ソロ曲からキャラソンまで、10年の歩みがここに――。新田恵海、シンガーとしての新たな一歩を刻むオンラインライブをレポート!

今年3月にRe-Debutシングル「Sing Ring」で歌手活動を再開させた新田恵海が、およそ2年半ぶりとなるワンマンライブ<新田恵海 ON-LINE LIVE ~Go The Distance!~>を開催した。久々のワンマンということでこれまでに発表してきたソロ時代の曲からキャラソンまで、10年におよぶキャリアを凝縮したようなバラエティ豊かなステージとなったこの日。そこにはステージに立てる喜びを歌にのせ、歌に生きる彼女らしいエモーショナルな歌声が聴かれた瞬間でもあった。昼夜の2部開催となったこの日のうち、夜に行われた2部の模様をお届けしよう。

およそ2年半ぶりのステージ、その幕開けは「Colorful Parade」の軽快なイントロから。それに乗せてこちらも軽快なステップで新田恵海がステージに躍り出る。リアルでも配信でも、いわゆる出囃子のようなBGMや映像など盛り上げて始めるライブが多くを占めるなか、この唐突ともいえるライブのスタートは新鮮だ。この時点で彼女が久々のライブで目指したがものが見えてくる。ステージ上もキラキラとした装飾が施されているが、比較的シンプルで、彼女の存在は一層引き立つ。会場に集まったファンは着席して発声など大きなアクションが取れないなかでの観覧となり、一方配信での視聴者もリアルライブとは異なるシチュエーションでの視聴となる。そうした条件下でのライブがゆえに、これまで以上に新田の一挙手一投足に注目が集まるような空間が出来上がっていた。イメージカラーの1つであるオレンジの衣装を身にまとった新田は、ディスコチックなサウンドに乗せて軽快なダンスを見せる。客席やカメラに向けた表情はとにかく楽しそうな笑顔で、それがそのまま声になったような、場をパッと明るくするような歌唱が会場を包む。シンプル、しかしそれゆえ“アーティスト・新田恵海”の魅力が一気に放出されたようなライブのスタートとなった。続くモータウンビートが印象的な「Every day a Lucky day!」でもニコニコしたままの魅力的な歌声を聴かせ、中盤でもキュートなダンスを披露した。

MCでは発声のできない会場のファンとも交流を図りながら場を和ませつつ、「ワンマンライブとしては2年半ぶりとなります。最初はちょっと不安に思ったんですが、心強いスタッフさんが支えてくださって、会場にみんなが集まってくれて、画面の向こうでみんなが応援してくれて、今日この日を迎えられてよかったと思います」とステージに立てる喜びを語った。そのあとに披露された「In the Ring」というのがまたグッとくる。“誰かの涙や 自分の弱さに いつかそっと寄り添えるように”と歌う彼女の優しさや、歌へかける想いが込められたこのバラードは、今ここで聴くことで大きな意味を持つような気がした。そんな穏やかな余韻を残したまま披露された「ORATIO」では、新田の歌唱も一気にパワフルに転じる。振り幅のあるセットリストの中でも彼女が地に足をつけたパフォーマンスを見せる姿は非常に頼もしい。「まだまだいきますよ~!」と叫んでの「マスカレイド」も同様に、ロッキンなサウンドに乗せ、パワフルで、時に妖艶さも感じさせる堂々たる歌声を聴かせていた。

序盤にして様々なサウンドアプローチを聴かせたあとは、さらに趣向を変えてのアコースティックコーナーへ。ギターは木原おじさんこと木原良輔、ピアノにはんちゃんこと半田彬倫という腕利きな二人を迎えての「コイスルマチカド」は、木原の軽快なアコギと半田のジャジーなピアノにより絶品なアレンジが施されている。木原のカッティングのリズムに乗せ、新田の歌唱も序盤からさらにギアを上げたような、声もより豊かな表情を見せていく。この贅沢な空間に観客もうっとりしたようで、歌い終わったあとに新田も「これが、シャレオツ」とご満悦の様子。続く「勿忘草」は流麗なピアノに乗せてしっとりと聴かせる。低音もきれいに出ていて、こうしたシンプルな編成での歌声の聴かせ方が実に見事だと感じた。

そしてアコースティックコーナーの最後には「皆さんも一緒に手拍子を」と促し「きらめきを夢みて」へ。ギターとピアノと歌に、観客の手拍子も加わったアンサンブルは、“参加できる楽しさ”というライブ本来の魅力を再確認できるものだった。

再び新田一人となったステージ。今回のライブタイトルである“~Go The Distance!~”のロゴには彼女の声優活動10周年を意味する10の文字が隠されていることから、「山あり谷ありな10年間でしたけど、こうして声のお仕事を続けていられるのはありがたいことです」と語る。そして「そんななかキャラクターとしていろんな曲を歌わせていただいていて、今日は私の10周年を振り返るキャラクターソングを聴いていただきたいと思います」と言い、その直後に鳴らされたのは、μ’s「僕らのLIVE 君とのLIFE」の印象的なギターリフ。今年1月の“ラブライブ!フェス”でも披露された楽曲なので記憶に新しい人もいるだろうが、この曲をまた聴くことができということに、歓声は発せずとも観客がはっと息を飲むような雰囲気になったのを感じた。オレンジ色に染まった観客を前に、ステージ上の新田のダンスも変わらないキレを見せるのだから、また胸が熱くなる。彼女の10周年を、そしてこの日を祝うにはこのうえないギフトとなる1曲だ。続いては電波ソングのサウンドに乗せて一気にテンションもアップ! こちらも新田恵海を語るうえで欠かせない1000ちゃんのキャラソン「1000☆CHANCE!!」だ。ハイテンションでピーキーな歌唱という振り幅にこちらのテンションもグイグイと上がる。そして同じく1000ちゃんの「PARTY×PARTY!!」「COLORFUL∞LINK」へと繋いだあとは、こちらも思わず声が出そうになるキャリア初期の代表作『D.C.Ⅲ ~ダ・カーポⅢ~』から「サクラハッピーイノベーション」へ。μ’sと同じくソロ歌唱というレアなパフォーマンスでありながら、ソロアーティストとは異なる彼女の魅力を改めて体感できるコーナーとなった。

