リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2018.11.01

『宇宙戦艦ヤマト2022 愛の戦士たち』第六章公開記念 藤堂早紀役・高垣彩陽インタビュー

『宇宙戦艦ヤマト2022 愛の戦士たち』第六章公開記念 藤堂早紀役・高垣彩陽インタビュー

1974年からテレビ放送が始まり、社会現象とまで呼ばれた人気アニメ『宇宙戦艦ヤマト』。誕生から38年を経て制作されたリメイク版『宇宙戦艦ヤマト2199』も人気を博すなか、その『2199』の続編である『宇宙戦艦ヤマト2022 愛の戦士たち』全七章の、第六章「回生篇」が完成。第五章で登場し、多くの謎を残した波動実験艦 「銀河」の艦長である藤堂早紀を演じる高垣彩陽が第六章を語る!

――『宇宙戦艦ヤマト』にはどんなイメージがありましたか?

高垣彩陽 『ヤマト』はもちろんオリジナルの世代ではなく、どちらかと言うと母とか父の世代の作品ではあるんですけど、昭和アニメの名シーンを集めた特別番組があると必ず紹介されますし、オープニングの歌を聴いたことがない人の方が少ないんじゃないかと思うくらい、ストーリーを観たことはないけれども、「ヤマト」の姿であったり、フォルムと歌がきちんとリンクしますね。第五章を劇場で拝見したときに音の圧がすごくて。「白色彗星のテーマ」のオルガンの音のインパクトがものすごかったんです。その話を、舞台挨拶でしたいなと思って調べていたら、オリジナルの「白色彗星のテーマ」で使われたパイプオルガンが、わたしの母校のホールにある大きなパイプオルガンで当時は演奏されていたそうなんです。「あのオルガンで!?」という驚きと、勝手ながら作品と繋がった感じがしたんです。本当に些細なことですが、縁を感じました。

――そんな『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士』への出演が決まったときにはどのようなお気持ちになりましたか?

高垣 オリジナルがあって今のシリーズがやっていることも知ってはいたのですが、まさかその作品に関わらせていただけるとは、とうれしい気持ちでした。最初は「(地球連邦防衛軍・統括司令長官の)藤堂(平九郎)さんの娘です」という情報だけを知っていたのですが、『2202』のオリジナルキャラクターなので藤堂早紀という人のことを調べようもなくて。娘だということで、私は勝手に、時々出てくるキャラクターみたいなイメージをしていたんです。でも、初めて台本をいただいたときに、キャラクターの絵も見たのですが「あれ?なんか軍服着てる……」と。まだ艦長であることや、細かいところは知らなかったので、台本を読む前にキャラクターを見たときの衝撃がすごくて。勝手にお家で待っている娘さん、というイメージだったので、思っていたのと全然違う……と思って(笑)。これは戦場に出ている人で、しかも立場が上のほうの人だな……と。最初の登場シーンは本当にワンシーンでしたが、実際に現場に行って、早紀について詳しくお話を聞きました。そこで「銀河」という戦艦の事であったり、早紀の生い立ち、「銀河」の目的や使命、そしてどんな想いで早紀はここにいるのか、という説明を羽原信義監督と脚本の福井晴敏さんから受けたのですが、こんな大役だと思っていなかった、というのが正直なところです。いちばん最初の登場シーンの収録を終えてスタジオを出て、道を歩いているときに震えてきてしまって。まだ台詞はひと言でしたが、ここからどんな展開が待っていて、この役はどんなふうになっていくんだろう、と。『宇宙戦艦ヤマト』という作品であることも含めて、これは本当に大変なことだ、というのをその瞬間にプレッシャーとしてドーンと感じました。だからといって逃げたいというわけではなくて、こんな大きなシリーズの中で、こんな大役を任せていただいたからにはしっかり勤め上げねばという、わたし自身も使命感のようなものに駆られて。「絶対に頑張るぞ」という気持ちと共に震えが起きたので「きっとこれが武者震いなんだ」と初めて感じた帰り道でした。

――改めて演じてみて、今回演じられた藤堂早紀はどんな人物だと感じられますか?

