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INTERVIEW

2022.11.23

Suara、『うたわれ』楽曲を多数収録したアルバムをリリース。私たちに遺してくれた大切な“欠片”を胸に完成させた今作に込めた想いを語る

Suara、『うたわれ』楽曲を多数収録したアルバムをリリース。私たちに遺してくれた大切な“欠片”を胸に完成させた今作に込めた想いを語る

シンガー・Suaraが、4年ぶりとなるオリジナルアルバム『Infinity 希望の扉』をリリースした。本作には、スマートフォン用ゲームアプリ「うたわれるもの ロストフラグ」や、TVアニメ『うたわれるもの 二人の白皇』、『モノクロームメビウス 刻ノ代贖』など『うたわれ』シリーズなどのタイアップ曲に、新曲を加えた16曲をパッケージ。さらに、初回限定盤に付属する「B-Side Collection」には全14曲を収録と、Suaraの軌跡とこれからが詰まった充実作となっている。しかし本作に至るまでには、様々な葛藤があったようだ。

Suaraという名前に閉じ込められた「たくさんの人に歌を聞いてほしい」という希望が、再び光を取り戻すまで。その足跡が新曲「希望の扉」に込められていた。

INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ

永遠に歌い続けたい


――前作『星灯』から4年ぶりのアルバムとなります。Suaraさんにとってこの4年はどんな期間でしたか?

Suara コロナ禍になって活動は少なかったのですが、その反面、気持ちはずっと動いていました。コロナ禍になって歌う機会が減ってしまったときに、気持ちが沈んでしまって……「転職したほうがいいかな」と思っていたときもありました。

――Suaraさんほどの人でもそういうことを考えていたとは……。

Suara 私自身、エンターテインメントは大事だなと思いつつも、衣食住といったライフラインが整ったなかで成立するものだとも考えていて。だから歌うことに引け目を感じてしまっていたんです。今となっては「エンタメが必要」という声をいただいていますが、「明日生きていくのにどうしよう」というときに「歌は必要とされているんだろうか」と結構落ち込んでしまって。それで直接的に人の役に立つ仕事をしたほうがいいのかな、と思っていた時期がありましたね。

――Suaraさんから「人のために」という言葉がありました。Suaraさんが歌を届けるうえで、大切にされてることだと思います。

Suara そもそも歌手を目指した理由の1つに「人の役に立てるお仕事がしたい」というものがありました。自分の歌を聴いて1人でも癒やされたり、明日頑張ろうって思ってもらえたらいいなって。だから色々と考え込んでしまって……。実際、(事務所にも)話していたんですよ、転職したほうがいいのかなって(苦笑)。今はエンタメの最前線の方たちが引っ張っていってくれて、コロナ禍は明けていませんが、少しずつ良い状態になって。私も去年までは配信番組で歌ったのみでしたが、今年からは皆さんの前で歌う機会が少しずつ増えてきました。アルバムを制作するなかでワンマンライブのツアーも見据えていたので、具体的な予定が決まってからは「私も希望を捨ててはいけないな」と。

――では、徐々に前向きな気持ちに?

Suara そうですね。アルバムを作ることが決まったときに、ネガティブな気持ちではいけないな、と思って。ただ、タイトルにも言葉が入っている新曲「希望の扉」は私が作詞作曲しているんですけど、作ろうとしているときはそういった浮き沈みがあり、あまり元気がない時期だったんです。でも、そのままの気持ちの状態を歌詞にしています。Suaraのオリジナルアルバムとして皆さんに届けていくなかで、そのときに自分が考えていたことや、自分の想いをアルバムに込めたいな、と。

――あえて、そのときの気持ちを残されたんですね。そもそもアルバム全体のテーマはあったのでしょうか?

Suara アルバム全体の16曲中、12曲が『うたわれ』関連の楽曲なんです。改めて、すごい曲数を歌わせていただいたんだなと思いました。2016年に『うたわれ』の曲を集めた歌集(『うたわれるもの 偽りの仮面 & 二人の白皇 歌集』)を出したんですけど、それの第2弾のような感覚もあったんです。タイトルを『うたわれ』にちなんだ言葉にするかは悩んだのですが、Suaraの8枚目のアルバムとして届けることが大事だと思っていました。タイアップ曲も含めて私の歴史でもあり、そして私自身が未来に希望を持って、これからを進んでいきたいと思っていることが伝わるようなアルバムにしたいなと考えていました。メッセージという大それたものではないんですけど「しんどいなあ、つらいなあ」と思っている方がもしいるならば「一緒に頑張りましょう」と伝えられたらな、と。また、今回はタイアップ曲が多かったので、アルバム曲はどれだけ入れられるかなと少し案じていたのですが、限られたなかでも新曲を3曲入れられることができて良かったです。

――そして、タイトル『Infinity 希望の扉』のジャケット写真のロゴの“f”は、輪廻や無限を表したデザインなのかなと……。それもテーマの1つになったのかなと、思っていました。

Suara 気づいていただけて嬉しいです!『うたわれ』の世界観の中に「輪廻」があるので。それと「∞」ロゴをよく見てもらえると気付くかもしれませんが、「∞」がメビウスの輪になっていて……、『モノクロームメビウス』のメビウスにもかけています(笑)。メビウスの輪には“永遠に続く”という意味もあるので、「永遠に歌い続けていきたい」という私自身の願いを込めました。

初回限定盤ジャケット

初回限定盤ジャケット

――そこには、2020年にご逝去された衣笠道雄さんに捧げるアルバムという想いもあるのかなと思いましたが、どうでしょうか。

Suara 衣笠さんへの想いはすごく強くて……これからも衣笠さんが作った曲をずっと歌っていけるんだろうなと漠然と思っていたんです。実際、初回限定盤につく「B-Side Collection」を見ても衣笠さんのお名前ばかりで、本当にたくさんの素晴らしい曲を書いていただいていました。正直、衣笠さんがいなくなってしまったということは未だに信じられなくて。永遠と思っていたものが途切れてしまい……悲しみはありますが、遺してくださった曲をこれからもずっと、それこそ永遠に歌い続けていきたいなと思っています。

――「B-Side Collection」だけでなく、アルバムにも衣笠さんの作られた曲がありますね。

Suara アルバムのリード曲「トキノタイカ」(ゲーム「モノクロームメビウス 刻ノ代贖」OPテーマ)も松岡純也さんと一緒に衣笠さんが作ってくださった曲ですし、アルバムで初めて発表になる「愛おしき欠片」もそうです。実は(インタビュー時点では)発表になっていないのですが「愛おしき欠片」は、『モノクロームメビウス 刻ノ代贖』のEDテーマで、ゲームのリリース後に解禁される予定です。この楽曲は衣笠さんが最後の最後に書き残してくださった曲で、ぜひ皆さんに聴いてもらいたい。『うたわれ』のために書かれた歌詞ではありますが、私たちに遺してくれた大切な欠片だなと。「愛おしき欠片」という言葉にもグッとくるものがあります。1人1人が大事な存在なんだよ、と背中を押してくれるような曲になりました。

――今作はブロックごとにそれぞれカラーが違う印象がありました。春夏秋冬的なイメージなのかなとも思ったのですが。

Suara 季節に例えていただけるのは嬉しいです!季節の場合は巡ってくるから……そう考えていただけるのもすごく嬉しいのですが(笑)、実は今回のアルバムはレコードも来年のライブの開催のときに発売する予定なんです。片面に4曲ずつ入った、2枚組で。だから4曲ごとに世界観をまとめました。リード曲から始まり、アップテンポな曲になって。5曲目「望郷」(『うたわれるもの ロストフラグ』2.5周年記念楽曲)からしっとりしたブロックに変わって……という感じですね。

