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REPORT

2019.09.07

シンデレラに魔法をかけるのはだあれ? “THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 7thLIVE TOUR Special 3chord♪ Comical Pops!”幕張公演DAY2レポート

シンデレラに魔法をかけるのはだあれ? “THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 7thLIVE TOUR Special 3chord♪ Comical Pops!”幕張公演DAY2レポート

「アイドルマスター シンデレラガールズ」のライブイベント“THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 7thLIVE TOUR Special 3chord♪ Comical Pops!”DAY2が2019年9月4日、幕張メッセ9-11ホールにて開催された。

千葉・幕張公演“Comical Pops!”には関裕美役の会沢紗弥、一ノ瀬志希役の藍原ことみ、白菊ほたる役の天野聡美、双葉杏役の五十嵐裕美、佐々木千枝役の今井麻夏、白坂小梅役の桜咲千依、藤本里奈役の金子真由美、南条光役の神谷早矢佳、橘ありす役の佐藤亜美菜、中野有香役の下地紫野、堀裕子役の鈴木絵理、喜多見柚役の武田羅梨沙多胡、久川凪役の立花日菜、難波笑美役の伊達朱里紗、椎名法子役の都丸ちよ、久川颯役の長江里加、乙倉悠貴役の中島由貴、龍崎薫役の春瀬なつみ、渋谷凛役の福原綾香、佐久間まゆ役の牧野由依、 諸星きらり役の松嵜麗、安部菜々役の三宅麻理恵、鷹富士茄子役の森下来奈、姫川友紀役の杜野まこ、大槻唯役の山下七海、城ヶ崎莉嘉役の山本希望、城ヶ崎美嘉役の佳村はるかが出演した。

幕張メッセの3ホールをぶち抜いた広大なフラットエリアに会場奥のメインステージ、センターステージ、両サイド後ろ寄りのサイドステージ2つ(スターステージ、ハートステージ)を設定し、Y字型の長大な花道でつなぐ会場構成は初日レポートでも書いた。前説でアシスタントの千川ちひろが「ステージの端から端までプロデューサーさんに会いに行きます」と宣言した通り、27人の演者とダンサーたちがステージと花道をいっぱいに使ったパフォーマンスを繰り広げた。会場の広さを実感したのが、センターステージに立つ演者を望遠カメラで抜き出したロングショットのスクリーン映像だ。初日は福原、2日目は鈴木にカメラがフォーカスすると、花道上に立つ他の演者はピントから外れて、映像としてはぼわりと溶けてしまう。ところが、映像としては完全にぼやけているのに、動きの感じと雰囲気で武田羅梨沙多胡だけは判別できたのがたまらなく面白かった。長距離から豆粒のように見えていても、彼女は全身から喜多見柚感を発しているのである。

オープニングのダンサーアクトが終わると、本ライブのために作られた「ポップスアンバサダー」衣装の27人が登場。東名阪ツアー開幕を告げる「Vast world」と、千葉幕張・Comical Pops!公演を象徴する「comic cosmic」を披露した。開幕挨拶では、公演を通じてコミカルなやりとりの中でも一ノ瀬志希の独特の空気、距離感を保っていた藍原が「(志希は)ケミカルポップで」という言葉を選んでいたのがとても印象的だった。

本公演は、DAY1とDAY2は基本的には共通コンセプト。ユニット曲や全体曲は共通が多く、ソロ曲の差し替えでバリエーションを出すパターンが多かった。キーワードとしてはギャル、姉妹、U149、ゆずなどが挙げられるだろう。曲間にキャストが生ドラマでコミカルな掛け合いを見せる「リアル・シンデレラガールズ劇場」は、DAY1が新人アイドルの個性の紹介の要素が強かったのに対して、DAY2は新鮮な顔合わせによるコミカルなコント風のやりとりが多かった。

それではDAY2についても印象に残った楽曲や人物、テーマをピックアップして紹介していこう。

U149組に加わった神谷早矢佳=南条光という個性

U149とは身長149cm以下の小学生アイドルを中心とした一連の作品やユニットを指す。今回のライブでは「ハイファイ☆デイズ」や「ドレミファクトリー!」にその色が濃い。その中心に見えるのは、龍崎薫そのもののお日様のような笑顔を見せる春瀬なつみという存在だ。そして、佐藤亜美菜演じる橘ありすや、今井麻夏演じる佐々木千枝の表現に変化を及ぼしているように感じたのが、神谷早矢佳演じる南条光という新しいピースだ。ヒーローを愛する少年のようなアイドルを演じる神谷もまた、ボーイッシュな雰囲気を漂わせている。

ダンス能力の高い今井は「ハイファイ☆デイズ」のような楽曲を踊る時には楽しさ、激しさを見せるために動きのギアを上げてくる時と、佐々木千枝という芯は強いが控えめな11歳の女の子らしさ、たおやかさを重視する時があるように思う。今回は後者のニュアンスをより感じた気がする。「ドレミファクトリー!」で佐藤亜美菜が神谷と手をつないで移動する姿にはクールさよりも女の子らしさを強く感じたし、みんなを呼び寄せながら花道で先頭を走るありす(佐藤)としんがりをついていく光(神谷)という組み合わせも新鮮だった。

「なつっこ音頭」では年少組と、それを見守る少し年長のアイドルたちが法被を着て楽しく盛り上がった。法被の着こなしもそれぞれに違う。春瀬は法被が大きくワンピースのような丈感に見えたし、森下は法被で音頭の動きをしているのに、どこか日舞のような優美さがある。“コミカル橘”を演じる佐藤の元気いっぱいで楽しげな動きは貴重な気がした。

シスターズコラボ!

予想していなかったのが、4曲目の「TOKIMEKIエスカレート」~「DOKIDOKIリズム」のメドレーでの姉妹コラボ。久川姉妹の立花日菜と長江里加、城ヶ崎姉妹の佳村はるかと山本希望が、美嘉と莉嘉のソロ曲をメドレーで歌う姉妹コラボだ。「DOKIDOKIリズム」で合いの手のように入る台詞を久川姉妹に渡していたパートがあり、普段莉嘉が背伸びして歌っている「好きです!」の台詞は立花が担当。普段凪が絶対に言わなそうなフレーズを少し緊張気味に歌う姿が新鮮だった。佳村と山本が自由にステージを楽しむ姿に後輩たちが驚いていると、山本が「(久川姉妹も)何年かたつとこうなるよ」と悟ったように話していたのが愉快だった。

どーなつ☆キッス

とてもキュートなコラボだったのが、松嵜麗と都丸ちよの「ましゅまろ☆キッス」だった。松嵜演じるきらりがスティックをふるう楽しくかわいらしい振付が印象的な楽曲だが、都丸のスティックは先端に椎名法子が大好きなドーナツをあしらったスペシャル仕様。キラーン☆の擬音に合わせて都丸がウィンクしたり、「ぷにぷに!」のフレーズで法子のほっぺがぷにぷにであることを示したりと、きらりの楽曲の中で法子も輝かせようとする意識が随所に見られた。揃っての「大好き!」で締めると、最後はかわいく口づけたマシュマロとドーナツをパクっと食べた2人だった。

みんなで野球しようぜ

リアル・シンデレラガールズ劇場で白眉だったのが、姫川友紀、渋谷凛、関裕美の組み合わせ。ここでは前日の投手・渋谷凛、打者・姫川友紀の「気持ちいいよね 一等賞!」での野球対決が話題になった。ユッキ(姫川)の野球愛がいつも通り暴走気味で、凛が適宜ツッコミを入れていくのだが、ユッキが「他の選手は渋谷選手の魔球で全員病院送りになったんだよ!」とアストロ球団のような設定を追加したりと、ツッコミの手が足りない。凛はツッコミはするが、傍観者の位置なので状況を動かすタイプではない。ところが前日の流れの説明をユッキがすっ飛ばして進めようとすると、裕美が「ちゃんと説明しないと駄目です!」と想像以上に強いツッコミで流れを戻して、一同びっくり。

関裕美は一見消極的だったり気弱に見えても、実は生真面目で頑固なところもある一面が良く出ていた。コメディエンヌとしての彼女の可能性を感じると共に、初日に会沢が「楽園」で見せた、強く、自信にあふれた笑顔を見せた裕美の表現とこのドラマがつながっているようで、面白いのに何かしんみりする瞬間だった。

デビューを告げたこの場所で

DAY2は、下地紫野がソロ曲「ヒカリ→シンコキュウ→ミライ」を披露した。空手少女・中野有香のソロ2曲目で、恋を知った少女の強さを優しく歌う楽曲だ。中野有香のキュートな一面にフォーカスした歌だが、「信じて進め」で見せたコンパクトな空手の突きの振り付けに、恋する女の子の戦う気持ちを彼女らしく表現する楽しさを感じた。落ちサビの訥々とした一生懸命な歌い上げや、一曲歌い終えた瞬間を大切に噛みしめるような笑顔からは人柄が見えた気がした。今回ライブが行なわれた幕張メッセ9-11ホールは、4年前「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 3rdLIVE シンデレラの舞踏会 – Power of Smile -」で、中野有香や大槻唯を含む5人のアイドルのソロCDデビューが発表された場所でもあった。デビューが発表された場所で“2周目”を歌う感慨深さを、下地自身も語っていたのだった。

交差するあんきら道

「あんきら!?狂騒曲」は、2年前のツアー「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 5thLIVE TOUR Serendipity Parade!!!」の中で練り上げられた双葉杏・諸星きらりの黄金コンビのキラーナンバーだ。ステージを大きく使い、2人の位置関係で関係性を表現する楽曲なのだが、今回の公演では会場を大きく横切るY字花道をうまく演出に取りこんでいた。

会場両サイドのスターステージ、ハートステージから出発した2人は、歌いながら花道を歩いてセンターステージに向かって出発。途中で怒ったきらりが早足でセンターステージに先に辿り着き、ぷんぷんと待っているところに、後から杏がおずおずと近づく。交差点のセンターステージで背中合わせになった2人が、お互いの気持ちを確認しあって仲直りする。2人は一緒に花道を通ってメインステージへ……というように、楽曲のストーリーラインに花道の移動を生かしていた形だ。キラキラなふたりの無敵っぷりを見せつけつつ、きらりがプロ野球パ・リーグコラボ2017で千葉ロッテマリーンズ応援アイドルだったことにちなんだ野球ネタ(※幕張メッセと、千葉ロッテの本拠地ZOZOマリンスタジアムは目と鼻の先にある)も織りこんだ、サービス満点のステージだった。

MYSTIQUES・ワールド

「Comical Pops!」を掲げた本公演において、ちょっと異質な存在感をキープしていた一人が桜咲千依演じる白坂小梅だったと思う。つい“コミカル”に意識が引っ張られがちだが、“ポップ”という概念は案外範囲が広い。ディフォルメの効いたポップなホラー、というのは白坂小梅にぴったりなのではないだろうか。「小さな恋の密室事件」ではそんな桜咲の世界観に、鈴木絵理が寄り添うような表現を見せた。こちらは普段コミカルを地で行くことが多い堀裕子役の鈴木だが、この曲ではおすましして深紅のマントをまとって楽曲に入りこんだ表現を見せた。小柄な2人のフィット感と激しく踊るダンサーたちとの対比が、浮世離れした空気を作り出す。「お前だ」の言葉で顔に影を落としたり、浮遊感のあるパートを2人でシリアスに歌いあげたりと、敢えてコミカル要素無し、ちょっと怖いくらいに美しいユニット・MYSTIQUESの世界。影の中に消えるまで、完璧に世界を演じきったふたりだった。

顔芸

今回のライブでとても重要なパートだったリアル・シンデレラガールズ劇場。ライブならではの良さだったのだが、舞台の板の上で見せる生身の役者ならではの間と、表情だった。その中でも出色だったのが、DAY1なら「サイキックとドーナツは似ている」と告げられたあと、困惑、連想、迷走、理解、の過程をくるくると変わる表情だけで表現してみせた鈴木だった。DAY2は、莉嘉、有香、菜々がセクシーギャルズに憧れてギャルになりきるエピソードの中で、菜々の「チョベリグ~」が通じないジェネレーションギャップをつきつけられた瞬間、三宅の唖然とした表情からの「えっ……」という小さな絶句の声が、広い会場いっぱいに通った芝居の呼吸が名人芸だった。

