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INTERVIEW

2020.09.03

早見沙織、アーティスト5周年を記念したミニアルバムには自身作詞曲を多数収録!「前作を経て自分の庭に帰ってきたようなコンセプト」と語る新作『GARDEN』リリースインタビュー

今年アーティスト活動5周年を迎えた早見沙織が、それを記念したミニアルバム『GARDEN』を完成させた。堀込泰行、田淵智也、NARASAKIなどに楽曲提供を受けた前作『シスターシティーズ』から一転、今作は早見自身が作詞・作曲を手がけた楽曲を中心に構成。それゆえに、今の彼女自身の考えや気持ちがダイレクトに反映された作品に仕上がっている。シンガーソングライターとしての彼女が、“私だけの庭”から見つけた新しい風景とは? 本作に込めた想いを聞いた。

自分の庭に帰ってきたようなコンセプトのミニアルバム

――『GARDEN』は今年に入って2枚目のミニアルバムです。前作『シスターシティーズ』と比較して、今回の新作はどのような作品になりましたか?

早見沙織 『シスターシティーズ』は自分の外側に目を向けた作品で、いろんなクリエイターの方とコラボさせていただいたのですが、今回の『GARDEN』はどちらかというと自分の内側に目を向けていく、『シスターシティーズ』での旅を経て自分の庭に帰ってきたようなコンセプトのミニアルバムになります。楽曲的にも自分の詞曲が中心になっています。

――表題曲の「garden」は、都会的なサウンドが心地良いシンセポップチューン。歌詞や歌声からは、改めて自分らしくあることの大切さに気づき、可能性の翼を広げていくような喜びが感じられます。

早見 楽曲制作の段階では、今回のミニアルバムを引っ張ってくれるような明るさ、メジャーで開放的なイメージの曲になればと考えながら作っていきました。そのなかで、これはミニアルバム全体に言えることなのですが、楽曲の制作期間がいわゆるコロナの自粛期間と重なっていたんですね。私も自分の内側を省みましたし、じゃあどうやって自分の道を生きていこうか?ということを考えて。その期間を経て生まれた楽曲・歌詞ということもあって、ある種の私なりの幸福論ではないですけど、どんな環境でも前を向いて、自分がいちばんベストな選択をしていると信じて進んでいきたいよね、という作品に仕上がりました。

――早見さんは抽象的な歌詞を書かれることも多いですが、この曲は“私だけの庭”といった比喩表現を使っているとはいえ、今、ご自身が伝えたいことや自分の心の在り様を直接的に書かれている印象があります。それはやはり、コロナ以降の今の状況を踏まえて、ファンの方に自分の想いをしっかり届けたい気持ちが強くなったのかなと思いました。

早見 そうですね。自分の心の中もそうですし、誰の心にも届いてほしいと思いましたし。もちろん想像にお任せする部分もありますけど、この曲に関しては、まっすぐに届いてほしい気持ちは強くありました。たぶん今は世の中の人達みんなが立ち止まっている期間で、学生さんにせよ、社会人の方にせよ、自分の未来のことだとか、その中でどう生活していくかを考えざるを得ないと思うんです。きっとそれぞれがいろんな道を選んだと思うんですけど、どんな選択をするにしても、それは自分自身を幸せにするために選んでいくものですし、みんな覚悟を持って選んでいると思うんですね。「garden」は、私自身もこの期間にいろいろ考えた結論でもあって、これからの私の音楽の方向性として、自分の決めた道を信じて歩いている人たちに寄り添っていけるものにしたいと思ったんです。

――そういった自分らしさを大切にした楽曲が、サウンド的にはシティポップ感のある軽快なエレクトロニックソウルになっているところにも、これまでの早見さんらしさとその進化を感じました。アレンジは冨田ラボの冨田恵一さんが担当されています。

早見 私は昔から冨田さんの楽曲にはたくさん触れてきたのですが、とてもお洒落で洗練された冨田さんのカラーはありつつ、それにプラスして何とも言えない温かさを感じることがありまして。今回、冨田さんにアレンジをお願いするにあたり、他にも候補の曲があったのですが、その中でも「garden」は、曲的にはシンプルだけど根底には明るさがあるので、冨田さんなら、その幸福な部分をより引き出していただけるのでは?ということで、この曲をアレンジしていただきました。こちらから細かいことはお伝えしなかったのですが、私のボーカルのカラーに合う形にしてくださいました。

――2曲目の「瀬戸際」はトワイライト感のあるアーバンなAORチューン。横恋慕と言いますか、気持ちを明かしたくても明かせないことの狂おしさみたいな情景が描かれています。

早見 この曲はピアノを弾きながら詞とメロディを同時に考えて作っていったのですが、タイトル通り、瀬戸際の一瞬を切り取りたいなと思いまして。「garden」は底抜けの解放感があって、肯定的な部分を描いているとしたら、この曲はまだ抜け切れていないというか、進むか進まないのかを決意しきれない、心が揺れ動いている瞬間みたいなところを切り取ったイメージですね。

――早見さんの歌声にも艶やかさがあって、大人の女性のポップスという印象を受けました。

早見 松本良喜さんにアレンジをお願いしたのですが、曲が元々持っていた切なさや苦しさに、松本さんだからこそのグルービーだったりアーバンな雰囲気が加わって、より一層、大人なエッセンスが足されたのかなと思います。言葉の置き方も、日本語なんだけど歌うと英詞感のあるような言葉を選んだりしてみて。サビ頭が英詞の曲というのはあまり作ったことがなかったのですが、自分の頭の中では、この曲はそういうのが合うアレンジになっていたので、自然とそうなりました。

――そして3曲目は、早見さんのデビュー曲のボサノババージョンとなる「やさしい希望(Bossa Nova)」。昨年の夏にご出演いただいた“リスアニ!LIVE SPECIAL EDITION ナツヤスミ”をはじめ、ライブではよくボサノバ風のアレンジで歌われていますが、今回改めて音源にしたのは?

早見 この曲は8月12日に先行配信したのですが、「やさしい希望」はちょうど5年前のその日にリリースした楽曲で、元々1年ぐらい前から、5年目のデビュー記念日に何かリリースをしたいという話をしていたんです。ライブでは以前からアレンジして歌っていて、私もこのバージョンがすごく好きですし、今回の『GARDEN』の“庭”というコンセプトにもぴったりだと思ったので、改めてボサノバ版で歌わせていただきました。

――この曲は早見さんがデビュー当時に自分で作詞されたわけですが、今回聴かせていただいて感じたのが、この5年の積み重ねを経て聴くと、歌詞の意味や重みが変わってくるなと思いました。

早見 私もいろいろ思い出しながら歌いました。この曲の歌詞を書き上げたときに、曲のデモを聴きながらシンセメロに合わせてこの詞を口ずさんだときに、すごく感慨深くて、自然と涙がウルッと零れたのを思い出したりして。5年前のレコーディングでは、歌をうたうことだけで精一杯でしたけど、改めて5年経ってこの曲をレコーディングしたら、いろいろあった今の2020年にもしっくりフィットしますし、人と人との関係性だとか、心と心の繋がりという部分に着目して、言葉の意味合いを感じながら歌えたことは大きかったですね。また違う意味でウルッときました。

――アコギやピアノといった楽器と早見さんの優しい歌がマッチしていて、親密感のあるテイクになっていますが、これはもしかしてライブで録られた?

早見 この曲は声と楽器は別で録りましたね。でも、たぶんアレンジをしてくださった増田(武史)さんが、私の録ったボーカルに合わせてギターを弾き直してくださったんだと思います。生っぽいと言ったら変ですけど、より一層ボーカルとの親和性が高くなっていると思います。

――続く「Akasaka5」は、エレピやグルービーなギターがウキウキ感を演出するポップチューン。文字通り赤坂5丁目をのんびりと散歩するような気軽さがありますね。

早見 この曲は詞先で曲をつけたのですが、私がアーティストデビューする前からiPhoneにメモしてストックしている、普段のライフスタイルの中でたまたま見た光景とか、日々感じたことを使って1曲作ろうと思いまして。アレンジも歌詞もライトで軽やかなんですけど、自分の内面を見つめ直すようなアルバムのなかで、重苦しい気持ちだったり、深く考えすぎてしまうことだけでなく、「今日は今日を終えて、明日は明日にお任せしようね」と思えている自分もいること、そういうときはみんなもあるはずだよね、ということを形にして、この作品の中に入れておきたかったんです。

――歌にも、隣で散歩しながら歌ってくれてるような感じがあって。

早見 そうですね。がっつり張り上げるというよりかは、軽やかに、しゃべるような感じで歌っていますね。この曲はデモもそんな感じで歌っていました。

――それとこの歌詞は、赤坂5丁目がたくさんの人々の行き交う、様々な価値観が集まる場所だと考えたら、その中においても自分らしさを持って軽やかに生きていきたいという、ある種、早見さん自身が理想とする人生観の表れでもあるのかなと思いました。

早見 まさにそうですね。ああいう場所を歩いていて見た光景から、自分が何を思うのか、自分自身はどう生きていこうかな?っていう。そこは表現の仕方が違うだけで、「garden」のなかで言っていることと同じなのかもしれないです。自分もこの曲のようにいれたらいいな、というのはあると思いますね。

――そしてミニアルバム本編の最後を飾るのが、美しくも幻想的なサウンドスケープが広がるワルツ調のバラード「glimmer」。サウンド面でも歌詞の面においても、相当ディープな内容になっています。

早見 これは自分のもっともっと奥に潜ってしまった感じの曲ですね。いろいろなことがあるなか、現在は暗闇の中にいたとしても、その中で希望だったり自分が思う光に向かって手を伸ばすことを軸に作っていった曲です。

――歌詞では“なんで なんで なんで 自分は ここにいるのかな”“こんな こんな こんな 自分に 何ができるかな”など、人間の本質的な部分を自問自答しているなか、例え答えが見つからないことはわかっていても、それを求め続けることが生きることという、ひとつの人生観が浮かび上がってくるようにも感じました。

早見 今回の作品は自分の内側から切り取って出している部分が強いので、それはこの曲にも表れていると思いますし、そうやって立ち止まって全然動けなくなるときというのが、必ずどこかのタイミングで訪れると思うんですよね。特に今年は、普段はまったくそういうことを考えない人でも、気づいたらそうなっていたということも多いと思いますし。「自分はどうやって生きていったらいいんだろう?」とか「何をしたいんだろう?」ということがわからなくなってしまうことがあると思うんですけど、でもそれを含めて自分は歩んで行くっていう。特に2番からラストのサビへの流れには、そういう部分が出ていると思います。

――その意味ではこの曲もまた、すごく深いところにまで潜っていますけど、ちゃんと聴き手に寄り添えるような曲になってるのではないかなと。

早見 「garden」と「glimmer」は、自分の感覚値としては全然違う曲ですけど、どちらも「どうやって自分が道を歩んでいくか?」というところにフォーカスを置いていて。最終的には皆さんにも聴いていただいて、どんな状況でも前に進む栄養のようなものになってくれたらいいなと思います。

――この曲のアレンジは、早見さんとは昔からご縁のあるMONACAの岡部啓一さんが手がけているところも、個人的にはグッとくるポイントでした。

早見 これは『セキレイ』のキャラクターソングでご一緒させていただいたときから感じていることなのですが、岡部さんのアレンジは本当に繊細で、でも優しくて温かみがある印象があって。私は岡部さんに(歌を)録っていただいたことが何度もあるんですけど、いつもボーカルの雰囲気をとても大事にしてくださる方で、楽曲のアプローチに合わせて丁寧にディレクションをしてくださって、世界観や雰囲気を大事に作り上げられる方なんです。この曲自体も、デモのときから繊細な表現が出来ればと考えていたので、岡部さんなら絶対に素敵に仕上げてくださると思ってお願いしました。

――ミニアルバムにはもう1曲、ボーナストラックとしてゴスペル調のライトファンク「ワンスモア」を収録。サビの“もう一度きかせて あなたの声を”など、ファンへ呼びかけるようなフレーズもたくさん入っていて、ライブでは一体感が生まれそうな曲です。

早見 これはライブ用に作っていた曲で、去年に行ったライブ(“早見沙織 Special Live 2019 “CHARACTERS””)でも歌ったんです。改めてレコーディングすると、こういう時期ということもあって、ライブへの想いもすごく高まりましたし、ライブがなかったとしても聴いてくれるリスナーさんとの懸け橋になってくれるような曲だと感じました。

――最後に、今回のミニアルバムはご自身にとってどんな作品になったと感じていますか?

早見 今回は5周年の作品と銘打ってはいますが、自分の感覚としては、これから自分がアーティストとしてどのように進んでいきたいのかを見据えられる、最初の一枚になったかなと思っていて。今はいろんな状況のなかでみんな必死に生きていると思うのですが、そういう日々のなかで自分の音楽が、癒しになったり、光になったり、ちょっとした支えになったり、皆さんに寄り添うことができればと思いますし、これからもそういう方向性を見据えながら音楽活動をしていきたい、ということの表明みたいなところはありますね。例えば10代で感じたことというのは、20代、30代、40代、いくつになっても抱え続けるものだと思いますが、そういう心の大事なところに届くような音楽ができたらいいなと思っています。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)


●リリース情報
「GARDEN」
9月2日発売

【Blu-ray盤(CD+DVD)】

品番:1000770968
価格:¥3,545+税

【通常盤(CD)】

品番:1000770969
価格:¥2,273+税

<CD>
01. garden(ヨミ:ガーデン)
作詞・作曲:早見沙織/編曲:冨田恵一(冨田ラボ)
02. 瀬戸際(ヨミ:セトギワ)
作詞・作曲:早見沙織 編曲:松本良喜
03. やさしい希望(Bossa Nova)※初レコーディング音源化
作詞・早見沙織 作曲:矢吹香那 編曲:増田武史
04. Akasaka5(ヨミ:アカサカファイブ)
作詞・作曲:早見沙織 編曲:清水哲平
05. glimmer(ヨミ:グリマー)
作詞・作曲:早見沙織 編曲:岡部啓一(MONACA)
BONUS TRACK .「ワンスモア」※初レコーディング音源化
作詞:早見沙織・矢吹香那 作曲:矢吹香那 編曲:前口渉

<Blu-ray>
1.やさしい希望(MV)
2.Installation(MV)
3.NOTE(MV)
4.夢の果てまで(MV)
5.Jewelry(MV)
6.新しい朝(MV)
7.Let me hear(MV)
8.Statice(MV)

『GARDEN』配信はこちら

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