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INTERVIEW

2019.08.29

約1年半ぶりのシングルに込めた想いを聞く。TVアニメ『ナカノヒトゲノム【実況中】』EDテーマ「僕を見つけて」 fhánaインタビュー

約1年半ぶりのシングルに込めた想いを聞く。TVアニメ『ナカノヒトゲノム【実況中】』EDテーマ「僕を見つけて」 fhánaインタビュー

昨年末にメジャーデビュー5周年を記念したベストアルバム『STORIES』を発表、今年1月には同作を携えた初の単独ホール公演を成功させ、今年7月には自主企画ライブイベント“Sound of Scene #01”curated by fhánaを開催するなど、精力的に活動を行うfhánaが、待望のニューシングル「僕を見つけて」をリリースした。

リーダーの佐藤純一が劇伴や挿入歌を含めた音楽全般を手がけるTVアニメ『ナカノヒトゲノム【実況中】』のED主題歌に起用された本作。アニメ作品の内容に寄り添ったものであることはもちろん、佐藤の個人的な体験などが制作に反映されることで、普遍的にして様々な意味を持つ約7分のバラードに仕上がった。レクイエムたる本作が生まれた経緯を中心に、メンバー4人に話を聞いた。

──今回のニューシングル「僕を見つけて」は、間にベスト盤『STORIES』を挿みつつ、久々の新作になりますが、何か気持ちを新たにした部分はありますか?

佐藤純一 気持ちを新たにというわけではないですけど、シングルとしては「わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~」(2018年)以来1年半ぶりのリリースになるので、そこでfhánaとしてどんな作品にするかは意識しました。実はベスト盤をリリースした年末の時点ですでに『ナカノヒトゲノム【実況中】』のお話は進行していて、僕は劇伴や挿入歌、OP主題歌(声優の畠中 祐による楽曲「notGAME」/佐藤は同曲の作曲・編曲も担当)も含めて制作を行うなかで、fhánaとしてどんなED主題歌を持ってくるべきか考えていたんです。レーベル的には「星屑のインターリュード」(2014年)みたいにアップテンポでオープニングっぽさもある曲がいいのでは?」という話もあったのですが、僕の中では5周年を迎えたこともあるので、もっとどっしり構えた王道感のあることをやってもいい時期なんじゃないかなと思いまして。

──王道感というのは?

佐藤 昨今のアニメソングは、TVサイズの89秒の中にものすごくたくさんの展開を落とし込んで、情報密度の高い曲が多いので、今回は逆にものすごくシンプルで洗練された、胸を打つメロディの曲を作ろうと。こまごまとした工夫を入れなくても、素材だけで全然美味しい、みたいな曲を作ってみたかったんです。なので今回の「僕を見つけて」はイントロもなくて、Aメロの歌から始まり、Bメロ、サビで、ちょうど89秒で終わるという、シンプルがゆえに攻めた曲になったと思います。

yuxuki waga たしかにこの曲はシンプルということに尽きると思います。ひとくちに曲の良さと言っても、例えば「展開がすごい」とか「コード進行が複雑」とかいろんな部分があると思うんですけど、この曲はもっと単純に大きく「曲がいい」と捉えられる曲だと思っていて。シンプルということは、つまり曲の良さがスッと入ってくるということなんですよ。実際に演奏してもすごく熱がこもる曲になっているし、曲自体の持っている力がすごく強くて、聴く人に対して訴えかける何かを持っていると思いますね。

kevin mitsunaga 僕も最初に曲を聴かせてもらったときは驚きました。この曲は佐藤さんが作ったデモの時点からすごくまっすぐで、それが僕にとっては意外だったんですね。僕は普段、佐藤さんが曲を作る際に絶妙な角度でスライダーやカーブを投げるところがすごいなあと思って尊敬しているんですけど、その先入観があったので、ベスト盤を出した次の今回のシングルでストレートを投げてきたことに驚いてしまって。でも、聴いたらめちゃくちゃいい曲だったので、なおさらグッときました。

──ただ、この楽曲のフルバージョンは7分近くあって、特に終盤の2分はそれまでとは異なるエモーショナルな展開をしますよね。

佐藤 後半の部分に関しては、作り始めた時点ではこういう構成にしようとは全く思っていなくて、もともとは4分半ぐらいですっきり終わる、エヴァ―グリーンなロックバラードにするつもりだったんです。この後半の展開というのはいろいろあってできたもので。

──では順を追ってお話を聞かせてください。まず、楽曲のテーマはどのように決めましたか?

佐藤 『ナカノヒトゲノム【実況中】』という作品は、ゲーム実況者たちが主人公の群像劇なのですが、彼らののようなネットで活動する人たちは「誰かに自分のことを見つけてほしい」「誰かに認めてほしい」という気持ちが強いのではないか、そしてそういう承認欲求は、ゲーム実況者に限らず誰もが持っている普遍的なものではないか、と考えて、「僕を見つけて」というタイトルを付けました。それで11月後半ぐらいに1コーラス分のデモを作ったら、メロディの時点で手応えを感じたんです。ただ、その年末に、僕が18年間飼っていた猫が亡くなってしまいまして、その喪失感みたいなものを抱えながら、その後のフルサイズの制作やレコーディングを行うことになって。だから自分の中で自然と「この曲はレクイエムだな」と思うようになり、林くん(林英樹/fhánaの楽曲の多くを手がける作詞家)も歌詞の第一稿を上げてきたときに、「そのことは脳裏にありました」と言って書いてくれたんですね。なので、この曲は作品との連携も考えつつも、弔いの歌にしようと思って、メンバーにもこの話を共有したうえで制作したんです。

──たしかに歌詞には“誰もがいつか星に還る”など、別れを想起させるフレーズが多く含まれています。

佐藤 この曲はサビの“今君から離れて旅立とう”というフレーズの箇所に向かってエネルギーが収束していってますね。最初の4分半までの部分では、君が僕を見つけてくれたから、すごくたくさんの大切なものをもらうことができたし、自分も強くなることができたけど、もう二度と話すことはできない、という永遠の別れについて歌っているんです。ただ、そうやってフルサイズを作っていたら、本来は“I can’t talk to you~♪”と歌ってジャーンと終わるところで、自然と手が動いて、残りの2分の部分が出来てしまって。別れがあったから必然的にこの後半の展開が出てきたんですね。4分半までは「永遠の別れ」について歌っていて、後半の2分間は「再会」について歌っています。物理的にはもう会えないけど、精神的にはまた会うことができる、という祈りが込められているんです。

──なるほど。

佐藤 で、そこからカップリングのレコーディングを行い、MVやジャケットも撮影して、7月に入ってシングルのすべてが完成したんですが、これはどうしても触れざるを得ないところではあるのですが、その数日後に京都アニメーションの事件が起こって。普遍的な意味で「もう会えないけど大切なもの」について歌った歌を作った直後だったので……。fhánaは『小林さんちのメイドラゴン』で「青空のラプソディ」という曲を作ったし、そもそも結成自体も、僕が京アニ版の『CLANNAD』を観て感動していた頃にメンバーと知り合って意気投合したことがきっかけだし、そもそも僕が『CLANNAD』を観るに至ったのは、その前に『涼宮ハルヒの憂鬱』を観てすごいと思ったからで。なので京アニがあるからこそ、今のfhánaがあるのは事実で。僕は、魂みたいなものは受け継がれて新しい作品で再会できるって、信じています。

──おそらく実体験を契機としつつ、普遍的な歌をめざして作られたからこそ、様々な捉え方のできる曲になったんでしょうね。

佐藤 たしかにこの曲は、最初にワンコーラスの仮歌を録ったときから、何か本質のようなものに触れられたような、今までにない手応えがあったんです。僕はすべてのクリエイションというのは蓋を開けてみれば人間そのものだと思っているので、そういう意味では、実体験から出てきたものだからこそ、今までよりも本質的な何かが作品に強く宿ったのかもしれないです。