高垣 藤堂早紀は若くして「銀河」という戦艦の艦長に任命され、生い立ちの部分でも複雑な想いを抱えてあの場にいるというのもありますし、凛とした女性像というものがありますね。女性の艦長はなかなか『ヤマト』のシリーズにもいなかったと思いますし、指揮を執っている方のイメージは年配の男性の方が多いと思うので、あの年齢の女性が、艦長という立場になるということは、どれだけの苦労をしてどんな想いをしたんだろう、と。そう思うと彼女が凛として中心にいなければならないと、自分を鼓舞する姿もあるのかな、と感じています。ぜひ第六章をご覧いただきたいんですが、「銀河」は「ヤマト」と形は似ているんですけど、その目的や内情がまったく違うものであり、乗っているクルーの気質も違います。どちらかというと「ヤマト」のクルーたちは情に厚くて人間らしい部分があると思うのですが、「銀河」はオートマチックで、合理的であったり、目的のためには手段を選ばないという選択をするような人たちが乗っているんです。でも最初に監督と福井さんから説明を受けたときに、いろんな感情を切り捨ててここにいるのかな、と思っていたのですが、第六章の収録を重ねていくなかで彼女もこういった人間らしさがあったのだと気付かされました。彼女の心が動く瞬間に自分の心も動くものがありましたね。彼女にとても共感できるのは、『ヤマト』シリーズの中で私もここから関わらせていただくことになって、大先輩方がいらっしゃる中で艦長として重要な役割をやらせていただく、という自分自身のプレッシャーと、早紀の存在が重なった気がしたんです。彼女がどれほどのプレッシャーと戦っているんだろうと思うと、どこかで「背筋を伸ばしていなくては」と頑張っているように感じたんですよね。もちろん周りに支えてくれる人はいると思うのですが、弱いところを見せてはいけない、しっかりしなくてはと自分を鼓舞しているんだろうなと。プレッシャーと戦っている自分と似ているなと感じました。どこか完璧ではなくて、まだ未熟さがあって、それでも頑張っている早紀の姿が、今の私がある意味背伸びをして『ヤマト』という作品の一員になろうと思っている気持ちと、遠くはないと思えたんです。そういった部分では自分の緊張感みたいなものもそのままマイク前に持っていって許される役でしたね。

――早紀を演じる、そのお芝居を作っていくうえでは、どんなことをいちばん意識したのでしょうか。

高垣 「銀河」自体が担っている任務も含めて、あの年齢で、女性で、あの立ち位置にいくためにはきっと揉まれることもたくさんあったでしょうし、重大な任務に耐えられる精神というものはどういうものなんだろうってことを考えました。そのなかで、彼女の生い立ちや子供時代に辛い体験をしていることが、ある意味強い信念のきっかけになったんだと思います。先程もお話したように、全然そんなことも知らずに現場へ行き、説明を伺ったときの衝撃は本当に凄まじかったです(笑)。「そういう役割なんだー!!」と驚愕でした。クルーに対しても、「銀河」という戦艦の責任もあり、彼女自身も自分を奮い立たせていかなければいけない部分もあったのではと感じました。「ヤマト」と「銀河」がすごく対称的なんですよね。人間味あふれる人たちのいる艦と、合理的な人たちの乗る艦。見た目は似ているけれど対極にあるのだと思います。早紀も、辛い想いをしてきたからこそ、どこかでそれを乗り越えるために「こうあるべきだ」と、信じながら生きてこなければいけなかったのだと。それが「ヤマト」のクルーたちとぶつかったときに、本質的なところで人間とはなんなのか、生きるうえでの弱さを問われる。強くなるためには切り捨てなければいけないことがあるという考え方が、「ヤマト」のクルーの言葉に心動かされる。そういった部分でも今回の第六章では、「ヤマト」のカリスマ性を再認識できました。

――すごく如実に対比できますからね。

高垣 そうなんですよ。形はほぼ一緒、でも中身は違うので。この第六章を経て早紀がどうなっていくのか。彼女の未来を想ってしまいます。彼女は、いつどうなるかわからない戦場に身を置いて、大きな覚悟を持ってあの場にいるので、そんな彼女や「銀河」を通して人間というものがなんなのかを訴えかけるドラマになっていると思います。

――福井さんや監督とのやりとりで印象的なことはありましたか?

高垣 いちばん始めに言われたのが「この『銀河』の登場によって観ている人たちは“あれ?これは『ヤマト』の物語じゃなく『銀河』の物語になっちゃうのかな?”っていうくらいのインパクトがある艦です」って言葉だったんです。「もう『宇宙戦艦ヤマト』から『宇宙戦艦銀河』に変わったのかと思うくらい、主人公が変わったんじゃないかというくらい観ている人にインパクトを与える存在です」と説明されて、「え~!古代くん!!」と衝撃でしたね(笑)。それも含めていいプレッシャーになりました。自分が現場でいただくディレクションで印象的だったのは、ここは割り切ってあまり感情を出さずにとテストで口にしたセリフに対して「もっと柔らかさを出してください」というディレクションが来ることがあって。そのときに、彼女がいろんなものを切り捨てて生きている、ある種の冷たさみたいなものを持ってお芝居を作ってきたんですけど、それだけではなかったのだなと。揺らぎがあったんだな、ということはディレクションからいただいた印象だったなと思います。その言葉の意味は、第六章のとあるシーンのアフレコをしたときに改めて納得しましたね。

――先ほどお話にあったように、大先輩に囲まれてのアフレコになったと思いますが、実際のアフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか?

高垣 とても緊張しました。いちばん最初の登場シーンはスケジュールの都合で皆さんと一緒に収録ができなくて、今回の第六章の収録から皆さんと現場に入ったんですけど、そのときに古代役の小野大輔さんが「彩陽が艦長かぁ」って、親戚のお兄さんみたいにすごく感慨深そうに言ってくれたのがうれしかったです。わたしも資料として第一章から拝見してはいたんですが、まだまだ知らないことやわかっていないこともいっぱいあったので、そういったところを皆さんとても親切にしてくださいました。小野さんが引っぱってくださって、わたしの疑問点とか、用語などもていねいに教えて下さいました。収録が終わったあとも小野さんと『ヤマト』の話をしながら帰らせてもらったんですけど、「前回はこんなことがあってね」とか今までのあらすじや設定的なものを教えてくださって、アドバイスをいただいたりしながら歩いて、いざ駅に到着したら「じゃあ、俺、まだ電車に乗らないから!」って。ご自分は電車に乗るわけではなかったのに、わたしが新参者であることでを心配してくださってここまで来てくださったんだ、と思うと、小野さんの優しさがとてもありがたく、うれしかったですね。それだけ皆さんが『ヤマト』に対して、新シリーズに賭けていた想いがあるでしょうし、そこにはもちろんオリジナルの『ヤマト』へのリスペクトというものもある。皆さんが大きなものを背負ってこの作品に臨んでいるんだな、と実感しました。大先輩方と現場をご一緒させていただき、うれしい再会もいっぱいあったりして現場にいられることがすごく幸せでした。現場で一緒にマイクを並べて、同じ現場にいられてよかったな、と。それとスタッフの皆さんの、オリジナルに対する、そしてこの作品に対する並々ならない想いも感じていました。今回、早紀の母はオリジナルの『ヤマト』で藤堂の孫娘の藤堂晶子を演じた杉山佳寿子さんがキャスティングをされていて。そこでもオリジナルへのリスペクトを感じました。時は経っていますが、繋がっている感じがして、感動したキャスティングでした。

――全七章立ての第六章ということで、全体を通してもクライマックスだと思いますが、愛を廻るドラマが描かれたこの作品で個人的に注目している見どころやテーマなどをお聞かせください。

高垣 今回の章では、「銀河」についてはもちろん、これまでなかなか見えてこなかったスォーダーの過去が描かれています。第六章を通して「愛」という言葉にすべてが還ってくるんだな、と私は感じました。愛という部分で言うと、人間らしさであったり、人間とは何かというところで、ひとつ問いかけるものに「銀河」という存在自体がなっていると思うんです。昨今の社会もいろんなことが機械化していったりもして、人の温もりを感じることの方が希薄になっっていることもあると思うのですが、だからこそ、情に厚い人間性みたいなものを感じていただきたいです。『ヤマト』ってやっぱり『ヤマト』なんだ、と思える第六章になっているのではないかと思いますので、ぜひそのカリスマ性も含めて楽しんでほしいです。いろんな人の思惑や、一見善と悪に見えることも、それぞれがどんな想いを抱いてこの戦場に赴いているのか、ということをぜひ感じていただけたらと思います。

――では早紀の登場を待ちわびているリスアニ!Webの読者へメッセージをお願いします。

高垣 「銀河」は、第五章で登場しましたが、謎をいっぱい残したと思います。ですが、第六章ではそんな「銀河」についてすべてが明かされますので、ぜひご覧いただきたいです。早紀の人生もですし、クルーたちの想いも含め、人として生きることについて描かれているので、期待していただきたいです。わたし個人的には、なんといっても山南 修さんがカッコいい!と思っています。迫力の戦闘シーンと熱い人間ドラマがあり、最終的にはタイトルにある「愛」へとたどり着く物語なんだと感じています。愛ゆえにこうなってしまった、愛ゆえにこういう選択を取ってしまった、というものが滲みますし、正しいと間違っているという住み分けだけでは区分できない感情がたくさん流れていると思います。ご自宅での鑑賞もいいとは思うのですが、ぜひとも劇場に足を運んでいただき、音楽に包まれながら大スクリーンでの戦闘の迫力を体感していただきたいです!たくさんの人の強い想いが込められていますし、わたしの人生の中でもこの第六章の収録の過程というものは今までになかった様々な想いを抱えたものになりました。年齢、性別を問わずこれからも皆さんと一緒に『宇宙戦艦ヤマト』を愛していきたいと思います。

Interview & Text by えびさわなち
Photography By 山本哲也


●作品情報
『宇宙戦艦ヤマト 2202 愛の戦士たち』第六章「回生篇」
11月2日(金)全国35館にて劇場上映開始!

【スタッフ】
製作総指揮:西﨑彰司
原作:西﨑義展
監督:羽原信義
シリーズ構成:福井晴敏
副監督:小林誠
キャラクターデザイン:結城信輝
音楽:宮川彬良・宮川泰
アニメーション制作:XEBEC
製作:宇宙戦艦ヤマト 2202 製作委員会

【キャスト】
古代 進:小野大輔
森 雪:桑島法子
島 大介:鈴村健一
真田志郎:大塚芳忠
キーマン:神谷浩史
サーベラー:甲斐田裕子
ズォーダー:手塚秀彰
テレサ:神田沙也加
沖田十三:菅生隆之

TVアニメ『宇宙戦艦ヤマト 2202 愛の戦士たち』
放送中

テレビ東京 毎週金曜深夜1時23分~
テレビ大阪 毎週金曜深夜2時10分~ ※初回放送のみ2時46分~
テレビ愛知 毎週金曜深夜2時05分~

©西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト 2202 製作委員会

関連リンク

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP