オーイシマサヨシの音楽的思考回路に迫る! スランプの末に辿り着いた、『SSSS.DYNAZENON』『ドラゴン、家を買う。』のダブルOP主題歌リリースインタビュー

2021年4月から放送を開始した、TVアニメ『SSSS.DYNAZENON』とTVアニメ『ドラゴン、家を買う。』。この両作品でOP主題歌を担当したのがオーイシマサヨシ(作詞・作曲・編曲名義は大石昌良)だ。かたや「UNION」のヒットも記憶に新しい、バイブスが一気に高まるヒーローソング。かたや民俗要素やオペラの雰囲気をもったRPGテーマソング。それぞれに大石&オーイシらしさをまといつつも多彩さぶりを発揮する才能に飲み込まれそうだ。そんな同時タイアップ曲が誕生した背景には、昨今の新型コロナウイルス感染症の影響もあったという。大石&オーイシの音楽的思考回路に迫る。

●誰かと「合体」するためには「不完全」でなければならない

――同クールで放映されるアニメでOP主題歌を担当、4月21日の同日リリースとなりました。

オーイシマサヨシ そうですね。でも、同時リリースはたまたまで。コロナの影響でスケジュールがズレたんですよ。放映時期が決まっていなかったので早め早めに作り始めていましたし、制作も同時並行ではなく、『SSSS.DYNAZENON』のオープニングである「インパーフェクト」から作り始めました。今回みたいに作詞作曲に歌唱も、となるとかなりのカロリーになりますし、しかも2作品ともすごく大きなタイトルだったのでそこは助かりました(笑)。

――ではまず、「インパーフェクト」についですが、『SSSS.DYNAZENON』はどのような作品と捉えましたか?

オーイシ 「たくさんの人に聴いてほしいので間口の広い、キャッチーな楽曲を作ってください」とは言われていました。それから、「ヒーロー然として、疾走感のあるかっこいい曲を」とも。TRIGGERさんとお仕事するのは2回目ですし、(OxTとして『SSSS.GRIDMAN』OPテーマ「UNION」を担当)『SSSS.GRIDMAN』の大ファンであるというところを前面に押し出しながら、モチベーションを貯めてから制作し始めたんです……が、実はこのときの僕、スランプに陥っていまして(笑)。去年の4月くらいだと思うんですけど、その少し前からライブの延期や中止が発表され始めて、日本全体に閉塞感が漂っていたじゃないですか。

一応、僕もシンガーソングライターあがりなので、制作とライブを活動の両ウィングとしてやっていたんですけど、片翼であるライブ活動がなくなったことで、制作だけが風船のようにパンパンに膨れ上がってしまう状態になってしまって。ライブでアウトプットできないことがこんなにも大変なのかと思い知ったとき、ブツッと緊張の糸が切れ、そこから1ヵ月くらいかな? 楽曲が書けなくなってしまいました。その最中に書いていたのが「インパーフェクト」なんですよ。要はスランプを脱した曲でもあるんですね。

――スランプ脱出のきっかけが『SSSS.DYNAZENON』だったということですか?

オーイシ もちろん、『SSSS.DYNAZENON』の台本も読ませていただいていて、僕は作品の1つのモチーフが「合体」だと読み取ったんです。それで「合体とは?」と考えたとき、僕が思うに「自分の力だけではどうにもならないから仲間の力を借り、合体して、巨大な怪獣を倒しに行く」ということかなと。つまり、合体するためには自分は完璧だったらダメなんですね。足りないものがないと合体することができない、ともすれば不完全でないと誰かと絆を確かめあったり出会ったりすることすらできないんじゃないか、この作品を通じてそう思いました。それが自分のスランプの状況とめちゃくちゃリンクしたんですよ。今までは「作詞、作曲、編曲、歌唱、全部をやりたい」「やらなきゃ」という気持ちで自分を奮い立てていたんですけど、人に頼るということをもう一度見直してみようと思ったんです。スランプを脱出することができた「インパーフェクト」の作詞・作曲・編曲は僕ではありますけど、ストリングスアレンジに入ってもらった岸田勇気くんとか。

――TVアニメ『多田くんは恋をしない』ED主題歌の「ラブソング」や、先日の“オーイシマサヨシ オンラインワンマンライブ「世界が君を必要とする時が来たんだ」”など、よくご一緒している岸田さんですね。

オーイシ ほかにもたくさんの優秀なミュージシャンの方々にお世話になったんですけど、いつもと違って、あまり煮詰まっていない状態のデモを投げて、返ってきたものを作品とさせてもらいました。僕の制作チームにも、スケジュール管理で調整してもらいましたし。スランプだったので(笑)。それから、「コンテが上がってきたので共有します」「キャストが決まったのでボイスのサンプルを送っておきます」といったヒントになるような素材をたくさんいただきました。「インパーフェクト」には、たくさんの方々に助けられ、色んな人たちと合体して作り上げたという印象がありますね。あの時期にしかできなかった、できるべくしてできた楽曲なんじゃないかな、とは個人的に思っています。

――煮詰まっていないデモと仰いましたが、完成形も想定できていませんでしたか?

オーイシ デモの段階では本当に未完成でした。構成も甘かったですし、メロディも途中で変わりました。コード進行も結構曖昧でしたね。それを皆で肉付けしていった、という感じでした。普段は結構、デモの段階からめちゃくちゃ作り込むんですよ。ドラムもよく、僕が作ったフレーズを完コピしてもらっているんですけど、今回に関しては任せました。ベースもギターもピアノもそうですし、弦に関しては岸田くんに丸投げでしたし。そこでめちゃくちゃ助けられましたし、デモではありえない魔法がかかりましたね。

――自身のバンドであるSound Scheduleでも同じやり方ですか?

オーイシ バンドのときは、一応「こういうふうに」とは言いますけど、基本ぶん投げてますね。メンバーも個性的な人たちなので(笑)、自分色に変えてくれて、それがバンドのカラーになっていたとは思います。そういった意味では今回、バンド的な作り方と言えるかもしれないですね。

――前作の主題歌「UNION」との繋がりは意識しましたか?

オーイシ めちゃくちゃしました。やっぱり1つのシリーズものなので、乖離しすぎるのは良くないと思いましたね。例えばなんですけど、サビ頭で、(「UNION」の)“目を醒ませ”に対して“立ち上がれ”になっているとか、命令口調にしようというのは最初から考えていました。

――勢いのある、サビのリズムも継承されている感じがしました。

オーイシ 例えば、「UNION」の場合は字余りだったんですよね。本当は最初や最後の音符、“僕らの世界が何者かに侵略されてるぞ”の“ぞ”はいらない。でも、“ぞ”まで持っていくことによる面白さを楽曲に封じ込めた感じはあります。今回も、いわゆるシンコペーションを多用して、どこでシンコペするのかがわかりづらくなっています。シンコペーションのいいところってやっぱり、疾走感を加速させる感じがあるところで。小節頭の1拍前に音符を持ってくることで前のめり感が生まれるので、体感よりもBPMが速く感じられる効果があるんですよ。その辺は狙っていて、僕らがよく「食う」って言うやつなんですけど、食う瞬間の気持ち良さをかなり追求したつもりではいます。

――『SSSS.DYNAZENON』の資料がヒントになったという話でしたが、作品のどういう点に魅力を感じましたか?

オーイシ 制作のときには会話劇のシナリオとキャラデザしかもらってなかったんですけど、テキストベースのお話でも「相変わらず面白いな」と思いました。なおかつ『SSSS.GRIDMAN』ではできなかったことややらなかったことに挑戦していて、TRIGGERさんや雨宮(哲)監督の、一所には留まらない姿勢は非常に魅力的でした。あと、キャラデザもよくできていて。2秒で推しが決まりましたね(笑)。

――ちなみに誰ですか?

オーイシ 今回は(飛鳥川)ちせちゃん推しですね。

――『SSSS.GRIDMAN』では?

オーイシ 前回はブレましたね。最初は(宝多)六花推しだったんですけど、結果的に(新条)アカネ推しに(笑)。

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