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INTERVIEW

2022.12.12

【連載】テクノロイド 徹底解剖! ~MUSIC LABO~ 第7回目:TVアニメ『テクノロイド オーバーマインド』イムガヒ監督 インタビュー

【連載】テクノロイド 徹底解剖! ~MUSIC LABO~ 第7回目:TVアニメ『テクノロイド オーバーマインド』イムガヒ監督  インタビュー

上松範康×RUCCA×Elements Gardenが贈る、新世代メディアミックスプロジェクト『テクノロイド』。上松といえば、大人気コンテンツ『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズや『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズ、最近では『ヴィジュアルプリズン』の生みの親でもある気鋭のクリエイター。そしてKAT-TUNや嵐、King&Princeの楽曲をはじめ、下野 紘や蒼井翔太らの曲の作詞でも知られるRUCCA、さらに上松率いるElements Gardenとでタッグを組んで生み出した新たなコンテンツは、切なくも美しい、アンドロイドたちの物語を描くものに。

近未来サウンドともいえる楽曲にアンドロイドたちの歌が重なり、心惹かれるユーザー続出中の『テクノロイド』はいよいよテレビ東京ほかにて2023年1月よりTVアニメ『テクノロイド オーバーマインド』がスタートする。第7回目は、TVアニメの監督を務めるイムガヒへ、本作へのこだわり、放送への想いについて話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

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日本でアニメの制作をしようと決意をし、初監督作品『テクノロイド オーバーマインド」と出会うまで


――イムガヒ監督がアニメ制作に興味を持たれたきっかけを教えてください。

イムガヒ 小さい頃からアニメが好きでよく観ていたんですが、親から「大学生になってもずっとアニメを観ているね」と、アニメばかり観ていることを心配されていたんです。当時、韓国ではアニメの仕事で生計を立てることは難しいという経緯もあって、アニメは好きではあるけれど趣味に留めて、仕事としてはデザイン系のことをやろうと進学をしました。そんな大学時代にワーキングホリデーで日本に来たときに、自分のツールとしてデザインや映像の技術があったので、アニメの仕事に携わらせてもらう機会があったんです。観ているだけだったアニメに実際に関わってみたら、作ることがとても面白くて……自分が手がけたものが毎週放送されるということが、すごい経験だったんです。これを一度でも味わってしまったなら元の生活には戻れないと思い、そのあともデザイン系で学ぶことを選択していたのですが、大学卒業後は正式に日本に来て、アニメ業界に入ろうと決意しました。それが今に続いています。

――アニメ制作の魅力はどんなところにあると思われますか?

イム 観ている人の心を動かすことだと思います。

――手がけられる作品に対して、ご自身がこだわっていることを教えてください。

イム アニメ制作の現場に入って驚いたのは、アニメを作る工程が細かに分業されているということでした。話を作る人、絵を描く人、ディレクションをする人、色を作る人、塗る人、音を入れる人、声を当てる人。すべてが分業なんですね。その1つ1つを何十人もの人がやる。1本のアニメに何百人という人が関わって、1つのストーリーを描くというのはすごいことだと思うんです。でも、その分業作業であることを“ばれないようにしよう”という意識があります、アニメが「アニメである」とばれたくない。色んな人がこの作品を作っているんだよ、とばれないように、1人のキャラクターがその世界に生きていて、声を当てる人がいたり絵を描く人がいると意識されないように、そのキャラクターの物語として完結するように見せたいと思っているんです。私自身も小さい頃から、好きなキャラクターが実際に生きていると思っていたし、いつか会えるかもしれないという夢を抱いていましたから。推しってそういうものじゃないですか。本当にいると思って全力で応援するわけですから、1人のキャラクターとして実際に存在しているような描き方をしたいと思い、なるべくアニメのフィクションがばれないようにしたい、というのがこだわりです。

――2023年1月からは初監督作品であるTVアニメ『テクノロイド オーバーマインド」がスタートします。まずは『テクノロイド』との出会いを教えてください。

イム 作品のスーパーバイザーである吉村 愛さんが同じサンライズ(現バンダイナムコフィルムワークス)出身の方で知り合いなのですが、その吉村さんから声をかけていただきました。『テクノロイド』の立ち上げの際に、田中(宏幸)プロデューサーの「女性目線の意見が欲しい」という要望から吉村さんがスーパーバイザーとして入られたんです。吉村さんは元々女性向け作品も手がけられていますし、最初の骨組作りなどをされていたそうなのですが、アニメの話になったときに、吉村さんから「スケジュール的に私は無理だけど、後輩で良い人がいる」と声をかけてくださいました。

――その『テクノロイド』に対しては、どんな印象がありますか?

イム 最初は、今の自分には無理だろうと思っていました。プロジェクトとして規模感が大きすぎるというか。吉村さんへ「ジャンルとしてはどんな作品になるんですか?」と尋ねたら「SFかな?」と言われて。いきなりSF作品で、しかも「アニメオリジナル」での監督なんて無理だ!と……(笑)。基本的には音楽ジャンルだけど、舞台はSFで……と吉村さんの説明もどんどん長くなっていって、これは複雑な作品だなとも思いましたし、初監督作品でオリジナルストーリーというのもプレッシャーがありました。最初に関わったアニメもオリジナル作品だったので、だからこそ大変さがわかっている。制作進行や設定制作をしていたときにも、設定もシナリオもとても大変そうだったのを横で見ていたので、いきなり先輩方がやっていたことができるだろうかとも思い、お返事には少し時間をいただきました。ありがたい話だけれど、下手に「やります」と答えられるものでもないなと思って。そのときに「見てほしい」と資料を渡されて、LAMさんのキャラクター原案やストーリー素案などを見せていただいたんです。たしかに未来を舞台にしていることでSFの要素はあるけれど、中身は人間ドラマであるというところに惹かれて。ただの音楽ものではなく、基本的なメインのストーリーはシリアスめで、主人公たちの成長を描きつつ、最終的にシリアスな物語をやりたいというところに新しさも感じました。成長物語や人間のドラマを描くことが好きなので、これなら自分にできることがあるかもと思ったんです。吉村さんにはご迷惑をかけると思いますが、もしも一緒にやってくださるならやってみたいです、と返答をさせていただいて、監督を務めさせてもらうことになりました。

――そこからゲームがリリースされ、楽曲もたくさん生まれ、キャラクターのパーソナリティもくっきりと出てきた今、どのような印象がありますか?

イム 作品とコンテンツとしては、ファンの皆さんと一緒に育ててきて、世の中に向けて届けていていく印象が強いです。テクノロイドのファンの皆さんはすごく優しいんですよね。それはきっと作品性との繋がりもあるのかなぁ、と勝手に思っています。個人的には我が子のようにかわいらしい作品ですし、「もっとうちの子を見てください!」という気持ちなんです。うちの子、かわいいでしょ!と周りにも営業しています。たくさんの人に見てもらいたいですし、ストーリーやキャラクターを推してくださる方の熱量を強く感じているので、「皆さんをがっかりさせないようにアニメをしっかり届けないとな」と緊張し始めています。

音楽が中心にあるアニメで大切なのは、物語と楽曲の“繋がり”

――音楽が中心にある作品としては、これまでにも『アイカツ!』にも関わられていますが、そういったコンテンツの制作で特筆すべき表現手法はありますか?

イム やはりシナリオとリンクさせることは意識しています。こういう状況でこういう感情のラインがあるから、それらを繋ぐとこのシーンにはこういう音楽が在る、というようなところですね。例えば音楽を作り始めた人の作る楽曲と、それに慣れてきたときの曲の難易度の違いなどを作曲家さんにはお願いする、というような、ストーリーと楽曲がリンクしていくように発注をしていますし、本作についても、ストーリーの流れを大事にしながら音楽を担当してくださっているElements Gardenの菊田大介さんに無理なお願いもしてしまっていると思います。「このキャラはこういう気持ちなので、セリフにもあるこのワードのイメージを入れてほしいです」とか、話数ごとにそのための曲を贅沢に制作してもらっています。せっかくアニメで使う曲を新たに作ってもらうからには、そういったリンクがあって物語にシンクロする楽曲を使いたいな、と。

――楽曲の制作にあたって菊田さんとはお話を密にされているのでしょうか。

イム 打ち合わせをたくさんしていますし、菊田さんとRUCCAさんとは時々仕事帰りにご飯にも行っています。そういうときもだいたい仕事の話をしてしまうんですよね(笑)。「この前お願いしたあの曲なんですけど」って。仕事の話ではありますが、楽しく話しているのでこのチームは本当に良いチームだなと思っています。

――先ほど監督が「うちの子を見て」とお話をされていましたが、その言葉はRUCCAさんもよくおっしゃいますよね。

イム あははは(笑)。みんな、『テクノロイド』がかわいくて仕方がないんですよ。RUCCAさんはTwitterでも『テクノロイド』が大好きなことが伝わってきますし、みんな同じ気持ちでいられることが嬉しいです。

――ただ、ゲームが原作のアニメにおいては、ゲームをやっていない視聴者も少なくはないですよね。そういった視聴者へ向けて意識されることはありますか?

イム 最初から「ゲームをやっていないと理解することが難しいアニメ」とは思っていなくて。アニメからでもゲームからでも入れると思うんです。今回、アニメの物語とゲームの物語とでは10年という時間の差があるので、どちらも楽しんでもらえると思っています。原作がある場合、原作を知らないとわからない作品も時折あるかとは思うのですが、今回は良い感じで分離されていて。アニメを観てからゲームをやりたいと思っていただけるだろうし、ゲームをやってからアニメを観ると「これってあのときのこと!?」といった回収や伏線の起点を見られるような、そんな作りにしています。色々な目線でそれぞれの楽しみ方ができる作品になっています。

――そんな『テクノロイド』はテクノミュージックが根本にありますが、テクノミュージックに対してはどんな印象がありますか?

イム テクノミュージックはクラブで夜遊んでいる人たちが楽しむ音楽、という印象が強かったのですが、今回の企画段階でラフ曲をいただいて聴いたときに、すごくかっこいいなと思いました。Elements Gardenのテクノミュージックはお洒落だな、と感じていますし、昔聴いていた曲のような時代感ではなく、今まで聴いたことのない味のある新しいテクノサウンドだなという感覚があって。これは人気が出るんじゃないか、と最初のラフを聴いた時点から思っていました。ただ、ゲームとはまた違ったサウンド感をアニメでは出したいと思っています。ゲームの世界の10年前の話ですし、彼らを取り巻く環境も10年前のものですから。そこは調整をしています。

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