リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

REPORT

2018.07.11

音楽のステージを満喫する形で、牧野由依がリベンジを達成!“YUI MAKINO LIVE CONCERT『WILL you play with me?』”レポート

音楽のステージを満喫する形で、牧野由依がリベンジを達成!“YUI MAKINO LIVE CONCERT『WILL you play with me?』”レポート

6月9日・10日、AiiA 2.5 Theater Tokyoにて“ポッカサッポロ 富良野ラベンダーティーPresents YUI MAKINO LIVE CONCERT『WILL you play with me?』”が開催。昨年7月に同会場でのライブの際に喉を傷めてしまった彼女は、11ヵ月ぶりのワンマンライブにおいてオンリーワンの歌声でファンを魅了。見事なリベンジを果たしてくれた。本稿では、そのうちDAY1・9日の模様をお届けする。

客入れBGMはこの日のタイトルの一部にも冠した、最新ミニアルバム『WILL』のインスト音源。ステージ中央にはバンドセットのほかにグランドピアノも据えられており、ファンの期待を高めていく。
開演時間を迎えると、会場は暗転。小鳥のさえずりとノイズの乗る少々怪しげなInstrumentalのなかバンドメンバーが、続けて牧野がステージに現れ、ピアノの前に座りスタンバイ。そして彼女の奏でるピアノの音色から、「song for you」からライブは幕を開ける。苦しみ続けた彼女に寄せられたこの曲は、再起の1曲としてまさにベストチョイス。約1年ぶりのこの舞台にいる彼女の表情は実に晴れやかで、取り戻した甘く唯一無二のボーカルを響かせ、1年越しのステージをこの地でスタートさせた。
歌い終わると牧野はマイクを手にステージ中央へ。「ウイークエンド・ランデヴー」を歌い始めると、「みんな、会いたかったよー!」と笑顔で呼びかける。そして「WILL you play with me?」「Yeah!」との掛け合いを2回交わしたところで、ファンのクラップに包まれながら歌唱。1曲通してじっくりゆっくり前から後ろまで、上手から下手まで笑顔で、会いたかった“みんな”と視線を合わせる。Dメロではちょっとしたジェスチャーも交え、ラストのスキャットまでオシャレかわいく披露する。
続く「お願いジュンブライト」。照明の光通りピンクが実によく似合う幸せオーラ全開の曲。この6月という時期にぴったりなナンバーを、温かく届けていく。特に花嫁目線のDメロでは、甘さを存分に出したボーカルで観客を魅了する。
さらにもう1曲、ミドルでポップな「星に願うなら」はスポットライトに当たってゆっくりステージを歩きながらの披露。その表現力の巧みさはやはりさすがといったところ。優しく甘えたようなボーカルが続く序盤で、まずファンはメロメロになったのではないだろうか。

4曲歌ったところで、今回のLIVE CONCERTの協賛について説明。昨年のライブ時期に彼女が「最近お気に入り」とつぶやいた『富良野ラベンダーティー』が、「#実質牧野由依」のハッシュタグつきで写真ツイートされる、というちょっとしたムーブメントが発生。そのラベンダーの産地・北海道上富良野町のPR大使に任命された報告を行う。説明中には「ポッカサッポロ」を噛んでしまい、笑いを誘う場面も。しかしそれも、ファンの行動あってのもの。感謝の気持ちを込めて歌うことを改めて表明すると、「久しぶりに歌う、涼しくなっていただけるような曲を」と語って再び楽曲披露へ。
まずはそんな過去を振り返りつつ、未来へと歩を進めるための曲「スピラーレ」で、万全の状態の彼女が再び漕ぎ出していく。再びそのボーカルが会場内を多幸感で満たし、ファンをその音のなかにたゆたわせると、今度はさざなみの音の中「アルメリア」の冒頭をアカペラで独唱。その儚げな歌い出しから、ボーカルは次第に強くクレッシェンドしていき、その想いの膨らみがつぶさに感じ取れる歌声を響かせていく。1サビから伴奏も加わると、牧野の感情表現はさらに豊かになっていき、最後はステージ中央でスポットライトを浴びながら、微笑んで楽曲を閉じた。

そしてここからは、しばし軽快なトークが続く。牧野の高校時代からの同級生である渡邉雅弦(Vc.)から、リハ初日に父になることを聞かされ膝から崩れ落ちた、というエピソードを交えつつ、次曲を「一緒に頑張ってきた友達が新たなステージの一歩を踏み出す、うしろ姿を見るときに思い出す曲」と紹介。それは、「横顔」。久しぶりにバイオリンとチェロ、そして自らのピアノ伴奏のアコースティックバージョンにて奏でられたこの曲は、直前の言葉通り、先へと進む人を優しく包み込んでくれるもの。それを牧野は、甘くてどこか切ない歌声で彩っていく。落ちサビでの細い歌声から大サビで一気に強くなる歌声で見せた想いの増幅ぶりやラストフレーズ「そう きっと」の持つ優しく包み込む力など、そのすべてが素晴らしく、筆者も思わず聴き惚れてしまった。
曲明けにはステージにひとり残った牧野が、去年のライブで歌えなかった、『WILL』に「Studio Live Version」として収録した「What A Beautiful World」について語る。「今日は、あの日のリベンジをしたいと思います」とはっきりと口にしていたずらっぽく笑うと、タイトルコールから1~2秒の間を取ってイントロを爪弾き始める。そして優しく歌い始められたAメロから、彼女は自らの持ち味を用いて楽曲に描かれた美しい世界を、より美しいものとして伝えていく。加えて、スポットライトに照らされた彼女ひとりの力で会場中を魅了していくさま、それこそがまさしく“美しい世界”であったようにも思えた。こうしてしっかりとリベンジを果たした彼女は、ステージ中央で改めて礼を言い、頭を下げた。

