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2018.07.20

笑顔と笑顔で駆け抜ける夏の始まり。「Wake Up, Girls! FINAL TOUR – HOME -」千葉市原・開幕公演レポート

笑顔と笑顔で駆け抜ける夏の始まり。「Wake Up, Girls! FINAL TOUR – HOME -」千葉市原・開幕公演レポート

Wake Up, Girls! 最後のライブツアー「Wake Up, Girls! FINAL TOUR – HOME – ~ PART Ⅰ Start It Up, ~ 」が2018年7月14日(土)、千葉・市原市市民会館大ホールでスタート。Wake Up, Girls!の吉岡茉祐、永野愛理、田中美海、奥野香耶、山下七海、高木美佑、青山吉能が出演した。今回は昼の部をレポートする。

2019年3月に声優ユニットとして解散することを発表したWake Up, Girls!(コンテンツとしての「Wake Up, Girls!」は継続する)は、2018年7月~8月のPARTⅠ、2018年10月~12月のPARTⅡ、そして2019年に予定されているPARTⅢと、WUG史上最大の“3部作ツアー”で最後の9ヶ月を駆け抜ける。ツアータイトルは「HOME」。メンバーとワグナー(ファン)が家族であり、WUGというユニットがみんなの帰る場所であることを再確認するタイトルだ。発表済みのツアー会場には、高木美佑の出身地である千葉、田中美海の出身地である神奈川、吉岡茉祐の出身地である大阪、奥野香耶の出身地である岩手が含まれている。

市原市市民会館は地元出身の高木も「市原、遠かったよね?」と言うほど都心からは離れた会場だったが、ちょっとした小旅行感という共通体験もライブを彩るアクセントになっていたと思う。高木は遠さについてだけでなく、「千葉市原、私のホームタウンです!」と嬉しそうに語ってもいた。当日は約1500人収容の大ホールが昼夜ソールドアウトでぎっしりと埋まった。今回はツアーの開幕公演ということもあり、要の部分のネタバレを避けるため、公開できる範囲で、印象に残ったことを書いていきたいと思う。

まずは演出面。ステージ下段にはステージ全体を覆うサイズのワイドスクリーン、上段には屏風のような形のスクリーンが4基(8面)設置されていて、各楽曲に合わせた映像演出を行なった。今までになくショーアップされた印象で、ツアーロゴひとつとってもHOMEの文字と家を象った図案をメンバーカラーのステンドグラス(っぽいデザイン)で表現したりとセンスがいい。千葉の大天使こと高木も「映像もめちゃめちゃ動いていて、早く見てほしいってうずうずしていたんです!」と嬉しそうだ。音響も過去最高クラスのクオリティで、このツアーを特別なものにしようというスタッフサイドの意気込みが仕事から伝わってきた。田中のソロ曲の「ぽんとPUSH! もっとSMILE!」は意欲的なラップ曲だが、明滅する光の洪水の中でのパフォーマンスは一際かっこよく見える。デジタルな響きのラップに落としこんだ「石巻のみんな見てるかな」のようなコミカルで実波らしいフレーズがクリアに聴き取れると、音響って大事だなと改めて思う。

 

もうひとつ演出面で特徴的だったのは、メンバーとの距離の近さだ。ライブ中、メンバーが客席の通路に降りてきたり、客席の中から登場したり。イメージとしてはライブというより舞台の距離感に近い。ソロ曲メドレーの「ユメ、まっすぐ。」(吉岡)や「Dice of Life!」(青山)では会場中程の通路に用意された踏み台の上で、観客の目と鼻の先でのパフォーマンスを見せた。青山は元来のボーカルの突破力に加えてなめらかさや歌声の膨らみがさらに増した感じで、0距離で見るパフォーマンスは本当に圧巻。過去最高に強く鮮やかでかっこいい青山吉能だった。会場と一緒に踊る振付が定番の「ワグ・ズーズー」も、すぐ隣の距離感までメンバーが下りてくると、一緒に歌い踊っている感覚がより強くなった。

楽曲の選び方はタイアップ曲やライブオリジナル曲が多めで、声優ユニットとしてのWake Up, Girls! のカラーが強い。I-1clubの「君とプログレス」「シャツとブラウス」も歌ったのだが、ライバルI-1の楽曲を歌うというよりは、「Wake Up, Girls!」の世界を彩る楽曲をユニットとしてのWake Up, Girls! が歌うという雰囲気で、すごく自然な感じ。ライブオリジナル曲から「セブンティーン・クライシス」を歌ったのは、ご当地高木美佑初のセンター曲なだけに心憎い。元気なだけでなく、ちょっと大人なかわいさを感じさせる表現は今の彼女ならではのものだった。大人、といえば「セブクラ」の最後で敬礼っぽくキメる動きに艶っぽいニュアンスが感じられたのが新鮮で、特に吉岡の手元には非常に強い意図を感じた。5人で見せるダンス曲「セブンティーン・クライシス」を歌ったなら、対になる青山と田中のボーカル特化曲「プラチナ・サンライズ」も聴きたくなるところだが、今回はお預け。ただ、WUGとして初披露した「君とプログレス」で、田中が青山と共に(吉岡もだが)クールでかっこいい表現を担っている姿は、少し「プラチナ・サンライズ」を思い出した。高木のソロ曲「シャリラ!」はソロメドレーのトリで、メンバーがタオルぶん回し隊として登場したりと、やはり千葉公演の主役は高木の印象だった。

