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2022.10.20

【ライブレポート】自身のこれまでと現在、そしてこれからを歌に込めて――。新世代シンガー・SennaRin、記念すべき1stワンマン<SennaRin 1st LIVE “Dignified~最果て”>レポート!

【ライブレポート】自身のこれまでと現在、そしてこれからを歌に込めて――。新世代シンガー・SennaRin、記念すべき1stワンマン<SennaRin 1st LIVE “Dignified~最果て”>レポート!

今年4月に作曲家・澤野弘之のプロデュースによってデビューを果たした新世代シンガー・SennaRin。4月にリリースしたデビューEP『Dignified』以降、海外を含むイベント出演などで腕を上げてきた彼女が、満を持して10月7日(センナの日)に1stワンマン<SennaRin 1st LIVE “Dignified~最果て”>を開催した。その豊かな歌唱力はもちろん、作詞からアートワークまでとデビュー当時からその才能を発信してきた21歳の新星が、初のワンマンという場で見せたものとはなんだったのか。

初のワンマン、その幕開けはパワフルに

SennaRinの歌声を初めて耳にしたのは、2021年の年末のこと。澤野弘之のピアノソロアルバム『scene』リリース記念配信番組にてゲストとして登場したのが、まだデビュー前のSennaRinだった。ここでは澤野のピアノをバックに「Till I」と「Missing Piece」のカバーを披露したのだが、この時点ですでにレンジの広い、少しハスキーがかった歌唱に、「Missing Piece」を日本語で新たに作詞するというソングライティングを見せるなど、すごい才能が出てきたと感じさせるものがあった。自分はそのとき番組MCを担当していたのだが、圧倒的な歌唱を聴かせたあとのトークパートで見せるチャーミングな一面というギャップもまた、強烈な印象として残っていた。

そんな彼女がデビューを果たしたのが2022年4月。澤野のプロデュースのもと、自身のソングライティング、そしてアートワークまでを手がけた1st EP「Dignified」は、すでに公開されていた映画『銀河英雄伝説 Die Neue These 激突』主題歌「dust」と同テーマソング「melt」のほかにも、彼女の才能が様々なジャンルに放出されるような、新たな才能の出現を強く感じさせる1枚となった。その前後には数々のイベント出演――なかにはサウジアラビアやカナダといった海外ライブ、新国立競技場での東京2020大会1周年記念イベントも――を経て、10月7日、自身1stワンマンを迎えることに。

会場となった渋谷WWW Xは比較的小規模のライブハウスで、ステージ上も装飾の少ない実にシンプルなもの。そこに開演前から彼女をイメージしたブルーの照明が当たっていた。SennaRinの始まりを告げる場所として、彼女の色に染め上げていこうという意志が感じられる光景だ。そこから開演時間を迎えた瞬間、場内には「Dignified-IN」が流れる。彼女の発声練習やスキャットなどに澤野印のビートが乗り、観客もそれに手拍子で応えるなか、ステージ上にはこの日演奏で彼女を支える田辺トシノ(ベース/ピアノ)、伊藤ハルトシ(ギター/チェロ)が、そして最後に青い衣装を身にまとったSennaRinが入場した。そして「Dignified-IN」のエンディング、ウィスパーボイスで“SennaRin”と呟かれた瞬間、記念すべき1stワンマンの幕が開く。

オープニングに鳴らされたのは、EPと同じ曲順の「BEEP」だ。冒頭から張りのあるビート同様に軽やかで、しかし芯の強い歌唱が響き渡る。すでにその実力は広く知られているが、改めてその声の説得力は第一声として堂々たるものだ。底を支える田辺のベースと伊藤の小気味良いギターも加わってダンサブルなサウンドが展開されるなか、彼女のボーカルも徐々に熱を帯びていくようで、それがぐっと高まるサビでのハスキーがかった歌唱は絶品だ。途中観客にクラップを煽りながら、初めてのワンマンというステージを楽しんでいる様子が早くも伺えた。

そうした冒頭を経て、続いての楽曲は彼女をプロデュースする澤野の楽曲「Barricades」のカバー。この日のセットは自身のEPからの楽曲のほかにも彼女がかねてから歌ってきたものも含めて澤野の楽曲のカバーが多く披露されたのだが、これが1stワンマンという場では彼女の豊かな表現力を知るにはうってつけのものとなっていた。ヘビーな「Barricades」でパワフルな歌唱を聴かせたあとは、こちらも澤野による名曲「βios」のカバーへ。特にサビでの鬼気迫る歌唱は素晴らしく、サウンドに応じた彼女の表現の幅というものを改めて実感することのできる瞬間でもあった。

自身のルーツを聴かせるカバーメドレー

壮絶とも言えるパフォーマンスを冒頭から見せておきながら、最初のMCでは観客を前に「MC緊張する……」と新人アーティストらしい一面を見せるというギャップもまた彼女らしい。「皆さんが会場を出る瞬間まで楽しんでいただけたら」とこの日の抱負を語ったあとは、続いての楽曲「dust」へ。空間的なトラックに乗せられた静かな歌い出しのあと、サビで振り絞るような歌唱を聴かせる。ライブハウスという至近距離での歌唱に観客もそれを浴びるように、心からSennaRinの声というものを堪能しているようだった。そこから田辺がピアノに、伊藤がチェロに楽器を変えて、SawanoHiroyuki[nZk]の「Till I」を披露。田辺と伊藤、そしてマニュピレーションというこの日の編成だったのだが、田辺がベースとピアノ、伊藤がギターとチェロと楽曲に応じて楽器を変えながらプレイしていたのがまた素晴らしかったことをここで記しておきたい。最小限の編成ながら、楽曲の表現というものがこの2人を中心に鮮やかな変化を見せ、またそのなかでSennaRinの歌唱というものも表情を変えていく。彼女の歌唱を前面に聴かせるという1stライブではあるが、田辺と伊藤のプレイによってそれがもたらされていたことは、この日の特筆すべきポイントだったといえるだろう。そうした穏やかなプレイを聴かせる「Till I」のあとは再びビートを取り戻してのSawanoHiroyuki[nZk]「aLIEz」のカバー、そして続く「Limit-tension」では躍動感溢れるトラックに乗せて、彼女もステージを動きながらテンションを上昇させていく。

MCでバンドメンバーを紹介したあとは、「私のことをもっと知ってもらって、もっと好きになってもらいたい」と話し、自身のルーツに触れる。ここからデビュー以前にアップしていたカバー動画からJ-POPのカバーをメドレーで披露。アコギとエレピに乗せて低域の魅力を感じさせるMr.Children「himawari」に始まり、ハスキーな魅力がたっぷり堪能できるback number「瞬き」、ピアノとチェロも美しいRADWIMPS「me me she」、ファルセットが魅力的なKing Gnu「Prayer X」、そして最後にMy Hair is Bad「真赤」とメドレー形式ながらそれぞれサウンドと歌唱のアプローチを変えながら聴かせていく。彼女のルーツに触れる一方で、その当時からあった原曲の解釈の奥深さというものを改めて体感できるパートとなった。

次ページ:未来に向けて希望ある“証”を――

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