INTERVIEW
2022.09.28
歌手活動5周年5大企画の第4弾として、3年半ぶりの3rdフルアルバム『Welcome to MY WONDERLAND』を9月28日にリリースした東山奈央。特別な招待状が届いた人にだけ見える魔法の虹。その虹のふもとにオープンする幻のテーマパーク『レインボーワンダーランド』を舞台に、7曲の新曲は、アトラクションやパレードなどパークにまつわるテーマで制作されている。今回はその新曲を中心に話を聞いた。
――“Animelo Summer Live 2022 -Sparkle-”での東山奈央さんのパフォーマンスは素晴らしかったです!今回のアニサマはいかがでしたか?
東山奈央 今までのアニサマの中で、一番自我を保ってパフォーマンスができていた気がします(笑)。これまではいつも真っ白になっていたんですけど、今回は噛み締めながらできたので、少しずつ成長できているんだなと思いました。1年に1度のお祭りだからこそ、その1年間で自分が何をやってきて、どう成長できたのかというのを確かめられるステージのような気もしていて。もちろん、毎年立つことのできるステージではありませんが、ここ何年かはアニメ作品やソロの歌手活動で出演させていただけているので、自分の歩みを感じることができました。
――前半で東山さんのステージが終わったかと思いきや、後半のステージでも突如登場し「de messiah」を歌うという驚きを与える特殊な構成でした。
東山 「de messiah」のようなかっこいい曲を歌いながらダンスする感じも、アニサマではあまりやってこなかったですし、声優歌手の東山奈央は、こういう幅広い感じでやっているんだというのを知ってもらえる機会になったのかなと思います。
――知らない人が見たら、誰だろう?と思ったかもしれないですよね(笑)。
東山 アニサマの齋藤プロデューサーが「名乗らずにMCもせずに歌って去るみたいなミステリアスなステージにしたい」とおっしゃっていたんですけど、ライブが終わったあと、あの英語の曲を歌っていたのは誰だろうってコメントもあったりして、本当に誰だかわからなかった!ということもありましたね(笑)。でも、齋藤さんはツイッターでもすごく褒めてくださって。コロナ復帰直後だったんですけど、「今年もやっぱ東山プロって凄いなぁ!というポテンシャル全開のパフォーマンスを披露してくれちゃうので、お楽しみに」と煽ってくださっていたんです。私も当日は思い切りパフォーマンスできて良かったです。
――あれだけ踊って、英語詞の曲を完璧に歌っていたので、なんでこんなことまでできるんだろうって震えました。
東山 ありがとうございます(笑)。ステージを終えて裏に戻ったら内田ディレクターが「120点」って言ってくださったのが嬉しかったです。しかも母からもメールが届いていて、たった一言「東山プロだった」と書いてあって、思わず笑っちゃいました。今回の「de messiah」はRAB(リアルアキバボーイズ)さんによる振り付けをベースにしたものでしたけど、今度のツアーでご披露するときは、ワンマンライブ仕様としてまったく違う振り付けに生まれ変わっていると思います。
――今回のアルバム『Welcome to MY WONDERLAND』とそのあとのツアーは、歌手活動の5周年5大企画の最後の2つになりますが、歌手活動の5年は声優活動とはまた違うものがありましたか?
東山 歌手としての5年は、これまで声優・東山奈央でお世話になっていた人に、今度は歌手としての自分でお目見えするという感じだったので、第二の人生が始まった感じもありました。ここではアニメ作品ではなく、自分自身のことを話す機会が増えたので、自分のことを話すときに、ちゃんと耳を傾けていただけるような歩みをしていかなければいけないなって、日々を自覚的に生きられるようになった気がします。恐る恐る飛び込んだ世界ではあったけど、すごくいいことがたくさん起きた5年間でした。
――アーティストだと自分自身の表現の場でもありますからね。新しい出会いもたくさんあったと思います。
東山 そうですね! 歌手をしていなかったら出会えなかった人とのご縁、身近なチームスタッフとの縁、それこそRABさんは、ダンスも頑張っていたから出会えた方々でしたし、ファミリーになってくださったバンドメンバーやダンサーの皆さん……。本当に素敵な景色をたくさん共有できるようになって、自分の人生でもこういうことが起きるんだなというくらい、素敵なことの連続です。
――フロントマンとしては、しっかり引っ張っていかなければっていうのもありますしね。
東山 それは本当に思います。関わってくださる皆さんに、私の現場に来るのを楽しみにしてもらえてたらいいなって思います。こういう取材も、ツアーのリハーサルも。私自身は他の現場を見たことがないので、皆さんがどんな雰囲気でやっているのか分からないですけど、私の現場では「おはようございま~す」ってゆるい感じで来て、休憩時間ではきゃっきゃはしゃいで、リハが始まったら集中し、プロの仕事をして楽しく帰る。そんな居心地のいい場所にできたらいいなって。私自身も楽しんで、皆さんといい思い出が作れたらいいなって、いつも思っています。
――今回は楽しそうだったBlu-rayの特典映像「なおぼうGP! ~テーマパーク編~」の話からしたいのですが、声優の日笠陽子さんと富士急ハイランドへ行っていました。
東山 ダイジェスト映像だけでも面白いんですけど、本編はもっと面白いんですよ!
