タイトルの「11」に込められた意味とは――?22/7、無観客配信ライブをレポート

2020年11月13日、デジタル声優アイドルユニット22/7のライブ“11(イレブン)”が新木場STUDIO COASTにて開催された。ただし、この公演は新型コロナウイルス感染防止のため無観客の配信限定で行われており、すべての観客が配信で視聴していることを踏まえたこれまでにない演出を行い、ライブ初披露の楽曲でセットを組んだりと、配信にデメリットを感じさせない作り。さらに“11”というシンプルなタイトルに深い意味を込めた、ある大きなアクションをしたライブとなった。

この日はライブ本番前に、22/7内のユニット・晴れた日のベンチ(海乃るり・倉岡水巴・高辻 麗・武田愛奈)による「半チャーハン」のMVが上映された。9月20日の“Anniversary Live 2020”で初披露をしたこの楽曲。ライブ直後にはTwitterトレンド入りし、その後、10月28日付けの有線リクエストランクでも1位(J-POP)を獲得するなど、ムーブメントを起こしており、さらにこの曲をブーストさせるサプライズだった。(なお、このMVはライブ後にYouTubeで公開され、過去最速の視聴回数を示している)

その後、本番直前の円陣の様子を映したあとで改めてスタンバイ。先ほどの和やかな雰囲気から打って変わった整然とした様子でOPナンバーとして6thシングル「風は吹いてるか?」を披露する。アイドルにとってライブの現場が無観客であることのハンディは計り知れない。しかしそんな“逆境”であっても彼女たちは普段と変わらぬパフォーマンスを見せていく。むしろ河瀬 詩や武田の正面を見据えた表情や天城サリーのウィンクといったショットをカメラが捉えることで、心理的な臨場感は最初から掴んだともいえる。

続いての曲も最新シングルからのナンバー、「ポニーテールは振り向かせない」。宮瀬玲奈、白沢かなえ、武田がセンターに立ち、花の蕾のようなフォーメーションで冒頭を歌い始め、展開していく。サビの直前、宮瀬の“君が好きだ”のセリフからテンポを上げ、円を描くような腕の振りと細かなステップを多用し運動量が一気に上るが、彼女たちはまるで体が温まってきたかのように軽くこなしていく。楽曲が進むと振り付けも歌詞のストーリーを想起させるものが現れ、そこでキュートな笑顔がこぼれる。白沢は凛々しい声で“夢を見ていた”のセリフを発し、スタイリッシュなダンスはサイドの動きが激しくなり、大サビ前のタイミングで武田は想いを込めて“片想いでいいんだ”とセリフを告げた。

一列に並んだ11人がアコースティックギターのイントロに合わせ、次々に振り返る様子をカメラのPAN(横移動)で追いかけるという、映像ならではの演出で見せてくれたのは「不確かな青春」。先ほどとは雰囲気を変えて温かく穏やかな雰囲気の中で、彼女たちの笑顔をカメラが正面や斜めからしっかりと収めつつ進行していく。最後はまた11人が舞台下手から上手へターンして決めポーズ。そのまま続けて「願いの眼差し」がスタート。西條 和と白沢が手で作ったアーチをほかのメンバーがくぐり抜け、河瀬・宮瀬・涼花 萌のかわいらしい声でスタートし、西條・海乃がコーラスをする中、倉岡・白沢がバトンを受け継ぐ。サビでは上半身でS字を描くような動きを見せたあと、スカートを手に取ってなびかせて踊る。終盤は“チュッチュル”の柔らかく切なげな声のリフレインが独自の印象を与えていた。

最初のMCでは各自が短く挨拶をする。普段であれば客席からのリアクションが届くところだが、この日はメンバーが反応したり、ツッコミを入れたりすることで盛り上げていった。そして、ここからはユニットごとの楽曲を展開。トップバッターは先ほどの、晴れた日のベンチによる「半チャーハン」。楽曲としては軽やかなサウンドであるが、一方で手の振り付けは細かく縦横に走り回ったりステップを繰り返したりするという運動量のある楽曲を笑顔で歌う4人の姿が凛々しい。続いては、蛍光灯再生計画(河瀬・白沢・帆風千春・宮瀬)による「タトゥー・ラブ」。ライティングも大人っぽく、しっとりとした歌声のマイクリレーで繋いでリズミカルにコーラスを展開していく。目を伏せがちにしつつ、情熱的な上半身の動きを見せたり、背景を感じさせるセリフを発するなど、歌以外の部分でもセクシーな演出が見逃せない。3組目は、気の抜けたサイダー(天城・西條・涼花)による「ソフトクリーム落としちゃった」。かわいらしい声が前面に出た楽曲で、軽やかなステップに加え、電車ごっこのような遊び心のある振り付けがこのユニットの個性を見せていた。

短いMCを挟み、キャラクターソングのメドレーを展開していくゾーン。各自の衣装も普段のスクールガールなデザインから大人のセンスのものへとチェンジ。最初は倉岡が歌謡曲テイスト溢れる河野 都のキャラソン「夢の船」をノリノリで披露。

カメラが別の場所に切り替わると、赤いカーテンの隙間から海乃が顔を出し、洋館をイメージした通路で戸田ジュンらしいかわいい声で「人生はワルツ」を歌う。

続いて帆風は佐藤麗華として「優等生じゃつまらない」をガイコツマイクが据えられたお立ち台に立って歌う。赤い照明が反射するミラーボールの下でダイナミックなカメラワークのなかシリアスな表情で歌う様はまさに曲のタイトル通りだ。

丸山あかねを演じる白沢はメガネを掛けてクールなEDM「感情無用論」をラウンジのスクリーンをバックに歌う。カメラ目線や正面から迫ってくる様子と幾何学的な踊り、そして一瞬だけメガネを取って見せる笑顔は屈指の名シーン。ここに魅了されたファンは多いのではないだろうか。

バルコニーで歌うのは斎藤ニコルを演じる河瀬。ギターサウンドが響くスピーディーなナンバーで、軽やかなステップとカメラを真っ直ぐに見つめる視線が印象的だ。

細いホワイトのスポットライトが照らす空間に裸足で立つのは滝川みうを演じる西條。「One of them」は彼女の声を生かしたEDMで、バレエのようにステップしたと思ったら細かく刻み、メリハリと運動量が激しいダンス。背景のライトが大きく照らすなか勢いを増していく。ラストショットを決めたその背後から、藤間 桜を演じる天城もまた裸足で現れた。「生きることに楽になりたい」の通りシリアスな歌詞に合わせた表情で、情熱的なコンテンポラリーダンスを見せる、これまでに見せたことがないような彼女の感情を前面に出したパフォーマンスだった。

ムードあるアンニュイなボイスで「Moonlight」を歌うのは立川絢香を演じる宮瀬。控室を思わせる空間で鏡を使った演出などを用いつつ、色気あるダンスやカメラに向けた視線を使ってキャラクターらしさを表現。

神木みかみ(涼花)・東条悠希(高辻)・柊 つぼみ(武田)の3人は、「神様に指を差された僕たち」でそれぞれの個性を発揮した伸びやかな声でコーラスを歌い上げていた。

MCのタイミングでメンバーは「何もしてあげられない」の衣装に着替えて登場しそれぞれのユニット曲の解説やキャラソンにまつわる感想やアピールポイント、聴きどころなどを語る。続けて7thシングルを来年2月24日にリリースすることを発表した。この完全生産限定盤のBlu-rayディスクには“Anniversary Live 2020”の収録映像が付属する予定だ。帆風の「まだまだ走る元気残っていますか?」の掛け声に合わせてスタートしたのは「韋駄天娘」。軽やかなメロディにリズム良いステップが加わるなか、メンバーはそれぞれの担当パートで多彩な表情を見せていく。「ロマンスの積み木」は一列に並んで斉唱後、アグレッシブに展開。腕の振り付けから上半身を反り、回転を含むステップで円運動をする激しいアクションが満載だ。サビの間に挟まるボイスの演出も効果的。2番のサビでは天城をセンターに置いたV字フォーメーションからの展開が新鮮に映った。そこから鉄壁のチューン繋ぎで「Rain of lies」へ。冒頭は薄暗いライティングの下、2つの円に分かれ歩きながらシリアスな雰囲気だが、たちまち開放感溢れる展開へと進む。ライティングも大きく明るくなり、ダンスも片足ジャンプへと展開し、メンバーは一斉に破顔する。2番では全員の鎖状に並んでから大胆に動き、ラスサビでのクイックな動きのあと、感動を呼ぶ大きな振り付けで見せてくれた。「未来があるから」は、マイクリレーを展開していく正統派のスピーディなダンスナンバーで懸命に周り、腕を振り上げる様が眼を引く。このゾーン5曲目「何もしてあげられない」まで、タフなダンスナンバーが続き、特にこの日のように表情をカメラで捉えると額や髪に汗が滲む様子が見える。冒頭は特にシリアスなメッセージで、それぞれが問いかけるような表情をし、片手で頭を抑えたり拳を握るなどの感情豊かな振り付けを行っていく。そこから息を合わせ一斉に動くことで静と動のコントラストがよく表れた楽曲だった。

映像ではこの公演の約10日前、11月2日のリハーサル初日のダンスレッスンの映像に被せて、リハーサル後の各自のコメントが乗る。「色々フォーメーションも変わっているのですが、すごく見ごたえがあるものになっていると思います」(帆風)。「ファンの皆さんはどういう感情になったのかな。ライブが終わってから、「だから題名が“11”だったんだ」という気持ちになってもらえれば嬉しい」(武田)。「時間が過ぎるのが早い。11人でやっているからなのかな?」(白沢)。「もっと早くこの形でファンの方に見せたかった。いつかは生でファンの方々が見てくださっているところでも」(天城)。「そうなってほしいという思いはあったけど、それが現実になるとは想像がつかなかったので、ここからまた新たなスタートがあるよと安心していただきたいです」(宮瀬)。