ライブもいよいよ後半戦。ここからは木原と半田が再びステージに登場し、「my youth」へ。キャラソンという数々の青春を過ごした彼女が直後にこの曲を歌うという流れもニクい限りだ。それを実感しているかのように、後半に入りその声はより表情豊かになっていく。そこからMCを挟んでの「君に咲く愛のうた」「Shine」とポジティブでアッパーなサウンドが続きクライマックスのムードを演出していく。木原と半田がステージをあとにしてからも、「昼の部ではライブってこんなに楽しかったんだ!っていうのを思い出したら、夜の部は楽しさしかなくて、私もすごく楽しいです!」と喜びを爆発させる。そのあと、自身がここ数年発声障害に苦しみながらも、そこからありのままの自分を見せようと今年3月にアーティスト再デビューを迎えたことを語り始めた。そしてそこで支えてくれたファンへ感謝を述べつつ、「この曲は皆さんへの感謝をめいっぱい込めて、噛み締めて歌いたいと思います」と歌ったのは、Re-Debut曲「Sing Ring」。イントロが鳴り、声を発する前に棒立ちのまま天を仰いだ姿に思わず目頭が熱くなる。ありのままの自分を見せるという言葉通り、まさにリラックスした姿勢で紡がれるこの曲。ここ数年の苦境を乗り越えた彼女の晴々とした表情と、そして飾り気のない彼女のピュアな魅力が打ち出されたエヴァーグリーンな歌声は実に感動的だった。そうした感動的なムードのなか、ロッキンな「UNITED」が鳴らされ、本編を締め括った。

アンコールではまずメロディアスな高坂穂乃果のキャラソン「もうひとりじゃないよ」を披露。「こうしてまたライブで皆さんにお会いできる日が来るなんて、今日は本当に感慨深いし幸せな1日だなと思っています」と改めて会場と配信でライブを観ているファンに感謝を述べた。そして最後には三度木原と半田を迎え、この日最後の曲「Bon Voyage!」をプレイ。Re-Debutから半年以上経ち、改めてここで新田恵海の新章を迎えたことを告げるような力強いステージングを見せ、ライブは幕を閉じた。

改めて特殊な状況下ではありながらも、2年半ぶりというステージには並々ならぬ思いがあっただろう。加えて歌うことができなかったという苦しい時期を乗り越え、Re-Debutを迎えたあとのステージだっただけに、その喜びは格別だったに違いない。本編MCで「歌がないと生きていけない、歌わなきゃ私じゃない」と言っていたように、新田恵海にとって歌とは、歌うこととは生き様そのものであるというのはアーティストデビュー当時から語っていたことだ。その生き様を改めて発信した瞬間こそ、この日のステージだったのだ。それほどこの日の彼女の声は感情的に喜びを発していたし、そんな太陽のように明るい彼女と再び会うことができたファンもまた、同じ想いを抱いているに違いない。そしてファンは同時に、この素晴らしい日が出発点であることも感じ取れたはずだ。そういった点ではこの日もまた、新田恵海にとってもう1つのRe-Debutだったのかもしれない。

TEXT BY 澄川龍一

<セットリスト>
新田恵海 ON-LINE LIVE 2020 〜Go the Distance!〜

<1回目公演>
01. Colorful Parade
02. Every day a Lucky day!
03. In the Ring
04. ORATIO
05. マスカレイド
06. コイスルマチカド
07. 暁
08. きらめきを夢みて
09. 僕らのLIVE 君とのLIFE
10. REFLECTION
11. 1000☆CHANCE!!
12. PARTY×PARTY!!
13. COLORFUL∞LINK
14. my youth
15. 君に咲く愛のうた
16. Baby Call My Name
17. Sing Ring
18. UNITED
EN1. 夢なき夢は夢じゃない
EN2. Bon Voyage!

<2回目公演>
01. Colorful Parade
02. Every day a Lucky day!
03. In the Ring
04. ORATIO
05. マスカレイド
06. コイスルマチカド
07. 勿忘草
08. きらめきを夢みて
09. 僕らのLIVE 君とのLIFE
10. 1000☆CHANCE!!
11. PARTY×PARTY!!
12. COLORFUL∞LINK
13. サクラハッピーイノベーション
14. my youth
15. 君に咲く愛のうた
16. Shine
17. Sing Ring
18. UNITED
EN1. もうひとりじゃないよ
EN2. Bon Voyage!


●配信情報
新田恵海 ON-LINE LIVE 2020 〜Go the Distance!〜
11月8日(日)23:59までアーカイブ映像公開中!
※チケットは11月8日(日)21:00まで販売中です

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