変わらぬ良さと新たに得た力強さが溢れ出る、飛躍の予感。“伊藤美来 Live Tour 2021 Rhythmic BEAM YOU”横浜公演レポート

曲明けには移動させられるボックスや壁の球体などステージや、直前に流れた映像について自ら説明。チェンジした衣装にメインカラーとして使用されたマスカット色も、アルバムジャケット画像になぞらえた伊藤の希望だったことも明かされる。また、セットの大きなボックスを動かせるか押してチャレンジするも、途中で固定されたボックスを押していたことが判明し、場内が和む場面も。そうして楽しげな空気が場内を満たしたところで「盛り上がる準備はできてますかー!?」と煽れば、「Plunderer」からアグレッシブなナンバーゾーンが始まる。その「Plunderer」は、約1年半前の初披露の時点で感じさせてくれた爽快さに、やはり力強さが上乗せされていた印象。歌声の成長に加えて、立ち上がってペンライトを振って高まりを見える形で届けた観客も、力強さを発揮させた要因の1つだったのかもしれない。その高まりに呼応するかのように振付も若干交えつつ会場中のボルテージを高めれば、そのまま「孤高の光 Lonely dark」へ。Bメロには「Plunderer」以上の強さや熱さが込められていたし、サビなどでは強さに加えて光のもとへと飛び立っていくかのような飛翔感ももった歌声に。そのサビでは両サイドのボックスをお立ち台のように使って、気持ち良く歌い上げていく。落ちサビ冒頭のファルセットも楽曲中の差し色のようで効果的だったし、直後に地声で強さを取り戻している点から、「出ないからファルセット」ではないこともすぐわかる。

そしてさらに力強さを増したのが「Born Fighter」。再びステージ中央のせり上がりに乗ってリフトアップ彼女の両側・2階ステージには、ファイヤーボールがリズムに合わせて次々と上がる。演出だけではなく伊藤の歌声も熱を持ったものとなっており、終盤には荒々しささえ感じる部分も。これは今までの伊藤のイメージからは完全にはみ出た新境地であり、同時にもっと見たいと感じさせるものでもあった。この3曲のような前回のワンマンライブにはなかったロッキンな要素が、彼女が明確に成長を示したポイント。アルバムツアーという主題を全うしつつ“伊藤美来”のイメージを広げる役割を担う、この1年半の成長を示せた大事なブロックだった。

そんな3曲が終わると、一瞬の間を挟んで伊藤が「みんなで一緒に踊りましょう!」と呼びかけ「恋はMovie」のイントロが流れれば、ここからは雰囲気がガラリと変わってさながら伊藤をメインにしたショーのような時間がスタート。再びダンサーを従え、センターでダンスをしながらキュートな笑顔を再び振りまき始める伊藤。2サビ明け間奏のダンスもショーの主役のような華やかさがあった。また、サビではファンと一緒に以前のライブで振付講座を行なった部分をダンスし、“キュートさを魅せるメロ”“一体となって楽しむサビ”という2つの魅力を1曲の中に共存させる。さらに、続く「Sweet Bitter Sweet Days」ではよりダンサーとのコンビネーションが活きる部分が多く登場。ダンサー二人が腕で作ったドアを跳ね上げるように飛び出したり、横一線になって肩に手を置くフォーメーションをとったりといったショー感増し増しのパフォーマンスで、等身大の伊藤美来を描くような曲をキュートに届けきってくれた。

力強さとキュートさでファンを魅了したところで、ライブもいよいよ終盤。ダンサーが降壇し、伊藤はじっくりとこの瞬間の想いを言葉にして伝えていく。約7年半前に初めてこの会場に立った頃も振り返りつつ、不安を抱えてくれた自身を支えてくれているスタッフや友達、そしてファンへの感謝を述べたところで、伊藤の胸には込み上げる熱いものが。言葉も詰まらせつつも、「『あお信号』の歌詞では『こんな私だけど』と書いたけど、今は皆さんのおかげで『これが“伊藤美来”です』って、胸を張って言えるような人間になれてきたと思います」と、重ねてファンへの感謝と自分の変化を言葉にしたところで、メッセージを「今日みんなに会えて、本当に嬉しかったです! これからもどうぞ、よろしくお願いしまーす!」と締め括ったのをきっかけに、本編ラストナンバーの「Good Song」がスタート。……が、すでに胸がいっぱいの伊藤は声を詰まらせAメロ前半が歌えない。しかしそれをぐっとこらえて笑顔で歌い出すと、歌詞にしっかりと想いを乗せた歌声を響かせていく。悲しさではなく嬉しさが理由の涙に続けて歌ったこともあってか、彼女が進む先の青空や大空が広がるイメージを強く抱かせてくれた曲に。サビの前半部分は突き抜けるような地声で、後半部分の高音はファルセットも用いて美しく聴かせる。この2つの歌声の魅力とキラキラの笑顔をもった伊藤美来は、歌詞通りにもっともっと大きな存在に、間違いなくなっていくことだろう。

本編が終わり、会場中への挨拶を経て伊藤は降壇。暗転の瞬間すかさずアンコールを求めるクラップが起これば、それを受けて、伊藤がOPテーマを歌うことが発表されたTVアニメ『戦闘員、派遣します!』のPVが上映。続いて伊藤がステージに戻り、そのOPテーマ「No.6」を初披露! 作品のテイストを反映してか、往年のヒーローソングを連想させるブラスがイントロから非常に映える楽曲であり、同時にコミカルさも感じる仕上がり。これは、実は伊藤の持ち歌にはありそうでなかったポイントをついたものでもある。間奏のフォーメーションダンスにはヒーロー風の決めポーズが存在していたり、サビや曲の最後には指で数字の6を作る“No.6ポーズ”も盛り込まれていたりと視覚的にも面白いポイントがいっぱいの楽曲。クラップ部分も含め、ファンに浸透した後のライブでどう盛り上がるかも期待させられた。最後にオフマイクで「みんなー、大好きだよー!」と生の声でメッセージを届けて、今度こそライブは、初めてのツアーは幕を下ろしたのだった。

アルバムツアーとして新曲も多数披露しながら、既存曲も組み合わせてブロックごとのコンセプトを形作り、色とりどりの世界を作り上げることに成功した今回のライブ。その幕開けを「ワタシイロ」が飾ったというのも、今振り返ると非常に良い構成だったのではないだろうか。また、中盤特に感じた歌声の力強さをはじめ、ライブの開催が難しかった時期に新しい武器を身につけ、それを研いでのライブだったこともうかがえた。その力強さは、ミドルテンポやスローな楽曲を歌ううえでも下支えとなり、全体的なレベルを高める要因として働いていたように思う。

だから思うのだ。2021年は、アーティスト・伊藤美来にとって間違いなくターニングポイントになる、と。このライブ自体はもちろん、人気曲「Shocking Blue」とその他のポップなナンバーの架け橋としてセットリスト中で非常に大事な存在になる予感がする新曲「No.6」の発表も、間違いなく彼女の表現をさらに幅広くするはず。直接会えない時間を乗り越えて、新しい空へと伊藤美来が、今まさに羽ばたいていく。

PHOTO BY 江藤はんな
TEXT BY 須永兼次

“伊藤美来 Live Tour 2021 Rhythmic BEAM YOU”横浜公演
2021.03.21@パシフィコ横浜 国立大ホール

【SET LIST】
M1. ワタシイロ
M2. all yours
M3. one’s heart
M4. hello new pink
M5. PEARL
M6. いつかきっと
M7. あお信号
M8. ガーベラ
M9. vivace
M10. BEAM YOU
M11. Plunderer
M12. 孤高の光 Lonely dark
M13. Born Fighter
M14. 恋はMovie
M15. Sweet Bitter Sweet Days
M16. Good Song
EN1. No.6


●リリース情報
TVアニメ『戦闘員、派遣します!』OPテーマ
伊藤美来
「No.6」
4月28日(水)発売

【DVD付き限定盤(CD+DVD)】
価格:¥1,900+税
品番:COZC-1743~4

【通常盤(CD)】
価格:¥1,300+税
品番:COCC-17871

<CD>
No.6、他

<DVD>
01. No.6 Music Video
02. No.6メイキング映像

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