ここで牧野のステージ恒例のクラシックコーナーへ。やはり高校時代からの同級生でピアニストの菅原梨乃が登場するなか、この日連弾で披露する2曲についてわかりやすく楽しく解説し、モーツァルト「6つのウイーンソンチネ」より第1・第4楽章の演奏に入る。まずは譜面をめくる際もタイミングを見計らい、息を合わせて助け合っていく。この曲は後半になるに連れてテンポも速くより軽快になっていくのだが、細かく刻むポイントなど鍵となる箇所もバッチリ合わせて、1曲を奏できった。
そしてもう1曲は、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」。この曲は披露前に、ラフマニノフがスランプから息を吹き返した曲であるとの解説もなされており、その意味においては、リベンジの舞台でもあるこの日に演奏される意義のある曲であるように思えた。この曲は中音域部分にアルペジオを有しているのだが、ふたりのリレーとなるその部分をしっかり決められている点、パッと見地味かもしれないが難易度の高いものであるので、改めて評価したいポイントだ。楽曲自体も終盤に向けてドラマティックさを増していくのだが、その魅力をふたりのダイナミックな演奏がよりはっきりと伝えてくれていた。

再びバンドメンバーがステージに戻り「Reset」へ。サビ前の高音のピアノのクリスタルのような響きとともに逆光が客席を照らせば、続くサビでステージは明転。この演出も、ライブの再始動にふさわしいものだ。ここでも牧野はピアノを奏でながら、ボーカリストとしても楽曲の起伏をしっかりと表現する。
続く「もどかしい世界の上で」も、イントロのキーになる旋律を自らのピアノが彩る楽曲。この曲ではサビ前で明るく響くグリッサンドや、2サビ明けのギターソロのうしろで軽快な音色を響かせたりと、その演奏にも聴きどころが満載。もちろん歌声の面でも、Aメロの抜き具合や切なさをはらみながらもサビに向けて高まっていくBメロなど聴かせどころも多く、シンガーと奏者の役割を見事に両立させていた。

そしてしばしの沈黙ののちに、奏でられ始めたのはデビュー曲「アムリタ」。奇しくも自らがヒロインを演じた作品の楽曲をなぞっていく形となった。この曲もメロ部分の儚さとサビのあふれんばかりの切なさとのコントラストが秀逸。それは、彼女がこの曲とともに積み重ねた年月が、生み出したものなのだろう。そして自らのピアノでこの曲を美しく締めくくったら、今度はステージ中央に立ちライブアレンジの「secret melody」へ。EDM調のアレンジが施されたこの曲では、サビでは歌詞に合わせて宇宙(そら)を指さしつつ、サウンドに合わせて芯をさらに太くした歌声で歌唱していく。

歌唱後牧野は一旦ステージ奥へ。雨音が会場を包み、そこから続いたEDM調のInterludeが流れるなか、ダンサーふたりがステージに現れダンスパートへと移り変わり「Colors of Happiness―Rainbow Mix―」へと繋がる。ここで衣装チェンジを済ませた牧野がセンターに立ち、さらに“LIVE”度合いの増したステージを見せていく。パフォーマンスもフロアリミックスされたサウンドにマッチするもので、間奏では凛とした表情のまま、ダンサーふたりとピタリと揃えたダンスを披露。歌唱中も振り付けのつく曲にもかかわらず、そのボーカルには息切れがない。そんな隙のない強い姿を見せて、終盤戦は幕を開ける。
さらに、そこからシームレスに「囁きは“Crescendo”」に突入。バンドサウンド強めにライブアレンジされたナンバーだが、この曲での牧野の表情は明るく、ボーカルも再びキュートさ強めのもの。ちょっといたずらっぽく笑顔を見せるサビでの歌唱中のパフォーマンスに、1サビでのステージ後方の照明がパステルピンクなのも、ニクい演出。最後も最高にキュートな笑顔満開で、楽曲を締めくくったのだった。

