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REPORT

2021.12.06

【ライブレポート】共に歩み、信じて待ち続けたそれぞれのキセキ。“THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th ANNIVERSARY M@GICAL WONDERLAND TOUR!!! Celebration Land” DAY1レポート

【ライブレポート】共に歩み、信じて待ち続けたそれぞれのキセキ。“THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th ANNIVERSARY M@GICAL WONDERLAND TOUR!!! Celebration Land” DAY1レポート

「アイドルマスター シンデレラガールズ」のライブイベント“THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th ANNIVERSARY M@GICAL WONDERLAND TOUR!!! Celebration Land”DAY1が2021年11月27日、幕張メッセイベントホールにて開催された。

DAY1には島村卯月役の大橋彩香、早坂美玲役の朝井彩加、双葉杏役の五十嵐裕美、小早川紗枝役の立花理香、安部菜々役の三宅麻理恵、多田李衣菜役の青木瑠璃子、脇山珠美役の嘉山未紗、結城晴役の小市眞琴、上条春菜役の長島光那、神谷奈緒役の松井恵理子、鷹富士茄子役の森下来奈、南条光役の神谷早矢佳、村上巴役の花井美春、諸星きらり役の松嵜麗、木村夏樹役の安野希世乃、城ヶ崎美嘉役の佳村はるか、片桐早苗役の和氣あず未、鷺沢文香役のM・A・Oが出演した。

観客無発声のアイマスライブではすっかり恒例となった協賛企業の読み上げから、アシスタント・千川ちひろの前説諸注意でライブはスタート。翌日の11月28日をもって「シンデレラガールズ」が10周年を迎えることが改めて伝えられると、会場からは一際大きな拍手が沸き起こった。

太陽系の彼方にある地球、秘境の彼方にあるCelebration Landを目指すオープニング映像。福岡公演ではダンサーたちが冒険の旅に出たが、本公演ではなんと“ぴにゃこら太”が雷雨の河川を、雪の寒村を、炎の洞窟を超えてその場所を目指した。

“ドンドンパ”のリズムで観客を盛り上げる重厚なovertureが流れると、ゆっくりと幕が上がってシンデレラたちのシルエットが登場。衣装は共通衣装ながら、カラーリングやスカートのデザインなどに各アイドルらしいモチーフを織りこんで個性化したシンデレラコレクションだ。照明の一斉点灯とともに開幕を飾ったのはゴキゲンなパーティーチューン「Yes! Party Time!!」! 明るくハッピーに10周年の前夜祭を祝うパーティーを繰り広げる。間奏にはゴージャスでパーティーと言えばの片桐早苗役、和氣あず未が音頭を取ってステージ上からウェーブを巻き起こした。

開幕曲からオープニングの挨拶を通して感じたのは、大橋彩香の輝くような笑顔がステージの真ん中にいてくれる安心感だ。「最初の曲はこの曲です」で出演者がほっぺに指を当ててかわいらしくキメる仕草は、大橋からのリクエストで実現したとのことだ。

ライブ本編の一曲目は大橋の「はにかみdays」。「島村卯月、歌いまーす!」の声とともに、満面の笑顔で観客たちに手を振った。イントロではゆったりと泳ぐような動きとともに笑顔の華を咲かせる大橋だが、いざ歌い始めるとボーカルの圧倒的な安定感と技術に思わず聴きいってしまう。「はにかみdays」は約2年ぶりの披露だが、その歌唱と表現力はさらに磨かれたように感じられる。いつだって今の大橋彩香が一番すごい。MCでは久々にプロデューサーに会えた喜びを込めて、初心に帰って歌ったと語っていた。

佳村はるかは美嘉の最初の楽曲「TOKIMEKIエスカレート」を披露。ダンサーと共に階段を降りながらのパフォーマンスは堂に入ったもの。シンデレラとしての10年近いキャリアの中で、誰よりも頑張り、誰よりも成長したのが彼女であることに異論は少ないだろう。大橋と佳村は「シンデレラガールズ」の最初のラジオ番組「デレラジ」のパーソナリティとして、最初期からコンテンツを牽引してきた。「シンデレラガールズ」の10年間の“原点”を感じさせるセットリストの立ち上がりだ。ライブを重ねる中でおなじみとなった“TOKIMEKI”コールを大合唱するくだりでは、声を出せない観客のかわりに、本日出演のアイドルたちが声を揃えて吹き込んだ音声が流された。

一瞬暗転した会場に、“働きたくない”双葉杏の台詞が響き渡る。もちろん楽曲は杏の代名詞とも言える原点の曲「あんずのうた」だ。登場した五十嵐裕美の髪色は、杏の特徴的な色に明るく染め上げられている。これが端的に言えば非常に似合っていて、まるで妖精のような非現実的な佇まい。これまではやってこなかったアプローチだけに、その効果は鮮烈だ。パフォーマンスはいつもと違うことをするのではなく、ひとつひとつの表現をかわいく、杏らしく丁寧に。もともとは生で歌いきることも困難とされていた楽曲の中で、10年大切に育てた双葉杏を表現しきってみせた。

「シンデレラガールズ」の10年のはじまり、という意味では、遠く徳島の地で誰よりも早くソロ曲をライブ披露したのが五十嵐だった。野外ステージで押し寄せる(ように感じる)人の波に後じさりながら歌いきった屋外ライブは伝説の始点のひとつ。そんな彼女が「最初の頃よりはるかに楽しかった」と言いきることが感慨深い。

シンデレラたちのはじまりと成長を見せることで、10年間を表現した3曲の楽曲たち。卯月の最初のソロ曲である「S(mile)ING!」は、ここに持ってくるにはTVアニメなどを通して獲得した別の意味合いと物語が大きすぎたのかもしれない。

静かで清浄なロングイントロが流れ、ライブの空気を切り替える。朝井彩加、嘉山未紗、小市眞琴による「Unlock Starbeat」だ。原曲から大きくメンバーを変え、楽曲に新しい色と表情を与えるのは今回のツアーでよく見られるアプローチだ。3人はスタンドマイクを片手に、頭上でクラップを打ち鳴らしながら会場のボルテージを高めていく。ステージのイメージは“学園祭ライブ”で、間奏では熱いエアーギターセッションを繰り広げた。バンドサウンドでロックのリズムに乗っていく嘉山の姿が特に新鮮だった。

「とどけ!アイドル」は立花理香、松井恵理子、安野希世乃、和氣あず未という2ndライブ~3rdライブで初めて大型ライブのステージを踏んだ組が披露。「とどけ!アイドル」は「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」のテーマソングだが、会場ライブでの披露は「SS3A」以来3年ぶりというから随分久しぶりだ。各人の歌声の存在感が抜群の4人で、全体曲の中でそれぞれのソロを存分に堪能できるのはとても贅沢な体験だ。特に楽曲全体に伸びやかな膨らみとハスキーなアクセントの両方を加える安野はスペシャルな存在だ。カメラを割り振られる瞬間に、音が出そうなウィンクやはにかみながらの指ハートをバチッとキメてくる立花のアピール力の高さが素晴らしい。

MCコーナーでは「忘れられないあの出来事」として、「シンデレラガールズ」に関わってからの思い出を順番に語っていく。大橋が2012年の初めてのイベントを振り返れば、朝井は自身の人生で初めて見た大きなライブイベントが「アイマス」の作品の枠を越えたイベント「M@STERS OF IDOL WORLD!!」だったと明かす。変わり種としては、五十嵐が衣装スタッフのつかない海外イベントで、衣装のサイズが合わずに息が止まりそうになりながら歌った裏話を明かしていた。ライブの思い出としては、やはり初めてのライブで見た会場の光景とその時の心情を挙げる人が多かったようだ。久しぶりのイベント出演となったM・A・Oは、たくさんの観客の前で歌う今日の景色こそを忘れられない出来事として挙げていた。