これらの断片は何かを暗示していると視聴者に匂わせると、改めてここでメンバー全員の紹介映像が映し出される。従来であれば冒頭に流されるはずの「Overture」の映像だ。そして画面は10カウントダウンのあと、「11」が大写しになる。この公演のタイトルでもある数字その意味は次の曲で示されていた。「ムズイ」時の衣装に着替えたメンバーは11人でステージ上に現れた。つまり、「11」とは、従来の8人楽曲を11人で歌うことを意味していたのだった。これまで2人だったメロディに3人目が加わることで音としての厚みが増すだけではなく、グループとしての結束力は計り知れない。それが先ほどのメンバーたちのコメントに表れている。フォーメーションは西條を先頭にV字となって、左右にステージを広く使って展開。仄暗いステージのなか、細いライトに照らされてエモーショナルなセリフを畳み掛け、サビではエモーショナルな言葉を紡いでいく。反り返る振り付けの横をカメラが走り、背後に回りつつ、360度周りメンバーを背中から映して間を通り抜けるという、この日初めて見せるカメラワークで、この特別な瞬間を伝えていく。

11人ライブで初披露の「僕らの環境」は、歌うメンバーと踊るメンバーのフォーメーションがきっぱりと分かれ、それぞれが忙しくローテーションしていく。サビのゾーンでは歌詞をイメージした水平やバランスを象徴したダンスを見せる。続く「足を洗え!」も初披露。力強い頭サビが終わった直後からフルパワーのダンスで、ストリングスとギターリフ主体の序盤から、多彩な楽器で構成されたサビへ進む。ソリッドでスピーディな展開でそれぞれがパフォーマンスを見せていく。TVアニメ『22/7』のEDテーマ「空のエメラルド」も、8人楽曲を11人の形でアップデートしたパフォーマンスだ。一列に並んで上手から下手へマイクリレーしていくスケールが大きくなり、楽曲中に見せる表情もそれぞれの楽曲解釈によって違いが出るのが興味深い。アウトロのところで揃ったダンスをクイックにキメて締め括った。

最後のMCで語るメンバーは、ことさら “11”の意味を解説したりせず、視聴者に解釈を委ねるような話しぶりだ。高辻は、「今日こうやって11人で同じステージで一緒に歌うことができて本当に嬉しいです」と語った途端に感極まってしまう。天城が応援して一呼吸入れたあと、「待っていてくださった皆さん、一緒に信じてくれてありがとうございました!」と大きな声で述べた。最後にリーダーの帆風は「“11”という意味が皆さんに伝わっていたらいいなと思います。改めまして本日は本当にありがとうございました」と話し、全員でラストナンバーの「11人が集まった理由」をリラックスした表情で歌う。これまでのライブでも定番のエンディングだが、この日のライブテーマの中でのパフォーマンスには格別の意味が込められていることだろう。最後のパートは演りきったという表情でリラックスして正面に集合し、ラストカットは近づいたカメラに向けてVサインを出していた。この日、アップデートしたものは今後どのような形に展開していくのか、7thシングルの内容を含め、今後とも彼女たちの動向を期待して待ちたい。

TEXT BY 日詰明嘉

<セットリスト>
M1. 風は吹いてるか?
M2. ポニーテールは振り向かせない
M3. 不確かな青春
M4. 願いの眼差し
M5. 半チャーハン/晴れた日のベンチ(海乃るり・倉岡水巴・高辻麗・武田愛奈)
M6. タトゥー・ラブ/蛍光灯再生計画(河瀬 詩・白沢かなえ・帆風千春・宮瀬玲奈)
M7. ソフトクリーム落としちゃった/気の抜けたサイダー(天城サリー・西條 和・涼花 萌)
M8-1 夢の船/河野 都(CV.倉岡水巴)
M8-2 人生はワルツ/戸田ジュン(CV.海乃るり)
M8-3  優等生じゃつまらない/佐藤麗華(CV.帆風千春)
M8-4 感情無用論/丸山あかね(CV.白沢かなえ)
M8-5 孤独は嫌いじゃない/斎藤ニコル(CV.河瀬 詩)
M8-6 One of them/滝川みう(CV.西條 和)
M8-7 生きることに楽になりたい/藤間 桜(CV.天城サリー)
M8-8 Moonlight/立川絢香(CV.宮瀬玲奈)
M8-9 神様に指を差された僕たち/神木みかみ(CV.涼花萌)・東条悠希(CV.高辻 麗)・柊つぼみ(CV.武田愛奈)
M9. 韋駄天娘
M10. ロマンスの積み木
M11. Rain of lies
M12. 未来があるから
M13.何もしてあげられない
M14. ムズイ
M15. 僕らの環境
M16. 足を洗え!
M17. 空のエメラルド
M18. 11人が集まった理由

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