リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2022.03.31

【インタビュー】1st EPに続く新たな名刺――配信シングル「キャンドル」で山下大輝が届けたい想いとは? 楽曲を手がけたくじら、ビジュアル面を構築した大鳥とともに作り上げた作品へのこだわりを聞く

【インタビュー】1st EPに続く新たな名刺――配信シングル「キャンドル」で山下大輝が届けたい想いとは? 楽曲を手がけたくじら、ビジュアル面を構築した大鳥とともに作り上げた作品へのこだわりを聞く

2021年6月に5曲入り1st EP『hear me?』で待望のアーティストデビューを果たした山下大輝が、3月30日(水)に配信シングル「キャンドル」をリリースする。DISH//の「君の家しか知らない街で」やSixTONES「フィギュア」、Ado「花火」などをプロデュースしたことでも知られるクリエイター・くじらとのコラボレーションで、MVは絵師・大鳥が手がけている。山下らしい世界観を見事に放つこの「キャンドル」について、山下本人に話を聞いた。

歌う山下、作るくじら、視覚的に表現する大鳥。三位一体で生まれたのは、聴く者の心に灯りを灯すキャンドルのような暖かな曲。クリエイターの選出も山下自身のアイデアから始まったという1曲が生まれる際の核心にあったのは、一体どんなものだったのだろう。

アーティストデビューの反響

――昨年6月にアーティストデビューを果たしましたが、反響はいかがでしたか?

山下大輝 「まさか!」という声もいただきましたね。アーティストデビューするとは思わなかったという人も結構いらっしゃって。だから良い意味でサプライズになったなと思います。実際に制作をして、出したときに「次の曲を早く出してほしい」という声をたくさんいただけたのは嬉しかったです。当時はまだ5曲だけだったので、さらに先の楽曲への期待感も持っていただけたんだなと思いましたし、バースデーイベントをやったときにはそれを痛感もしました。あのときは3曲のみのライブパートだったので、ちょうど体が温まったな、というときに終わる感じもあったんですね。少し物足りない感があったので、曲数を増やしていきたいと思ったんです。応援してくださる方ももっと新曲を聴きたいと思ってくれていることを知り、曲をどんどん増やしていこうという気持ちになりましたし、そういう意味でも色々な反響をいただけたことを嬉しいなと思いました。そういった声に、僕自身も色々なチャレンジをするきっかけをいただいています。でもそもそもは、あの状況下だったからこそ最初の一歩を踏み出せたんじゃないかと思うんですよ。歌を通じてなにかを届けられたらいいなと、ずっと思ってはいたけれども、形にすることができていなかったというところで、今のレコード会社であるA-Sketchさんにプッシュしていただき、チャレンジすることができました。

――そもそもflumpoolやDEAN FUJIOKAさん、THE ORAL CIGARETTESなどを擁するA-Sketchとやっていこうと思われたのはどういう意識からだったのでしょうか。

山下 僕自身、新たな挑戦をするにあたって、声優アーティストを良い意味で扱い慣れていない場所に身を置きたかったという部分もあったんです。お声掛けをいただいたこともあってから調べたのですが、A-Sketchには男性声優のアーティストが誰もいなかったので「レコード会社としても新しいチャレンジなのか」と思いましたし、僕の新たな挑戦をさせてもらうのならまさにここだ、と思いました。

――ちょうどアーティストデビューされる頃は、声優10年目が見えてきて、ご自身の中でも「殻を破りたい」というお話も出てくるような時期でした。そこでの「新たな挑戦」を「新しいレーベル」と二人三脚で、というのは非常に山下さんらしい決断でもありましたね。

山下 たしかにそうですね。色々なチャレンジをしていたけれども、特にその時期はコロナ禍真っ只中でもありましたから、声優の仕事がストップしていたんです。それも相まって、「ピンチをチャンスに」と思ったんですよね。だからこそ、それまでなかなか勇気を出せなかったけれど、その勇気を今、出そう!という気持ちになった。色々なものが重なったことで、デビューへとブーストしていったと思います。視野が広がりましたし、もっとここから広げてもいきたいと思いましたね。

前作『hear me?』から最新シングル「キャンドル」へ

――そのブーストが原動力となり『hear me?』になったのですね。

山下 そうですね。コロナ禍という時期だけど、みんなの力になれるエールのような曲を、というテーマがはっきりしていましたし、そのテーマでアプローチを変えて作った5曲を収録しましたし、目的もはっきりしていたからこそすごく良い5曲に仕上がったなぁと。たくさんの人に愛される1枚になって良かったなと思いますね。

――『hear me?』は佐伯youthKさんをはじめ、様々なクリエイターさんと共に“山下大輝の音楽”を作られましたが、今回の配信シングルはどのような作品にしようと思われたのでしょうか。

山下 色々と変えようかなと考えてもいたんですけど、今の状況だからこそ変わらない安心感を届けたいというか。それで「キャンドル」というタイトルの最新シングルで、みんなの心に寄り添えるような灯りを灯せたらなっていう意味合いもあって。だからテーマとしては前作と近いんですけれども、僕だったら、今の状況下なら聴いて安心できるものを求めてしまうなとも思ったので、あえてコンセプトを大きく変えずに、メッセージを貫かせてもらったところは大きいかなと思います。

――制作にあたってまずはどのようなことから始めたのでしょうか。

山下 テーマは変わらないですが、アプローチの仕方は変化をつけたいと思ったんですよ。前回はMVも自分が登場する実写での表現で、ジャケットの写真も自分自身の姿で出しましたが、今回は自分がまったく出てこないものにしたくて。それでジャケットの絵もMVも大鳥さんにお願いをしました。僕がアニメーションのMVを作りたかったというのもあって。そういった意味では、実写からアニメーションになっているという変化をつけて、そこを皆さんに面白がってもらえたらなとも思っています。テーマは変わっていないけれど、そういった意味での変化はありますね。

――前作のインタビューで「どんな山下大輝が見えるか」と伺ったのですが、その際に「人間の複雑な部分みたいなものを感じてほしい」とおっしゃっていたんですね。「キャラクターたちは僕の持っている1つの面であることが多いので、そうではない、今の僕のなかにある色んな顔を見せらたら嬉しい」と。今回はテーマを変えていないというだけに、その延長線上での表現となっている?

山下 「キャンドル」は生きていくうえで誰しもが感じている想いが表現されています。立ち止まってしまったり、ぶつかったり、悩んでしまったり。生き辛く息苦しい世の中で、何が正解かもわからないという心の悩みとどう向き合っていったらいいのだろうか、という想い。自分の今歩いている道が正解なのかわからない。でもわらかないのも「今」の自分なのだから、「今」は無理に答えを出さなくてもいいのではないか。そんな日常の生活の中で自分自身とどう向き合っていけばいいのか、という生きるうえでの葛藤がこの曲からも伝わるのではないかと思います。そこは前作から変わらない想いとして息づいていますが、そんななかでも少しでも前向きになれた「かもしれない」くらいでいいので、聴き終わったあとに「キャンドル」というタイトルの通り、ちょっとだけ灯りが見えたかもしれない、心が温かくなっていたらいいな、という曲です。

「キャンドル」を構築する過程の想い

――制作にあたって、明確な世界観でのオーダーを出されていたのでしょうか。

山下 出しました。楽曲をくじらさんにお願いする、という大前提があって。くじらさんは複雑な心の葛藤など、感情の動きを想像力が刺激される描き方をされる方なので、そんなくじらさんのカラーが活きる方向で自分が歌いたいものをお伝えして制作をしていただきました。上手く気持ちがリンクしたなと思います。自分の気持ちをお伝えしたうえであがってきた曲でしたし、いただいた曲と歌詞に対して「そうだよね…!」という声が漏れました。

――今回タッグを組まれたくじらさんの印象はどのようなものでしたか?

山下 くじらさんの独特な言葉のチョイスが本当に素敵で。歌詞でも考えさせる余地があるんですよね。どういう意味なんだろう、なんでこういうふうにしているんだろう、と聴いている側に考えさせられることができるワードチョイスなんですよね。色んな考察ができるからこそ、これを聴いて、受け取ってくれた人にも考えてもらいたいなと思っていて……「こういうことだ」「こうなんだ」って、真っ直ぐに伝える曲ももちろん良いと思うんですけど、ただそうじゃない。受け取ったことで考えるきっかけになって、この曲を10人が聴いたとして、10人が違う感想を抱いてほしいんです。それって自分だけの気持ちなんですよね。だからこそ、そこで湧き上がる気持ちを大事にしたいと思うし、自分だけの気持ちだからこそ力も湧く。次に繋がるパワーになると思うんです。くじらさんの歌詞や楽曲は、そういったパワーを持っているんですよね。想像力を掻き立てるような言葉の散りばめ方ですし、曲への乗せ方、伝え方が本当に素敵だなと思っています。

――そして、ビジュアル面でのコラボとなった大鳥さんの印象も教えてください。

山下 大鳥さんは、色んなMVを作られている方なんです。それらを拝見させていただいたのですが、説明をしすぎないアニメーションを作るところが非常に素敵だなって思ったんです。だからこそ、今回の楽曲との相性が良いはずだ、とお願いしました。これはこうだからこうなる、という視覚から得られる情報からも「これってもしかして」と考えさせるところがある。表情1つとっても、あえて作り込まないというか。今回のMVもそうですが、聴いている人の受け取り次第で喜怒哀楽の見え方も変わってくると思うんです。見てくださる方に曲や歌声、歌詞、MVというピースを届けるので、それぞれが感じる自分だけの想いを大事にしてもらいたいです。

――だとすると、くじらさんや大鳥さんにお願いしたい、というのは山下さんご自身から出たアイディアだった?

山下 そうですね。このお二人に頼みたい、というお話をさせていだだきました。

――普段からそういったクリエイターさんの情報はチェックされているのですか?

山下 アーティスト活動を始めてから意識してチェックするようになりました。SNSもそういった視点で見るようになりましたね。「この人の曲、めちゃめちゃいいなぁ。いつか一緒にやれたらいいな」とか「この人の絵は味があって好きだなぁ」というように。この人と仕事をしたい、あの人と一緒にやってみたい、ってメモしていますし、一緒に仕事をしたい人リストを作っています。だって、とりあえず好きな人を挙げていくのは自由ですから(笑)。今後も楽しみですし、今回はくじらさんと大鳥さんとご一緒できて本当に嬉しいです。

次ページ:「キャンドル」から受け取ったもの。届けたい想い。

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP