――ここからは、『さこともベスト』の収録曲について1曲ずつ紹介していただきたいと思います。
1.愛言葉
作詞・作曲:DECO*27 編曲:SiZK from ★STAR GUiTAR
大切なデビュー曲。発売当時は20歳、もう7年前ですね。当時、デビューすることに自分自身の中で抵抗があったんです。これまで聴いてくださっていた方々からすれば、(ネットの世界から離れて)遠くなるんだって認識されると思ったし、僕もそれが怖くて。ファンの方にそれを感じてほしくなかった。だから、デビュー曲はあらたに制作するのではなく、なじみのある曲が良いなと思っていました。「少年T」ではなく、「佐香智久」としてよろしくねっていう気持ちでしたね。
この曲はDECO*27さんのカバーソングで、ネットの世界で歌っているころから、すごく大切にしてきた楽曲のひとつ。すごく不思議な曲なんですよ。今まで自分が作った曲や作品を子供みたいに例えていて、“自分の作品を愛してくれるあなたのことをこれからも大切にしていきたい、ありがとう”っていう。デビュー曲にぴったりだと思いました。
今でも、ライブでは最後に歌うことが多いですね。盛り上がるような曲ではないですが、変わらずに歌っていくことに意味があると思っています。これからも大切に歌っていきたい1曲です。
2.ずっと (TVアニメ『君と僕。2』OPテーマ)
作詞:Tomohisa Sako / Tomoyuki Ogawa 作曲:Takao Nagatani 編曲:Sorao Mori
デビュー以降、アニメのタイアップ曲をたくさんやらせてもらっているのですが、この曲が初のタイアップ曲でした。そういう意味でも、とても思い出深いです。
アニメのお話をいただいたときはあんまり実感がなく、「え?」って驚いて、気づいたらTVから流れているみたいな。しかも、それが好きな作品(TVアニメ『君と僕。2』)に使っていただけたので、すごくうれしかったですね。初めてオープニングで曲が流れたときはテンションが上がりました。録音した自分の声を初めて聴いた中学生の頃の感情が蘇ってきました。
でも、アニメから曲が流れてくるとちょっと疲れてしまうんですよね。息を止めて聴いちゃうというか、そのときの自分が歌っている気持ちになっちゃうというか。だから、すごくうれしいですけど、疲れちゃう(笑)。
このアニメは、高校生の男子5人がそれぞれ恋をしているというお話だったので、男の子の日常を歌った曲になっています。当時、僕は22歳ぐらいでしたが、昔のことを思い出しながら等身大の恋愛観を書きました。今振り返ると、こんなことを考えていたのか、と照れてしまいますね。歌詞の中にある“君に見せたい場所があるよ”とか、当時の自分っぽいなって思います。頭の中だけで考えている感じや、自分の中で悶々として、でも何も言えず……みたいな恋愛観が自分っぽいなと。当時の僕は妄想しがちだったので(笑)
逆に(高校生たちの気持ちを書くことは)今のほうができるかもしれないですね。いろいろな経験をとおして、またさらに掘り下げて書ける。例えば“どうして君には普通の僕じゃいられないんだろう”って歌詞は、今なら書かないと思います(笑)。当時はこの言葉で収まっていますが、今ならその答えもきっとわかるし、また違う歌詞が出てくるんだろうなと。その先のことを書けない、“止まり”な感じが当時の自分が出ていて、逆にいいなとも思いますけど。このときはこ当時でしかできない言葉選びがあったんでしょうね。
3.はんぶんこ
作詞:Tomohisa Sako / Tomoyuki Ogawa 作曲:Tomoyuki Ogawa 編曲:Sorao Mori
僕が妄想ボーイだったので、この曲もフィクションを盛り込みつつ、ひねり出してつくりました。当時は恋愛なんてしている余裕はなかったですし、頭の中で考えていることを歌にしていましたね。これも改めて見るとちょっと恥ずかしいですし、耳にすると照れます(笑)。でも、僕が持っていた恋愛観や憧れに共感して、それを自分に重ねて楽しんでもらえたらうれしいですね。
4.君恋カレンダー
作詞︰Tomohisa Sako / Tomoyuki Ogawa 作曲:Tomoyuki Ogawa 編曲:Sorao Mori
恋愛する毎日をカレンダーに例えた曲。わかりやすい言葉をたくさん使いました。これも改めて見ると、自分の恋愛観や妄想が滲み出ているなと(笑)。
サビの“君と笑い合えるなら/それだけの事が/今の僕にとってはもう/これ以上ないキセキなんだよ”はまさに片思いボーイですよね(笑)。今はきっと2行ぐらいで済んじゃうんだろうなって。そう思うとちょっと悲しかったりもします……。
こういう恋愛の曲は、ファンの方も一緒に成長していると思うので、このベストで改めて聴いて当時を振り返ってほしい。自分にとっても大事な曲だなって、改めて思いました。
5.僕たちの歌(TVアニメ『絶園のテンペスト』EDテーマ)
作詞:Tomohisa Sako / Tomoyuki Ogawa 作曲:Tomoyuki Ogawa 編曲:Saku
この曲は制作したときのことをよく覚えています。この楽曲はTVアニメ『絶園のテンペスト』のエンディング曲として制作させていただいたんですが、すぐに作品のストーリーに感情移入して、キャラクターになりきってつくりました。
楽曲を制作するときは、いつも誰かひとりの目線で曲をイメージしていきます。何なら“キャラソン”ぐらいの感覚でつくるとわかりやすい曲になるんですよね。自分といちばん近いキャラクターって誰だろうと思って、親近感が湧くキャラを見つけて、重なる部分を書いていく。この曲は登場人物の「不破真広」目線でつくりました。
これは“いつの日か君と『ほら運命だったね』って一緒に笑えるといいな”っていうフレーズのためにつくったと言ってもいい曲。この1フレーズを伝えたくて制作しました。
6.バイバイ
作詞:Tomohisa Sako / Tomoyuki Ogawa 作曲:Tomoyuki Ogawa 編曲:Saku
「自分らしさって何?」「自分って何者なの?」とか、自問自答していたころにつくった曲です。「弱さ」や「強さ」とかをこれまでは漠然としか考えてこなかったけど、自分なりに出した答えが歌詞に出てるのかなと。
変な言い方ですが、当時の僕はきっと優しかった、心が広かったんです(笑)。なぜかというと、いろいろ嫌なことがあっても、「耐える」わけです。そのストレスや原因を自分の中で押さえ込んでいた。もっと言えば、何かあったら自分のせいと割り切るしかなかったんです。弱い自分がいけない、向き合って戦わなきゃいけない。そんな思いがこの曲には詰まっていると思います。
“戦う為に振りかざした刃は僕を向いているんだ”って歌詞はまさにですね。当時はずっと自分と戦っていました。弱い自分にバイバイと。
そういう意味で、この歌は初めて自分自身と向き合ったと言えるかもしれません。デビューから立て続けにシングルを出させていただきましたが、ちょっと一回休んで、いろんなことが整理できた時期だった気がします。
7.カラフルワールド (TVアニメ『メガネブ!』EDテーマ)
作詞:Tomohisa Sako / Tomoyuki Ogawa 作曲:Tomoyuki Ogawa 編曲:Saku
4つ打ちのハッピーな曲。TVアニメ『メガネブ!』というアニメのエンディング曲でした。“恋をしている空間はカラフルに見える、あなたというフィルターを通してみる世界はカラフルだ”っていう曲。メガネを通して好きな人を見ているというアニメの世界観を表現しています。この曲は言葉の歌詞を一つひとつ噛み締めて聴くというよりは、耳当たりのいい音とかメロディを意識したので、お部屋で流しておいてほしい曲ですね。
このころから自分の恋愛観が少しずつ変わってきたように感じます。今までは自分の中で悶々と考え込んでいたような歌詞が多かったですが、ちょっと余裕ができたのか、「だんだん虜になるでしょう」とか、恋愛を楽しめるようになっている気がしますね。そういった恋愛ソングでも僕の「変化」を楽しめる曲だと思います。
8.魔法の夜と不思議なワルツ
作詞:Tomohisa Sako 作曲:Tomohisa Sako 編曲:Tomohisa Sako / Sorao Mori / m-taku
この曲から、本格的に作詞作曲に取り組むようになりました。自分が何のために歌っているのかを見直し、ファンやスタッフさんにも「こんなキャッチーな曲もつくれるんだ」という認識してもらえた気がしています(笑)。
あと、この曲はライブを意識して作った曲でもあります。ずっとライブの1曲目で歌う曲を作りたいなと思っていたんです。歌い出しもライブを意識していますし、“1、2、3、Ding♪ Dong♪ Dang♪”の部分はファンの方と一緒に歌ってます。
いろんな言葉遊びを混ぜていて、中でも“毒林檎をほおばり/踊る12時過ぎのシンデレラ”はいいな!って今見ても思う(笑)。
9.少年とロボット
作詞:Tomohisa Sako 作曲:Tomohisa Sako 編曲:Tomohisa Sako / Saku
これは今でも、めちゃめちゃいい曲だなって思います(笑)。完成したときも手応えがありましたし、メロディもキャッチーだった。“ひとりぼっちの僕たちはひとりぼっちじゃない。”という歌詞も、思いがぴたっとハマった感じがありました。でも、それって今までの自分の背景があったからこそだと思うんです。思ったことを口に出して言えなかったこととか、そういう経験を積んだからつくれたのだと改めて思います。
あと、「インターネットの世界から出てきた僕をあなたが見つけてくれたよ」っていう大きい意味もあります。それをようやく口に出せるようになったから出来た曲。“「ひとりぼっち」だった自分を見つけたくれたあなた。あなたもきっとひとりぼっちだったんだね、じゃもう僕たちはひとりぼっちじゃないよ”、そんな思いがありました。
聴く人にとっては、あなたが少年かもしれないし、ロボットかもしれないし。聴く人に委ねてもいいと思っていて、それを表現するときに「ロボット」というワードがいちばんかわいく形容できたんです。人間との対比がわかりやすかったのかな。“ボロボロに錆び付いた君を見つけんだ”って歌詞も、「ロボット」にしたことで角を削れた感じ、丸みを帯びた感じがします。
10.ゲッタバンバン (TVアニメ『ポケットモンスター XY』OPテーマ)
作詞:Tomohisa Sako 作曲:Tomoyuki Ogawa 編曲:Saku
昔から大好きだった『ポケットモンスター』のOPテーマ(『ポケットモンスター XY』)の曲ですね。ずっとポケモンを観てきたので、自分の中で本当に大きなことでした。
歌詞はスラスラと書けたのですが、「ゲッタバンバン」というフレーズだけはすごく悩みました。もしかしたら、今も悩んでいるのかなってぐらい(笑)。この言葉は“バンバン、ゲットしよう”みたいな意味を持たせた造語。主人公の「サトシ」が仲間をゲットしてほしい、サトシも、『ポケモン』を観る子供たちも明るい未来をゲットしてほしい、進んでほしい。そんな意味を込めました。いろいろ考えた挙句、「ゲッタバンバン」はいちばん最初に出てきたフレーズだったんです(笑)。今も大好きな曲です。
この曲を作ってよかったと思うのは、これを聴いた子供たちが大人になったときに、アニメと一緒に思い出してくれるわけじゃないですか。この曲が、サトシたちの冒険と一緒に記憶に残ってくれていたらすごくうれしい。自分も小さい頃を振り返るとそうでしたから。
11.いつか君はそいつと別れるに決まってる
作詞:佐香 智久 作曲:佐香 智久 編曲:野村陽一郎
前作から少し間が空いて出したシングル。「ゲッタバンバン」とは全然、雰囲気が違いますね(笑)。この曲は自分の中でも大好きな曲で、デビュー当時とはうって変わった楽曲が作れてたかなと。
好きな人にどうアプローチを仕掛けるかって人間が“素”が出るじゃないですか。それをこのタイトルのように「いつか君はそいつと別れるに決まってる」みたいに言える自分って、すごく人間臭いなというか、繕ってない感じがする。自分の中の表と裏も出ているし、そのまんまの自分をわかりやすく、伝えられた曲だなと思います。
12.フローリア(TVアニメ『夏目友人帳 陸』OPテーマ)
作詞・作曲:佐香 智久 編曲:野村陽一郎
6/8拍子の曲って今まで作ったことがなかったのですが、以前にストックしていた曲からメロディのヒントを引っ張ってきたんです。メロディや歌詞を昔からずっとたくさん貯めているんですが、改めて聴いてみて、いいなーって思って。自分にとっても新しい挑戦でしたね。
「フローリア」は造語です。「フローラ」が「花が咲く」という意味があり、そこに「自分」という意味を込めて「i」を入れました。“あなた自身に蕾があって、あなたの花が咲くよ”っていう思いをうまく表現できたかなと。
この時期あたりから、サビ頭に造語のような、英語のようなフレーズを使うのが好きで。曲がすごくキャッチーになるというか。それに「フローリア」って海外の女の子の名前みたいで、かわいいですしね(笑)。タイトルにすべてが詰まった曲です。
13.不完全モノクローグ(TVアニメ『抱かれたい男1位に脅されています。』OPテーマ)
作詞:佐香 智久 作曲:まふまふ / 佐香 智久 編曲:まふまふ
この楽曲はTVアニメ『抱かれたい男1位に脅されています』のオープニング曲として書き下ろした曲になっています。登場人物になりきって書くことができたので、作りやすかったですね。Aメロは言いたいことがありすぎて喋ったという感じですね(笑)。
今まで、こういう曲はなかったので変化を楽しんでいただける曲だと思います。アップテンポなのでライブでも盛り上がるし、今までなかった面を見せられたような気がしています。自分としても作ってよかった曲です。
タイトルは「モノローグ」と「モノクロ」を合わせた造語です。「あなたに出会う前ではモノクロの世界で、不完全、自分一人のモノローグ。でも、あなたと出会うことで、完成する」、そんな意味を込めました。ふたつの言葉を掛け合わせることは結構好きなのかも。曲を覚えてもらうきっかけになるとうれしいですね。
――ありがとうございます。では最後に、改めてベストアルバムのPRを。
佐香 僕の人間味が味わえるというか、デビューから7年間のすべてが詰まっていると思います。多分、この1枚を聴くと「佐香智久」っていう人間がわかると思います。人間ってこうも考え方が変わるんだとか、こんなことで悩んだりしていたんだなとか、ここは恋とかしていたのかな?とか。僕の年表のような1枚になっています。
――どんな方に聴いてほしい?