続けてバンド紹介へ突入すると、その煽りで存分に“遊び”まくり、声優としてのスキルを遺憾なく発揮し場内を楽しげな空気で満たす牧野。すると「声出していきますよ?」とラストスパートの合図をし、改めての「WILL you play with me?」「Yeah!」の掛け合い、そして「世界にSay Hello?」「Hello!」との楽曲のフレーズを用いた恒例のコール・アンド・レスポンスを経て、会場をひとつにする力を持つポップナンバー「ワールドツアー」でもうひと盛り上がり。間奏でクラップしながら場内を見回すその表情は、この上なく幸せそうなものだった。
そしてイントロ中の「皆さん本当に今日はどうもありがとうございました!一緒に歌ってください!」との言葉から、ラストナンバー「ハウリング」へ。Aメロでじわじわと加速してBメロのでさーっと観客をさらい、1サビでその観客に向けて、自らのボーカルを広げ届けていく。1サビ明けからは牧野に合わせてのクラップも起こり、Dメロラストでは牧野の言葉通り、「響き合って 奏で合って 高めあおう」のフレーズをファンが大合唱。イヤモニを外した牧野の中に、そのファンが起こした声がハウリングしていく。それが彼女の胸を揺さぶり、歌い切った彼女は「ありがとう!大好きだよー!」とシャウト。そのままステージを駆けて往復して、センターでジャンプエンドを決め本編を締めくくった。

それからクラップアンコールが起こるまでには、そう時間はかからなかった。拍手の音が響くなか、「なになにー?まだ盛り上がり足りないのー?」とニヤニヤしながらそーっと入ってくる牧野。そして歌い始めたのは、なんと「Cluster」。近年は本編ラストにファンと繋がる曲だったので、驚いたファンもその場にはいたのではないだろうか。だがその一体感は、披露されるタイミングにかかわらず変わらぬもの。サビでは、たくさんの人差し指が天に向かって掲げられる。この一体感あふれる光景を目にした牧野は、また非常にうれしそうな表情。この先を一緒に見られる名曲のなか、、落ちサビではよりうれしそうに客席中を見回していた。

歌い終わった牧野は、改めて昨年7月の公演から今に至るまでを語る。声が出なくなったときは「あっ、終わった」と思ったということ、約1年の間たくさんの人に支えられながらトレーニングして、ステージに戻ってこれたことを語ると、大きな大きな拍手が彼女を包む。そして「戻ってこれないかも」といった話まで作家にして作り上げたミニアルバム『WILL』の曲を、「どうしてもステージで演奏して、聴いてもらいたかった」という想いがあふれてきた、と語り、「あまり想いがあふれるということが今まであまりなかったんですが、皆さんに会いたくて仕方がなくて今日を迎えました」と率直な想いを語る。
そんな想いの吐露に続けて歌われるラストナンバーは、その『WILL』収録の「それはきっとボクらしく生きる勇気」。喉を壊した時期の牧野に重ねて聴くファンも少なくないだろうが、彼女は「前に向かって歩いていってほしいし、私も前に向かって歩きたい。だから今日は、当時の私をうたう歌ではなく、前に向かって頑張っていく人たちへの応援歌として歌います」と紹介し、笑顔の曲振りからスタート。スポットライトに照らされると上を向き、やがて頭を伏せ“入る”牧野。葛藤を描いたA・Bメロを経た、思い切り開けるサビでは、やはり牧野の表情は晴れやか。強さも乗せたからこそ、聴き手に希望を感じさせてくれる歌声だ。落ちサビではさすがにあふれた想いがこぼれかけたのか、一瞬だけ崩れかけるも、しっかり持ち直して初志貫徹。前へ向かう1曲を、生でしっかり届けきってくれた。
「楽しい楽しい、音楽のステージでした!」とこの日を振り返る牧野。「こうしてまた、皆様の前で歌えることが嬉しくて。不安でしょうがなかったけど、皆様が今日も力をくださいました。いつも頼りっぱなしですみません。これからもよろしくお願いします!」と締めくくった。去り際に幾度か叩いた手は、その支えてくれたファンを讃えたもののようだった。

最後はスカッと笑顔で締めくくった、再起のステージ。本意ではないかもしれないが、あの場に立って「それはきっとボクらしく生きる勇気」のような希望の歌を届けてくれる彼女の存在そのものが、ファンの勇気になっていたはず。だから、決して彼女があの日言ったように“頼りっぱなし”の関係では、決してない。ともに力を与え合いながら笑い合いながら、これからも牧野由依はファンと一緒に、一歩ずつ先へと進んでいくことだろう。

Text By 須永兼次

ポッカサッポロ 富良野ラベンダーティーPresents
YUI MAKINO LIVE CONCERT『WILL you play with me?』
2018.06.09@AiiA 2.5 Theater Tokyo
【SET LIST】
M1.song for you
M2.ウイークエンド・ランデヴー
M3.お願いジュンブライト
M4.星に願うなら
M5.スピラーレ
M6.アルメリア
M7.横顔~Acoustic Version~
M8.What A Beautiful World

☆クラシックコーナー
・モーツァルト「6つのウイーンソナチネ」(連弾)
・ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」(連弾)

M9.Reset
M10.もどかしい世界の上で
M11.アムリタ
M12.secret melody
M13.Colors of Happiness―Rainbow Mix―
M14.囁きは“Crescendo”
M15.ワールドツアー
M16.ハウリング

EN1.Cluster
EN2.それはきっとボクらしく生きる勇気

関連リンク

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP