リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2022.11.16

3年かけて尖ったからこそ、交われた“水と油”。 Merm4id×燐舞曲コラボCDリリース記念 都田和志×中山雅弘対談インタビュー

3年かけて尖ったからこそ、交われた“水と油”。 Merm4id×燐舞曲コラボCDリリース記念 都田和志×中山雅弘対談インタビュー

DJをテーマにしたメディアミックスプロジェクト「D4DJ」。この夏には、同作からMerm4id燐舞曲の2ユニットがフィーチャーされたアニメ『D4DJ Double Mix』が放送され、この2組によるコラボ曲「FAKE OFF」も劇中歌としてオンエア。たちまち話題を呼んだ。そんな2組によるCollaboration CD「FAKE OFF / 天使と悪魔」が、11月16日(水)にリリース。そこで今回は、Merm4idのプロデュースを担当する都田和志と、燐舞曲のプロデュースと作品自体の統括プロデューサーを務める中山雅弘による対談を敢行。本作のこれまでを振り返りつつ、2つのコラボ曲制作のプロセスについて語ってもらった。

INERVIEW & TEXT BY 須永兼次

衝撃の初コラボ曲「FAKE OFF」に込められた“2つの意味”


――「D4DJ」は、1st LIVEが開催されてから3年以上が経ちました。お二人が携わっていくなかで、このプロジェクトだからこそ得られたものや経験できたものは、どんなものでしたか?

中山雅弘 「D4DJ」には、弊社の木谷(高明社長)の「各ユニットの音楽プロデューサーを分ける」というアイデアが入っているので、この3年間は各所皆様の御協力をいただきながら、ユニットごとの色を出すための音楽を出し続けてきました。そのなかで、音楽的なジャンルは縛らずにカバー曲も含めて楽曲の幅を広げていったことでライブの構成も肉厚になりましたし、ゲームアプリ(「D4DJ Groovy Mix」)でもセレクトできる曲がかなり幅広くなりまして。おかげで最近では、ときには「このユニットが、こういう方向でいくんだ!」とディグラー(=「D4DJ」ファンの総称)の皆様から驚いていただけるほど、広がりのあるコンテンツにできたような感覚があります。

都田和志 そもそも「D4DJ」の出発点が、木谷さんがF1のシンガポールGPでたまたま見たフェス形式の催し物だったということが、そのアイデアの源だったと思うんですよ。

都田和志

都田和志

中山 そうですね。やはりDJというのは「選曲する人である」というのもあるので、音楽ジャンルとしてはできるだけ縛りのない状態でできるようにと思っていました。実際木谷が最初に持っていたイメージにも、本当に強いフェス感がありましたから。

都田 ただ、なかまさ(=中山)がどう感じているのかはわからないですけど……なにせ最初はハモらなくて(笑)。それは、僕らはライブを見せる現場主体なのに対して、なかまさたちは元々仕掛けを作る人たち、という微妙なズレがあったから。なかまさもその頃ブシロードに来たばかりというのもあって、最初は相当苦労したし、揉めたよね?

中山 揉めたといいますか……「D4DJ」は「今までとは違うことをやろう」という命題があるコンテンツなので、非常にご指導ご鞭撻をいただいた時期はありました(笑)。

都田 なかまさは大きな会社で大きなコンテンツをやっていたというのもあって、そういう面で最初から信頼もしていたし、IPの面ではすごく色んなことを考えてくれていたことももちろんわかっていたんですけどね。

中山 ブシロード全体を見られている都田さんには「ライブはこう見せていくべき」という考えも当然ありますし、そことコンテンツ側の文脈が歩み寄ったからこそ今があると思っています。それに、この3年間で出た広がりの中には「DJならではのライブの楽しみ方」というものも含まれていまして。“D4 FES.”というフェスもありますし、ライブのなかでのユニットごとの色の違いの楽しみ方が伝えられてたんじゃないかな……というところでも、すごく感謝しています。僕が全然知らない分野のことを、イチから教えていただけたので。

中山雅弘

中山雅弘

――ちなみに、今回のコラボCD以前には、お互いが担当されているユニットに対してどのような印象をお持ちでしたか?

都田 最初は羨ましいところはありました。それは、すごくコンセプチュアルにまとまっているから。燐舞曲って、パッと見た瞬間に1人ずつ役割がはっきりしているので、アイコンになりやすいと思うんです。しかも、フロントにいる2人はもちろん、DJ卓の2人もパフォーマンス的にはっきり分かれている。「東西南北揃った4人組」という感じに見えるところが、非常に羨ましいですね。

中山 ありがとうございます。そのうえでキャラクターを背負った場合に、例えば「じゃあ、(三宅)葵依(CV:つんこ)ならどう動くのか?」というところをエチュードとして本人たちに入れ込むというのは、3年間特に力を入れてきたところです。僕はMerm4idに対しては、キャラクターのパッと見のイメージから細部を表現できる人たちが集まって、都田さんのディレクションによって非常に高い熱量のあるライブが作られているところが羨ましいです。それを拝見して、曲のイメージやビジュアル表現も「ここまでやっていいんだ」というところは参考にさせていただいているんですよ。

都田 僕も、燐舞曲を見て参考にさせてもらっているところは結構あって。それは特に色気であったり、女性らしさという部分ですね。Merm4idのセクシーさって元気さの中のものなので、滲み出る心情を描きながら表現している燐舞曲のほうが、実は色気という面ではあったりするんですよ。そういうふうに意識をしていたからこそ、「FAKE OFF」をスムーズに書くことができたと思っています。

――その「FAKE OFF」は、今年8月に放送されたアニメ『D4DJ Double Mix』の劇中歌として用いられました。

中山 「FAKE OFF」は、『Double Mix』の歌作りのなかで水島(精二)総監督から「こういうイメージのコラボ曲を作れたら」というお話があったのがスタートでした。そこで都田さんに、今おっしゃったような「水と油なようで、通ずるものがある」といったイメージがバチッとできつつあったので、都田さんにお任せしよう……となったんです。

――そのなかで意図された楽曲のイメージというのは、どういったものだったんでしょうか?

中山 『Double Mix』を観ていただければわかるんですけど、燐舞曲とMerm4idのメンバーって、クラスの中で普段一緒に遊んでいる同士ではないと思うんですね。でも奥底にある日々感じていることであるとか、シーンは違うけれども近しい寂しさや辛さなど、見た目と違うところに重なっている部分があって。それを上手くミックスした曲に仕上げていただきました。

――「FAKE OFF」というタイトルには、どういうイメージを込められたんでしょうか。

都田 まず1つは、楽曲全体に込めたかった「口で言うだけじゃなくて、動いていかなきゃ何も始まんないじゃん!」という想いですね。それは、ライブとかも含めてなんですけど。あともう1つ、「燐舞曲の曲がめっちゃEDMでフェス対応だったら、こうだよね!」という“偽燐舞曲”な曲を作ろう……みたいな裏テーマもあって。実は、その「FAKE」も兼ねたタイトルになっています(笑)。

――最初に挙げられたような想いを込められたのは、なぜですか?

都田 燐舞曲の楽曲ってすごくメロディアスだし、トラックも今っぽいロックのテイストで作られているので、その鮮度を保つためには歌詞でも“今”を描いていかないといけない。だから、世の中的にもコロナ禍をはじめ色んなフラストレーションが溜まっていると思ったので、みんなでそのストレスをぶつけ合うような曲にしたかったんです。あと燐舞曲もMerm4idと同じく、演者とキャラクターが細部までバッチリハマっている印象があるので、そのイメージのなかで「このキャラならこういうことを言いそうだなぁ」と考えながら書いていきました。

――ということは楽曲制作の時点でパート分けも決まっていた。

都田 そうですね。でも、最初から最後まで1本通しで考えたわけではなくて。キャラごとに合わせてブロックごとに、メロディを作りながら歌詞も考えていって、最後に繋ぎ合わせて完成させました。なかまさに聞きたいんだけど、今回はいつもの燐舞曲のメロディよりもサビのキーが高く感じなかった?

中山 たしかに、言われてみれば。なぜなんですか?

都田 それは2つ理由があって。1つは、せっかくのコラボ曲なのでサビは完全にキャッチーで届くようにしたかったから。もう1つは僕が、りほにゃん(=加藤里保菜/青柳 椿役)の歌声の伸びる音が特にいいなぁと感じていたので、燐舞曲よりも少し高めの音で歌ってもらいたかったからなんです。彼女って、すごく器用なほうだと思うので。

中山 レコーディングはすごくあっという間だったと聞きました。

都田 テイク数はめちゃくちゃ少なかったです。元々僕はレコーディングのときには割り切って録るタイプで、結構計算して作ったというのもあって、歌い始めから30~40分ぐらいで終わっていたと思います。

中山 燐舞曲側としては、コライトではなく都田さんに全部まとめてもらうというのはドキドキではあったんですよ。そうしたら、ライブを観ているなかで生きているキャラクターの要素は残しつつ、高音を裏声ではなく張っていくところなどから、普段とは違う椿の歌が聴こえて。まるでMerm4idの曲の中で葵依と椿が、ジャズセッション的に違う楽器でソロパートをいただいたような感じがしたんです。それくらい良い混ざり合いができて、すごく良かったなと思っています。

次ページ:燐舞曲の芯にも通ずる、“天使と悪魔”というテーマ性

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP