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INTERVIEW

2022.10.26

【インタビュー】『陰の実力者になりたくて!』OP曲が“驚き”満載になった理由。OxT(オーイシマサヨシ×Tom-H@ck)、「HIGHEST」を語る

【インタビュー】『陰の実力者になりたくて!』OP曲が“驚き”満載になった理由。OxT(オーイシマサヨシ×Tom-H@ck)、「HIGHEST」を語る

オーイシマサヨシ×Tom-H@ckによるデジタルロックユニットOxT(オクト)、13枚目のシングル「HIGHEST」がリリースされる。表題曲は、大人気ライトノベルが原作のTVアニメ『陰の実力者になりたくて!』のOPテーマとなった。ここでは、「主人公最強×圧倒的中二病×勘違いシリアスコメディ」という、ひと癖あるアニメの作品性にも溶け合う本作についてOxTの2人にインタビュー。Tom-H@ck 所属の別ユニットMYTH & ROIDの楽曲をカバーしたカップリング楽曲についても制作秘話を聞いた。

作品のOPテーマとしての“面食らう感” を追求して

――今回のシングルの表題曲「HIGHEST」の作曲は、どういった経緯でTom-H@ckさんが担当することに決まったのでしょうか。

Tom-H@ck 初めはKADOKAWAの音楽プロデューサーの若林 豪さんから、「今後OxTとして活動していくなかで、“OxTとしての見せ方“をきちんと決めなくちゃいけない」というテーマを出していただいたんです。そこで、過去に僕たちが担当したアニメ『ハンドシェイカー』のOPテーマ「One Hand Message」でのギターバトルのような、お互いのスキルを押し出してコラボするからこそできる楽曲を作るのがいいんじゃないかと。お互いに独立して色んな活動をしているからこそ、OxTでやるときの特別感はないといけない。そのうえで今回、『陰の実力者になりたくて!』のOPテーマとして(制作サイドから)”テクニカルな曲”というオファーをいただきました。

オーイシマサヨシ テクニカルでトリッキーな曲は、僕よりもTomくんの方が得意かなと思ったので、全幅の信頼を置いてお任せしました。

©逢沢大介・KADOKAWA刊/シャドウガーデン

――お話に出た”OxTとしての見せ方“、そして『陰の実力者になりたくて!』のOPテーマという点も含めて、Tomさんはどういう風に作り始めたんですか?

Tom 今回の楽曲に関してだけは、若林プロデューサーが敷いてくれたレールの上を行かせていただいたという認識があります。もちろん、原作の要素も加味して「ここにこういう言葉を入れよう」といったことを(作詞を担当した)hotaruとも話すのですが、今回は特に、今までにないような曲というのを強く意識しています。

(編曲を担当した)KanadeYUKくんに「テクニカルな感じで仕上げてほしい」と託して出てきたものもかなり変わっていて、例えばサビ前のキメのフレーズの最初には16分休符が入っているんです。僕だとなかなか思いつかない未開拓の価値観でしたし、色んな人とのコラボレーションから作品のOPテーマとしての“面食らう感”が上手くできたかなと思いました。あとは、オーイシさんの裏声を使いたいというのもありましたね。なので、サビで裏声が出るような音域に作った記憶があります。

オーイシ サビ頭はちょっと不思議な音像になっていて、裏声とそのオクターブ下の声が同じくらいの音量で聴こえているのが、今までのOxTにない感じが出ているなと思います。

――このほか、曲作りにあたって特に意識した点はありましたか?

Tom 「一度聴いたら忘れないようなメロディーをサビの頭に入れてほしい」という指示もあったんです。なので、口ずさみやすく、でも少しJ-POPとは違う、そういう感じをこだわって作りました。あと、(若林プロデューサーに)「Bメロをおかしなものにしてほしい」とも言われたんですよ。Bメロが2つあって後半はラップみたいになるんですけど、オーイシさんから色んなボーカルテイクをいただきましたね。

オーイシ 確かに、2つに分かれている感じがあるよね。Bメロは音符じゃない感じを求めている気がしたので、メロディーを入れたものと、本当にメロディーのないラップっぽいトラックを両方渡して、どっちを選んでもいいようにしたら、結果、全部出すことになりました。

Tom 今聴くとラップ感は強いですね。

オーイシ 確かに。でも今までにない工夫というと、セクションの多い構成、TVサイズの中にAパートからEパートまで含まれた楽曲は、OxTの曲だけじゃなく、アニソンのなかでも非常に珍しい部類かなと思っています。その辺りがテクニカルで奇をてらった感じなのかなと。とっ散らかっている感じもしないし、よく出来ているなと思いますね。あとは、「覚える音符多いな」と思いながら(笑)、ボーカルを録っていました。

――hotaruさんの詞に関してはいかがですか?

Tom 彼はロジカルに歌詞を組み上げていくのが一番得意だなと思っていて。企画がかっちりしている今回のような楽曲はまさに得意分野ですよね。それから、彼は原作をきちんと深く理解して(詞を)書く人間なので、今回僕からは何も言っていないです。

テクニカルな歌唱も「リテイクなし」だったレコーディング

――オーイシさんはどういうアプローチで歌いましたか?

オーイシ まず一番難しかったのはキー決めで。どういうキーにするのかが、最初にぶつかった壁でしたね。

Tom 僕が曲を作った当初は、現状のものより6音くらい上だったんですよ。それをアレンジャーにちゃんと男性の歌えるキーにしてもらって。

――最終的に、普段オーイシさんが歌う曲と比べても高いんでしょうか。

オーイシ いや、そんなことはないですね。ライブの再現度も考慮したうえでのキー決めだったので全然大丈夫でした。ファルセットに合わせて他のボーカルも作っていくんですけど、すごくセクションが多い楽曲なので、歌うのは難しそうだなという印象でしたね。

――ちなみにレコーディングはどういう感じでしたか?

オーイシ 僕の全ての作品においてそうなんですけど、この6~7年くらいボーカルは家で自分1人で録っていて。

――そうなんですね。ちなみにその利点というと……?

オーイシ 一度作った(機材の)セッティングをそのままで録音できる。あと、何度もリテイクできるところですね。スタジオを借りて録ると、どうしてもセッティングをそのままで何度も録り直すということができない。後日リテイクするという、ある意味タブーなことができてしまうのが自宅スタジオで録る利点です。

でも1つデメリットがあって、それはゴールが見えないこと。「もっといいボーカルが録れるんじゃないか」という、ぼんやりとした期待感のなかでレコーディングに臨んでしまうので、何回もリテイクをしてしまうのはデメリットかな。ただ、それをディレクションしてくれるのがTomくんだったりするので、そこはもう頼りにしてます。「HIGHEST」のボーカルに関しては、リテイクはなかったですよね?

Tom そうですね。

――Tomさんのギターレコーディングはいかがでしたか。

Tom オーイシさんがこう来たからギターはこういう風にしようというのは、毎回自然となっています。今回も最初は鋭い感じのギターのイメージでしたけど、オーイシさんの歌を聴いて、もっと支えるようなギターの方がいいと思ってレコーディングしました。

――楽曲として完成したものを聴いての感想はいかがでしたか?

オーイシ OxTは2人とも楽曲が作れるから、視点が2つ用意されているような感じなんですよ。Tomくんの視点と僕の視点ではまったく違うと思っていて、今回はTomくんベースでクリエイトが進んでいったので、僕はボーカリストとして呼ばれた感覚がすごく強いんです。今回の「HIGHEST」のトラックダウンのときは、自分たちのスタジオなのに、僕は「お邪魔します」と言って入っていったから。

一同 (笑)

オーイシ 「あんたボーカリストでしょ」という感じなんですけど(笑)、でもそれがまたOxTっぽいんですよね。

次ページ:ボーカリストの力量が問われる、MYTH & ROID楽曲のカバー

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