「心の中で精一杯、大きな声を出してね!」チコハニが聖地・中野サンプラザから全国に届けた2020年初ワンマンライブ! “CHiCO with HoneyWorks summer tour 2020 『WiSH Upon A Star』”をレポート

どんなアーティストにも“聖地”と呼ばれる場所がある。CHiCO with HoneyWorksにとっての中野サンプラザはまさに、聖地と呼ぶにふさわしいファンとの約束の場所だ。2016年の初めてのホールライブも、2018年の初のホールツアーと初の2daysライブ、そして去年の初の4daysライブシリーズ……チコハニが飛躍する転機を担う会場は、いつも中野サンプラザだった。

そして2020年9月27日。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、残念ながら中止になってしまった夏の全国ツアー“CHiCO with HoneyWorks summer tour 2020 『WiSH Upon A Star』”。そのファイナル公演として予定されていた中野サンプラザ公演を今回は、収容人数を減らして開催し、ファンのみんなに歌を直接届けられなかった代わりに全国40の映画館で初のライブ・ビューイングを実現。待ちきれなかったファンのめいっぱいの想いを詰め込んだ、中野サンプラザでの忘れられない大切な“初めて”が、もう1つ歴史に大きく刻まれた。

開演の18時。“WiSH Upon A Star”というライブタイトルを象徴するように大きな星形のセットが組まれ、暗転したステージにお馴染みのチコハニバンドのメンバー――ギターのOjiと中西、ベースのHiroki169、ドラムのAtsuyuK!、キーボードの宇都圭輝が一人ずつ、手を振り、深々とお辞儀をしながらポジションに着く。よく見ると、メンバー同士の間にもアクリルの仕切り版が備えられているのも、今年だからこその光景だ。客席も感染対策として歓声禁止の約束が守られ、だからこそ力を込めて揺らされるペンライトの光と大きな拍手が贈られる。

そしてスタートしたのは童謡「きらきら星」。ふわっとした空気の中で静かに始まったインストセッションは途中で激しいバンドサウンドに変貌し、中央の階段上に颯爽と現れたCHiCOの「行くぞ!」の掛け声から、間髪を入れず「決戦スピリット」へとなだれ込む。いつものようなドッと沸きたつ歓声こそないものの、CHiCOとバンドはオープニングからトップギア。CHiCOは会場の隅々まで、カメラの1台1台にも顔を向け、大きく手を振りながらステージを移動する。いつも以上に気合いの入ったバンドの掛け声と、伸び伸びと温かいCHiCOの歌声が心を躍らせ、「color」へと熱を繋げていった。

最初のMC。CHiCOからも「手拍子ができる方は手拍子で、ペンライトの人はぶわーっと振ってください。できない人は心の中で叫んでください! 皆さんこんばんはー!」と元気な声が飛び、今年初のワンマンライブ“チコハニはじめ”ができた喜びをバンドとともに分かち合う。ライブビューイング用カメラに近づいて手を振るCHiCOも満面の笑顔だ。そこから、秋が深まりつつある季節にも良く似合う「ノスタルジックレインフォール」と「カヌレ」へと、軽やかな楽曲が続く。会場とカメラに向かって“好き”“愛してるよ”と歌いかけ、ぴょんぴょんと可愛く跳ねるCHiCOは本当に楽しそうだ。今年前半からのほの暗い世の中の気分を払拭するように、爽やかな風が通り抜けた。

いつものライブとは違う雰囲気に恐る恐るだった(?)オーディエンスの拍手の音も、セットリストが進むたびに大きくなっていくのがわかる。9月16日にリリースされたばかりの3rdアルバム『瞬く世界にiを揺らせ』の制作エピソードをCHiCOが語り、「成海家の曲をたくさん歌おうと思ってます」と、次のブロックを予告。拍手のみで声援が送れない客席と現地にいないライブビューイングのオーディエンスを思いやって、CHiCOとバンドメンバーがいろいろな拍手アレンジのアイデアを出し合い、笑い合っている様子を見るのも、CHiCOが語っていた「今日だけしかできない楽しみ方」なのだと気づかされる。

そして始まった“成海家シリーズ”は、HoneyWorksの“告白実行委員会”ナンバーのカバーと、チコハニ楽曲として歌われている成海聖奈・萌奈姉妹と家族の物語をたっぷりと聴かせてくれる。CHiCOも楽曲ごとに聖奈・萌奈たちの気持ちになりきって声色を変え、「可愛くなりたい」ではキュートに、「ワタシノテンシ」では新しい振り付けも披露しながらお姉さんらしく、「ミスター・ダーリン」では明るくハッピーに歌い上げる。愛情溢れる成海家の楽曲に込められた様々な想いへの感動を、MCで語るCHiCO。「私、家族愛がダメで、何を見ても涙が出ちゃう。ほんとに素敵な(成海)パパの楽曲をお届けします」と告げて歌われたのは、『瞬く世界にiを揺らせ』のリードナンバーにもなっている「幸せ。」。もちろんライブでは初披露の新曲だ。CHiCOのストレートなボーカルに青春パンク風のタイトなサウンドが絡み合う。CHiCOがステージ中央の階段を駆け上がり、ポーズを決めて「ありがとー!」と叫んで去り、タイトルの通り、幸せ満開なムードで前半戦が終了した。

