35年歌い続けてきた今、大変な時代だからこそ伝えたい想い――森口博子、24年ぶりのオリジナルアルバム『蒼い生命』ロングインタビュー

1985年にTVアニメ『機動戦士Zガンダム』のOPテーマ「水の星へ愛をこめて」でデビューを飾り、その後35年のキャリアのなかで数多くのリリースを重ねてきた森口博子。デビュー35周年となった昨年は『GUNDAM SONG COVERS 2』のヒットとともに、改めて“ガンダムソングのミューズ”という存在感を見せつけた彼女が、今年、満を持して、およそ24年ぶりとなるオリジナルアルバム『蒼い生命』をリリースする。こんな時代だからこそ繋がりを求める彼女らしい愛に満ち溢れた一枚はどのようにして生まれたのか。そして改めて35年というキャリアを彼女はどう見つめ、未来へ向かおうとしているのだろうか。

『蒼い生命』の“蒼”が繋ぐ、デビューから現在までの軌跡

――昨年、「水の星へ愛をこめて」でのデビューから35周年を迎えましたが、改めて35年のアーティスト活動を振り返ってみていかがですか?

森口博子 毎回アニバーサリーを迎えるたびに思うのですが、4歳の頃から思い描いていた「歌手になりたい」という夢の中を35年も生かされ続けているというのは、本当にありがたいの一言に尽きます。どんな時代でも、どんな状況でも、ファンの皆さんがずっと待っていてくれる。スタッフの皆さんに支えられながら今日を迎えられているので、改めて私は出会いに、そして数多くの名曲に恵まれていると思いますね。どの出会いが欠けても35周年には繋がらないので。年月を積み重ねるごとに、そのご縁が私のなかで深く太くなっているのを、すごく実感しました。

――この35年間、様々なフィールドで活躍されてきましたが、近年の『GUNDAM SONG COVERS』シリーズなども含めてまた新たな出会いも感じている?

森口 もちろんです。アニソンでデビューさせていただいて、「ガンダム」シリーズという作品に出会って、『GUNDAM SONG COVERS』でオリコンウィークリー3位、昨年の続編が同じくオリコン/Billboard JAPAN週間ランキング2位。それと日本レコード大賞 企画賞をいただいたことで長年のファンの皆さんだけではなく、後追い世代の方や「ガンダム」という作品を知らなかった方々、その主題歌を聴いていなかった方々も含めて、たくさんの方々に受け取っていただいたことが本当に心強かったですね。それにここ数年シングルもずっとリリースさせていただいて、私のなかで「森口博子の波がきた!」みたいな感じに思っていたんですね。そしたら母親から「波がきたんじゃなくて波に乗せてもらっているのよ」と言われて「それそれ!」と背筋が伸びました。50代でデビューから30年以上経って音楽人生が充実していくなんて幸せですよね。

――その波というのも様々な世代から、また日本だけではない様々な場所から訪れていますよね。

森口 そうですね、国境も世代も超えていますよね。“KING SUPER LIVE”で東京ドームやさいたまスーパーアリーナの何万人ものお客さまが、イントロが鳴っただけで魂の集結というか、1つの点になる瞬間がわかるんですよ、もうバーン!って弾けるというか。それを2018年の台湾公演でも体感したんです。

――海外でもその盛り上がりを実感したという。

森口 それまでもずっと海外公演のお話をいただいていたんですけどスケジュールが合わなくて。それでようやく(台湾に)行けたときに、改めてアニソンのパワー、アニソンが国境を越えていることを初めて肌で感じて、同時に自分が色褪せないものを歌い続けてきたことを実感できましたね。

――そうしたなかでリリースされるニューアルバム『蒼い生命』ですが、久々のオリジナルアルバムを作るとなったときの最初のお気持ちはいかがでしたか?

森口 もうやっとという気持ちでしたね。24年ぶりでしたっけ?

――そうですね。改めて数字として見るとすごい期間が空いているなと。

森口 28年ぶりのオリコンアルバムチャートトップ10入りで女性アーティストのインターバル記録歴代1位とか、色々な数字が出てくるので覚えきられない(笑)。でも、本当にやっとですよね。『GUNDAM SONG COVERS』でたくさんの方に注目していただいたときに、ファンの方が「次はオリジナルですね」というお声を届けてくれていて。私も楽曲がたくさん溜まっているし、自分で書いた曲もあって、いずれ発表したいなと思っていたので。私もスタッフの皆さんもファンの皆さんも待望のアルバムですよね。

――そんななかで、どんなアルバムにしたいという想いがありましたか?

森口 これまで色んな曲を書き溜めてはいたんですけど、やっぱり昨年からの緊急事態宣言のなかで、人と触れ合えないことがこんなにも苦しかったんだっていうことをすごく実感したんですね。私、世界中がこのような事態になる前から、厄年に体調を壊して、仕事や色々なことが四面楚歌になったときに、本当に「平凡は奇跡だ」と感じたんです。それ以来、自分のなかで「平凡は奇跡、ありがたい」ってずっと口にしていて。震災が起こったときにもその気持ちがより深くなって、今度は地球規模の問題に私たちが直面したことで、さらにその言葉がどんどん膨らんでいって。

――なるほど。

森口 心と心で繋がるということが、今の私のなかでは生命線です!! 外に出かけられなくてお互いが助け合えない状況って恐怖じゃないですか。例えば福岡にいる母とも全然会えないし、ハグもできないときに、電話の声だけでちょっと強くなれたり、温かくなれたり、母が寂しいことを見せないで気丈に振る舞っているところもすごく胸が締め付けられたり……。私が送った手紙を、涙を流しながら読んでいたりするのを知ったときに、「繋がっている」と思えたことで心が強くなれる、温かい気持ちになれる。この繋がるってことが命綱なんだと感じて。その「平凡は奇跡」という想いを、このアルバムに込めたいと思いました。

――この『蒼い生命』というタイトルにもその想いが込められていると。

森口 『蒼い生命』の“蒼”という字も、“くさかんむり”に“倉”で、緑が青々と生い茂るという意味も込められているんですね。それはまさに地球の色だなって思ったときに、私のデビュー曲である『機動戦士Zガンダム』の「水の星へ愛をこめて」の出だしの歌詞、“蒼く眠る水の星にそっと”の“蒼”とまさにリンクしていると思って。裏テーマはデビュー曲のオマージュです。

――35年前のデビュー曲として歌っていた曲が、巡り巡って昨年から今年にかけての状況下においてすごく意味を持つというのが、また運命的ですね。

森口 そうなんです。だから表題曲の「蒼い生命」も、「地球という1つの命で私たちは繋がっている」という壮大な想いを込めました。歌詞はシンガーソングライターのQoonieさんと共作だったんですけど、自分が普段思っていることと、このご時世だからこその発見や想いを綴らせてもらったんですね。そうするとアレンジも、身近なテーマに寄り添った温かくホッとするものより、地球規模での繋がりという意味で、壮大にしたいなと思ったんです。それで転調も含めた起承転結があったり、突然落ちサビがきてうねりを感じさせるアレンジになりました。このうねりがまさに地球そのものを表していて。

――たしかに地球規模の壮大さがありつつ、それが森口さんの身近な温かい言葉で綴られるというのは感動的でしたし、それはまた今だからこそ刺さるという。

森口 ありがとうございます。歌詞のことも「温かい言葉」とおっしゃってくださいましたけど、自分自身、シンプルな言葉が響く年齢になったというか。若い頃は「もっとひねった方がいいんじゃないかな?」とか、ちょっと遠回しに言って想像させるものが好きで、もちろん今も好きなんですけど、今回はそうではなく、シンプルに温かく、深い言葉こそすごく染みるんじゃないかと思って。だから言葉すべてが本当にわかりやすいものになりました。

――シンプルだからこそ“いつか 逢える日まで”というフレーズもグッとくるというか。

森口 私も会えない人と「いつか逢える」という気持ちをずっと抱きながら生きています。ファンの皆さんとも会えると思っていたのが、昨年の35周年記念の東京国際フォーラムでのライブが中止になり、毎回リリースするたびに行っているショッピングモールでの握手会やツーショット撮影会、ファンクラブのミーティング、ライブツアー……それが全部なくなったときに、触れ合い大好物の私としては「どうしよう!」という想いがあったので、会いたいという気持ちがまずありましたね。

――たしかに、今、我々の最大の願望が“会いたい”かもしれませんね。

森口 会いたい、そして絶対会える。きっともうすぐ日常生活を取り戻せる私たちになれるって信じています。そうでないと、このままだと誰も心身共に健やかに生きていけなくなっちゃいますから。

次ページ:神前 暁との初コラボ曲と、名曲「ホイッスル」のアンサーソング

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人