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REPORT

2021.04.02

変わらぬ良さと新たに得た力強さが溢れ出る、飛躍の予感。“伊藤美来 Live Tour 2021 Rhythmic BEAM YOU”横浜公演レポート

変わらぬ良さと新たに得た力強さが溢れ出る、飛躍の予感。“伊藤美来 Live Tour 2021 Rhythmic BEAM YOU”横浜公演レポート

続く「PEARL」は、彼女の声域では限界に近い低音が含まれるAメロを弱々しさのない優しい歌声でそっと歌いきった点から、またもボーカル面での成長が感じられるものに。サビ最後に繰り返される“大丈夫”のフレーズにも、ふんわりとした優しさを込める。そのほかにも、改めてミドルポップと彼女の歌声が抜群の相性の良さを持っていることも感じられる。また、タイトルになぞらえるかのようにセットの球体が白く輝いた演出や、大サビを歌いきったところで客席を眺める表情に嬉しさが滲んでいた点など、印象に残るシーンも多い曲となった。

曲明け、まずは会場になぞらえて学生時代の横浜での思い出を紹介して場内を和ませると、今度はコロナ禍でのファンが感じた寂しさなどに直接言葉で想いを寄せ、自身もそんななかで考えたことを歌詞に乗せた、『Rhythmic Flavor』にも収録された歌の話へ。歌唱前、「やっと皆さんの目の前で、届けられる日が来たなぁ」と感慨も感じながら歌い始めたその「いつかきっと」から、しっとりと想いを込めて歌う楽曲が続く。振付なく、直前の言葉通り自分の想いを歌声という形にして生で届けることに全力を傾ける伊藤。この曲を届ける相手として頭の中に置いていたであろうファンが目の前に、会場中にいることで、ボーカルにはそっと歌いかけるような色合いが増す。

それをまんべんなくゆっくりと会場全体に視線を配りながら、1つ1つの言葉を大切にして届けると、ステージ中央の段に乗ってスポットライトを浴びつつ歌い始めたのは「あお信号」。頭サビ直後からはその段が2階ステージの高さまでせり上がると、その2階ステージ上を両端までゆっくり歩きつつ、より会場全体をじっくりと見渡しながら自身初めての作詞曲をじっくりと届けていく。自分を見つけて今日ここに足を運んでくれたファンへの感謝も込めながら、歌詞で紡いだ感情の起伏を表現。初披露の際に涙してしまった彼女だが、この日は涙なく、心の中の想いを技術で増幅させつつ歌っていく。大サビ前に浮かんだはにかむような笑顔は、届けたい相手が目の前にいてくれたからこそのものだっただろうか。

と、そこから一転情熱的な楽曲「ガーベラ」へ。ここでは楽曲に合わせて、感情の激しさやオトナさが現れた歌声となっており、芯や強さがはっきりと感じられるものに。「あお信号」に続いて歌われることで葛藤の先の決意を歌ったようにも聴こえる曲となったのと同時に、このあとも度々顔を覗かせる本公演中における彼女の“強さ”が、はっきりと表に出始めた曲にもなっていた。

歌唱後にはステージが灯りのない夜のように暗くなると、伊藤は階段代わりのボックスを降りながら上着を脱いで白のワンピースに衣装チェンジ。メインステージ上にいつの間にか設置されていたベッドに腰掛けて「vivace」を歌い始める。今回のために制作された映像をメインスクリーンに背負って歌う伊藤の歌声は、とにかく細く切なく儚い。その2つの合わせ技で胸をきゅっと掴むような曲にしていたうえに、それを飾らず力の抜けた姿で極限まで引いた歌声をもって表現していたことで、ボーカリストとしての幅の広がりを改めて提示したかのようでもあった。

そのまま伊藤がベッドに就寝すると、メインスクリーンにはその翌朝を描いたかのような映像が上映。動画の中でメイクまで済ませた伊藤が出発すると、入れ替わるかのようにステージ上には衣装チェンジした伊藤が登場。「BEAM YOU」から後半戦のスタートだ。ここでは甘々にではなく、自然と滲み出るかわいげを活かしていく伊藤。ダンサーが振付に合わせて移動するステージ上のボックスを足場にしたり、そこに腰掛けてみたりといった魅せ方もすれば、ゆるっとしたリズム感に乗せてここでもダンサーとともに質の高いダンスを披露してくれた。

歌声で言葉で、ファンに届けた自身の成長

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