佐香 もちろん今まで応援してくださったファンの方には改めて聴いてほしいですし、まだ僕のことを知らない人に対しても、名刺代わり1枚になっていると思います。ぜひ1枚を通して楽しんで、味わってほしいですね。
――これからやってみたいこと、将来の理想像などはありますか?
佐香 いたってシンプルです、とにかく「なんでもやりたい」。今の時代ってなんでもできる時代じゃないですか。僕自身も、アーティストという主軸になるものと、もっと進んで勉強したい声優のお仕事、YouTubeでもいろいろ挑戦している。SNSも頑張りたい。今、持っているものを数えるといっぱいあって、欲張りに聞こえるかもしれませんが、それをまんべんなくやっていきたい。
それによって、佐香智久という人間をたくさんの人にもっと知ってもらって、好きになってもらいたい。歌手もお仕事以外の経験が、最終的に楽曲に反映できるように、人間味溢れる人になりたい。歌う曲に恥じない自分になりたいんです。そのためには、いろんなことを勉強して、知っておきたいなと。今、応援してくれている人たちも驚くような存在になれるように、体験して、歩んでいきたいです。
特に声優というお仕事は、しっかりやっていきたいなと思っています。歌と似ている部分があって、やっぱり「言葉」を知らないと嘘に聞こえてしまう。滑舌とか、技術的なことはもちろん大切なんですが、いかに引き出しを持っているか、いかに人間として豊かな人であるかという部分をこれから突き詰めていきたいですね。
――やりたいことがそんなにたくさんあって羨ましいです。
佐香 そうですね、めちゃめちゃ前向きです(笑)。あまりにも楽しみです、これからの自分が。
Interview & Text By タニカワリョウスケ
●リリース情報
ベストアルバム
『さこともベスト』
5月29日発売
【初回生産限定盤(CD+DVD)】

品番:VVCL-1450~1451
価格:¥3,800+税
※三方背BOX仕様
【通常盤(CD)】

品番:VVCL-1452
価格:¥3,000+税
<CD>
M-1:愛言葉
M-2:ずっと (TVアニメ『君と僕。2』オープニングテーマ)
M-3:はんぶんこ
M-4:君恋カレンダー
M-5:僕たちの歌 (TVアニメ『絶園のテンペスト』エンディングテーマ)
M-6:バイバイ
M-7:カラフルワールド (TVアニメ『メガネブ!』エンディングテーマ)
M-8:魔法の夜と不思議なワルツ
M-9:少年とロボット
M-10:ゲッタバンバン (TVアニメ『ポケットモンスター XY』オープニングテーマ)
M-11:いつか君はそいつと別れるに決まってる
M-12:フローリア (TVアニメ『夏目友人帳 陸』オープニングテーマ)
M-13:不完全モノクローグ (TVアニメ『抱かれたい男1位に脅されています。』オープニングテーマ)
<DVD>
1:愛言葉
2:ずっと (TVアニメ『君と僕。2』オープニングテーマ)
3:はんぶんこ
4:君恋カレンダー
5:僕たちの歌 (TVアニメ『絶園のテンペスト』エンディングテーマ)
6:バイバイ
7:カラフルワールド (TVアニメ『メガネブ!』エンディングテーマ)
8:魔法の夜と不思議なワルツ
9:少年とロボット
10:ゲッタバンバン (TVアニメ『ポケットモンスター XY』オープニングテーマ)
11:いつか君はそいつと別れるに決まってる
12:フローリア (TVアニメ『夏目友人帳 陸』オープニングテーマ)
13:不完全モノクローグ (TVアニメ『抱かれたい男1位に脅されています。』オープニングテーマ)
<佐香智久 プロフィール>
1991年12月26日生まれ、北海道札幌市出身。2012年3月に1stシングル「愛言葉」でメジャー・デビューを果たす。2015年には「ゲッタバンバン」がTVアニメ『ポケットモンスター XY』OPテーマに大抜擢され、『ポケットモンスター XY&Z』のキャラソンプロジェクト総合プロデューサーとしても活躍。自身の楽曲のみならず、様々なアーティストへの楽曲提供、声優や舞台での活動も行うなど、マルチな才能を持つシンガー・ソングライター
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