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REPORT

2020.11.13

初のオンラインライブで届けたファンへの感謝と愛――水樹奈々、愛に包まれた“NANA ACOUSTIC ONLINE”レポート!

今年デビュー20周年イヤーを迎えた水樹奈々が、11月7日、自身初のオンラインライブ“NANA ACOUSTIC ONLINE”を開催した。本来であれば、今年は自身最大規模の全国ツアーを予定していたわけだが、新型コロナウイルスの影響により中止となったため、本公演は彼女にとって今年初のワンマンライブに。それゆえに特別なものを届けたい想いがあったのだろう。このライブのために新たにアレンジされた、アコースティック編成による全12曲。そのすべてに愛を感じることができた、間違いなく最高の2時間だった。

配信開始時間になると、まずはリハーサルの様子を捉えた映像が映し出され、そこに重なるピアノの調べがイントロを紡ぎ、“二人だけの明日”を願う、切なくも情熱的な冬ソング「エデン」からライブはスタート。原曲はアップテンポな2ビートが焦燥感を煽るギターロックで知られるが、今回はバイオリンの音色を軸にゆったりと聴かせるアレンジに。雪の映像演出が淡い雰囲気を高めるなか、自身のテーマカラーでもあるブルーを基調とした衣装を身に纏った水樹は、しっとりと、しかし力強い歌声で、自らの想いの行方を“青い花”に問いかける。

続いて、アコースティック編成で哀愁が一層増した「Invisible Heat」を熱唱した水樹は、最初のMCでバックを務めるCherry Boysの面々を紹介。今回のライブ楽曲のアレンジを担当した渡辺 格(ギター)と門脇大輔(バイオリン)、そして松永俊弥(ドラムス)、中島オバヲ(パーカッション)というお馴染みのメンバーに加え、これがチェリボ初参加となる佐々木“コジロー”貴之(ギター)、須長和広(ベース)、佐藤雄大(キーボード)が本公演のメンツだ。チェリボのメンバーは水樹からチェリボネームを授かるのが恒例となっており、佐々木は「ニックネームを考えたけれどコジロー以外考えられない」(水樹)ということでそのまま“コジロー”、須長は“すなもん”、佐藤はエレクトーンの世界大会で優勝経験があることから“チャンプ”と名付けられた。なお、今回のライブは、キングレコードが運営する池袋のライブハウス・Club Mixaから届けられたのだが、会場は無観客ということで、バンドメンバーは水樹の周囲を取り囲むようなポジションで演奏。本来なら客席の最前列となる場所にいた門脇らは「不思議な気分」「(水樹と)目を合わせていいのかわからない」と語っていた。

「やっぱりみんなにいてほしいよ!」とかわいらしく駄々をこねながらも、「皆さん、それぞれの場所で、心のサイリウムやペンライトを振ってくれたり、くつろぎながらしっとりと聴いてくれたり、それぞれの楽しみ方をしてくださっていると思います」と感謝の気持ちを述べた水樹は、続いて最新アルバム『CANNONBALL RUNNING』より自身作詞のウエディングソング「マーガレット」をライブ初披露。今年7月に結婚、そして本ライブの配信前日となる11月6日に第一子の妊娠を発表しただけに、幸せそうな表情で歌う水樹の姿を見ると、言葉では言い表せないような気持ちが胸に込み上げてくる。間奏での佐々木と門脇のユニゾン演奏や親密なアンサンブルにも多幸感が溢れており、観ているこちら側も幸せをおすそ分けしてもらったような気分になった。

永遠の愛を誓った「マーガレット」に続き、今度は2007年発表の名盤『GREAT ACTIVITY』より、出会いと感謝の気持ちを伝える歌「Nostalgia」が歌われたのは、この日の個人的ハイライトの一つ。アコギの爽やかな響きとオルガン風の音色が絡み合うギターポップ的なアレンジが施された、甘酸っぱくもノスタルジックなムードのなかで、“そう君に出会っていなければ 立ち止まって この場所まで辿り着けずいた”“忘れない 君を これからも ずっと 歩いてく いつも離さず 大切だから”と画面越しに優しく歌いかける彼女の最高の笑顔からは、ファンに対する「ありがとう」の気持ちと、それ以上のメッセージを感じずにはいられない。

そこから同じ時代に生まれた喜びを伝える「ONE」へと繋ぎ(パッヘルベルの「カノン」のフレーズを盛り込んだアレンジも秀逸だった)、オンラインの壁を超えて視聴者との一体感を生み出すと、ここでスペシャルゲストとしてアルパ奏者の上松美香をステージに迎え入れる。上松範康(Elements Garden)の実の妹で、水樹とはライブで何度も共演しているほか、友人としても親交の深い彼女。水樹も「アコースティックライブをやると決めたときに、絶対に美香ちゃんに来てもらいたいなって、一番に頭に浮かびました」と語る。そして「タイマン的なスペシャル仕様でお届けしたいと思います」と、水樹と上松の二人きりで紡がれたのは「愛の星 -two hearts-」。2014年のアルバム『SUPERNAL LIBERTY』に収められた上松との一発録りによるアレンジ曲であり、原曲の「愛の星」は、水樹が今年4月にTwitterを通じて呼びかけたコラボ企画「#水樹奈々とタイマン勝負」で歌われた楽曲でもある。上松もその企画に応じて演奏した動画をSNSに投稿していたが、ライブでコラボするのはこれが初めて。二人でアイコンタクトを取りながら、アルパの美しく神秘的な音色と慈愛に満ちた歌声が合わさり、たった二人だけなのに宇宙を想起させるようなスケール感のステージが展開される。最後の“どんな明日が来ても君と共に Forever”という願いは、きっと宇宙(そら)に届いたのではないだろうか。

そして今度は上松にチェリボのメンバーも交え、キャリア初期の楽曲「宝物」を歌唱。1番ではアルパの優雅な響きとアコギを中心に、2番からはそこにリズム隊も加わった優しい演奏に乗せて、“私は歌を歌い続ける この瞬間 大切に あふれる笑顔達 私にとって それが宝物”と、自らが歌い続ける意味と、それにかける強い意志を改めて示す。その後、チェリボメンバーとの和やかなMCタイムを挿み、水樹は「ここからはガラリと雰囲気を変えて、ポップで楽しい楽曲をお届けしたいと思います」と宣言。まずはTVアニメ『ロザリオとバンパイア』のOPテーマでもある「COSMIC LOVE」を、門脇の考案によるジャズボッサ風のアレンジでパフォーマンスする。冒頭からチェリボメンバーらと共にお洒落なコーラスを聴かせたかと思うと、アコギやウッドベース、パーカッションが心地良いリズムを紡ぎ出し、ステージは一気にまったりリゾート気分に。しかも2番のサビ終わりからテンポが倍速になり、なんと高速サンバ化。ブラジリアンなグルーヴが熱い風を呼び込むなか、水樹もくるっと回ったり身を揺らせながら伸びやかな声を響かせ、爽やかな熱狂を生み出してみせた。

続く「ドラマティックラブ」は、原曲はハウス調の打ち込みビートのイメージが強いが、ここでは生音ならではの軽やかなグルーヴが独特の柔らかさをもたらしており、80年代のアイドルポップ的なメロディがより親しみやすく伝わってきた印象。胸元でハートマークを作ったりする愛らしい振り付けも込みで、水樹のキュートさが強調されていた。そこから一転、MCを経て披露された「NEVER SURRENDER」は、従来の緊迫感をはらんだドラマティックな曲調を、アコースティック編成でそのまま踏襲したようなアレンジに。深い青色と濃いピンクの照明に照らされた水樹の立ち振る舞いと歌声からは、胸中に宿した情熱の炎と同時に、水樹にとって大切な作品である『魔法少女リリカルなのは』および彼女が演じるフェイト・テスタロッサへの想いも感じられた。

その余韻が残るなか、ピアノのしとやかなイントロと共に始まったのは「Sing Forever」。6thアルバム『GREAT ACTIVITY』の最後に収められていたバラード曲だ。“気がつけば 歌を歌ってた”というフレーズで始まるこの曲は、タイトルからも伝わる通り、水樹の歌に対する想いが形になったようなナンバー。少し潤んだ瞳でカメラをまっすぐ見つめ、優しい微笑みを浮かべながら、モニターの向こう側の「みんな」に語りかけるように、“これからもJoy To Sing 君の心を そっと癒せますように…”と歌う水樹は、やはりどこまでいっても歌と共にあるべき人なんだということが、ひしひしと伝わってくる。彼女の歌に元気や勇気をもらった人間が、どれだけの人数いることだろうか。

そして、その未来を照らす希望の歌声の最新形と言えるのが、この日のライブの最後に歌われた「No Rain, No Rainbow」。今年10月にリリースされた通算40枚目のニューシングル「FIRE SCREAM / No Rain, No Rainbow」の表題曲であり、コロナ禍を受けて力強いメッセージを込めて作られた応援ソングでもある。「嫌なことがあっても、きっとその先にはキラキラの未来が待っている」「皆さんと絶対に再会できる!という想いを込めて、この曲を歌いたいと思います」と語った水樹は、とりわけ明るく、ポジティブな声で“高鳴る鼓動を 勇気に変えて 勝利を掴め”と歌い上げる。“何があっても負けない!!”の箇所でこぶしを正面に突き出し、眼力鋭く聴き手を鼓舞する姿は、誰よりも努力を重ねてこの場所に立つ、彼女だからこそ説得力がある。ゲストの上松を含むバンドメンバーも皆、笑顔を浮かべて演奏。ラスサビでは映像演出でCGの紙吹雪が降り注ぎ、まるで雨上がりの青空のように晴れやかな景色を生み出し、ライブは大団円を迎えた。

終演後の挨拶で「オンラインですが、また新しいステージを皆さんに届けることができて、幸せでした。やっぱりライブって楽しいですね!」と語っていた水樹。いつものライブに比べるとコンパクトな作りだったとはいえ、新曲や懐かしい楽曲を含む、レアなアレンジで構成されたセットリスト、そこに込められたメッセージ性、そして水樹とチェリボメンバーが織り成す圧倒的なクオリティのパフォーマンスが、家にいながらにして高画質&高音質で楽しめたという意味において、生ライブとはまた違った充実感があったように思う。何より馴染みの楽曲もアコースティックな装いになることで新たな魅力が生まれていたので、今後機会があればぜひ、アコースティックアレンジによる作品集も期待したいところだ。

PHOTOGRAPHY BY MASA
TEXT BY 北野 創(リスアニ!)

<セットリスト>
01. エデン
02. Invisible Heat
03. マーガレット
04. Nostalgia
05. ONE
06. 愛の星 -two hearts- / 水樹奈々×上松美香
07. 宝物
08. COSMIC LOVE
09. ドラマティックラブ
10. NEVER SURRENDER
11. Sing Forever
12. No Rain, No Rainbow


●配信情報
NANA ACOUSTIC ONLINE
2020年11月14日(土)23:59までアーカイブ配信中!
※40thシングル「FIRE SCREAM / No Rain, No Rainbow」に“NANA ACOUSTIC ONLINE”チケット購入用シリアルナンバーを封入
(シリアル受付期間:2020年10月7日(水) 12:00~2020年11月14日(土)18:00まで)

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