輝く世界と関係性の魔法

ステージの魔法、というものを強く意識したのが、天野聡美の初ソロ「谷の底で咲く花は」だった。センターステージに一輪可憐に咲く花のように立つ天野は、ピンスポットの光が差し込む中、儚くも美しく響く歌声を響かせた。だが歌唱がクライマックスに向かうにつれて、その歌声と表情に涙の気配があふれる。こみあげた涙と共にステージに膝をついた天野は、それでも感情をこめて歌い続けた。そしてやがて立ち上がり、世界の美しさを力強く歌い上げるくだりでは、こみ上げる感情の嵐を乗り越えて、力強い歌唱をホールに響かせた。崩れ落ち、立ち上がり、涙を乗り越える姿のどこまでが演出なのか。演じるアイドルと楽曲の世界に深く、深く潜ったからこそ見せられる一度きりのステージだった。
その姿を見て4年前同じ場所で、直前まで瞳を真っ赤にして涙をこらえていたアイドルが「S(mile)ING!」という楽曲のスイッチを入れた瞬間、曇りなき笑顔でセンターステージに輝いた“魔法”があったことを思い出した。

ライブとは生モノであり、セットリストのわずかな変化が違う物語を生むことがある。それを実感したのがDAY2のM16「谷の底で咲く花は」(天野聡美)を受けてのM18「キミのそばでずっと」(天野聡美・森下来奈)だった。DAY1の時点で、メインステージに両端に腰かけて想いを込めて歌う2人の姿からは、この曲が関係性の楽曲であり、2人で歌えばこそ“キミ”とのつながりがよりクリアに描かれているなと感じていた。

だがDAY2で「キミのそばでずっと」に臨んだ天野は、2曲前の「谷の底で咲く花は」での感情の激しい揺れ動きの余韻を、明らかに引っ張ったままステージに上がっていた。そのステージで、両端に腰かけたふたりの距離は離れているにも関わらず、森下は天野の壊れてしまいそうなはかなさや、感情の揺れまでも抱きしめて包みこむような表現を見せた。本当に、心からパートナーを案じて、支えたい、という気持ちがあふれてくるようだった。後半、階段を下りたふたりはゆっくりと歩み寄るのだが、「ほら、はじまる」と歌いかける森下の歌声はどこまでも優しい。

ほたると茄子はユニット「ミス・フォーチュン」の仲間であることもあり、ずっと一緒にステージに立ちたかったと語る森下。キャリアで言えば森下もまた新人なのだが、「茄子さんは泣かないと思って我慢してた」という言葉から、アイドルと共にステージに立つ「アイドルマスター」ならではの不思議なあり方を感じたような気がした。

in fact ~ to you for me ~ そして

今回のライブの特徴のひとつに、ソロ曲を複数人で歌う時のゲスト側が単なるお手伝いではなく、他のアイドルの楽曲に寄り添うことで新しい魅力が表現されるケースが多いことがあるように思う。「エヴリデイドリーム」では、普段はなかなか素直になれない橘ありすが、かわいさをいっぱいに込めたストレートな表現を見せてくれた。「頑張って作るお弁当」をけなげに歌う佐藤の表現は、見ている側も笑みがこぼれてしまう。けなげでかわいらしい少女性をまっすぐに出す、役者としての佐藤亜美菜の世界。そして、この2人での歌唱は、佐久間まゆの16歳の、あるいはそれよりも幼く見えるかわいらしい一面をも引き出していたように思う。

普段、右手でマイクを持つ牧野由依が、まゆとして歌う時だけは逆手にマイクを持っていることをご存じだろうか。全ては、小指に巻かれた運命の赤いリボンを効果的に見せて、まゆらしさを表現するためだ。今回、佐藤は小指に青いクールなリボンを身に着けることで、対称を為すような、動脈と静脈を表現するような、ユニット「スウィート・ソアー」としての新しいストーリーを身にまとった。「エヴリデイドリーム」の落ちサビの頭を佐藤に譲った分、そのあとの牧野のパートは短くも、ここが勝負所、というメリハリがあった。“あの”牧野由依がピークを定めて歌唱するのだから、それはソロの歌唱とはまた違った魅力が感じられるに決まっている。ソロ曲をワンオンワンのデュオで歌う化学変化を感じるステージだった。

前段、「君への詩」

藍原ことみ、福原綾香、牧野由依、そして会沢紗弥という組み合わせで歌った「君への詩」。藍原、福原、牧野という3人は、ものすごく歌がうまい。その上に、人生の一部と言ってもいいほどアイドルを、キャラクターをその身に染みこませて、表現に落としこんでいる。そんな顔ぶれの中に新人・会沢紗弥が叩きこまれていることに、彼女の成長とポテンシャルに対する強い信頼を感じる。そこで会沢は、関裕美としての感情と表現を丁寧に丁寧に歌声にこめることで、美しい四重奏の一部になってみせた。それを受け止める3人の歌声の中で、優しさで包みこむような福原の歌声がとりわけ印象に残った。

ワンオブゼムとしての渋谷凛

渋谷凛は、特別なアイドルである。「シンデレラガールズ」の音楽のはじまりのひとつである「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 001」には渋谷凛の名前が刻まれ、アニメ「シンデレラガールズ」の物語の核となったふたつのユニット、ニュージェネレーションズとトライアドプリムスの両方に属するキーパーソン。シンデレラガールズを牽引する、蒼きシンガー。

だが、「Comical Pops!」という公演の参加者やコンセプトは、そういった渋谷凛を取り巻く複雑な物語の糸とは無縁のように見えた。もちろん、「シンデレラガールズ」の先頭を走ってきた存在としてライブの幕開けと締めの挨拶は福原がびしっとキメてくれたが、ライブ中、パフォーマーとしての福原はあくまでも27人の1人、ワンオブゼムのアイドルとして扱われていた。「明日また会えるよね」でも福原は素晴らしい表現を見せていたが、3方向を向いて歌う3人に“センター”はなし。むしろ、この曲の表現の中では楽しすぎて幸せで、笑みくずれるような春瀬が持って行った感があった。

「君への詩」で福原が見せた優しい包みこむような表現。「Blooming Days」で見せたいたずらっぽい、チャーミングな表情。それらは関係性から解き放たれた凛と福原が、コミカルポップなステージで見せる新しく新鮮な姿だった。そのことはDAY1でも十分に感じていたが、あえてその切り口で書くことはためらった。

それは、果たしてDAY2、アイマスライブチームは福原綾香に「Never say never」を歌わせることを我慢できるのか? という問いに100%の確信が持てなかったからだ。「Comical Pops!」というステージで自由に泳ぐ渋谷凛というコンセプトを考えた場合、歌わないのが正解だと思う。が、ライブの終盤に福原綾香のソロ曲(今回のライブなら誰かと一緒に歌うかもしれない)を置くということは、ライブが絶対に引き締まって、観客が満足して帰る確率を飛躍的に高めるということと同義である。「Comical Pops!」の表現に寄り添ったソロ曲のステージを見せてくれとオーダーしたら、きっと福原綾香は努力でもって正解を出して「しまう」。

だからこそ、ラストブロック、どうやらここからは前日から変化はないということが見えてきて、「サマカニ!!」で川島瑞樹のパートを担当する福原がすっとんきょうな叫びを上げたり、一転「星のように光る」をおだやかに歌い上げる姿を見て、今回の渋谷凛はComical Popsな一面、新鮮でいろいろな表情を見せるというコンセプトの芯を貫き通したのだなと感嘆してしまった。初日の時点で信用しきれなくてごめんなさい、新鮮で素敵な渋谷凛をありがとうと伝えたい。

初センター・柚

「TAKAMARI☆CLIMAXXX!!!!!」では、武田羅梨沙多胡が初センターを務めた。この曲では5人のエネルギーの爆発が印象的で、その核にあったのがいつだってエネルギーと笑顔にあふれた武田と喜多見柚だったのは間違いないと思う。ラストのコメントで、柚は自分からサポートに行くイメージがあるけれど、武田自身は柚がセンターになったことに感動した、という心情が明かされた。演者はアイドルと一体になって歌う表現者であると同時に、アイドルの一番のファンでもある、という複雑な関係性が垣間見えるコメントだった。広い会場の隅々まで走り回り、いろんな場所にアイドルが現れる今回の公演において、遠くにいてもその存在とエネルギーの風を一番に感じさせたのは喜多見柚というアイドルだったと思う。

せいいっぱいのパッション

ライブ終盤の畳みかけ(DAY1、DAY2共通)は、新人組と先輩チームの色分けがはっきりした楽曲がいくつかあった。本日のライブデビュー組と昨年のSS3Aデビュー組という編成がはっきりしていたのが天野聡美、神谷早矢佳、立花日菜、長江里加、森下来奈による「Orange Sapphire」だった。パッション属性曲のはじまりの楽曲を新たなアイドルたちが歌う姿はそれだけでエモーショナルだ。

この曲がばしっとハマっていたのが長江里加で、久川颯がステージを楽しそうに悪戯っぽくはしゃぎまわるような魅力が存分に出ていた。おっと思ったのが神谷が両足を揃えてリズミカルに飛ぶ時のバネの良さで、ダンスのうまさとはまた違う純然たる運動神経の良さが覗いていたような気がする。

素晴らしかったのは、落ちサビのソロパートを天野聡美が担当していたこと。おずおずと、せいいっぱいの情熱の全てを込めた歌い上げは、「Orange Sapphire」という楽曲に新たな暖かい輝きを与えていた。

LOVE & PEACH!

ライブ本編の締めは、両日ともゆずの楽曲をシンデレラたちがカバーした「LOVE & PEACH」と、ゆずの北川悠仁が作詞作曲を手掛けた「無重力シャトル」だった。両楽曲では比較的先輩組がステージにズラリと並んだ。当然、喜多見“ゆず”役の武田を入れたくなる発想もあったと思うので、キャリアのあるアイドルを中心に据えたのは明確な狙いがあったと考えていいように思う。

女性アイドルが「LOVE & PEACH」をカバーするのにちょっと危うさがあるのは、お尻を桃になぞらえてヒップダンスを見せるというコンセプトが、あくまでベテランアーティストであるゆずの2人が先頭に立ってそれをやる“バカ”を前提にしたものであることだ。「デレステ」のアイドルモデルはそういう生々しさを中和する面では、非常に洗練されている。それをリアルライブに落としこんだ「LOVE & PEACH」で、観客をガンガン巻き込んで扇動して、先頭に立って盛り上げたのが山下七海だった。カワイイも、クールも、セクシーも、やると決めたら照れなくバシッとやりきって、見る者を魅了してみせる。その覚悟と自信をもったかっこいい表現者が山下であるのだと、個人的には思う。

そして、「LOVE & PEACH」と「無重力シャトル」に共通して参加していたのが松嵜麗と五十嵐裕美のあんきらコンビだった。ふたりはあんきらコンビとして、ニュージェネの3人と共に「LOVE & PEACH」のボーカルを担当している。今回なぜゆず楽曲2曲を先輩組のみで構成したのだろうかと考えたのだが、個人的にゆずのパブリックイメージは、ここ20年ほど大きくは変わっていないように思う。そうしたいつまでもエネルギーと魅力に満ちた、エバーグリーンなアーティストの楽曲を表現するには、アイドルと長い時間を過ごしてきたキャストがハマるのではないだろうか。誰よりも早い時期からシンデレラガールズとして観客の前で歌っていた五十嵐、そしてステージでアイドルとしてキラキラ輝くために誰よりも愛情を持って努力を続けてきた松嵜は、この曲にぴったりな存在であるように思う。シンデレラたちがゆずのように、20年後も全盛期のキラキラを放ってくれるんじゃないかな、と感じさせるのはむしろ新人たちよりも、走り続けてきたアイドルたちの背中であるのではないかと感じた締めくくりだった。

(※掲載時、松嵜麗さんのみが「LOVE & PEACH」と「無重力シャトル」連投と記載しましたが、五十嵐裕美さんも両曲に参加していました。両曲にあんきらが参加することは大きな意味を持つと思うので、この部分を改稿しました。2019/09/07/16:00 編集部)

ラストの挨拶

DAY2の挨拶はかなり長めのものになったので、詳細な内容はいつか映像化される日を待ってほしい。特記しておきたいのは、立花が言葉に詰まった時にはいつも長江のほうを見て、長江がおろおろとサポートしようとする姿に本物の姉妹のような絆が感じられたこと。そして本番ではあまり不安を表に出さなかった森下が、「茄子さんならどうふるまうか」を心の拠り所にしているように見えたことだ。1年前に、あるいは今日、はじめて大舞台を踏んだ彼女たちが、自身が演じるアイドルと共にあることで。そして、一緒にアイドルを演じる人たちと共に歩むことで、少しずつ本物のアイドルの気配をまとって、やがてはひとつになる。それこそが「シンデレラガールズ」の魔法なのではないかと、これからアイドルになっていく彼女たちと、かつてそこを歩んできた彼女たちの姿を見て、感じたのだった。

受け継がれる魔法のステージは次なる地、ナゴヤドームへと続く。

Text By 中里キリ

「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 7thLIVE TOUR Special 3chord♪ Comical Pops!」DAY2
2019.09.04.幕張メッセ9-11ホール セットリスト

M01:Vast world(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
M02:comic cosmic(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
M03:ハイファイ☆デイズ(今井麻夏・神谷早矢佳・伊達朱里紗・都丸ちよ・春瀬なつみ)
M04:TOKIMEKIエスカレート~DOKIDOKIリズム(立花、長江、山本、佳村)
M05:きゅん・きゅん・まっくす(藍原ことみ・会沢紗弥・下地紫野・都丸ちよ・中島由貴)
M06:なつっこ音頭(佐藤亜美菜・伊達朱里紗・春瀬なつみ・森下来奈・杜野まこ・山本希望)
M07:ましゅまろ☆キッス(松嵜麗、都丸ちよ)
M08:Halloween▼Code(藍原ことみ・桜咲千依・中島由貴・三宅麻理恵)
M09:ドレミファクトリー!(今井麻夏・神谷早矢佳・佐藤亜美菜・春瀬なつみ)
M10:Twin☆くるっ★テール(山本希望・佳村はるか)
M11:ヒカリ→シンコキュウ→ミライ(下地紫野)
M12:あんきら!?狂騒曲(五十嵐裕美・松嵜麗)
M13:O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!(立花日菜・長江里加)
M14:小さな恋の密室事件(桜咲千依・鈴木絵理)
M15:Gossip Club(金子真由美・山下七海・佳村はるか)
M16:谷の底で咲く花は(天野聡美)
M17:君への詩(会沢紗弥・藍原ことみ・福原綾香・牧野由依)
M18:キミのそばでずっと(天野聡美・森下来奈)
M19:メルヘン∞メタモルフォーゼ!(三宅麻理恵)
M20:Kawaii make MY day!(下地紫野・立花日菜・都丸ちよ・長江里加)
M21:追い風Running(中島由貴)
M22:Blooming Days(今井麻夏・桜咲千依・福原綾香・森下来奈)
M23:エヴリデイドリーム(牧野由依、佐藤亜美菜)
M24:明日また会えるよね(天野聡美・春瀬なつみ・福原綾香)
M25:TAKAMARI☆CLIMAXXX!!!!!(神谷早矢佳・鈴木絵理・武田羅梨沙多胡・杜野まこ・山下七海)
M26:SUN▽FLOWER(会沢紗弥・五十嵐裕美・金子真由美・牧野由依)
M27:秋めいて Ding Dong Dang!(武田羅梨沙多胡・伊達朱里紗・松嵜麗・山下七海)
M28:Orange Sapphire(天野聡美・神谷早矢佳・立花日菜・長江里加・森下来奈)
M29:サマカニ!!(鈴木絵理・武田羅梨沙多胡・伊達朱里紗・中島由貴・福原綾香)
M30:LOVE & PEACH(会沢紗弥・藍原ことみ・五十嵐裕美・佐藤亜美菜・下地紫野・都丸ちよ・春瀬なつみ・福原綾香・松嵜麗・山下七海)
M31:無重力シャトル(五十嵐裕美・今井麻夏・桜咲千依・金子真由美・牧野由依・松嵜麗・三宅麻理恵・杜野まこ・山本希望・佳村はるか)
M32:M@GIC☆(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
-encore-
EN1:TRUE COLORS(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
EN2:お願い!シンデレラ(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)

(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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