」というバランスが一番いいと思うので。それに『D4DJ』はあくまでも「ゲームのこのエピソードをアニメ化します」というやり方ではなくて、双方で自分たちの得意なアプローチをぶつけ合うような形なんですよ。アニメの脚本や構成の打ち合わせには(ゲーム「D4DJ Groovy Mix」の開発会社である)DONUTS のシナリオディレクターの方にも入ってもらっていて。お互いにアイデアのキャッチボールをしたうえで、実際のやる/やらないは各々の判断ですが、今後の何かに繋げられるような布石を打っておく……みたいなことは、話をしながらまとめていました。

――確かに『First Mix』が放送されてから今までの間に、ゲームのほうで変化が描かれたり新しく明らかになった要素もありますからね。

水島 ただ「原作あり」というほどのガチガチさではないですし、ゲームのシナリオも全部読ませていただきましたが、例えば「メンバーチェンジがありました」のような、後々のドラマの描き方にものすごく大きな影響を及ぼすような出来事は、実はそんなにないんですよ。仮にそういう展開があっても、そのストーリー内でちゃんと元に戻ってくるんです。

――一件落着はしますよね。

水島 そう。だから「こういう出来事があった」という事実は物語の根底として敷くべきだけれども、アニメのストーリーを作るうえで大きく左右されるようなことはありませんでした。ただ、アニメでストーリーを描く場合、どうしてもリアリティが必要になってくるので、そこのバランスだけはしっかりと考えて。「なぜ、そうなるのか?」という部分をドラマとして組み込んで、キャラクターの深掘りをするようにしています。あとは、いま表に出ているゲームの情報を元にアニメ側で咀嚼や解釈をして、ゲームで描かれていない部分を提示したり……その意味で、こちらから提案をすることは多かったです。

――そのなかで今回の『All Mix』では、先ほどお話いただいたようにLyrical Lilyが物語の軸になってきます。

水島 Lyrical Lilyはアニメだと『All Mix』で初めてキチンと登場するんですよね。ただ、ここで「Lyrical Lilyを中心としたストーリー」をやると、『First Mix』のHappy Around!のポジションがLyrical Lilyに代わるだけで、同じことの繰り返しになってしまう。それと今回は、ゲーム版の時間軸で例えると“D4 FES.”という大規模フェスに一度みんなが集った後の物語なので、すでにみんな面識があって繋がっているところから始めようと思いました。

――ちなみに水島監督は、Lyrical Lilyの魅力はどんな部分だと感じられていますか?

水島 ベースには「お嬢様」というところがありつつも、ある意味Happy Around!と同じように「等身大の女子高生」というところですね。ただ、Happy Around!が割と自由奔放だったのに対して、Lyrical Lilyはお嬢様学校というある程度の規律に縛られた場所にいる子たち。でも、そのなかでDJ活動を始めている……という治外法権的な部分も持った感じは、面白いなと思いましたね。

――楽曲面については、どんな印象ですか?

水島 由緒正しきアイドルソングの雰囲気だけど、有名な小説からテーマやタイトルを持ってくるという、中村 航先生のアプローチが面白いですよね。なので「これをアニメに落とし込むとき、どうすればもっと楽しくできるかな?」ということは考えました。基本的には(白鳥)胡桃と(竹下)みいこが動かしやすいキャラクターだと最初から感じていたので、彼女たちを上手く使えば、物語の中心に置いたときに効果は出せそうだな……と。

――あの2人は、まさに“動いてくれる子たち”ですよね。

水島 ゲームの物語だと、トラブルメーカー的な役割も強く与えられていますからね。ただ、アニメで動かすためにキャラクターの定義的な部分が一番変わったのは、みいこだと思います。表面上は変わっていないのですが、セリフを言うときの根っこの部分を少し味付けさせてもらったことで、動かしやすくもなったし、ゲームとは違う部分もお見せできると思っています。

次ページ:ディグラーにも初見にも親しみやすい「みんなで作る」作品

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