──また、この楽曲はストリングスサウンドが肝になっているように感じました。

佐藤 そこは純粋に音楽的な話になりますが、たしかにストリングスアレンジはすごくこだわって作りました。ビートルズみたいな普遍的なことがやりたかったんです。Aメロの出だしはオアシスの「Whatever」みたいなストリングスですけど(笑)、後期のビートルズみたいにストリングスとバンドの演奏が合わさって、インドっぽい音階も出てきて混沌としている雰囲気を出したくて。

──まさにビートルズっぽさというのは、この曲を聴いて感じたところです。

佐藤 個人的に最近ストリングスアレンジが楽しいんです。なぜかと言うと、僕は編曲もしますけど、どちらかと言うとメロディを書くことの方が好きで、パラメーター的には7割がメロディメイカーみたいな気持ちなんです。で、ストリングスというのは基本的にカウンターメロディの側面があるので、歌の主メロの他にもメロディをいっぱい作ることができて楽しいんです(笑)。towanaが歌う主旋律に対して、大編成のストリングスのカウンターメロディがずっと奏でられて一緒に盛り上がっていくところが要になっていると思います。

──towanaさんはこの曲を歌ってみていかがでしたか?

towana シンプルな分、ごまかしが効かないので、すごく難しい曲だと思いました。曲も長いし、ずっと歌いっぱなしだし、物理的に難しい曲なんです。それと詞の内容も実体験に基づいている部分があるから、その分重たいというか、歌う側としてもすごくエネルギーが必要で。特に最後の2分のところは、かっこよく歌うのがすごく大変で、どうしたら良く聴こえるのか悩みながら歌いました。

──後半の歌唱からは、直接叫んでいるわけではないけど心の中で叫んでいるような、強い祈りや願いのニュアンスを個人的に感じました。

佐藤 この音源もそうだし、MVではライブ演奏しながら撮ったりしたんですけど、towanaに限らずメンバーが全員、すごく熱がこもっているんですよね。towanaの歌っている表情にもすごく引き込まれてしまって。そういう意味で、全員で音を出したときの手応えも今まで以上のものを感じましたね。

──そのMVはビルの屋上で撮影されていますが、先ほどのビートルズのお話を踏まえると「ルーフトップ・コンサート」(ビートルズが1969年1月にビルの屋上で行ったゲリラライブ)が思い出されますが。

佐藤 それはあまり意識はしてなかったですね。どちらかと言うとマイ・ブラッディ・バレンタインのケビン・シールズが音楽で参加している『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)という映画のイメージがあって。あの映画はまさに西新宿のパークハイアット東京を舞台に撮影していて、主人公の女の子(スカーレット・ヨハンソン)が東京という異国の都会の中で孤独を感じていて、自分がどういうふうになりたいのかわからない状態のときに、偶然同じホテルに泊まっていた落ち目の映画スターの中年(ビル・マーレイ)と出会って東京の街に繰り出して非日常的な時間を楽しんで、最終的には日常に帰っていく、というストーリ―なんです。すごく好きな映画で、都会の高層ビル群を背景に女の子がぽつんと寂しそうにしているというビジュアルにしようという発想でジャケット写真を撮って。その流れで、MVもビルの屋上で撮影しました。

──MVもジャケットも、日が落ちてから完全に暗くなる前のわずかな時間帯で撮影されていて、素晴らしい映像美に仕上がっていますが、苦労も多かったのでは?

towana 強風だったので、風が一番大変でした。でも、撮影できる時間は一瞬だったので、そのなかでもいいテイクを残さなくてはいけなくて……だから風と戦ってました(笑)。

佐藤 ストリングス隊の皆さんもずっと「風がヤバい」と言っていましたから(笑)。でも、その風のおかげですごくかっこよく映っていて。知り合いにも「この風は(機械を使って)吹かせたんですか?」と言われたりしましたね(笑)。。

kevin ただ、MVもジャケット撮影も魔法がかかっていましたよね。連日雨模様で天気がやばい時期に撮影を決行したんですけど、ジャケットもMVも撮り終わった直後に雨が降り出したりとかして。風の件もそうですけど、曇り空も逆にいい雰囲気になって、マジックが起こっていましたね。

佐藤 この日が沈んだ直後のまだギリギリ空が青みがかっている時間帯ってブルーアワーって言うんですけど、15分ぐらいしかないんですよ。MVも曲が7分あるので、ブルーアワーの中では結局ひと回ししか撮れなかったんですよね。演奏し終わったらもう暗くなってきていて。僕は単純にビジュアルとしてお洒落でかっこいいということと、都会自体が「孤独」の比喩というか、人と人との関係性が希薄で孤独な場所というイメージで、高層ビルの屋上で撮影したいと思ったんですけど、ファンの方のコメントを見ていたら、「これはレクイエムだから天に一番近い場所で祈るように曲を演奏しているのかな」というような感想がちらほらあって、なるほどなあと思って。そう思ってMVを観ると、みんなで弔いの儀式をやっているみたいなんですよね。それに気づかされてグッときたところもありました。

──では、ここからはカップリングのお話も。まずアーティスト盤に収録の「真っ白」はyuxukiさんが作曲・編曲を担当。どこか夏っぽさを感じさせるストレートなギターロックチューンです。

yuxuki 夏っぽいですよね。曲のテーマが「モラトリアム」ということで、若々しくて十代感のある曲にしたいなと思いまして。十代の頃の、自分には何かがあると思って何かをしたい気持ちはあるんだけど、そいつはまだ何者でもないし、とにかく気持ちだけがあるというもどかしい感じを出したかったんです。レコーディングもあえて少ないテイクで一瞬で録り終えて。要は曲が手になじみ過ぎる前に録り終えるというか、イメージだけを伝えて勢いのままに録ってもらいました。

──「モラトリアム」というテーマはどこから?

yuxuki 「僕を見つけて」のカップリングなので、その別解釈と言うか、別の角度から書こうとした部分もあって。打ち合わせの時にみんなでそういう話をして決めました。

佐藤 『ロスト・イン・トランスレーション』もモラトリアムな映画じゃないですか。最後には日常に帰って、少しだけ大人になって終わりますけど。

──サビの最後に“揺れる季節はもう走り去った”というフレーズがありますが、これはモラトリアムから脱したということを指している?

yuxuki まあそうしようと思ったわけではなく、後から気づいたら、という感じですよね。(作詞を担当した)林さんには「解決しないでくれ」とお願いして。よく歌詞の最後の一行でちょっと光が見えるようなパターンがあるじゃないですか。でも、この曲はどこまで行ってももどかしいままにしてほしかったので、そういうのはやめてくれと。この曲ははっきりしない感じなんですけど「ああーっ!」ってなれる部分があって、それってある種すごくピュアだと思うんですよ。なので曲名も「真っ白」にしました。

──いいですね。towanaさん的にはいかがでしたか?

towana この曲は楽器のレコーディングと一緒で、慣れる前に勢いのあるまま録りたいというオーダーだったので、1~2テイクぐらいで録ったんです。最初にそういう話を聞いてたので「バシッと決めよう」という意識で頑張って。コーラスもなかったので、30分ぐらいで全部録り終わりました。今までの最短時間かもしれないです。

yuxuki この曲の場合、歌も楽器と同じで、熟れすぎるとかっこ悪いなと思って。余裕がないというか、切迫した感じにしたくて、ライブ感のある感じで録りました。1箇所録れたらすぐ「今のどうだった?」「よかった」「じゃあ次行こうか」みたいな感じで、パパっと進めていきました。だからライブでやるときっと楽しいんじゃないかと思います。お気に入りです。

──もう一曲、アニメ盤に収録の「Unplugged」は、「reaching for the cities」(2017年)に続くラップチューンです。しかもtowanaさんに加えてkevinさんもラップで参加していて。

kevin いやあ、新しい試みですよね(笑)。

佐藤 「kevinラッパー化計画」を以前から進行させていたんですよ。まず『World Atlas』(3rdアルバム/2018年)のツアーのときに、「今夜はブギーバック」(小沢健二 feat. スチャダラパーの楽曲)のカバーをkevinとtowanaのラップでやったんですけど、そのときにkevinはラッパーいけると思ったんですよ。「これは新しい可能性の扉を開いたぞ!」と思って。

kevin 本人的には全然思ってなかったんですけど、リーダー的には結構いけそうってなったみたいで(笑)。

佐藤 そうそう。で、「reaching for the cities」も、今まではtowanaがひとりでラップの部分を担当していたんですけど、最近のライブではkevinも前に出て、掛け合いでラップをするようになったんです。そういう流れを踏まえて、今回はいよいよ音源でもkevinがラッパー化するということで。この曲については、ラップのリリックはkevinが書いていて、メロディ部分の歌詞はtowanaが書いているんです。作曲に関しては、まずkevinがラップ部分のレイドバックしたよれたビートのループを作ってきて、そこから僕が作曲して行きました。アーバンな雰囲気は目指していたんですが、所謂シティポップにはしたくなくて、ニューヨークっぽい感じだったり、R&Bやジャジーな雰囲気に仕上がりましたね。

──kevinさんとtowanaさんはどのように歌詞を書かれたのですか?

towana 私は「もっと時間をくれ!」と思いながら書きました(笑)。先にkevinくんがラップ部分の歌詞を書いて、それを私がもらってから書くという段取りだったんですけど、kevinくんの歌詞がなかなかFIXしなくて……。

kevin いやあ、俺が時間かかりましたね~。事前にテーマは決めてあったんですけど、そもそも作詞の経験が初めてだったので、どうしてもテーマとズレた言葉の選び方だったり内容になってしまったりして。佐藤さんから何度もリテイクが出て、「ここは統一感を出していこう」とディレクションをいただいたりして。最終的にtowanaさんにバトンを渡せたのはだいぶ直前でした。

towana そう、ギリギリだったので、歌のレコーディングに向かう途中でもまだ歌詞を書いてたぐらいで。でも出来上がりはいい感じになって、kevinくんの歌詞を見ながら書いたから、完全に私ひとりで書く歌詞とも違うし、kevinくんの歌詞とこういう曲調があったからこその形にできたのかなって思います。

佐藤 最近towanaが歌詞をよく書いているんですけど、僕はこの曲のtowanaの歌詞もすごくいいなあと思いましたね。それこそtowanaという人間らしさを、この歌詞の向こうに感じるんですよね。たぶん本人はそこは出さないようにしているんですけど、やっぱりその部分がすごく良くて。それは最初に「ユーレカ」(2018年)を書いてもらったときも思ったし、その後の「STORIES」(2018年)で彼女には本当に作詞の才能があると確信したんです。言葉が綺麗だし、良い歌詞というのはすべての言葉がブレずに一つの方向を向いていると思うんですよね。そういう意味で、towanaの歌詞の言葉たちはあるひとつの世界観や表現したいメッセージに向かって行っているんです。

──今回の歌詞のテーマは?

佐藤 「Unplugged」というと昔はアンプラグドライブ=アコースティックライブのことを連想しますけど、この曲の意味合いは違っていて。これは『ナカノヒトゲノム【実況中】』のゲーム実況者たちにも通じるんですけど、今の人たちはインターネットやSNSで承認欲求を満たしがちじゃないですか。それよりもリアルな世界、匂いや光や風みたいなものを感じて、リアルな幸せみたいなものを見つめ直そうよ、ということテーマで「Unplugged」というタイトルなんですね。要はインターネットに繋がれた世界から離れてアコースティックな世界に生きる曲を作ろうと。だけどケビンのリリックの焦点がなかなか定まってくれなくて(笑)。

kevin 僕がもともとヒップホップ畑の人間ではなかったので。もちろんいちリスナーとして少しはたしなんでいたんですけど、その界隈にハマっていたわけではないし、そもそも作詞するときに韻のことも考えるのが難しくて、なかなか脳の筋肉を使ったなあという感じで(笑)。でもいい経験になりましたね。

──kevinさんの書いたリリック部分は、都市で生活することに対する揺れ動く心みたいなものを感じさせつつ、それをtowanaさんの歌詞が上手に受けて、ままならぬ現実を受け入れていくような感じが出ているなと思って。towanaさんはご自身の気持ちなどを込めた部分はありますか?

towana これは完全に曲のテーマとkevinくんが書いたラップ部分に合わせたものなんです。さっき佐藤さんも言っていましたけど、もともと私は歌詞にエゴを出さないというか、言葉としてメロディに合ったいいものを書きたいという気持ちで書いているから、あまり自分の内面みたいなものは出さないようにしているんですけど、たぶん滲み出ているんでしょう……でも、それを言葉にするのは、個人的にちょっと照れ臭いです(笑)。

──ではそこはリスナーの皆さんの想像にお任せしましょう。

佐藤 僕が伝わるなと思ったのが、“まやかしの理想が呼んでいる いつまで経ってもバラバラのハート”というところで、僕は歌をレコーディングしながら感動してウルウルしちゃって、トークバックで「この部分はヤバいね」とtowanaに伝えたら、「普通は頭から順に考えていくけど、この曲に関しては、一番最初にこの箇所のこのメロディに対しては絶対この言葉だっていうのが思い浮かんで、そこから前後を作っていった」と言っていて。

towana たまにあるんですよね。歌詞を書くときはシンセメロを聴きながら考えるんですけど、「ここはこの言葉だな」とパッと浮かぶことがあって、そういうときはそこに言葉をハメてしまって、それに合わせてその前後を考えるんです。この曲でも“バラバラのハート”の部分は「こう歌うしかない」と思ったので、それに合わせて書いたら、佐藤さんはその部分をいいと言ってくれたから、やっぱりそういうふうにハマったものは伝わるのかなと思います。

──なるほど。さて、今回のシングルはそれぞれに新しい部分を見せた3曲になりましたが、バンドとしても今年7月より自主企画ライブ“Sound of Scene”をスタートさせて、様々なチャレンジに取り組んでいます。今後の活動に関してはどのようにお考えですか?

佐藤 これはずっと言い続けていることですけど、アニソンもそれ以外のジャンルも含めていろんなシーンの人たちと風通しよく交わっていきたいですね。“Sound of Scene”はまさにその意志や活動スタンスの象徴でもあります。もう一つは、僕がfhána以外の外の仕事が増えて来ていて、それによって改めてfhánaの魅力に気づいたりもして。と同時に、沢山の一流のミュージシャンやアーティストと仕事をすることで初めて見える景色というものもあって。自分たちももっと高い次元に行かなきゃいけないなと思っています。

Interview & Text By 北野 創(リスアニ!)


●リリース情報
TVアニメ『ナカノヒトゲノム【実況中】』エンディング・テーマ
僕を見つけて
発売中

【アーティスト盤】

品番:LACM-14886
価格:¥1,200+税

<CD>
1.僕を見つけて
作詞:林 英樹 作曲・編曲:佐藤純一
2.真っ白
作詞:林 英樹 作曲・編曲:yuxuki waga
3.僕を見つけて -Instrumental-
4.真っ白 -Instrumental-

【アニメ盤】

品番:LACM-14887
価格:¥1,200+税

<CD>
1.僕を見つけて
作詞:林 英樹 作曲・編曲:佐藤純一
2.Unplugged
作詞:towana , kevin mitsunaga
作曲:佐藤純一 , kevin mitsunaga
編曲:kevin mitsunaga , 佐藤純一
3.僕を見つけて -Instrumental-
4.Unplugged -Instrumental-

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