場内換気のための15分間の休憩を挟んで後半へ。ほの暗いステージにキーボードの圭輝が登場し、真っ白なスポットライトを浴びて、ライブタイトルでもオマージュされていた「星に願いを」(原題:When You Wish upon a Star)を、優しくピアノで奏で出す。背後に輝くのは、ライトで演出された無数の星たち。“あなたの心が望むものは何でも あなたのもとに来るだろう”、“星に願いをかければ あなたの夢が叶う”――「星に願いを」の原詞で歌われていたメッセージが、心に浸みる。中野サンプラザに集まったファン、そして全国のライブビューイング会場に集まったファン。その誰もが心から願っていた “CHiCOの歌が聴きたい、チコハニに会いたい、ライブが観たい!”の想いを、きっと星たちが叶えてくれたのだろう。

そして中央の階段から、オレンジ色に染めた髪の毛を下ろし、全身に散りばめられたスパンコールでキラキラと輝く華やかな衣装にチェンジしたCHiCOが現れ、圭輝のピアノに合流。9月18日に、YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に初めて素顔で登場したときのアレンジで、「世界は恋に落ちている~THE FIRST TAKE ver.~」を鮮やかに歌い上げる。静寂を破る大きな拍手の後、CHiCOと圭輝はホッとした表情で「緊張しました!」と笑い合い、「THE FIRST TAKE」収録当日、圭輝とふたりでとても緊張したというエピソードを語る。「私の顔が出てびっくりしたことでしょう。私も試聴を正座待機して緊張しましたが、とてもいい経験ができました」と動画公開を振り返った。

ここから再び、バンドが集結。チコハニライブ恒例のバラードコーナー“チコバラ”のスタートだ。Ojiと中西のツインアコースティックギターとストリングスの音色が郷愁を誘う「恋人ツナギ」、CHiCOが「私から皆さんにありがとうを込めて」と紹介された「BGM」。彼女自身のアーティストとしての道のりを等身大でHoneyWorksが歌詞に託した「BGM」の “みんなの顔が見えた” のフレーズを、瞳を輝かせながら歌うCHiCOの表情も印象的だ。

「久々のワンマンライブ、久しぶりにお腹が痛くなりました」と言いながら、今日に備えた2日間のリハーサルの模様を振り返るCHiCOとメンバーたち。バンドメンバーともいつも以上にコミュニケーションを取りながら、みんなの前で音楽ができる喜びを改めてかみしめていたという。ライブを盛り上げてくれている制作スタッフへの感謝の言葉も口々に飛び出し、チコハニチームのマスコットである『銀魂』のエリザベス人形も、今日はマスクとフェイスシールドに身を固めてライブに参加。チーム全員が一丸となって、今日の日を待ちわびていたことが、CHiCOとバンドメンバー一人ひとりの言葉からしっかりと伝わってきた。

まったりとしたMCを、「次はかっこいい曲です。彼女たちの悲劇の曲を聴いてください」と締め括ったCHiCOは、凜とした表情でムードを一変。スケール感溢れるシリアスなボーカルから始まる、悲劇の女王マリー・アントワネットをモチーフにした壮大な新曲「Marie」、ヘビーなサウンドと疾走感に満ちたハードでドラマチックなロックナンバー「ヒストリア」を、立て続けに畳みかける。悲しみ、怒り、苦悩の感情を、叫びにも似た激情と激しいアクションでぶつけるCHiCO。実は『瞬く世界にiを揺らせ』のインタビューをした際、CHiCOは『普段のライブではセットリストに入れにくい「ヒストリア」を歌いたくて、同じテイストを持つ「Marie」を作って欲しいとリクエストした』と言っていたのだが、早くもここでそのカップリングが実現したことになる。音域も広く緩急の激しいこの2曲は、歌い手としての高度なテクニックも要求される難曲たち。ライブだからこその胸の中をかき回され、ギュッと心を締め付けられるような迫力に、ゾクゾクさせられた。

ドラマチックな2曲を熱唱した後は再び、明るく楽しい時間が流れ出す。「次に歌う曲は、なんとMVを撮ったんです!」とCHiCOが報告した曲は、CHiCOとGomが歌詞を共作した新曲「ぐる恋」だ。しかもそのMVは、チコハニバンドも出演してCHiCOが生身で歌い踊ったという初の実写MVになるという! 公開はもう少し先になるそうだが、あっと驚く報告に、客席からも大きな拍手が巻き起こる。さらにステージには、そのMV撮影で使ったというゲームのSSRレアカードを模した額縁状のセットも登場。CHiCOがレクチャーするサビの振り付けを練習し、演奏がスタート。キャッチーなメロディとブラスの効いたポップなサウンドに合わせ、“推し”への想いを歌うキュートなラブソングに、みんなが笑顔になる。そのままセットリストはCHiCOの手拍子に導かれ、「ヒロイン育成計画」へ。弾けるサウンドにのせてバンドメンバーもCHiCOも元気に跳ね回る。

CHiCOとバンドメンバーの面白トークを挟んで、ライブいよいよ佳境に。「みんな行くぞー!」のパワフルな煽りに、客席がペンライトを激しく振って応えた「アイのシナリオ」では、CHiCOも激しく頭を振り、振り絞るような歌声でドライブ。そして本編ラストを飾ったのは、「皆さん心の中で、精一杯大きな声を出していきましょう!」の声から始まった「ヒカリ証明論」。荒れ狂う世の中で離れず笑って生きていけるように、“辛い辛いこの現世 戦え”と歌われる力強く前向きなメッセージは、今この時を生きる私たちの心に、深く深く突き刺さった。

鳴り止まない拍手に迎えられたアンコール。ほの暗いステージでアコースティックギターを抱えたOjiがポジションに付き、ライブTシャツとカラフルなスカートに着替えたCHiCOがステージ中央の階段に腰かける。しんと静まりかえったホールに切々と響き渡ったのは、「私を殺さないで」。生きづらい日々を過ごしている若い人に、もっと自由に生きていいんだよ、と語りかけられたメッセージが静かに心に染みていく。改めてメンバー全員を呼び込んで、全国のライブビューイング会場の名前を1ヵ所ずつメンバーが分担して読み上げてくれたのも嬉しい演出だ。このMCでは、11月29日(日)に幕張メッセ イベントホールで開催される“HoneyWorks Premium Live Tour 2020 ~ハニフェス~”への出演も発表。そして今の気持ちを、CHiCOはこんなふうに語ってくれた。

「今回のライブは、この曲はこうやりたいとか、こういう曲順だったら、みんな声には出せないけどワッと喜んでくれるかな?と、スタッフさんやバンドメンバーにすごく相談しながらセットリストを組ませていただきました。まだまだ未熟なところもたくさんあって、“CHiCOちゃん大丈夫かな?”と思うところも垣間見えるかもしれませんが、これからももっともっとCHiCO with HoneyWorks頑張って行きます。6周年を超えて7年目、これからも一緒に歩んでいってくれると嬉しいです。次も皆さんと万全の体勢でワンマンライブ行えるように、まだまだ星に願いを心に祈りながら、2020年を乗り切っていこうと思います!」

温かい拍手に包まれて、アンコール最後に届けられたのは、明日に向かって常に進化し、何事にも負けずに走り続けていくCHiCOと仲間たちの想いを形にしたかのような「乙女どもよ。」。雲1つない青空が広がる景色を想起させる、晴れやかなCHiCOの歌声が、どこまでも真っ直ぐに放たれていった――。

TEXT BY 阿部美香

<セットリスト>
Introduction 「きらきら星〜rock concerto〜」
M1「決戦スピリット」
M2「color」
M3「ノスタルジックレインフォール」
M4「カヌレ」
M5「可愛くなりたい」
M6「ワタシノテンシ」
M7「ミスター・ダーリン」
M8「幸せ。」
〈場内換気のため休憩〉
Interlude「星に願いよ〜piano concerto〜」
M9「世界は恋に落ちている〜THE FIRST TAKE version〜」
M10「恋人ツナギ」
M11「BGM」
M12「Marie」
M13「ヒストリア」
M14「ぐる恋」
M15「ヒロイン育成計画」
M16「アイのシナリオ」
M17「ヒカリ証明論」
〈アンコール〉
M18「私を殺さないで」
M19「乙女どもよ。」


●リリース情報
『瞬く世界にiを揺らせ』
発売中

【初回生産限定盤(2CD+DVD)】

品番:SMCL-660~663
価格;¥3,800(+税)

【通常盤(CD)】

品番:SMCL-664
価格;¥2,800(+税)

<Disc1/CD>
M01. 決戦スピリット
M02. ミスター・ダーリン
M03. 幸せ。
M04. ワタシノテンシ
M05. ぐる恋
M06. 胸キュンライト♡ ~フリフリ隊mix~
M07. ヒカリ証明論
M08. 恋人ツナギ
M09. Alive
M10. ギミギミコール
M11. Marie
M12. ヒロイン育成計画
M13. 私を殺さないで
M14 乙女どもよ。

<Disc2/CD>
※2019年8月31日「5th Anniversary Hall Tour 2019 LiVE 5’s ON !!」ファイナル公演
@愛知・日本特殊陶業市民会館フォレストホールでのライブ音源
M01「プライド革命(live at nagoya)」
M02「サイダー(live at nagoya)」
M03「世界は恋に落ちている(live at nagoya)」

<DVD>
ヒカリ証明論/ミスター・ダーリン/ギミギミコール/乙女どもよ。/決戦スピリット/ワタシノテンシ

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