ハチャメチャに高まるイントロからスタートするのは、神谷早矢佳、花井美春、和氣あず未の「TAKAMARI☆CLIMAXXX!!!!!」。オリジナルメンバーでもあるセンター神谷の力強い煽りに、花井と和氣も元気いっぱいに応えていく。ソロパートの歌いだしの花井の曲調を選ばない歌唱力にまず驚くが、続く和氣と神谷の楽曲とのマッチングの良さも素晴らしい。リズミカルでありながら伸びやかな歌声の響き合いが気持ちよく楽しかった。

「オタク is LOVE!」は長島光那、松井恵理子、三宅麻理恵が歌唱。コールやネットコメント風の演出が会場の観客の分までスクリーンに詰めこまれているのが印象的だ。長島はこの曲にメガネを愛するメガネオタクとして参加。曲中に「きょうは特別にみなさんをメガネ色にしちゃいますよ!」と宣言すると、松井と三宅もメガネを着装! 松井は「クリアな世界だー!」と眼鏡越しの光景を高らかに叫んでいた。バラード部のしっとりあり、オタク心とエネルギーあふれる掛け合い煽り合いありのバラエティに富んだパフォーマンスだった。

バブル感あふれるサウンドと、色とりどりのスポットやレーザーを見せる演出がスクリーンを満たす。ダンサーたちとともにジュリアナ扇子を打ち振るいながら登場したのはもちろん和氣あず未、楽曲は「Can’t Stop!!」だ。この曲はダンス隊に他のアイドルが参加することが多い楽曲で、実は純然たるソロ披露は初めてかもしれない。和氣の華やかな「バキューン!」の声でショータイムがスタートすると、ステージはお立ち台に、ユーロビート感のあるサウンドとともに踊り狂う空間に早変わりだ。全てのスポットと注目が主役に集まる空間もとても魅力的だったが、和氣からは「キャストさんがお手伝いしてくれる制度が大好きなので、いつか一番ノリノリなりっか様が見たい」との言葉もあった。

攻めの和ロックが響き渡るのは「義勇忍侠花吹雪」。オリジナルメンバーの嘉山未紗と、立花理香、花井美春という新鮮な組み合わせだが、和のアイドルの立花と、任侠要素を担う花井という組み合わせは明快かつしっくりくる。ソロパートでの花井の低音の力強い節回しはこの曲にあつらえたようにぴったりだし、立花にソロが渡るとステージの空気がはんなりと丸くなる。メンバーの強い個性に引っ張られて新しい表情を見せながらも、ベースにある和のテイストとかっこよさは維持されているのが面白い。3人の真ん中で力強く歌い踊る嘉山の頼もしさも印象的だった。

テンションはそのままに、色合いの違うかっこよさを持ったロックナンバーである「Jet to the Future」に雪崩れこむ。歌唱はもちろん青木瑠璃子と安野希世乃だ。輝かしい歌い出しで相棒と歌声を揃える青木の、ステージを楽しんでいることが伝わってくる笑顔がいい。並び立つ姿が本当に絵になる2人で、安野の夏樹に寄せた髪型もアイドルの具現化を後押ししている。間奏ではスタンドマイクを持ったままステージの前に出たふたり。MCでふたりが語った「マイクスタンドとお友達になれた」という独特の感覚のフレーズが興味深かった。

ロックナンバーが続いた流れで、駆け抜けるように「ガールズ・イン・ザ・フロンティア」へ。歌唱は朝井彩加、嘉山未紗、長島光那と比較的新世代が揃った。歌い出しのソロパートを担当する長島がアップで映し出されると、「オタク is LOVE!」とは眼鏡が変わっていることに強いこだわりを感じる。元は5人編成の楽曲だが、パワーが必要な曲が3人編成にぴったりとハマっていること自体、個々のボーカルが持つ力の証明だろう。朝井はオリジナルメンバーだが、センターに立って微笑みをたたえて歌う姿はまた違った良さがある。ライブでのこの曲といえば「だから、拓け!」の会場を切り裂くような叫びだが、今回は朝井が担当。その瞬間にカメラが超速で引いて会場全景に切り替わる絵がまさに“世界を拓く”感じで、爆発力が素晴らしかった。