――戦慄迷宮らしきところに入っていましたよね?
東山 それだけは勘弁してくれと言っていたんですけどね(笑)。私、絶叫系は苦手なんですけど、あんな絶叫マシンの宝庫の富士急ハイランドさんで、怖くてスリリングなアトラクションにひとつも触れないのはもったいないと思って、ジェットコースターかお化け屋敷のどちらに行くかの究極の選択をしたんです。耐えられるのは戦慄迷宮かなと思って選んだら、日笠さんもお化け屋敷が苦手な人だったという(笑)。
――相当苦手そうなのは、ダイジェストでも伝わってきました。
東山 これ自分のことだから言っていいかなと思うんですけど、怖がっている人を見るのって面白いですね。映像チェックしながらめちゃめちゃ笑ってしまいました(笑)。でもめちゃめちゃ怖かったですよ!今回、富士急ハイランド全面協力のもとでの撮影だったので、“特別に”お化けを動かさないでもらったんです。でもそれが伝わっていないお化けさんがうっかり脅かしに来ることもあったりして、そこで絶叫みたいな(笑)。耳元で日笠さんの叫び声を聞いていたから、鼓膜がー!ってなっていました。
――すごく見たくなってきました。
東山 ジェットコースター的なアトラクションにも挑戦していて、水も滴るいい女的なことになっているので、お楽しみください。
――本気で映像を作ってくれるのも嬉しいですよね。アルバムというアイテムを手にする喜びにもなるので。
東山 今はサブスクで音楽だけなら聴けますからね。こうやって形に残るパッケージでゲットしてくださる方に、隅から隅まで楽しんでいただけたらいいなって思います。だからブックレットの写真も、初回限定盤と通常盤で変えていますし、映像も特別なものを楽しんでもらいたいんです。今回、日笠さんがゲストであることを伝えたら、皆さん喜んでくれましたし、楽しいが確約されている先輩と遊園地で遊べるだけでも私にとってもご褒美でした。楽しみまくってる私たちを見て、皆さんも笑顔になってくれたら一番嬉しいです。
――で、なぜ遊園地なのかというと、アルバムのコンセプトがテーマパークだからだと思うのですが、このコンセプトはどうやって浮かんだのですか? 衣装も一番カラフルですよね。
東山 そうなんです!30歳でする格好ではないんですよね(笑)。ツアーパンフレットの撮影で、大きな公園にこの衣装で行ったんですけど、TPOを間違えた人みたいな感じでした。散歩中のおじいちゃま、おばあちゃまに「あら、かわいいわね、孫と同じくらいかしら」って言われて。どうやら18歳くらいに見えたらしいんですけど(笑)、そのくらいポップな衣装に挑戦しちゃいました。でも、それもいい意味でこだわりがなくなったというか。テーマパークというコンセプトを表現したいから着ます!みたいな感じだったんです。20代の頃って、こういう格好したら世間の人はどう思うかな?とか、勘違いしてると思われるかな?みたいなことを考えてしまったりして、挑戦するのが怖かったんですけど、30代になったら、やりたいことをそのときやるのがいいんじゃないかと思えるようになったんですよね。もうみんな、私のことを分かってくれているでしょうし。
――マインドが変わったんですね。よく30代は楽しいって言う方がいますけど、早速楽しめてそうですね。
東山 そうなんですよ!あと、皆さんがおっしゃっていた通りに、早くもなってます(笑)。
――テーマパークは最高に楽しいコンセプトだと思うんですけど、それは世の中的に暗いムードだからというのもあったのですか?
東山 う~ん……テーマパークがいいと言い始めたのがいつだか覚えていないんですけど、コロナ前くらいから考えていたと記憶しています。最初はパレードというイメージで、次にもしライブをするならばツアーをやりたい、そのツアーはパレードのイメージでやりたいですということを話していたんです。そこからたぶんコロナ禍になっていったと思うんですよね。でも、楽しいものを作りたいという気持ちは、コロナ禍を経て強くなったと思います。楽しいこととか、遠くに赴いて何かをするワクワクが極端に奪われてしまい、ライブからも皆さんの足が遠のいている印象があるんですよ。
――それはたしかに感じます。
東山 私が関わっているエンタメだけではなく、行楽地や観光地もそうですよね。テーマパークのような、みんなが遊び行く場所から、人の足が遠のいてしまっている。たしかに、エンタメがなくても衣食住はできるけど、人生のハイライトが減ってしまう感じが、私はしているんです。楽しいものにもう一度触れることで、また生活がキラキラしていく。その気持ちを取り戻せたら、もっともっと毎日が楽しくなるんじゃないかと思って、今回、そういうアルバムを作りたいと思いました。
――実際、賑やかで楽しいアルバムになりましたからね。
東山 ここで一番楽しいものを作っちゃったわけだから、この先何をやったらいいんだろうって制作中は思っていたんですけど、実は今またやりたいことが、(スタッフに向かって)浮かんでまーす!(笑)。
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