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2021.12.08

【ライブレポート】無垢なるシンれレラたちに魂の継承を。“THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th ANNIVERSARY M@GICAL WONDERLAND TOUR!!! Celebration Land” DAY2レポート

【ライブレポート】無垢なるシンれレラたちに魂の継承を。“THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th ANNIVERSARY M@GICAL WONDERLAND TOUR!!! Celebration Land” DAY2レポート

「アイドルマスター シンデレラガールズ」のライブイベント“THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th ANNIVERSARY M@GICAL WONDERLAND TOUR!!! Celebration Land” DAY2が2021年11月28日、幕張メッセイベントホールにて開催された。

DAY2には島村卯月役の大橋彩香、早坂美玲役の朝井彩加、双葉杏役の五十嵐裕美、小早川紗枝役の立花理香、安部菜々役の三宅麻理恵、多田李衣菜役の青木瑠璃子、脇山珠美役の嘉山未紗、結城晴役の小市眞琴、上条春菜役の長島光那、神谷奈緒役の松井恵理子、鷹富士茄子役の森下来奈、南条光役の神谷早矢佳、村上巴役の花井美春、諸星きらり役の松嵜麗、木村夏樹役の安野希世乃、城ヶ崎美嘉役の佳村はるか、片桐早苗役の和氣あず未、西園寺琴歌役の安齋由香里、浅利七海役の井上ほの花、八神マキノ役の二ノ宮ゆいが出演した。安齋由香里、井上ほの花、二ノ宮ゆいの3人はDAY2のみの参加で、いずれも「シンデレラガールズ」ライブ初出演だ。

「シンデレラガールズ」のはじまりであるソーシャルゲーム版は2011年11月28日にサービススタート。DAY2が開催された当日は、その日からぴったり10年のアニバーサリーとなる。スクリーンから開演前挨拶と諸注意を担当したアシスタントの千川ちひろは「プロデューサーさん、ファンの皆さん、これまでアイドルたちと歩んできてくれてありがとうございます」と感謝を伝えると、観客とともに盛大な拍手で記念日を祝いあった。

前説が終わると、祝福された場所・Celebration Landを目指すぴにゃこら太の大冒険を描いた壮大なオープニング映像が上映され、いつしかサイドステージに現れたダンサーたちも優雅な舞で冒険を盛り上げる。ぴにゃこら太がお城に辿りつくと、ステージを覆う幕がゆっくりと上がり、シンデレラコレクション衣装に身を包んだアイドルたちがステージに顔を揃えた。

オープニングナンバーに選ばれたのは「なんどでも笑おう」! 「アイドルマスター」シリーズ全体の15周年記念曲で、他のアイマス各ブランドのライブでもここぞという場面で歌われてきた楽曲だ。ツアー途中での披露は少し意外だったが、特別なアニバーサリーの日を選んだということだろう。個人的には、“ねえ笑って 未来まで照らすほど”の歌い出しのソロパートを、常に笑顔で作品を引っ張ってきた大橋に歌わせたかったのではないかとも思う。島村卯月は笑顔がトレードマークのアイドルであり、TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ」の後半は彼女が笑顔を取り戻す物語でもあった。そしてDAY2に加わったのは、これからのアイマスと「シンデレラガールズ」の未来を支えるであろうもっとも新しきシンデレラたちだ。

一曲目が終わると開幕の挨拶なのだが、今回はやはり新アイドルたちの様子を紹介しよう。西園寺琴歌役の安齋由香里はゴージャスなツインテール姿で登場。全身を使った大きな身振り手振りから、緊張やライブに向けた気持ちの高まりが感じられる。井上ほの花は髪に輝くキラキラのお魚のブローチが眩しい。「幕張の海に出港れす!」の声の響きに、浅利七海がまさにそこにいる感じがする。八神マキノ役の二ノ宮ゆいは、マキノをイメージした眼鏡をかけてビジュアルはクールに。しかし紫のペンライトに感謝を伝える言葉からは、抑えきれない緊張が感じられる。このはじめてのふるえは今この瞬間にしか体験できないものだろう。五十嵐がこの日が千川ちひろの誕生日でもあることを告げると、サイドスクリーンから彼女が「ありがとうございます♪」と感謝するサプライズもあった。

ライブ本編のトップバッターはDAY1とは大きく曲順を変えて、立花理香、松井恵理子、安野希世乃、和氣あず未による「とどけ!アイドル」。開幕にふさわしい勢いときらめきに満ちた楽曲ではあるが、同時にDAY1とDAY2を通してひとつのつながったセットリストを作り上げるような意図も感じる。何かと緊張しがちな切り込み隊長を、百戦錬磨と言ってもいいキャストたちが担ってくれるのは安心感がある。

松嵜麗は「ましゅまろ☆キッス」を披露。松嵜は自分と仲間たちのステージにアイデアや意見を積極的に出してきたメンバーで、地方の小さなステージでイベントを行なっていた頃から「シンデレラガールズ」を支えてきた一人だ。松嵜が「Pちゃん、会いたかったよ~」と挨拶すると、ダンサーが「ましゅまろ☆キッス」のキーアイテムとなった星のステッキを振りながら登場。松嵜自身は最初ステッキを持っていなかったが、実はこれはまだステッキを持っていなかった最初期の振付からスタートし、途中からは星のステッキを手に最新の振付を披露するという趣向。諸星きらりの10年間を感じさせるプロデュースだ。ほっぺをぷにぷにっとするポーズを一緒にやってくれるように頼んだり、観客と一緒にステージを楽しんでいくスタンスは今も昔も変わらない。パフォーマンスの最後には、サプライズとして安部菜々役の三宅麻理恵が「大好き! きゃは!」と参加した。

前後に並んでふたりでシンクロしたダンスを見せると、今度は松嵜が「その時、「ましゅまろ☆キッス」に不思議な光が降りてきたのです」とおなじみの曲フリをお返し。ここからはもちろん三宅と菜々の代名詞である「メルヘンデビュー!」の時間だ。観客が声を出せないのがあまりにむごい楽曲ではあるが、ウーサミン! のリズムに合わせて会場ではピンク色の光の海が大きく揺れる。

ウサミン星まで“電車で向かえば1時間”と歌った後には、台詞アレンジで「ここはセレブレーションランド? 乗り過ごしてない、でーす!」と叫ぶ。菜々の出身地であるウサミン星とは実は千葉県内(諸説あり)? という予想に答えるご当地サービスだ。今日も絶好調に「でも、永遠の17歳だから!!」の叫びを響かせる三宅だったが、まさか永遠の17歳という言葉・概念を生み出した声優・井上喜久子の娘でもある井上ほの花と同じステージで彼女が歌う日が来るとは。安部菜々というアイドルが生み出された日にはきっと想像することもできなかったはずの未来風景だ。ダンサーたちのウェーブリレーを先導した三宅は、最後はアンカーとしてステージを全力ダッシュ! そこには自ら体力の限界に挑戦しているからこそのリアリティと輝きがあった。

立花理香は「花簪 HANAKANZASHI」を披露。渦巻き模様の和傘をくるくると回しながら登場した立花は、なんと7年前にこの曲で着用していた赤い着物風衣装で登場。今回のライブで個別衣装を着用したのは彼女だけであり、本人の希望と意欲を可能な限り叶えようとする「シンデレラガールズ」ならではのサプライズだろう。この衣装と和傘の組み合わせは、歌唱中の彼女の涼やかではんなりした佇まいをこの上なく引き立てている。思い返せばDAY1の過去ライブ名場面映像の中で、しっかりとこの衣装で歌う立花の姿が映し出されていた。間奏はキュートなアイドルらしいステップから一転して雅やかな舞を見せたりと、動きと表現の緩急でも魅せていく。落ちサビではステージに傘を置いて、歌声に全ての意識と気持ちを込める。そうすると歌声の伸びやかさのギアがさらに一段上がったようで、記念すべき日にこれまでの修練と成長を見せるようなパフォーマンスだ。アウトロで和傘を背負い直してのウィンクが、とても華やかで鮮やかだった。

最初期の楽曲のひとつである「輝く世界の魔法」は、五十嵐裕美と井上ほの花の組み合わせで披露。「シンデレラガールズ」のはじまりから走ってきたアイドルと、もっとも新しい声を持ったシンデレラという組み合わせには明確な意図を感じる。

驚いたのは井上が満面の笑顔で、本当に楽しそうに歌うこと。歌声からは七海らしさがあふれていて、天真爛漫な歌声が五十嵐の歌声とぴったりフィット。その上でオリジナルな個性を発揮している。「だ行」の発音が「らりるれろ」になってしまうという七海の個性は扱いが難しそうだが、井上は「大変らけろ~」とキュートなアクセントとして完璧に歌いこなしていく。井上が会場の光景を「お魚さんみたいにきれいれすねぇ」とお魚大好きアイドルらしく表現すると、五十嵐も「おいしそうだね」の返し。一往復のやりとりでふたりが演じるアイドルの個性が伝わってくる。

ハッとしたのは、“いくつ時間が経っても大丈夫 この魔法は解けないよ”という信頼の歌詞が、楽曲リリースから8年の時を経て眩しいほどに輝きを増していたこと。このフレーズは、それ以前からずっと「アイドルマスター」を見つめ続けてきた作詞家のyuraだからこそかけられた魔法な気がする。五十嵐と井上は練習中、ずっと楽しく話して笑いあっていたそうで、曲中の台詞などは五十嵐が考えてくれたとのことだった。

最初のMCコーナーは、「忘れられないあの出来事」がトークテーマ。安齋にとって「シンデレラガールズ」はずっと憧れで、オーディションの知らせを聞いた瞬間から心臓がバクバクして、本番前は緊張で泣いてしまったとのことだった。井上は七海としてだぢづでどがらりるれろになる収録を毎日やっていたら、日常で口調がもらりるれろになってしまった“七海ちゃん現象”を紹介していた。二ノ宮は初めてのイベントタイトルコールが琴歌&七海のゆったりテンポのコンビと一緒で、マキノのクールさをキープしながらどう合わせるかの悪戦苦闘について語っていた。本格演歌を歌うアイドルとしてNHKの歌番組に出演した特異な経験を持つ花井美春は、演歌歌手の水森かおりに「私の親戚がアイドルマスター大好きなんだよ」と言われ、一緒に写真を撮ったというエピソードを明かしていた。

朝井彩加、嘉山未紗、長島光那はDAY1に続き3人編成で「ガールズ・イン・ザ・フロンティア」を披露。嘉山のぴょんとたったアホ毛や長島のメガネなど、ビジュアルでのアイドル表現にもこだわりを感じる3人だ。歌いだしを担当する長島の堂に入った低音の歌唱とつややかな表情、ダンスのキレを見ると、メガネアイドルという個性の影に隠れがちな長島自身の万能性とスキルの高さを再確認する。3人編成になったことで落ちサビの頭は朝井のロングソロに。情感たっぷりに早坂美玲流の歌い上げを見せた朝井が「だから、拓けぇぇぇぇ!」の叫びを本当に楽しそうにキメていたのも記憶に残った。この3人は4thLIVE~5thLIVEから参加したアイドルたちで、今やそれなりのキャリアがあるメンバーになっていることにシンデレラの層の厚さを感じる。

安野希世乃は「Rockin’ Emotion」を披露。「ここからは私の番だ!」と叫ぶと、観客の気持ちをクラップで表現してほしいと要望。語りかけ、歌いかけながらクラップを求める「もっと!」から「サンキュー!」の流れがとてもロックだ。夏樹をまとった安野の存在そのものがロックで、何よりかっこいい! それでいてキメポーズで笑顔で小首をかしげる仕草はさわやかでチャーミングでもある。実は彼女がこの曲をソロで歌うのは珍しく、ハンドマイクで歌うのも初めてとのこと。彼女が初めて「Rockin’ Emotion」を披露した幕張メッセという場所で、原点の楽曲を今の木村夏樹として鮮烈に歌いきった。MCでの「どんな大きな会場でも夏樹にとってはきっとライブハウス」という言葉も記憶に残った。

安野が「お次はだりー、任せたぜ!」とバトンを渡すと、登場したのはもちろん青木瑠璃子。楽曲は彼女の原点である「Twilight Sky」だ。生き生きと客席を煽る青木からカメラが引いていくと、観客席の前の方がオレンジに、そこから後ろが青く染まって黄昏時の空のグラデーションを表現する。1stライブの観客有志からはじまった客席自己演出だが、この美しい光景自体が原点のライブを思い出させるのは積み重ねてきた物語の力だろう。スクリーンを彩る光も青とオレンジに色調を揃えているのが、演出サイドから会場のプロデューサーたちへの信頼を感じさせる。もともとステージでのかっこよさと表現力では高い次元にあった青木。そこからさらにうまくなった、成長した、安定していると感じるのは、地道で地味な努力の積み重ねの成果だろう。代名詞となったエアギターを楽しげに繰り広げると、落ちサビの歌唱に本当に大切に心情を込めていった。彼女の向こうに成長した多田李衣菜の姿が重なり合って見えるような、充実のパフォーマンスだった。

今度は青木のフリを受けて登場したのは朝井彩加、楽曲は「Claw My Heart」だ。その左目には、彼女が本当の勝負曲でしか身に着けないラメ入りの眼帯が輝く。その不敵な表情と襲いかかるように躍動する身体表現は“眼帯あり”の姿ならではの戦闘モードだ。赤、紫のライト、レーザーが乱舞する中で、キメポーズのひとつひとつが怖いくらいに絵になる。カメラワークもMVのように挑戦的で、“左目には夢を映して”のフレーズで目元を指す仕草では限界までカメラを寄って瞳と眼帯の煌めきを見せる。ダンサーと一体になって躍動するラップパートから、浮遊感のある歌唱パートへシームレスに突入、そして圧巻のラスサビへ。想いとエネルギーの全てを爆発させるような、最強のパフォーマンスだった。

「メッセージ」は大橋彩香と二ノ宮ゆいが披露。これは明らかに五十嵐と井上の「輝く世界の魔法」と対になる、あるいはひとつの流れの中にある、原点を知る先輩ともっとも新しい声の新人という組み合わせだ。驚くほどボーカルのトーンがピッタリと合う2人。大橋がいつも通り(に安定して、ほれぼれするほどうまく、魅力的)なことを考えると、この調和は二ノ宮が寄りそって生まれている部分が大きい。それだけ二ノ宮のボーカルの基礎力、表現力は高い。実はこの2人は同じ事務所の先輩後輩で、二ノ宮は先輩たちに追いつきたい、近づきたいと思いながら「アイドルマスター」のオーディションを何度も受けていたとのことだ。作品の枠組みの中でのアイドルの関係性と、演者が演者に抱く憧れがリンクしているのはとても面白い。憧れと想いを込めたステージへの評価は、会場からの万雷の拍手が教えてくれた。

安齋由香里、五十嵐裕美、松嵜麗は「Dreaming Star」を披露。相葉夕美のソロ曲だけに意外とも言えるチョイスだが、安齋演じる琴歌と夕美がともに花が大好きで、ユニットも組んでいるつながりだろうか。安齋のツインテールをまとめる花飾りが楽曲のイメージにもぴったりだ。安齋が「せいいっぱい、笑顔をお届けしますわ!」とカメラに気合を入れてみせると、琴歌感がぶわーっと吹き上がるように強くなる。次に安齋が気合を入れるくだりでは、画面いっぱいに「どやふんすっ」の書き文字が。「シンデレラガールズ劇場」の4コマ漫画発のネタをステージ上でキュートに表現してみせた。そんな安齋をキャラクター(アイドル)感満点のパフォーマンスで支える五十嵐と松嵜の姿は、あんきらファンにとってもたまらない光景。曲中のふたりの合いの手も実にいい味を出していた。

ここでのMCコーナーのトークテーマは「忘れられないライブの名場面」。大橋は2013年にゲスト出演した“THE IDOLM@STER 8th ANNIVERSARY HOP!STEP!!FESTIV@L!!”幕張追加公演がこの日と同じ会場だったことを挙げ、福原綾香とふたりで「お願い!シンデレラ」を歌った思い出を語った。嘉山未紗は京セラドーム大阪での「義勇忍侠花吹雪」の初披露の際、せり上がりで待機する仲間の田澤茉純と新田ひよりがあまりに緊張しすぎてかえっておかしかったエピソードを披露。ユニットとしての“初披露”がドームライブであるというスケール感が「シンデレラガールズ」の今を感じさせた。森下は天野聡美とのユニット、ミス・フォーチュンとしての思い出を挙げ、初めて2人で歌った幕張メッセという会場で、今度は「幸せの法則~ルール~」という自分たちのための楽曲を歌った時に胸いっぱいになった思い出を語っていた。佳村は「シンデレラガールズ」初のイベントで、ステージで歌うかどうかを自分たちで決めることになったエピソードを披露。大橋と佳村が少し迷う中、福原が「歌います!」とはっきり即答したとのことで、「シンデレラガールズ」の本気のライブはそこから始まったのかもしれない。

後半戦は神谷早矢佳、小市眞琴、花井美春、森下来奈の「TRUE COLORS」から再開。この4人は「7thLIVE TOUR」の幕張、愛知、大阪のそれぞれの別公演でこの曲を歌っていたとのことで、別々の会場で歌っていた近い世代の仲間達が、ひとつの会場に集って、それぞれの個性の衣装をまとってこの曲を歌うことが感慨深い。

「TRUE COLORS」のラストフレーズは“虹の橋を架けよう”だが、曲のつながりに遊び心を込める演出チームのやり方を知っている人なら、次の楽曲はピンと来たことだろう。松井恵理子が曲中で客席に“虹色橋”を架ける「2nd SIDE」だ。「千葉ー、一緒に楽しもう!」と元気いっぱいに叫んだ松井は、本当に楽しそうに歌う。「もっともっと楽しんでけ~!」と叫ぶ自身が率先して楽しんでいる様子で、見ているだけでこちらも笑顔になってしまう。待ちに待った虹色橋のフレーズでは、もちろん客席が七色に瞬時に変わった。その景色を見渡した松井は「みんな、大好きだー! 虹色橋、千葉にもかかったね!」とにっこり笑っていた。

神谷早矢佳、嘉山未紗、小市眞琴は「ドレミファクトリー!」を披露。「ドレミファクトリー!」はコミック「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」から生まれた、身長149cm以下の小学生たちが歌う楽曲だ。神谷演じる南条光と嘉山演じる脇山珠美は、年齢こそ違うが149cm以下という小柄な体格は共通している。楽しく元気いっぱいなイメージが強い楽曲だが、そのステップや振付はテクニカルかつハード。初挑戦の嘉山は「何をしていても頭の中に「ドレミファクトリー!」が流れる」というほど大変だったようだ。そんな大変で最高に楽しい楽曲であるが、小学生、あるいは小柄なアイドルが参加する共通曲として面白い位置づけになっていきそうだ。小市は新しいメンバーでの顔ぶれを喜びつつ、また小学生チームで披露することにも意欲を見せていた。

立花理香、花井美春、三宅麻理恵、森下来奈の「命燃やして恋せよ乙女」は、本番直前に五十嵐&松嵜のあんきらコンビが会場後方から歌番組のテイストで曲前煽りを行なう面白い趣向。松嵜(きらり)の「ウサミン!」連呼や、「色々背負って歌っていただきましょう」という言葉から、自然に“永遠の17歳”ウサミンを演じる三宅にフォーカスが集まっていく。

メインステージに登場した4人は演歌調のイントロと台詞でたちまち世界を作り上げていく。立花と花井、森下はそれぞれがアイドルとして“和”を背負いながらも、表現がまるで違うのが面白い。そして「命燃やして恋せよ乙女」といえば、歌唱アイドルに合わせた乙女口上だ。今回は「京都から来たはんなり乙女」「島根から来た幸運の乙女」「広島から来たカチコミ乙女」とそれぞれの地元を織りこんだ。オチはもちろん三宅で、「千葉、じゃない!! ウサミン星から来た乙女! 私たち10周年だよ、全員乙女!」という大ネタをぶっこんでいた。

最初期を知る先輩と初ライブの新人がデュオを組む最後の授業は、佳村はるかと安齋由香里の「We’re the friends!」だった。「イエーイ!」「フー!」の声で息を揃えたふたり。指揮をするような安齋の動きが弾むようで、このライブ、この楽曲を楽しんでくれていることが伝わってくる。印象的だったのが安齋の「ごきげんよう! 私の声、届いていますか?」という言葉で、最初期から「シンデレラガールズ」に存在した西園寺琴歌というアイドルの“声”が、10年たった今やっと届いたという特別な体験を表現しているようだ。
“失敗した日の帰り道”を歌う佳村の表情と表現が本当に落ちこんでとぼとぼ歩いているようで、表現面でも本当にうまくなったと感じる。誰よりも努力して誰よりも成長したシンデレラだからこそ、伝えられる何かがきっとあるはずだ。MCでのやりとりで佳村が語った、安齋が最初の練習では所作がきれいなお嬢様に見えたのに、本番のリハではお嬢様感に元気感が加わっていた、という言葉に、後輩のことを本当によく見ているなと感じた。

もうひとつの驚きの選曲が、青木瑠璃子、井上ほの花、大橋彩香による「Treasure☆」だった。この曲は「シンデレラガールズ」のふたつのラジオ、「デレパ」と「デレラジ」がコラボした楽曲で、青木と大橋はそれぞれの番組のパーソナリティだった。曲中で描かれるのはお宝を求めて大海原を行く大冒険であり、海といえばお魚、お魚と言えば浅利七海の白羽の矢がたったということだろう。歌い出しのロングソロを井上が担当すると、輝くような笑顔と七海そのものの歌声、そして“漕ぎらそう”と舌っ足らずに歌う節回しで、浅利七海の魅力を100%見せつけてみせる。元気いっぱいな振付には雄大ささえ感じられて、これはまさしく逸材だ。荒れ狂う高波に翻弄される様子が、本当にフラフラでかわいらしい。「Treasure☆」の詞の世界では、荒れ狂う波に翻弄されるところに、他のアイドルの船が助けに来る。危機に「もう大丈夫!」「助けに来たよ!」と駆けつけるのが大橋彩香と青木瑠璃子である、これ以上に安心できることがあるだろうか。ひとたび大橋がボーカルを取ると、コミカルな世界がミュージカルの側にぐいっと引き寄せられる気がする。そして大橋と青木がすごい先輩であるからこそ、その真ん中で生き生きと自由に、主役として歌い踊る井上の非凡さが際立って感じられる。卯月と李衣菜の船が無数の鯖に翻弄される鯖ストームに巻き込まれると、今度は七海がふたりを救うのだった。

「Gossip Club」は森下来奈、佳村はるか、和氣あず未が披露。原曲はセクシーギャルズのユニット曲だけに、もうひとつのセクシーユニット・セクシーギルティから和氣が加わるのは面白いコラボ。そして、自覚的に表現するセクシーとは無縁と思われる鷹富士茄子役の森下がこの曲をどう表現するのかに注目が集まった。歌い出しから森下のセクシーな表現は堂に入ったもので、その微笑みは蠱惑的ですらあった。和氣はこのセンターにいるのがあまりにも自然で、最初からユニットメンバーだったように感じてしまうほど。そして言うまでもなく、佳村は本気でセクシーを表現させればナンバーワンのカリスマアイドル。ユニット楽曲を違うメンバーで歌うからには、ふさわしいメンバーで、そして歌い手の新しい魅力も引き出してみせるという、作り手のこだわりが伝わってくるパフォーマンスだった。

「Trancing Pulse」は長島光那、二ノ宮ゆい、松井恵理子が披露。松井が所属するトライアドプリムスの楽曲であり、凛、奈緒、加蓮というみっつの頂点が揺らぐことはないイメージだっただけに驚きは大きい。福原綾香がいない「Trancing Pulse」、それだけで見たことのない新光景だ。だが、アニメでトライアド結成を主導した美城常務が八神マキノというアイドルを見れば、きっと彼女をプロジェクトクローネに勧誘したのではないだろうか。クールでソリッドというイメージでマキノというアイドルはこの曲にぴったり。ならば二ノ宮ゆいという驚異の新人が、この楽曲をどれだけ歌いこなせるかだ。歌いだしの三重奏を見事に歌いこなした二ノ宮は、力感あふれるボーカルで彼女流の「Trancing Pulse」を構築していく。長島が重厚な低音で新たな一面を見せると、オリジナルメンバー・松井もまた超ロングトーンで、最高に高らかで力強い奈緒の姿を更新していった。

朝井彩加、安野希世乃は「∀NSWER」をデュオバージョンで披露。∀NSWER、そして原曲のindividualsというユニットは朝井にとって本当に深い思い入れがある大切なユニットだ。朝井は勝負曲で身につける眼帯を再びまとって登場。その世界に、木村夏樹をまとった安野というロッカーを放り込むことで、一体どんな化学変化が起こるのか。ふたりの「∀NSWER」は、一言で言えばワンオンワンのバトルのようだ。強烈な世界観の中に、さわやかですらある楽しそうな笑顔で入っていく安野もまた、ロックという名の狂気を体現しているようだ。ボーカル面では安野の低音の成分の力強さが引き出されていて、“存在の定義”のシャウトに低く入ってパワーで押し通るような歌唱は初めて見る歌い方だ。その存在感に刺激されたように朝井の表現もつややかに戦闘力を上げていく。それは向かい合って存在をぶつけ合う戦いの歌だった。

神谷早矢佳、嘉山未紗、小市眞琴、長島光那、和氣あず未の“バーニング・バスターズ”は前日に続き、「Just Us Justice」を披露。今度は「∀NSWER」で燃え上がった熱をそのままに持ち込むような勢いと熱量があって、ちょっとした曲順や間合いの違いでも空気が変わるのがライブの面白さだ。そのセンターで熱く叫び、強い意志のこもったダンスを見せる神谷の姿はまさにヒーロー。2日間のライブを通して、ヒーローアイドルとしての南条光の存在がよりクリアに感じられるようになったと思う。

そして安齋由香里、井上ほの花、二ノ宮ゆいの3人は「Let’s Sail Away!!!」を披露。彼女たちが担当するアイドルが声を得ることになった、「第2回ボイスアイドルオーディション」の上位アイドルによる楽曲。まさしく彼女たちにとってのはじまりの楽曲だ。井上が笑顔で歌う陽性でハッピーな存在感が核にあり、二ノ宮のクールな歌声と安齋の品のあるボーカルが多彩な色を加えていく。そしてこの曲のフルサイズは今回のライブが初披露。誰も見たことがない航路の新光景を、明るく楽しくハッピーに拓いていった。

青木瑠璃子、五十嵐裕美、大橋彩香、松嵜麗、三宅麻理恵、佳村はるかの6人は「ススメ☆オトメ ~jewel parade~」を披露。この曲は「シンデレラガールズ」の1stLIVEでも披露された最初期楽曲であり、その楽曲を1stLIVEに出演した6人が歌い、10周年のメモリアルの最終盤に持ってくるのがあまりにも心憎い。思えばこの曲がライブ初披露されたのは、2014年のリスアニ!LIVE-4だった。「Let’s Sail Away!!!」から「ススメ☆オトメ ~jewel parade~」、その流れはこの作品とシンデレラたちの未来と過去を歴史ごと抱きしめるような流れ。これからも乙女たちは笑顔で力強く進んでいくと確信できる、懐かしく幸せな時間だった。

本編のラストナンバーは「EVERLASTING」。「シンデレラガールズ」の10年間を凝縮したような楽曲だが、DAY2での一番大きな違いは“10年のその先”を担う3人の新たなアイドルが参加していることだろう。10周年は偉大なる記念碑だが、それはここから次の10年を紡いでいくはじまりの場所でもある。ラスト、自らの頭上に自身の手で、見えないティアラを象る振付が、とても「シンデレラガールズ」らしいと感じた。

アンコール中の今後の活動紹介では、第10回シンデレラガール総選挙楽曲CDが2022年1月に発売されることが告知された。同CDには上位5人曲「キセキの証」、ボイスアイドルオーディション曲「Let’s Sail Away!!!」、そして総選挙歴代シンデレラガールたちによる記念曲「ココカラミライヘ!」が収録される。また、My Best Cinderella Songsと題した楽曲投票の開催が明らかとなった(既に投票はスタート)。そして10周年アニバーサリー当日を記念した映像として、「シンデレラガールズ」の10年間をゲームサイドから振り返ったムービーを上映。ソーシャルゲーム版の「シンデレラガールズ」から始まって、これまでの作品に関わるイベントや作品展開の“全て”を可能な限り詰めこんだ壮大な映像だった。

そしてDAY2アンコールで最大の衝撃だったのが、10周年を記念したセレブレーションアニメの先行公開だ。その内容は魔王と化した神崎蘭子とアインフェリアの新田美波たちが激闘を繰り広げる劇中劇(?)だ。その内容は長編アニメの最終回のようなクオリティとテンション感だったが、真に驚くべきは今回公開された映像は、制作中のセレブレーションアニメの冒頭一部でしかないということだ。2022年に全編公開されるセレブレーションアニメ「ETERNITY MEMORIES」には、190人の(!)シンデレラたちが登場するとのこと。一体どんな内容になるのかも含めて期待したい。

締めの挨拶では、本番では堂々とパフォーマンスをしていた新たなシンデレラたちが、とても緊張して、特別な想いを持ってこの場にいたことが改めて伝わってきた。安齋が「私よりアイドル歴が長い琴歌ちゃんに追いつけるように、精一杯頑張りたい」と語ったり、二ノ宮がこの場を「初めてマキノちゃんに力添えができるステージ」と表現したりと、声を担当するアイドルを以前から存在していたひとつの人格として扱っていたことが印象深い。井上は「10周年というめでたい日に、憧れのステージに七海ちゃんとして立てていることが夢のようで、信じられないくらい嬉しいです」と、言葉につまりながら今の幸せな気持ちを言葉にしていた。今日出演したそれぞれのメンバーが、作品とアイドルとともに過ごした時間の中で感じた想いを込めた愛情と感謝の言葉たちは、特別なアニバーサリーを祝うのにこれ以上ない宝物だった。

アンコールを、そして2日間の公演を締めくくるラストナンバーは、「お願い!シンデレラ」。この曲を歌い踊り、一緒にはしゃげばシンデレラの仲間。それは10年近く、変わることなく紡がれてきた物語だ。すっかり大団円を迎えた感覚だが、このツアーはこれから名古屋公演、そして沖縄公演を残している。新たなステージを楽しみにしつつ、今はもう少しこの特別なアニバーサリーの余韻にひたっていたいと思う。

Text by 中里キリ

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th ANNIVERSARY M@GICAL WONDERLAND TOUR!!! Celebration Land DAY2
2021.11.28 幕張メッセイベントホール
<セットリスト>
M01:なんどでも笑おう(Long Intro Ver.)(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
M02:とどけ!アイドル(Long Intro Ver.)(立花理香、松井恵理子、安野希世乃、和氣あず未)
M03:ましゅまろ☆キッス(松嵜麗)
M04:メルヘンデビュー!(三宅麻理恵)
M05:花簪 HANAKANZASHI(立花理香)
M06:輝く世界の魔法(五十嵐裕美、井上ほの花)
M07:ガールズ・イン・ザ・フロンティア(朝井彩加、嘉山未紗、長島光那)
M08:Rockin’ Emotion(安野希世乃)
M09:Twilight Sky(青木瑠璃子)
M10:Claw My Heart(Long Intro Ver.)(朝井彩加)
M11:メッセージ(大橋彩香、二ノ宮ゆい)
M12:Dreaming Star(安齋由香里、五十嵐裕美、松嵜麗)
M13:TRUE COLORS(神谷早矢佳、小市眞琴、花井美春、森下来奈)
M14:2nd SIDE(松井恵理子)
M15:ドレミファクトリー!(神谷早矢佳、嘉山未紗、小市眞琴)
M16:命燃やして恋せよ乙女(Long Intro Ver.)(立花理香、花井美春、三宅麻理恵、森下来奈)
M17:We’re the friends!(安齋由香里、佳村はるか)
M18:Treasure☆(青木瑠璃子、井上ほの花、大橋彩香)
M19:Gossip Club(森下来奈、佳村はるか、和氣あず未)
M20:Trancing Pulse(長島光那、二ノ宮ゆい、松井恵理子)
M21:∀NSWER(朝井彩加、安野希世乃)
M22:Just Us Justice(神谷早矢佳、嘉山未紗、小市眞琴、長島光那、和氣あず未)
M23:Let’s Sail Away!!! (Long Intro Ver.) (安齋由香里、井上ほの花、二ノ宮ゆい)
M24:ススメ☆オトメ ~jewel parade~(青木瑠璃子、五十嵐裕美、大橋彩香、松嵜麗、三宅麻理恵、佳村はるか)
M25:EVERLASTING(Short Intro Ver.)(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
-encore-
M26:お願い!シンデレラ(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

関連リンク

「アイドルマスターシンデレラガールズ」日本コロムビア公式サイト
https://columbia.jp/idolmaster/

「アイドルマスター」公式ポータルサイト
https://idolmaster-official.jp/

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