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INTERVIEW

2022.03.23

【インタビュー】約3年ぶりとなるニューアルバム『文学少女の歌集Ⅱ-月とカエルと文学少女-』が完成!アルバムに込めた思いを堀江由衣に聞く

【インタビュー】約3年ぶりとなるニューアルバム『文学少女の歌集Ⅱ-月とカエルと文学少女-』が完成!アルバムに込めた思いを堀江由衣に聞く

これまでも常にセルフプロデュースに近い形で自身の内面をアルバムに投影してきた堀江由衣。世界観を紡ぎ出すという点では稀有なクリエイターでもある彼女が約3年ぶりにリリースするアルバムは、前作『文学少女の歌集』と世界観を共有するような『文学少女の歌集Ⅱ-月とカエルと文学少女-』。清 竜人や大川茂伸&あさのますみコンビといった、現在の堀江由衣ワークスに欠かせない制作陣に加え、sajiのVo.&Gt.であるヨシダタクミといった新たな味方も登場する中、堀江由衣はどのように自身のイメージを形にしていったのだろうか。アルバム制作を通じて彼女が見たものとは?

『文学少女の歌集』と同じくこれが今やりたいこと

――今回のアルバムは『文学少女の歌集Ⅱ』ということですが、前作『文学少女の歌集』のときに「1」「2」構想はあったのでしょうか?

堀江由衣 いや、『2』を作ることは全然考えていなかったです。考えていたら「1」と付けるじゃないですか?(笑)。

――それもそうですね(笑)。

堀江 便宜上、今は『1』と言いますが、今回アルバムを作ることが決まったとき、自分が表現したいと思う世界観が前回とあまり変わっていなかったんですね。ビジュアルや景色、シチュエーションのイメージというところが。それだったら『2』がいいんじゃないかと思いました。

――前作を作ったとき、やり尽くしていない、あるいは、まだまだ表現したいものがあるといった感覚があったのでしょうか?

堀江 というよりも、アルバムを作るときには、そのときに自分がやりたいことや好きなものの方向に進むと思うんです。例えば、(2004年リリースの4thアルバム)『楽園』のときは、私が当時「ブライス(Blythe)」という、色味のはっきりしたレトロポップな洋服を着ているお人形が好きだったので、そこから影響も受けながら作りました。そういった点で、私は好きなビジュアルイメージが『1』のときも今も同じで、でもまったく同じアルバムにはならないように、前作は季節が夏だったので今回は秋〜早春にしたイメージです。

――このタイミングでアルバムをリリースするというのは、何か理由はあったのでしょうか?

堀江 リリース時期については、今までのアルバム含めて、キングレコードさんから「やりませんか?」と言われて、断る理由がない限りは「やりましょう」とお受けする流れなので、特に意図したわけではありません。

――たまたま、『文学少女の歌集』のときと同じものを好きな時期にまたアルバムをリリースすることになった、ということですね。

堀江 そうですね、たまたま。もしかして「『2』というのは何か違うなあ」って感じですか?(笑)。

――いえいえいえいえ、滅相もないです(笑)。堀江さんは常に、自分の中にある世界観を明確にアルバムとして表現してきたので、『2』を作るからには1作では表現しきれなかった何かがあるのか、と。しかも、「文学少女」というコンセプトは「堀江由衣」というアーティストのイメージとも非常にマッチしているので、勝手に「満を持して」だったのではないか?『3』もあるのでは?みたいな想像をしてしまいました。

堀江 なるほど。そうですね、もしも2年後や3年後にまたアルバムを作ることになって、この世界観がまだ好きだったら『3』になるかもしれません(笑)。

――それだけ堀江さんが惹かれる、「文学少女」という世界観の魅力というのは?

堀江 8thアルバム『秘密』の雰囲気にも似てるとは思うんですけど、元々、素朴な街にあるレトロで可愛い感じのお家に住んでいる女の子、みたいな世界観が好きなんだと思うんですよ。今はSNSやインターネットを通していろいろなテーマの写真やビジュアルを自由に見ることができるので、自分の好きな写真の傾向もつかめるし、写真が持つエモさみたいなものにインスパイアされるんですよね。あと、学園物も多分好きなんでしょうね。

――『堀江由衣をめぐる冒険V~狙われた学園祭~』では、青クマ学園という学校を舞台としたライブも開きました。

堀江 やっぱり普遍的な学生時代ってノスタルジックやエモさを感じますよね?当時はできなかったことが今できる、みたいなところもあるかもしれませんね。

――ビジュアルイメージがスタート地点ということですが、どのようにイメージをスタッフや作詞家・作曲家に伝えるのですか?

堀江 アルバムのイメージを聞かれたあと、打ち合わせまでになんとなく考えておいて、打ち合わせの時に提出するんです。イメージしている写真を見せるとか。そのあと、デザイナーさんやカメラマンさんによるビジュアルデザインが上がってきて、さらにイメージが湧いたら楽曲制作をしていただく方々に伝えて曲を集めていく、という感じですね。

――楽曲よりもビジュアルイメージが主体なんですね。

堀江 今回はそうでした。ちなみに『文学少女の歌集』の前に出した『ワールドエンドの庭』は、「海外でジャケット撮影をしてみたい」というのも一つの理由でした。

――実際にジャケット撮影でイギリスに行けました(笑)。

堀江 この世界が箱庭になって……というイメージがあって、そこからやりたい曲や自分が好きなタイプの曲をコンペで選んでいったと思います。『秘密』は「秘密」というコンセプトが先にあって、それをキーワードに楽曲を集めてからビジュアルやジャケットを決める、という順番でした。

――アルバムの収録曲ですが、今回もご指名のアーティストによる楽曲もあって。

堀江 そうですね、ずっとお世話になっている清(竜人)さんはお忙しいんですけど、ありがたいことに毎回フットワーク軽く受けてくださるので、今回もお願いしました。何よりも思いつかないような楽曲を書いてくださるので。大川(茂伸)さん・あさの(ますみ)さんコンビも、こちらからお願いしています。

――新たなアーティストとしては、sajiのヨシダタクミさんがいらっしゃいますが、どのような経緯でお願いすることになったのでしょうか?

堀江 ヨシダさんが私のラジオにゲストでいらっしゃったとき、「私の曲を作ってくれないんですか〜」って聞いてみたんですよ。よくある台本上の流れで。そうしたら「全然いいですよ」と言ってくださって。そのときはアルバムの制作期間ではなかったのでそれで終わったんですけど、その後またゲストで来ていただく機会があって、ちょうど今のアルバムを制作中だったので、「あ、(作ってくださると)言いましたよね!?」って(笑)。で、同じキング・アミューズメント・クリエイティブのレーベルメイトでもあるので、正式に依頼して作っていただけることになりました。それが「月とカエル」ですね。

――アルバムのサブタイトル「-月とカエルと文学少女-」にもなり、表題曲にもなっていますが、最初からその形で楽曲をお願いしたんですか?

堀江 表題曲には楽曲が出来上がってから決まりました。sajiさんの「ハヅキ」のPVを見たとき、『文学少女の歌集』で私が思い描いていたのに近い景色が描かれていて、「こんな身近に近い世界観を表現されている方がいた」と思ったんですよね。それもあって、sajiさんの楽曲の中で私が好きな曲をお伝えはしましたけど、楽曲に関しては基本的にお任せしました。

――では、「月とカエル」というサブタイトルもヨシダさんから曲が届いてから?

堀江 はい。実は「月とカエル」というタイトルが来たとき、たまたまその直前に行ったロケで、カエルの話題で盛り上がったんですよ。だから、曲が届いたときは「え?どうして知っているんですか?」となったんですけど(笑)、曲も「まさにこれだ」という感じで。タイトルが『文学少女の歌集Ⅱ』と決まったとき、サブタイトルをつけたいと思ってはいました。それを後々考えるにしても。でも、「月とカエル」というタイトルを見て、すごくいいかもと思ったんですよね。アルバムの表題曲としても「月とカエル」が一番ピッタリだと思いました。

――サブタイトルと表題曲に採用された、と。ちなみに、カエルの話題で盛り上がったというのは?

堀江 ロケの場所に、アマガエルだと思うんですけど緑で可愛いカエルがいて。私はすごく好きなんですけど、スタッフさんの一人にカエルがすっごく苦手な人がいたんですね。それで、別のスタッフさんがカエルを見つけるたびにその人から見えないようにどこかにやって、でも私は見たいからそのあたりを探す、ということがあったんです。だから、曲が届いたときに「見てました?」みたいな(笑)。

――結果、ヨシダタクミさんは表題曲を含めて3曲担当されていますね。

堀江 そうですね。ご自身のアーティスト活動もあって忙しい方なので、最初にお願いしたあと、「もう1曲」とは言いづらかったんですけど、ダメもとでお願いしてみたんです。そうしたら、もう1曲書いてみたいということを仰ってくださったんです。ただ、そのときは制作が中盤以降まで進んでいたので、「こういう曲かこういう曲がアルバムに足りていなくて。」とお伝えしたんです。そうしたらなんとどちらも作ってくださって。1曲だけでも両方使っていただいても構いません、ということだったんです。でも、そうなったら両方もらわないなんてことないですよね(笑)。明るく元気な曲と、マイナーアップな曲と、めちゃくちゃ爽やかな曲と、イメージの全く違う3曲をいただきました。とてもありがたかったですね。

次ページ:曲や歌詞以外のものをいただいているという感覚

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