リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2022.08.06

【インタビュー】『アオアシ』は「人生のバイブル」――第2クールEDテーマを担当した「神はサイコロを振らない」が作品の魅力、そしてアニメソングへのこだわりを語る!

【インタビュー】『アオアシ』は「人生のバイブル」――第2クールEDテーマを担当した「神はサイコロを振らない」が作品の魅力、そしてアニメソングへのこだわりを語る!

TVアニメ『ワールドトリガー』の2ndシーズンのエンディングで玉狛支部のメンバーの何気ない表情を支える力強い歌を響かせ、「『神はサイコロを振らない』ってなに!?」と話題を呼び、さらに次の3rdシーズンではまったく雰囲気の違うシリアスかつアグレッシヴな「タイムファクター」で衝動の幕開けを飾った神はサイコロを振らない(以下、神サイ)が、新たなタッグを組んだのはサッカーアニメ『アオアシ』。そのエンディングで、ノスタルジックかつ柔らかな歌を響かせる、メンバーの柳田周作(vo)、吉田喜一(g)、桐木岳貢(b)、黒川亮介(ds)。繰り出す楽曲が非常に表情豊かなこのバンドを、「カラー・リリィの恋文」を軸に紐解く。

神はサイコロを振らないが思うアニソンの“89秒”。

――『アオアシ』のEDテーマ「カラー・リリィの恋文」を歌っている神サイの皆さんですが、今回リスアニ!WEB初登場なので、それぞれに衝撃を受けた、または印象に残っているアニメソングを教えてください。

柳田周作 川田まみさんの「緋色の空」です。アニメを好きになるきっかけの1曲でもあります。中学生のときに友達に薦められてアニメ『灼眼のシャナ』を観たのですが、そのときまでアニメはほとんど観たことがなかったんです。ものすごくハマった作品だったのですが、そのアニメのOPテーマがこの曲で、それからアニメを観るようになりました。

黒川亮介 僕はロードオブメジャーの「心絵」です。アニメ『メジャー』の第1シリーズのOPテーマだったのですが、僕は野球をやっていたので原作であるマンガも読んでいたんです。今回僕らがEDテーマを担当する『アオアシ』と同じくNHKで放送されていたアニメですし、自分が『メジャー』を観ていたときの気持ちを思い出して……そんなロードオブメジャーの「心絵」は今もすごく心に残っています。

桐木岳貢 『けいおん!』の1期EDテーマだった「Don’t say “lazy”」です。僕ら世代の人で楽器をやっていた人のほとんどが観ていたアニメなんじゃないかというくらい大きな存在感のあるアニメだったと思いますし、「アニソン」と言われればすぐに思い浮かぶ1曲ですね。ただ、好きでしたが(ベーシスト・秋山 澪のように)レフティを使うわけではなかったです(笑)。

吉田喜一 好きなアニソンが多すぎて1曲に絞るのはすごく難しいのですが、アニメ『てーきゅう』の「ファッとして桃源郷」(4期OPテーマ)ですね。めちゃくちゃ好きな1曲ですし、気分が落ちたときにはずっと聴いています。

――そんな皆さんですが、これまでに映画「リトル・サブカル・ウォーズ~ヴィレヴァン!の逆襲~」の主題歌「目蓋」をはじめタイアップの経験もあるなか、アニメファンからの支持が今も高いコラボレーションとしてアニメ『ワールドトリガー』のEDテーマ「未来永劫」、そしてOP『タイムファクター』があります。ここでアニメ尺と言われる“89秒”での表現に挑戦をされたかと思いますが、この短いタイム感での制作はバンドにとってどんな経験になりましたか?

柳田 これが面白くて。時代的にも今はスタジオでセッションしながら作曲をするバンドよりも、DTM(デスクトップミュージック)といって、コンピューター上で音楽を作る人のほうが多いんです。実際に僕らもそうで。パソコン上のデータでやり取りをしながらフレーズを作ったりするんです。DTMの画面って小節数も明確になっているし、きっちりしたタイム表記が出るので、89秒サイズの楽曲を作ろうと思えば、パズルの組み換えをするようにどうとでも出来てしまうんですよ。例えば、先日デモで提出した曲もちょうど89秒のものが出来ていたのですが、BPM170で、イントロが4小節、Aメロ16、Bメロ8、サビ16、と小節を組んでパズルを組み立てるとだいたい89秒になるんです。アニメのスタンダードがこのタイム感になっていった背景には、いわゆる日本の楽曲のセオリー通りの、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビという構成で組んでいくことで自ずと89秒になるんじゃないかということを、最近作りながら思ったんです。逆にこのタイム感でどれだけ面白いことができるかということを考えていますね。曲によってはイントロがなかったり、個性が強い楽曲がアニソンとして作品のオープニングを飾ることだってあるし、やりようによっては面白いことがめちゃくちゃできる。あえて89秒という制限を設けることで、例えば32小節イントロに使っちゃおうかな、なんて(笑)。極端な例ですけど、それくらい遊べてしまうし、DTMで曲を作れる時代だからこそ、俯瞰で見ることができますよね。きれいに作って87秒だったとしても、89秒なんて残りの2秒で最後のギターを長めに弾けばうまくハマりますし、パズルを組み立てるみたいにすごく楽しんでいます。

――やりたいことを色濃く、抽出しなくてはいけなくなりますよね。やれないことも出てきそうでもあります。

吉田 たしかに89秒という時間に詰め込める情報量はフルバージョンとは全然違いますが、そこを逆算したうえで楽しみながら音を詰めていくことが好きで。89秒だから、というきっかけが作れて、そこからさらに広がるものや「こんな曲展開になるんだ!」と驚かせることもできますから、その楽曲の表情を作ることの良さも感じています。演奏していても、そこに詰まった想いもあり、自分的には悪くないな、とも思っています。

『アオアシ』は学びの大きな「人生のバイブル」

――そんななかリリースされた最新デジタルシングル「カラー・リリィの恋文」はアニメ『アオアシ』のEDテーマです。『アオアシ』という作品の印象を教えてください。

柳田 僕はメンバーの中で唯一の球技オンチで、なんだったらスポーツに対してコンプレックスがあるくらいで。球を持たせても打たせても蹴らせても、てんでダメだったんです。だから今回『アオアシ』のお話がきたときに「これはヤバイぞ」と思いました(笑)。サッカーのルールも詳しくないし、ゴールを守るのがゴールキーパーだってことを知っているくらいでしたから。そんな状態で原作コミックを読み始めたのですが、これが面白くて仕方ない!ルールを詳しくない人間がスポーツマンガを読んで、絶叫するわ、涙を流すわ。スポーツマンガだけどそれだけではない。人生や処世術についても教えてくれますし、バンドをやっている人も普通に生きている人にとっても人生で出会う壁を乗り越えていく術のヒントが散りばめられている物語なんですよね。例えば、主人公の青井葦人を導く福田達也監督が「頭の中で思い描いているものをちゃんと言語化しろ」ってアシトに言うんです。音楽をやっていても思うのですが、手順やリズムパターンを具体的に説明することってすごく大変で。だけど、それを言語化できれば意思疎通はスムーズにできるし、グルーヴもアガるんです。そんなふうに音楽にも繋がる大事なヒントがある、すごく良い作品だなと感じています。

黒川 柳田が言う通りで。サッカーマンガではあるけれど、ドラムに通じるところもあるんですよ。アシトが最初は意識してやっていた首振りを、自分が無意識にできる領域まで落とし込んでいくんですが、ドラムでも同じことが言えるなと思っていて。最初は意識してやっている動きを、自分から自然に出てくるところまで落とし込んでいく作業は、何度も何度も繰り返しながら試行錯誤していくんです。サッカーだけではなく、ドラムにも通じる。それはきっとほかのことにも通じていくことだとも感じましたし、サッカーマンガだけど、サッカー以外での発見もあり、サッカーが好きな人以外にも面白く読める作品だなと思っています。

桐木 僕も人生の教科書みたいだなって思っていますね。仕事や恋愛などでも、「こういう考え方があるんだ」ということがたくさん散りばめられているんですよ。自分が作中で好きなのは「木じゃなく森で見る」という言葉で……すごくハッとさせられました。今までは近い場所しか見えていなかったんですが、ちゃんと視野を広くして、森として捉えるということ。ほかに感覚を言葉で具現化することについても、目標のある人にとってはグッとくるものがある作品だなって思いました。

吉田 ここまでレンジが広く、色んな層に刺さるマンガはあまりないんじゃないかなって思います。しかも少年誌的な部分として、努力をするシーンがとても多く描かれているんですよね。少年マンガは練習や修行の時間をまるまる1巻で見せたりしますが、『アオアシ』は全編を通してそれをやっているんです。その組み立て方もあり、途切れることのない努力の表現に没頭できるんですね。作品としてもとてもクオリティが高いですし、努力について生々しいくらいだなと感じます。

――その『アオアシ』からオファーがあった神サイですが、『ワールドトリガー』ではオープニングとエンディングも体験されてきたなかでの、今回のEDテーマ。ご自身の中でオープニングとエンディングについて表現に違いはつけているのでしょうか。

柳田 「未来永劫」はエンディングとして暖かみのある曲を提供して、そのあとに「タイムファクター」で攻撃的な曲を出したので、神サイはどっちに転んでも良い味が出せるバンドだと自負もしています。今回はエンディング、そして(一条)花ちゃんの視点で描いてほしい、とアニメサイドからリクエストがあったんです。神サイは男目線と女目線とを交互に描く曲も多かったからこそ、今回の花ちゃん視点の曲は書きやすかったです。あとは僕がサッカーに詳しくないところが花ちゃんとも共通していて。花ちゃんもサッカーには詳しくないので、アシトに対しては直接的なアドバイスもできないし、ただ心の中で「頑張れ!」と思うしかない。そこで花ちゃんと僕自身がすごくリンクしたなと思います。書き下ろしですが、普段からギターのアルベジオの素材は貯めていたので、最初の部分の2本のギターによるアルペジオは昔のアイデアから引っ張ってきました。

次ページ:アニメ制作側からのオーダーはただ1つ。「花ちゃんの視点」の曲であること

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP