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INTERVIEW

2021.11.04

【スペシャル】“私は私のままで”――。3rdアルバム『HIKARI』制作を振り返る、内田真礼×黒須克彦×田淵智也スペシャル鼎談

【スペシャル】“私は私のままで”――。3rdアルバム『HIKARI』制作を振り返る、内田真礼×黒須克彦×田淵智也スペシャル鼎談

テーマは「ギミー!レボリューション2021」(田淵)

――そんな内田さんのモードも受け止めてQ-MHzとしての制作が始まるわけですが、メンバーそれぞれが単独で曲を完成させられる方々が、チームとしてどのように作業をしたのかもお聞きしたいです。

黒須 まずは今回の案件は3曲あったので、中心となって全体の舵を取る役を決めます。今回に関してはこれまでの関わりもあって私が舵取り役になったんですが、そこからこの曲は誰に骨組みを作ってもらうのか、どうやって肉付けをしていくのか、などをリレー形式で割り振って作っていきます。まずは「YA-YA-YAN Happy Climax」を田淵君にお願いして、ほぼ丸ごと作ってもらいました。

田淵 曲は1コーラスまでは私が作って、歌詞も2番のBメロくらいまでは自分で書きました。具体的に話すと、この曲のテーマは「ギミー!レボリューション2021」となっていて、Q-MHzで作るんだったらさらにプラスアルファがあったほうがいいだろうし、1コーラス以降もどんどん展開しまくっていいということだったので、2番以降は田代智一さんに「好きにやっちゃってください!」とお願いして、フルコーラスまで作ってもらいました。歌詞は2番までで僕が考える内田真礼のストーリーを書ききってしまったので、その先の物語を畑 亜貴さんに書いてもらいたいとお願いして、どうやって魔法をかけて未来に持っていくかは完全にお任せしました。この順番の作詞はQ-MHzでも珍しい形式でした。逆はよくあるんですけど。上がってきた歌詞は僕からは出てこないシンプルな言葉で、とても未来溢れる物語で感動しました。「ギミー!レボリューション」の最新バージョンとして、これまでとは明らかに違ったものを出せたのは嬉しかったです。

――内田さんは聴いてみての感想はいかがでしたか?

内田 「ギミー!レボリューション2021」というコンセプトは私も聞いて覚悟していたんですけど、最初に冨田さんから「聴かせるべきか悩んでいる」「内田君の心境に今これが合っているかわからないけど、本当に必要だと思うんだったらやろう」って、結構苦々しい顔で提出されて、みんなで田淵さんの仮歌を聴いたんです。最初は「なんだこれは!?かなりすごい曲だな……」って印象だったけど、でも「ギミー!レボリューション2021」だということは念頭にあったので、「冨田さんがどう思っていても私はやります」という気持ちになりました。これは田淵さん主導で作ったと聞いていたので、私への挑戦状なんだなと思って、受けて立つつもりで歌いました(笑)。

田淵 発注で「限界はない」ってご自分で言われていたから(笑)。僕が単独で真礼ちゃんに曲提供させてもらった歴史の中で、「take you take me BANDWAGON」で一度すべてを書き切った手応えが自分の中であって。そのあとのスピンオフのつもりで「共鳴レゾンデートル」を書いた時点で、内田真礼のバイオグラフィのお手伝いはやりきってしまったなと思っていて、その次をやるなら本人の限界を超える必要があるなと。最近の曲は落ち着いてるものが多いのも知っていたけど、一方で以前お客さんの前でライブをやったときに「ギミー!レボリューション」が楽しかったとおっしゃっていたと聞いたので、「ギミー!」を現代風にアップデートするなら過去をただなぞるんじゃなくて、直近のディスコグラフィもすべてふまえたうえでの次をやらないと新しいものにはならないなと。だから今回のふざけた合唱とかも……。

内田 あれか!なんなんですかあれは(笑)。

田淵 「まーやややん」ですよ。ああいう妙な合唱があるとファンもわけがわからず楽しくなれるじゃないですか。年齢を重ねた落ち着きとは別に、内田真礼ってどこかにああいうバグってるような感じがあるよなっていうのを、僕自身もまた見たかった。それを今の真礼ちゃんのスキルでやるのって絶対面白いなと。それができるなら僕もちゃんと今だから出せるエッセンスが出せて、しかもそれを僕が尊敬している人たちがさらに面白く仕立ててくれるんだから、きっと聴いたことのない曲が出来上がるぞと。

田淵智也

――ハチャメチャな曲なのに痛々しくないというか、ハイテンションなのにメッセージ性が強いですよね。

田淵 そうですね。この1年できっと色々悩んだんだろうなというのは遠くから見ていても感じていて、今はそこから前を向いてポジティブだと言っているなら「今を受け入れた私」という曲を書いてあげたほうがいいんじゃないか思って。今の自分を受け入れたうえでめちゃくちゃにはっちゃけるというのは、おそらく「ギミー!」の頃にはなかった要素だと思いますし。

――田淵さんは歌録りには立ち会えなかったということで、完成品を聴いていかがですか?

田淵 これが結果的にお客さんにどう映るかは僕にもわかりませんが、今できる挑戦を全力でやったという感じは曲に出ていると思うので、これをみんなが聴いたときに「なんかよくわかんないけど楽しい!」ってなれば嬉しいです。真礼ちゃんに聴かせたくなかった冨田さんもわけのわからないコーラスを面白がってくれればいいな(笑)。

内田 今お話を聞いていて思ったのが、私は曲を作ったり歌詞を書いたりすることはできないんですが、冨田さんに伝えたことが、すごい形になって返ってくるので、冨田さんを郵便局にして文通をしている感覚です。改めて私はすごい方々に支えられているんだなと感じます。ありがとうございます。

――黒須さんは田淵さんから上がってきた曲を聴いていかがでしたか?

黒須 「ギミー!2021」というコンセプトがあり、田淵君と編曲をやしきん君に任せるのは最初の段階で決めていたので、もうバッチリじゃんという感じ。この曲に関しての不安はまったくなかったです。まさか真礼ちゃんチーム側で物議をかもしてるとは思いませんでしたが(笑)。

――ではアルバムの最初と最後を飾ることになる「Change the world」と「Excite the world!」はどのように制作されたのでしょうか?

黒須 今回は3曲の制作を同時に進行していて、「YA-YA-YAN Happy Climax」で田淵・田代・畑の枠が埋まってしまったので……。

田淵 僕がリソース全部使っちゃった……(笑)。

黒須 最初に「YA-YA-YAN Happy Climax」から進めるのは決めていたので、自動的に残りの2曲に関しては僕が骨組みを作るという感じで。真礼ちゃんのアルバムはこれまでも最初と最後の曲には共通性を持たせるという、暗黙の了解みたいなものがあったので、そこをふまえて僕が並行して作っていきました。結果的に「Change the world」はそれほど長い曲にはならなかったので、編曲をy0c1e君にお願いして、「Excite the world!」はちょうど1コーラスができてその先をどうしようかと考えていたときに、「YA-YA-YAN~」がある程度形になっていたので、2番以降の制作を田淵君に手伝ってもらった感じです。

――「ギミー!2021」のようなはっきりしたコンセプトがない2曲は、どのように発注側の意図を汲んで作曲するのですか?

黒須 まず「Excite the world!」について、「アルバムの最後を飾る壮大なロック」というキーワードがあって、あとは「ポエトリーリーディングを入れたい」とか、「各楽器がせめぎ合う演奏」みたいなヒントをもらっていたので、それらをふまえてある程度作っていき、では共通性を持つ「Change the world」はどうやって作ろうかなという順番でした。「Change the world」はアルバム1曲目ということと、ここ1年くらいの世界で起きた出来事からのキーワードとして「光を感じられるような曲」というヒントがあって、歌詞も含めて楽曲的にアルバムの最初と最後でそこに共通性を持たせる、みたいな意識で作っていきました。

――途中で「Excite the world!」のバトンを受け取った田淵さんはどのように作業されたのですか?

田淵 最後の曲というのもあり、壮大なロックというヒントも聞いていたので、どこまで壮大に展開できるかを試してみて、あとは黒須さんに判断してもらおうと思ってました。普通に2番を繰り返してDメロがあって終わりっていうよりも、この曲も面白チャレンジみたいなことをやっていいんじゃないかと思って、終わりまでずっと展開し続けるような、しかも壮大な曲なら多重コーラスが入るのはいいなと思って。オペラやミュージカルみたいな世界観で雨に打たれながらしゃべってるような絵が見えたので、それらをどうやって上手く組み合わせようか考えながら作っていきました。

――作詞はどなたがメインで進められたのでしょうか?

黒須 「Excite the world!」の1コーラス目を畑さんにお願いして、2番以降を田淵君に任せました。畑さんは真礼ちゃん個人の作品との関わりはそれほどなかったので、冨田さんからも「黒須さんがこれまで関わってきて感じた内田真礼像みたいなものをQ-MHzメンバーにも共有してもらいたい」とお願いされて。

――ちなみにその内田さん像はどんな言葉で伝えたのでしょうか?

黒須 そこはナイショです(笑)。

――これまでどういうアーティストイメージを積み上げてきたのかがわらないなかで、しかもアルバム最後の曲となると作詞のヒントは多いほうがいいですね。

黒須 もちろん畑さんは発注書のヒントだけでも素晴らしい歌詞を書いてくれるんですけど、やっぱりパーソナルなアーティスト性とかも知ったうえで書いてもらったほうが、より深いものが上がってくるので。結果的に1コーラス上がってきた時点で、その判断は間違ってなかったなと思いました。

次ページ:真礼ちゃんのバンマスを長年務めてこられた黒須さんが、このアルバムの1曲目を作詞するのはアツい(田淵)

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