リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2022.12.30

【連載】第3回:インタビュー・KOYANO(リードデザイナー/DONUTS所属)/「正義」と「狂気」がテーマのRPG「ユアマジェスティ」――RPG×音楽の魅力に迫る!

【連載】第3回:インタビュー・KOYANO(リードデザイナー/DONUTS所属)/「正義」と「狂気」がテーマのRPG「ユアマジェスティ」――RPG×音楽の魅力に迫る!

「Tokyo 7th シスターズ」や「D4DJ Groovy Mix」の開発などでも知られる株式会社DONUTSが手がけるスマートフォン向けアプリゲーム「ユアマジェスティ」。プロジェクト発表当初は謎に包まれていた内容がついにリリースを迎え、徐々に明らかに。そして、リスアニ!WEBでは「RPG×音楽の魅力に迫る!」をテーマに連載中。

第3回目は魅力溢れるキャラクターを生み出したリードデザイナーのDONUTS・KOYANO氏に話を聞く。総勢24人もの王たちはどのようにして生まれたのか。「ユアマジェスティ」の世界へとユーザーを誘うために、彼らにどんな想いを込めたのか――。

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

■連載一覧はこちら

【連載】「正義」と「狂気」がテーマのRPG「ユアマジェスティ」――RPG×音楽の魅力に迫る!

絵を描きたいという想い。そして「ユアマジェスティ」との出会い

――まずはゲームのお仕事をされるようになったきっかけを教えてください。

KOYANO 元々美術をやっていて、ゲーム業界に入りたいなと思ってはいました。最初はUI(ユーザーインターフェース)から入ったものの、半年くらい仕事をした頃に「絵を描きたい」と思うようになり、路線を変更したんです。今から12、13年前くらいにキャラクターに関わるお仕事をするようになりました。その頃は全然上手に描けなくて、周りの方に面倒を見てもらいながら版権物の絵寄せの仕事(イラストを描く仕事)をやらせてもらっていくなかで作画監督というポジションもいただくようになって。今から2年前にDONUTSに転職しまして、それまでの経験を活かしながら働いております。

――そして「ユアマジェ」との出会いがあった。

KOYANO はい、DONUTSで新規案件をやるということで、ディレクターの塚口(綾子)さんから「キャラクターデザインはどうですか?」と声をかけてもらいました。。一旦、社内コンペに参加させていただき、そこで出したキャラクターデザインからリードデザイナーとして関わることになりました。

――「ユアマジェ」のリードデザイナーへとKOYANOさんを導いた社内コンペですが、最初のお題はどんなものだったのでしょうか。

KOYANO 「高級感のある王様を描いてください」というものが表向きのテーマでしたが、裏テーマとしては「魅力的な女性に踏まれてもいい」というワードがありました。最初のコンペで描いたのがカンタレラだったのですが、踏まれるのなら素足がいいなと思って、裸足に白いサンダルを履いた女の子を描きました。

――裏テーマも最初からあったんですか?

KOYANO 最初にコンペの参加者が集められて、口頭でその説明を受けました。

――最初に描かれたラフがカンタレラだったとのことですが、それはご自身が候補の王の中から選ばれたのでしょうか?

KOYANO そうです。最初に6人のキャラクターのプロフィールをいただいて、そのなかで好きなものを選んでくださいとのことだったのでカンタレラを選びました。

葬礼王カンタレラ 清書稿

葬礼王カンタレラ 清書稿

――そのカンタレラを描く際に意識したのはどんなことでしたか?

KOYANO いくつかあるのですが、カンタレラの前世のモデルになった人物が「一族で毒を扱っていた、という説をとる」という設定だったんです。蠱惑的で少し陰のある感じが出るように、そして仕草や表情に品を感じるような姿を意識しました。あとは「膝」です。

――膝!?

KOYANO カンタレラは「少女っぽい雰囲気で描いてください」という内容だったので、少女といえばきれいな膝だろうと思って、最初に膝を、そして素足を描いてから豪奢なサンダルでデコレーションされているスタイルにしようと思いました。当時塚口さんと「膝は少女の特権なので」と、語ったことがありまして。ドレスを描いてほしい塚口さんと、膝を出したい私自身の想いの葛藤が衣装に出たのがカンタレラでした。とにかく脚を見せたいという想いがあったんです。王族のドレスってボディラインが隠れてしまうんですよね。もう少しボディラインが出る形だと魅力にも繋がると思っていたので、絶対に脚を出したいと思っていました。

葬礼王カンタレラ 表情ラフ

葬礼王カンタレラ 表情ラフ

全24人の王、そして彼らを取り巻く人々が生まれた背景とは

――コンペを経てリードデザイナーとしてコンテンツを引っ張っていく立場になられました。作品に対して、コンペに向き合っていた頃にはどんな印象がありましたか?

KOYANO 「王道のRPGを作りたい」というお話だったのですが、たしかに王道感はありつつも、元々塚口さんの作品を知っていたので一癖も二癖もあるんだろうなぁということは思っていました。最初にすでに世界観の設定があったのですが、想像していたものとは違って、王道RPGだけどSFっぽさもある。そこは面白い組み合わせだなと感じていました。

――そこからデザイナーとして関わられていかれたKOYANOさんですが、制作中の打ち合わせなどで出た印象的なキーワードや表現はありましたか?

KOYANO ディレクターにはいろんなタイプがいると思うんですが、塚口さんはキャッチボールをしながら作っていくタイプの人で、迷ったときには道筋を明瞭に出してくれるし、こちらの投げ返しが変化球になっていても受け止めて、お互い話し合えたのは制作しやすかったです。

――迷われたのはどんなことでしたか?

KOYANO キャラクターが24人もいるので、雰囲気が被ってしまったこともあったんです。自分的には似ている気はしていなかったのですが、出した際に周囲からの反応として「被ってない?」ということもあって。ただ、そういうときにはキャラクターの設定自体をガラリと変えてもらったこともあったんです。例えばルルとアンジューはそうでしたね。そういった経緯については面白いな、と思っていました。キャラクターの設定を変えちゃうのか!と。最初はルルも現在のアンジューのような方向性で組み立てていたので、今のようなルルになっていく過程は面白かったですね。初稿ではもっとお姉さんっぽい感じで描いていたんです。キャラクターの入れ替えがあったことで、既存のイメージとは違った姿になったのかなと思います。あとはイラストをたくさん描いていく際のこともすごく考えました。

ルル

ルル

――というと?

KOYANO 王様なので衣装についても緻密に作ると思うのですが、その後、色々なイラストを描いていくときに「イラストを描き続けていく将来、苦労しすぎないようにしたい」と思い、衣装のデザインを担当してくださった方に「簡略化してください!簡略化してください!」と何度もお願いしていた記憶があります。

――女性は脚やデコルテ、露出部分なども意識されたかと思いますが、クロードをはじめとした男性キャラクターについてはどのようなことを注視されましたか?

KOYANO キャラクターの性格が姿から出るといいなと思っていました。ちょっと面白かったのはシノンです。最初は正統派なイケメンのつもりで描いていたのですが、結構不幸なキャラクターでかなり罪の意識を内側に持っているキャラクターでもあるので「目つきを悪くしてください」といったオーダーを受け取るたびにどんどん正統派イケメンから外れていったんです。最終的には性格が姿にあらわれた、いい意味で一味違うイケメンになったと思います。これこそが女子向けではないアプローチでもあるんだろうなと思いました。

シノン 頭部背面ラフ

シノン 頭部背面ラフ

――全部で24人もいる王たちですが、キャラクターデザインにはどれくらいの時間を要したのでしょうか。

KOYANO 1日2体で2日ずつやっていたので、2ヵ月くらいでした。立ち上げからフィックスまでそれくらい掛かりましたが、その間もほかの仕事もしていた感じだったので、おそらく実質的には1ヵ月くらいで王24人をはじめ、小役人や評議会メンバー……30人くらいのキャラクターデザインをしたのかなと思います。先程もお話をしましたが、迷ったときにも道筋を示してもらえる環境も大きかったので、それくらいの時間で出来たんだろうと思います。

小役人 ラフ衣装パターン

小役人 ラフ衣装パターン

次ページ:性格が良いから狂気の表情が描けない……!?

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP