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2022.06.15

【ライブレポート】快晴サニーガール・熊田茜音が“雨上がりの雲間”から届けた等身大の歌声――新たな一歩を踏み出した待望の1st LIVE“世界が晴れたら”レポート

【ライブレポート】快晴サニーガール・熊田茜音が“雨上がりの雲間”から届けた等身大の歌声――新たな一歩を踏み出した待望の1st LIVE“世界が晴れたら”レポート

声優・アーティストとして活躍する熊田茜音の1st LIVE“世界が晴れたら”が、6月12日、東京・科学技術館サイエンスホールで開催された。2020年1月にシングル「Sunny Sunny Girl◎」でアーティストデビューするも、ちょうどコロナ禍の時期と重なったため、なかなか思うようにライブができなかった彼女。1stアルバムのタイトルでもある『世界が晴れたら』は、そんな状況からくる「自分自身のもやもやした気持ち」と「コロナ禍」がいつか晴れることを願って付けられたものだが、待望の初ワンマンとなった本ライブで熊田は、その場にいるすべての人々の心を快晴にしてしまう、最強のサニーサニーガールぶりを発揮してくれた。

“雨上がりの雲間”に響き渡る、快晴サニーガール熊田の歌声!

本公演の会場となった科学技術館サイエンスホールは、ライブの聖地・日本武道館と同じく、皇居外苑の北の丸公園の敷地内にあるイベントスペース。関東地方は梅雨入りしていることもあり、この日の東京は雨の可能性が高いと予報されていたのだが(実際、雨に見舞われた地域もあった)、会場近辺の空は晴れ渡り、絶好のライブ日和に。お天道様も熊田の晴れ舞台を祝福しにきたのかもしれない。

開演時間になり、会場の照明が暗転すると、ステージがライトでカラフルに彩られ、SEに合わせて熊田が颯爽と登場。光沢感のあるシルバーから、太陽のように明るい黄色へとグラデーションがかかった衣装(スカート部分には雲の模様があしらわれていた)を着た彼女は、1stアルバムのリードトラック「いいんだよ」で記念すべき1stワンマンをスタートさせる。同曲のMVでの全力で走る姿も印象的だったが、悩んだり迷ったり不器用なことも“いいんだよ”と肯定する、その真っ直ぐな歌声からは、彼女のひた向きなスタンスがひしひしと伝わってくる。

1曲目を歌い終えて「皆さんこんにちは、熊田茜音です!盛り上がっていきましょう!」と元気いっぱいに挨拶すると、続けて「ココロハヤル」(TVアニメ『チート薬師のスローライフ ~異世界に作ろうドラッグストア~』OPテーマ)を披露。ステージ上を右に左にと移動しながら、満面の笑顔で“心はやる”気持ちを届ける。その歌声も振る舞いも、とにかくエネルギッシュの一言。間奏で「ハイハイハイハイ!」と盛り上げたかと思えば、ダイナミックにクルッと一回転してみたりと、今にもステージから飛び出さんばかりの勢いだ。オーディエンスも乗せられて、熊田のイメージカラーである黄色のペンライトを振って盛大に応える。

ラストはピースをしてニコッと決めると、MCではこの日のために作ってもらったという衣装をアピール。そして「今回は初めてづくしなんです」と、1stライブでようやくファンと直接会うことができた喜びを噛みしめる。さらに、2月に初めてのアルバムをリリースしたこと、そのアルバムの中で初めて自分で作詞したことを語り、次はその楽曲を披露するムードになったのだが……どうやら段取りを間違えたようで「……ウソ(笑)」と告げて強引に次の曲「Summer Jump YYYY!」へ。FLOWのTAKEが提供したハイテンションなサマーチューンを、ライブグッズのタンバリン片手にノリノリでパフォーマンスして一体感を作り上げると、「ここからもっともっと盛り上がっていきますよ!」と「カコ→イマ→ミライ→?」に繋げる。

続くMCで熊田は「聞いて!初っ端からセトリ、ミスったよ(笑)」と告白。「今日はいつも見てくれているスタッフさんに“かっこつけない”と約束したんだけど、そしたらこれよ!?」と笑いを誘う。この飾り気のない人柄、天真爛漫さも熊田の魅力の1つだ。そして改めて「デビューしてから今までの想いを込めて作詞させていただきました……デジャブ?(笑)」と語りつつ、「正解を探しがちな自分に、正解なんていらないことを教えてくれたのは、ここにいるみんなです」と前置きして、自ら作詞した楽曲「くらげ」を披露。まるでくらげのように波に流されながら様々な場所を巡る、明確な目的地(≒正解)を定めない旅(≒人生)の在り方を、心地良いグルーヴに体を揺らせながら歌う。“旅の行き先は自分次第 正解はもういらないから 心が鳴る色で描き始めよう”というフレーズこそが、今の彼女が導き出した答えなのだろう(ちなみにこの曲の歌詞には“ほら世界が晴れたら”という一節もある)。

そこからZAQの提供によるシリアスなロック「drizzling」、エモーショナルなバラード「濃い藍、油性の恋」で、それまでのチアフルな雰囲気とはまた違った、心にずしりと響く歌唱で表現力の幅をアピールすると、直後のMCで彼女は「今日は本当の本当に初めの一歩なんです」と、この日のライブに対する想いを吐露する。16歳の頃に歌手を目指し始め、たくさんのオーディションを受けた末にようやく掴んだアーティストデビュー。だが、それがコロナ禍の時期と重なることに。彼女は「やっと歌えるんだ!と思ったら、みんなと会えなくなっちゃって」と悔しさを滲ませる。しかし熊田はへこたれない。「私は、悔しさは成長の合図、哀しみは優しさの種だと思います。それが繋がっていったら、こうやって“楽しい”が待ってるんだって」「だから私はこれからも、ボロボロになっても、ありのままを届けようと思っています」と宣言。マイナスな感情も包み隠すことなく、素直な自分をさらけ出して前進する。それはスタイリッシュなやり方ではないかもしれないが、その真摯で実直な姿勢こそが、彼女のアーティスト/表現者としての本領のように思えるし、だからこそファンは彼女の歌声と生き様に心惹かれるのだろう。

そして再び笑顔に戻った熊田は、「初心に返って、みんなとイェイイェイしたいと思います!」と「YOUR FREE STAR」をパフォーマンス。彼女が初めてアーティストとしてステージに立った、2019年11月開催のライブイベント“Lantis New Generation LIVE”でも披露された、佐伯youthKの提供によるキラキラ輝くポップチューンだ。ファンはサビの“イェイイェイ”の部分でピースサインを掲げ、客席は一面星に包まれる。さらに同じく佐伯が作編曲した「自分磁針」で“自分自身”の道を踏み出さんとするすべての人々を鼓舞すると、nano.RIPE提供の「まほうのかぜ」(TVアニメ『スーパーカブ』OPテーマ)へ。2番サビの“私ひとりでは描けない夢を”というフレーズは、熊田の動きに合わせて一斉に黄色のペンライトを左右に振るオーディエンスの光景を目の当たりにしながら聴くと、彼女とファンの関係性がより身近に感じられて余計にグッとくる。熊田も終盤の“きみとなら怖くない”という部分で「みんなとなら怖くなーい!」と思わず想いが溢れてしまったかのように叫び(おそらくアドリブだったのだろうが、その直後に歌う箇所をミスってしまったのも彼女らしい)、ようやく会うことができたファンとの絆を確かめ合った。

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