須谷尚子さんの歌詞は刺さるものがある

――リード曲の「トキノタイカ」について改めてお聞かせください。「トキノタイカ」は“闇の静寂に 蠢くモノ”という、『うたわれ』ならではの言葉から始まりますね。

Suara 曲全体は壮大な感じなんですけど、イントロの部分はおどろおどろしいというか。『うたわれ』のゲームをプレイされていたり、見ている方は、あの生物のことかなと思い浮かべるんじゃないかなと思います。背筋がゾゾッとするようなイメージがあったので、歌でも「何が始まるんだろう」という雰囲気を出せたらいいなと思っていました。でも、歌をどう仕上げていくかは悩んだところで、冒頭はあまり動きがないんですよね。そのまま歌詞を乗せていくだけだとお経のようになってしまうんじゃないかなと(笑)。なので、ニュアンスのつけ方はプロデューサーと決めていきました。タイアップものの場合はプロデューサーが必ずレコーディングに立ち会ってくださるんです。そこで細かい部分をやり取りして。例えば冒頭は“闇のし、じ、ま”と、あえて切って歌ってほしい、というようなアドバイスをもらいながらレコーディングしました。

――『うたわれ』の楽曲は本当にバラエティ豊かですよね。それだけに歌い方もきっと悩まれるんだろうなと思います。

Suara そうなんです。10曲目の「理燃-コトワリ-」にはユーロビートが入っていたりと、本当に色々な曲調があって。ただ、曲調はバラエティ豊かなのですが、「トキノタイカ」や2曲目の「戦刃幻夢」など、『うたわれ』の曲はほとんど須谷尚子さんが作詞をしてくださっているので、世界観に沿った歌詞になっています。『うたわれ』を知っている方はもちろん、知らない方も、1つ1つのフレーズが刺さるといいますか……実生活にも刺さるんですよね。普遍的に「なるほどな」と思える歌詞って素晴らしいなと思います。私も歌詞をいただいたときに「尚子さん、これはもしかして私のことを言っているのかな?」と思うことがあって(笑)。それくらいハッとさせられますね。それと、『うたわれ』のファンの方は歌詞を見て考察してくれると思うのですが、皆さんの考察を見て「そういう捉え方もあるのか!」と気づかされることがあります(笑)。今回も色々な考察が繰り広げられるのではないかなと思っています。

――そうですよね。特に「人なんだ」(『うたわれるもの 二人の白皇』OPテーマ)はハクの想いがそのまま閉じ込められていますし……。

Suara 本当に。「人なんだ」のレコーディングが終わったあと、その前に再放送された『うたわれるもの 偽りの仮面』を改めて見ていたんです。「人なんだ」を歌う際に「飄々としたハクの声が聞こえてくるな」と思いながら歌っていたんですけど、『偽りの仮面』を見返して「ハクの人となりが表れた曲だな」と感じました。みんなにハクのことを感じてもらえる曲になったなと。

――13曲目に収録された新曲「哀哀」についてもお伺いしたいです。この辺りからアルバムのカラーが変わっていきますね。

Suara この辺りから、どちらかと言うと日常に沿った世界観になっていきます。「哀哀」は恋愛の曲なのですが、切ない曲も入れたいなと思い、ここ数年楽曲を提供していただいている半田麻里子さんに作詞をお願いしました。

――半田さんは次の「Find me」の作詞・作曲・編曲も手がけられています。さらにその次の「Pure Contrast」(『片恋いコントラスト ―way of parting―』OPテーマ)の作曲、「希望の扉」の編曲も担当されていて。

Suara 半田さん関連の曲が4曲続きます。“半田ブロック”とも言えるかもしれません(笑)。「Find me」は暗い部分もあったり、希望を感じるような言葉もあったりと、色々な表情が読み取ってもらえるような曲になっています。「もしかしてこういうことなのか!」とハッとした瞬間がイメージできるような曲調・歌詞が面白いなって。アルバムならではの面白いアレンジにしていただきました。想像しながら楽しんでもらえたらと思い、あまり歌自身に色をつけないように意識しています。

――次の「Pure Contrast」は、逆に声に色味がついているというか。すごくかわいらしい歌声です。

Suara ある意味貴重といいますか(笑)。青春時代の甘酸っぱい雰囲気を感じてもらえるんじゃないかなと。ストリングスがすごく爽やかなんですよね。ここから最後の曲に繋がっていく流れが良いなと。

次ページ:「トモシビ」を思い出したという「希望の扉」

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