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INTERVIEW

2022.07.22

【インタビュー】立ち止まって見つめ直した「本当の自分」――水瀬いのり、約3年ぶりのニューアルバム『glow』に込めた想いを語る。

【インタビュー】立ち止まって見つめ直した「本当の自分」――水瀬いのり、約3年ぶりのニューアルバム『glow』に込めた想いを語る。

水瀬いのり、約3年ぶりのニューアルバム『glow』は、彼女自身のアーティストとして表現したいもの、音楽の形をこれまで以上に色濃く反映させた作品となった。「ココロソマリ」から「HELLO HORIZON」までのシングル表題曲に加え、田淵智也やTAKU INOUEら豪華作家陣の書き下ろしによる新曲を収録した全14曲。そのどれもが彼女らしい優しく温かな“輝き”に満ちている。彼女が本作を通じて見つけた「自分らしさ」とはどんなものか。話を聞いた。

「日常のなかの輝き」を封じ込めたアルバム『glow』

――今回、3年ぶりのアルバムになりますが、その間、世の中の情勢的にも大きな変化がありました。

水瀬いのり それまでは1年ごとにアルバムをリリースして、それに伴うツアーも開催していたので、ずっと駆け抜けているような感覚があったんですけど、この3年の間、コロナ禍でライブが中止になることもあったので、改めて自分のアーティスト活動を振り返ってみたり、表舞台に立っているときの私とは違う、「本当の自分」を見つめ直す時間が多くて。そこで自分が本当に好きな音楽、本当に伝えたいものを改めて精査できたし、私は性格上、しっかり立ち止まることも大切にしたいタイプなので、個人的には止まっていた時間も無駄ではなかったと思っています。

――そんななか完成したアルバムのタイトルは『glow』。“輝き”を意味する言葉ですが、どんな想いを込めて名付けたのでしょうか。

水瀬 そもそも今回のアルバムは、日常を過ごしているなかで見つけたものを閉じ込めたような、これまでで一番親近感のあるアルバムにしたいというイメージが自分の中にあって。だからタイトルも親しみやすいもの、1つの単語でメッセージ性を伝えられる言葉にしたかったんです。それで色々と調べていくなかで、いわゆるギラギラした輝きではなく、灯るような優しい光を意味する『glow』と名付けました。今は暗いニュースが多いなか、だからこそ温かい光が求められていると思うし、身の周りにある愛情や友情、日常の中にたくさん散りばめられている光を見落とさずに生きていきたい、という個人的な想いも反映されています。

――その「日常のなかの輝き」というテーマ性は、今作のビジュアルからも伝わってきます。ジャケットやアーティスト写真の水瀬さんは、衣装やロケーションを含めてすごくナチュラルな雰囲気ですよね。

水瀬 まさにそういうコンセプトのもと、撮影していただきました。いつもはもっとキメ感のある写真が多いんですけど、今回は初回限定盤も通常盤も、カメラから目線を外した写真がジャケットに採用されていて。私も「撮影する」という気持ちではなく、日常を楽しむ私をフィルムに収めてもらう気持ちで現場に行きました。

田淵智也・TAKU INOUEとの出会いが生んだ新たなアンセム

――アルバムはまさに朝日の輝きを想起させるインスト曲「sunrise glow(overture)」で幕を開けます。水瀬さんのアルバムでオーバーチュア(前奏曲)が付くのは初めてですね。

水瀬 これは当初は予定していたわけではなくて、田淵(智也)さんに書いていただいた「僕らだけの鼓動」のイントロ部分が、始まりのワクワクを彷彿させるものだったので、それを長く伸ばしてもらってオーバーチュアにしていただきました。楽器が少しずつ増えていくアレンジで「日の出」を表現していただいて、日が昇りきったところで「僕らだけの鼓動」が始まる、というイメージです。過去のアルバムとは異なる始まりを演出することができました。

――「僕らだけの鼓動」を書いた田淵さんといえば、Q-MHzでの活動を含め多くの声優アーティストに楽曲を提供していますが、水瀬さんとは初対面になります。

水瀬 スタッフの方が以前から機会があればぜひお願いしたいというお話をしていて、私も田淵さんのサウンドはほかのアーティストさんに提供された楽曲も含めて、ユーザー目線でとても素敵だなと思っていたので、今回、私をイメージして楽曲を書き下ろしてくださることになって、夢が叶いました。

――ちなみに、田淵さんの書いた曲で特に印象深いものを挙げるとすれば?

水瀬 内田真礼さんの「セツナ Ring a Bell」が大好きで、一時期この曲をずっとリピートしていました(笑)。田淵さんは元気なサウンドだったり、3~4分の楽曲の中で物語を作ることにすごく長けた作家の方だと思うんですけど、この曲は真礼さんのセリフが入っている部分もとても魅力的で、普通にファンとして聴いていました。

――「僕らだけの鼓動」も素晴らしい楽曲ですが、最初に受け取ったときの印象はいかがでしたか?

水瀬 私は最初、自分が田淵さんの作るサウンドのテンション感に自分が追い付けるか、田淵さんイズムと私のボーカルが上手く溶け合うか、すごくドキドキしていたところがあって。でも、田淵さんは、私とファンの方たちとの距離感や私らしさを意識して曲を書いてくださって、私に寄せた田淵さんのサウンドを作っていただけたのかなと感じました。楽曲をお送りいただいたときも、「自分なりに解釈して書きましたが、何かあれば全然言ってください」とメッセージを添えてくださって。

――たしかに田淵さんの書く楽曲はアッパーで情報量が多い印象がありますけど、この楽曲は疾走感や力強さもありつつ、あくまで爽やかなイメージです。

水瀬 最初にいただいたものはもう少し間奏の間隔が詰まっていたんですけど、私にそこまでの力量がないというのもあって、もう少し息を吸えるポイントを増やしていただいたんです。それでも疾走感のある田淵さんらしい唯一無二のサウンド感になりましたし、しっかり息を大きく吸って、みんなを引っ張っていけるような歌になるよう頑張ってレコーディングしました。

――歌詞も“僕”から“君”に語りかけるような内容で、聴き手を力強く引っ張ってくれるような印象があります。

水瀬 私も最初に歌詞のファイルを開いたときに、最初が“僕だよ”で始まるところにハッとして。私とファンの皆さんが作り上げる世界は、田淵さんからはこういうふうに見えているのかな?と感じる歌詞とサウンドになっていて、それがすごく新鮮でした。

――歌詞で特に印象的なフレーズはありますか?

水瀬 ラスサビの“一緒にいたいな”が最後に“一緒にいようね”に変わるところです。ここはデビュー当時の私だと素直に言えなかった歌詞でもあって。活動を続けるなかで、ファンの皆さんやスタッフの方たちとの距離感が近くなった今だからこそ、この言葉を歌えるんだと思います。田淵さんの書く曲は、明るくて疾走感があるのに、どこか泣けてしまう。そういうファンとの絆が音楽を通して見れる瞬間があると感じていたので、この曲もきっとこれからライブでもっと大きくなっていくんだろうなと思います。

――続く新曲「We Are The Music」は、これまた水瀬さんとは初顔合わせとなるTAKU INOUEさんが書き下ろした、煌びやかなナンバーです。

水瀬 「We Are The Music」というタイトル通り、「僕らだけの鼓動」の疾走感を引き継ぎつつ、その鼓動すらリズムで音楽になるっていう、音楽の原点じゃないですけど「音を楽しむこと=音楽」を体現したような楽曲になります。レコーディングの際に、(歌の)本線をなぞる形でダブルのボイスをたくさん収録したのですが、それがふんだんに使われていて。今までここまでダブルで併走して歌う曲はなかったので、すごく新鮮な仕上がりになりました。

――歌声がダブルで重ねられていることで、よりキラキラ感が増している印象を受けました。

水瀬 「僕らだけの鼓動」は地に足を付けている感じがしますが、この曲はEDMっぽい音とバンドの音が重なったサウンドになっていて、少し宙に浮いている感じというか、届きそうで届かない、掴めそうで掴めない、そんな愛おしさがあると思うんです。リズムはゆったり刻むような感じなので、ボーカルは少し抜いて歌うことを意識していて。自分の世界観をもった主人公が歌う曲になったと思います。

――これもライブで聴くとグッとくる曲になりそうですね。

水瀬 「We Are The Music」という曲名からして、皆さんの前で歌うことで完成する曲だと思いますし、その意味では「僕らだけの鼓動」も複数形(僕ら)なので、1人ではないことを感じる楽曲で。どちらもライブにピッタリの曲だと思います。

次ページ:多彩な歌唱アプローチで想いを届ける新曲群

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