ここでのMCコーナーでのトークテーマは「忘れられないライブの名場面」。松井が最初の頃奈緒の衣装が(クール属性なのに)ピンクであったことに驚いたエピソードや、青木の「ライブで大変だった思い出は大体「0ω0ver!!」」といったものも。長島はナゴヤドームでの「Needle Light」の初披露で、2日間の間に会場のコールが進化して大きくなっていった光景を挙げ、観客の成長と吸収力を名場面としていた。安野からはサプライズ出演となった4thLIVE神戸公演(2016年)について、本来出演できないはずだったのが「炎陣の「純情Midnight伝説」だけでも歌わせてほしい」と自身の強い要望で出演させてもらったという裏話が明かされていた。

後半戦のトップバッターは五十嵐裕美と松嵜麗の「あんきら!?狂騒曲」。ヒゲドライバーの「アイマス」初提供曲として知られ、「デレステ」世代を代表する楽曲のひとつだ。「あんずのうた」と同日にこの曲を持ってくるあたり、10年分の出し惜しみなしなスタンスを感じる。曲中でふたりがけんかするくだりがある楽曲だが、今日の松嵜はにこにこのままで、あんきらが楽しくじゃれあっている印象が強い。おたがいのいいところ、好きなところを言うパートでは、見つめあって優しい表情で歌いあった。コールアンドレスポンスのくだりは、クラップアンドレスポンスにアレンジ。“あんきら!”“10周年”“おめでとう!”といったリズムのクラップと拍手で、観客も一緒に祝福していた。

長島光那は「春恋フレーム」を披露。配信ライブでは歌われていたが、有観客では初めての歌唱となる。言うまでもなく上条春菜が愛するメガネをモチーフにした楽曲。“レンズ越し見つめれば”のフレーズで長島の表情が大きくアップになるのだが、彼女がかけたメガネにフォーカスする絵に見えるのがこの曲この人ならではだ。“眼鏡好きですか?”と問いかけていた恋する少女が、最後に勇気を振り絞って放つ「私を、好きですか?」のフレーズが、魂のこもった叫びとして聴くものの心をふるわせた。無数の光揺れる会場からは、声にならない大好きという想いのレスポンスが弾けているようだった。

森下来奈は「初夢をあなたと」を披露。こちらも有観客ライブ初歌唱だ。和楽器をふんだんに使ったロングアレンジのイントロが、会場を雅な、一足先の新年のムードに変えていく。ロングバージョンのイントロを曲間のブリッジにして、自然に会場の雰囲気を変える手法は今回のライブでたびたび使用されている。歌唱中のおだやかで本当に幸せそうな表情が印象的で、歌い終えた森下は「プロデューサーさんが目の前にいるって実感しながら歌えました」と語っていた。“あなたと”の距離感で歌う楽曲だからこそ、有観客での披露には特別なものがあったようだ。

花井美春は超本格演歌「おんなの道は星の道」を披露。前曲は新年のイメージだったが、この曲は年越しの歌番組だろうか。スクリーンに紅葉が舞い散る中、響くイントロはたちまち会場の空気を歌謡の世界に変える。作曲の弦哲也をはじめ、本物の演歌の大御所クリエイターが手掛ける楽曲だが、その楽曲を本物たらしめているのは花井の民謡仕込みの素晴らしい歌唱力だ。アイドル衣装とティアラという装いはともすれば楽曲とミスマッチだが、彼女の歌声と眼力がまとう本格の空気が世界を完璧に掌握していた。この“世界”をライブの流れの中で許容する自由度と懐の深さは「シンデレラガールズ」ならではと言ってもいいだろう。歌い終えた花井が深々と一礼すると、会場にはさざなみのように拍手が広がった。

ソロ楽曲並びのトリは、M・A・Oが「Bright Blue」を歌唱。M・A・Oの「シンデレラガールズ」関連イベント出演は、2014年にお台場のガンダム立像横で行なわれた「We’re the friends!」発売イベント以来であり、「シンデレラガールズ」の大型ライブには初出演となる。今年行なわれた第10回シンデレラガール総選挙では鷺沢文香がシンデレラガール(1位)となっているが、ライブで彼女の歌声を聴きたいというプロデューサーたちの切なる願いもまた、その原動力のひとつだったはずだ。

ゆったりとステージに歩み出たM・A・Oは、微笑みとともに優雅に舞うようなダンスを披露。美しい歌声を紡ぎ出すと、会場に清浄な空気が広がるようだ。一度楽曲に入りこむと、その歌声と佇まい、ふわりと羽根が生えたような軽やかな足取り、仕草のひとつひとつが鷺沢文香そのものであるように感じられる。星が眩しい空を高らかに伸びやかに歌い上げると、スクリーンに美しい流星が幾筋も流れる。落ちサビでは時間が止まったような空間の中で、M・A・Oの微笑みと光の強い眼差しがキラキラと輝いているようだった。

神谷早矢佳、小市眞琴、花井美春、森下来奈は「TRUE COLORS」を披露。近い時期に声がついた新世代のアイドルたちが、「デレステ」4周年のアニバーサリー曲を歌う。ヒーローも、少年っぽいサッカー少女も、演歌を歌いこなすお嬢も、幸運の乙女も、全ての個性を多彩な色として受け止めるような楽曲だ。その歌声が新鮮に美しく響くのも、それぞれが強烈な個性を存分に発揮したライブという前フリがあればこそだ。間奏部のキメポーズも、神谷はヒーローの変身ポーズ風だったりと個々のカラーを反映している。虹の七色に照らし出されたような、美しく調和したパフォーマンスだった。

ラストブロックは神谷早矢佳、小市眞琴、松嵜麗による「LET’S GO HAPPY!!」からスタート。TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ」でユニット凸レーションが歌った楽曲だが、オリジナルメンバーのきらりと小柄な結城晴&南条光の身長差は元ユニットにも通じるものがある。驚いたのは小市の少年感と神谷のヒーロー感で楽曲のテイストが別物と言ってもいいほど変化していたことで、掛け合いや合いの手もこの3人専用にアレンジされている。「目をそらすなよ!」とかっこよくウィンクした小市が、「L・O・V・Eシュートだ晴!」の合いの手を受けて見事なシュートをキメたのはアレンジの最たるものだ。演者の各アイドルらしいポーズを客席が真似するポーズ&レスポンスがあったりと、その日のメンバーその日の環境でみんなで楽しむ姿勢にきらりと松嵜のイズムを感じた気がした。

「Wonder goes on!!」はオリジナルメンバーの青木瑠璃子、三宅麻理恵、安野希世乃プラス佳村はるかが参加。4つのピースの中に佳村のカリスマボイスと笑顔が入るのは新鮮でありながら、あまりに自然に馴染むのは長年の戦友ならではだからこそだろう。印象的だったのは間奏のエアギターセッションで、全力ジャンプから三宅が大きなモーションの大きなギタープレイを披露。青木の横で片膝をついてエアギターを見せる佳村が、楽しそうにヘッドバンギングめいた動きをしていたのもこの曲ならではだ。華やかなロングギターソロでは、青木がこれが本家だと言わんばかりに両膝付きの躍動感あふれるエアギタープレイを見せていた。

「美に入り彩を穿つ」はオリジナルメンバーの立花理香と、朝井彩加&森下来奈が歌う意外な組み合わせ。和のテイストを森下が、躍動する攻めの曲調の成分を朝井が担っている感じだ。個性と歌声がぶつかりあう原曲に比べ、個性と歌声がせめぎあいながらも溶け合う感じは新しいトリオ曲として新生している。ラストの畳み掛けで視線を合わせるパートでは、たっぷりとしたタメの中でセンターに立った立花が左右のふたりとしっかりと視線を結び、頼れる先輩らしさを感じさせた。

神谷早矢佳、嘉山未紗、小市眞琴、長島光那、和氣あず未の5人は「Just Us Justice」を披露。ユニット“バーニング・バスターズ”オリジナルメンバーが集結しての待望の初披露だ。5人の背後のスクリーンに爆炎が立ち上り、ユニットロゴが浮かび上がる演出は特撮ヒーロー番組そのもの。各メンバーのソロパートでは、オープニング映像風にメンバー紹介が行なわれたりもした。エネルギーが吹き上がるようなクライマックスでは五色に分割されたスクリーンに各メンバーが歌唱する立ち姿が映し出され、映像を含めた作り込みが素晴らしいパフォーマンスだった。

ノンストップで畳み掛けるテンポだったライブの中で、不意に訪れた暗転と沈黙が、次に来る特別な何かを予感させる。柔らかいスポットライトで浮かび上がったM・A・Oが歌い出したのは、誰も聴いたことがない楽曲。ソロ曲かと見まごうほどのロングソロに続いて、対称の立ち位置で松井恵理子が歌い出したことで、この曲が初披露の、第10回シンデレラガール総選挙上位入賞者曲であることがおぼろげに明らかになる。曲名は「キセキの証」だ。この曲での松井の歌声は透明かつとても繊細な高音で、M・A・Oの歌唱にふわりと寄り添っていくよう。松井のボーカリストとしての引き出しの多彩さを感じる。ふたりの歌声のトーンや色合いが美しく調和していることで、まるでこの2人のデュオユニット曲であるかのように響いた。これから様々な組み合わせで歌われていくであろう楽曲だが、この日この組み合わせでの響き合いはこの場限りのものだと確信できる特別な時間だった。

とても意外だったのが、ここで大橋彩香が「キミのそばでずっと」を歌ったことだった。同曲は第5回シンデレラガールズ総選挙の上位アイドルが歌唱した楽曲で、その時のシンデレラガールが島村卯月だ。このタイミング、そしてソロでの披露には驚かされたが、思えばこの曲が総選挙曲としてフォーカスされて歌われたことはあまりなかったような気がする。10年の感謝を込めてこの曲をソロで歌うのは、「シンデレラガールズ」の歴史とともに駆け抜けてきた大橋、そしてシンデレラガールたる島村卯月だけに許される特別なのかもしれない。フレーズのひとつひとつに想いを込めた表情豊かな歌声は、大橋と卯月が地道に積み重ねてきた成長と進化の道のりを象徴する宝石のようだった。

ライブ本編のラストナンバーは、全アイドルによる「EVERLASTING」。歴代の名曲たちのエッセンスを詰めこんだ珠玉のナンバーで特別な“前夜祭”を締めくくった。

アンコールでは「EVERMORE」に乗せて、「シンデレラガールズ」の10年間の軌跡をライブサイドを中心に振り返る特別映像が上映された。ファーストライブから歴史をなぞっていく中で、安野が出演の裏話を明かした4thLIVE神戸公演の炎陣ステージや、今日の出演者に縁が深い「SS3A」の映像など、メンバーに合わせたチョイスを織りこんでくる気遣いが細やかだ。アイドルたちの笑顔と涙、思い出ボムを凝縮して具現化した映像を見せるのはズルいというしかない。

告知コーナーでは、ツアーの一公演のDAY1とは思えないほどの量の新情報が出された。これも10周年前夜祭ならではかもしれない。中でも大きなニュースはソロCDシリーズ「CINDERELLA MASTER」第15弾として辻野あかり、久川颯、ナターリアのCDが2022年春にリリースされることだろう。最近では様々な形でソロ曲がリリースされるようになったが、やはりそのアイドルのために作られる1枚のCDはいつの時代も特別だ。

ソロ曲関連では、コミック「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」の9巻特別版に、的場梨沙オリジナル新曲が収録されることが発表され、大きな拍手を浴びていた。

だが発表でもっとも会場を驚かせたのは、「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER jewelries!」第4弾の制作発表だろう。「jewelries!」シリーズはキュート・クール・パッションの属性別に制作されるCDで、新曲とともに各アイドルによるカバー楽曲を収録しているのが特徴だ。前シリーズがリリースされたのは5年半前であり、まさかの新シリーズ告知が驚愕を呼んでいた。

ふたたびアイドルたちが登場しての締めの挨拶では佳村が、かつては現実の目標としてイメージできなかった“10周年”を翌日に迎える喜びを語った。大橋はその記念日を「卯月と人生を共にしてもうそんなに経つのか」と感慨を込めて表現した上で、「これから先も卯月と一緒に、素敵な未来に向かって走り続けたいと思います」と、10年のその先を語っていた。

前夜祭を締めくくるラストナンバーは、もちろんはじまりの曲「お願い!シンデレラ」。大橋が楽しげに高らかに叫ぶ「もう一回!」の声が、未来に向けて響き渡った。

Text by 中里キリ

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th ANNIVERSARY M@GICAL WONDERLAND TOUR!!! Celebration Land DAY1
2021.11.27 幕張メッセイベントホール

<セットリスト>
M01:Yes! Party Time!!(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
M02:はにかみdays(大橋彩香)
M03:TOKIMEKIエスカレート(佳村はるか)
M04:あんずのうた(五十嵐裕美)
M05:Unlock Starbeat(Long Intro Ver.)(朝井彩加、嘉山未紗、小市眞琴)
M06:とどけ!アイドル(Long Intro Ver.)(立花理香、松井恵理子、安野希世乃、和氣あず未)
M07:TAKAMARI☆CLIMAXXX!!!!!(神谷早矢佳、花井美春、和氣あず未)
M08:オタク is LOVE!(Long Intro Ver.)(長島光那、松井恵理子、三宅麻理恵)
M09:Can’t Stop!!(Long Intro Ver.)(和氣あず未)
M10:義勇忍侠花吹雪(嘉山未紗、立花理香、花井美春)
M11:Jet to the Future(青木瑠璃子、安野希世乃)
M12:ガールズ・イン・ザ・フロンティア(朝井彩加、嘉山未紗、長島光那)
M13:あんきら!?狂騒曲(五十嵐裕美、松嵜麗)
M14:春恋フレーム(長島光那)
M15:初夢をあなたと(Long Intro Ver.)(森下来奈)
M16:おんなの道は星の道(花井美春)
M17:Bright Blue(M・A・O)
M18:TRUE COLORS(神谷早矢佳、小市眞琴、花井美春、森下来奈)
M19:LET’S GO HAPPY!!(神谷早矢佳、小市眞琴、松嵜麗)
M20:Wonder goes on!!(Long Intro Ver.)(青木瑠璃子、三宅麻理恵、安野希世乃、佳村はるか)
M21:美に入り彩を穿つ(朝井彩加、立花理香、森下来奈)
M22:Just Us Justice(神谷早矢佳、嘉山未紗、小市眞琴、長島光那、和氣あず未)
M23:キセキの証(松井恵理子、M・A・O)
M24:キミのそばでずっと(大橋彩香)
M25:EVERLASTING(Short Intro Ver.)(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
-encore-
M26:お願い!シンデレラ(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

関連リンク

「アイドルマスターシンデレラガールズ」日本コロムビア公式サイト
https://columbia.jp/idolmaster/

「アイドルマスター」公式ポータルサイト
https://idolmaster-official.jp/

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