声優ユニットとしてのライブ色の強さは、アンコールが「One In A Billion」「僕らのフロンティア」「7 Senses」という構成だったことにも感じた。その中で特筆したいのが、「One In A Billion」のパフォーマンスの素晴らしさだ。この曲はTVアニメ「異世界食堂」のオープニングテーマであり、May’n+WUGのコラボユニット「Wake Up, May’n!」名義の楽曲だ。この曲は元々May’nの圧倒的なボーカルの存在を前提にした楽曲だが、ライブでは歌割や構成をがらっと変えて、7人での「One In A Billion」として最高の状態に仕上げてきた。圧巻はサビの盛り上がりどころで、吉岡+青山のダブルボーカルに他のメンバーのコーラスも乗せる、WUGにとってのボーカル最高戦力を投入してきた。この曲はやっぱりMay’nがいないと…とは絶対言わせないという意志を感じるような、圧倒的な表現だった。May’nというスーパーアーティストと共演した経験があるからこそなし得たパフォーマンスだし、誰よりもMay’nその人に見てほしいと思う姿だった。

今回のライブでは朗読コーナーも行なわれ、アニメ「Wake Up, Girls! 新章」のある時期の7人と、彼女たちが暮らす寮にまつわるオリジナルエピソードを演じた。朗読の中で「お化けがものすごく苦手な島田真夢」が登場したのだが、リアクションの感じがかなり、お化け屋敷が苦手な吉岡茉祐本人寄り。こういう表現ができるのはアニメでも舞台でもない朗読ならではだろうか。奥野と山下の掛け合いが本当に菊間夏夜と久海菜々美そのものに見えたのには、キャラクターを背負って生きてきた年月を感じた。演技で見せる表現者としての彼女たちは、やはり二度の舞台を経て大きく変わり、成長したように思う。

メンバーの何気ない絆を感じたのが、アンコールのMCだ。トリとしてマイクを持った青山のトークが、伝えたいことが多すぎてまとまらない感じになると、永野が「5年目ですよ」と突き放す感じでネタにする一言。青山が山下のバースデーをサプライズで祝うために「一曲歌います」と宣言した時は、山下から「またよっぴーの茶番が始まったのかと思った」との返しもあった。この遠慮のない物言いが成立する信頼関係と温かい空気は、末っ子リーダー青山のパーソナリティがあればこそだと思う。サプライズバースデーで、山下は最初自分が祝われていることがあまりピンときていない様子だったのだが、横の田中がすっと山下の背中に手を回して、ななみんが主役なんだよーと無言で示しながらエスコート。会場も全員が誕生日の主を把握しているわけではなかったと思うので、こういう心遣いは大事だと思う。山下は会場いっぱいの紫のサイリウムをろうそくに見立てて吹き消すと、少し早い23歳の抱負と決意を伝えていた。

公演の締めくくりではリーダー青山が「みなさんこれからも、笑顔で駆け抜けましょう!」と宣言していたが、その言葉通り、公演中メンバー7人は本当に楽しそうな笑顔だった。不思議なぐらい楽しく幸せなライブに会場のワグナーたちも笑顔になり、その空気はメンバーにも確かに伝わる。そんな笑顔の連鎖。奥野が「今年の夏はワグナーさんとたくさん笑いあえたらと思ってました」と話していたが、“笑いあう”という表現がすごくしっくりくるライブだった。

最後は、ご当地の高木の言葉で。「千葉で大好きなメンバーと、大好きなワグナーさんと、素晴らしいスタッフさんとツアーができて本当に嬉しいです。毎回一番いい公演だったと思えるように。今日は全力、出しきれました!(高木美佑)」。

Text By 中里キリ


●ライブ情報
Wake Up, Girls! FINAL TOUR – HOME –
~ PART Ⅰ Start It Up, ~

7月28日(土)神奈川・ハーモニーホール座間 大ホール
【夜の部】開場17:30 開演18:30 ※【夜の部】のみ
7月29日(日)神奈川・ハーモニーホール座間 大ホール
【昼の部】開場11:00 開演12:00
【夜の部】開場16:00 開演17:00
8月4日(土)埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
【昼の部】開場11:00 開演12:00
【夜の部】開場16:00 開演17:00

Wake Up, Girls! FINAL TOUR – HOME –
~ PART Ⅱ FANTASIA ~

10月6日(土)大阪・岸和田市立浪切ホール 大ホール
【昼の部】開場12:00 開演13:00
【夜の部】開場17:00 開演18:00
10月7日(日)大阪・岸和田市立浪切ホール 大ホール
【昼の部】開場11:00 開演12:00
【夜の部】開場16:00 開演17:00
12月09日(日)岩手・岩手県民会館 大ホール
【昼の部】開場12:00 開演13:00
【夜の部】開場17:00 開演18:00
12月22日(土)神奈川・横須賀芸術劇場 よこすか劇場
【昼の部】開場12:00 開演13:00
【夜の部】開場17:00 開演18:00

Wake Up, Girls! FINAL TOUR – HOME –
~ PART Ⅲ KADODE ~
Coming Soon

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