プロデューサーさん、出会ってくれて、ありがとう!!“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 5thLIVE BRAND NEW PERFOR@ANCE!”2日目公演全曲レポート

「アイドルマスター ミリオンライブ!」のライブイベント“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 5thLIVE BRAND NEW PERFOR@ANCE!”2日目が2018年6月3日、さいたまスーパーアリーナにて開催された。

今回のライブは2日制で、「アイドルマスター ミリオンライブ!」&「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」でデビューした「39プロジェクト」のアイドルから38人が、2日間に分かれて登場するスペシャルなステージ。2日目のメンバーは田所あずさ(最上静香役)、Machico(伊吹 翼役)、稲川英里(大神 環役)、田村奈央(木下ひなた役)、上田麗奈(高坂海美役)、大関英里(佐竹美奈子役)、角元明日香(島原エレナ役)、愛美(ジュリア役)、駒形友梨(高山紗代子役)、種田梨沙(田中琴葉役)、小岩井ことり(天空橋朋花役)、諏訪彩花(徳川まつり役)、藤井ゆきよ(所 恵美役)、野村香菜子(二階堂千鶴役)、浜崎奈々(福田のり子役) 、桐谷蝶々(宮尾美也役)、夏川椎菜(望月杏奈役)、山口立花子(百瀬莉緒役)、渡部優衣(横山奈緒役)の19人だ。ライブ開演前にはもうひとりの39プロジェクトメンバー・斉藤佑圭演じる永吉 昴がスクリーンに登場し、開演直前音楽として「HOME RUN SONG♪」を流してくれた。

2日目も開演前は、765プロシアター事務員・青羽美咲が軽妙な前説(影ナレ)と諸注意で空気を盛り上げた。765プロ事務員の先輩・音無小鳥の指示で、2日目は高木社長のものまねを織り交ぜたりとバラエティ要素多めになっていた。

ライブ開幕の映像演出では、ステージの背景を覆う電飾を虹色のラインが走り回る様子がすごくスタイリッシュ。シャイニートリニティ衣裳を着た19人が登場すると、ステージを両サイドの張り出しまでいっぱいに使っての「Brand New Theater!」でライブはスタートした。最初の声掛けはフェアリーチームの中心に立つことが多い田所あずさが行なったが、ステージ全体のセンターポジションに立っていたのは駒形友梨!そのサイドを大関英里と渡部優衣、その外に諏訪彩花と種田梨沙が立つ並びは新しい風景だ。

初日の2曲目はソロ曲だったが、2日目は構成を変えて、前日後半戦を盛り上げたフェアリースターズの「FairyTaleじゃいられない」を愛美、山口立花子、田所あずさ、小岩井ことり、野村香菜子、藤井ゆきよのメンバーが披露。2日間で表現の方向性が違って、初日が表現力重視だとすれば、2日目は叩きつけるような“強さ”が印象的。特に愛美のうねるボーカルは嵐のように鮮烈だ。はっとしたのは山口で、これほど力強く迫ってくる莉緒の歌声は初めて聴いたかもしれない。サビ前静香がソロで歌うことも多いパートは複数人で歌唱。昨年末、田所が参加できなかった「THE IDOLM@STER MILLION THE@TER GENERATION 02」のリリイベで、愛美と藤井がふたりで歌った「FairyTaleじゃいられない」を思い出すと、このパートをこのメンバーで一緒に歌えて良かったと感じた。

Cleasky(角元明日香、桐谷蝶々)の「虹色letters」は、「シアターデイズ」ユニット曲ではレアなデュオ曲。ゲームでの「シアターデイズ」のステージをそのまま再現したような空気感だ。向かい合ったふたりが見つめ合っている様子を肩越しに映し出すカメラワークは新しい見せ方で、もし「シアターデイズ」のMVが楽曲フルサイズだったらこんな演出もあったのかな?と感じる。落ち着いたテンポの優しい楽曲で、ヒールのかかとを返しながらの軽やかなステップをていねいに確かめるように踊るふたりの姿から、真面目な人柄と練習の日々が伝わってくる。ふたりが手を合わせてくるくると回るシーンには多幸感があふれていた。歩み寄ったふたりが頷きあうようにして転調すると、少し距離が近づいたふたりの口元に笑顔が浮かぶ。ラスト、背中合わせになったふたりを、桜の花びらと温かい拍手が包みこんだ。

「ドリームトラベラー」は渡部優衣、諏訪彩花、種田梨沙、Machico、愛美の組み合わせ。「ミリオンライブ!」時代のユニット曲は基本、初歌唱のメンバーで歌う演出は初日を踏襲するようだ。歌い出しのロングソロを歌声のカラーが強い渡部優衣が担当すると、原曲とはまた違う魅力が際立つ。キュートな楽曲に種田の歌声が添えるちょっと大人な色合いも新鮮だ。おっと思ったのは“イケてるでしょ? 翼のトリコロール”から始まるパートをMachicoが担当していたこと。翼の名前が入っているのはもちろん、フレーズ的にもぴったりで、まるであつらえたようだ。さらにこのあとアンコールで全員が着る衣裳がヌーベルトリコロールなことも連想して、ちょっとニヤリとしてしまった。渡部から諏訪のソロのつなぎは新鮮だがしっくり来るし、愛美のキュートに歌おうとするんだけど、どこかかっこよくなっちゃう……という感じのジュリア表現が絶妙だった。

ソロ曲のトップバッターは駒形友梨の「Only One Second」。全速力で飛び出していきなりトップスピードに乗るような、歌い出しの疾走感。サビの清涼な、突き抜けていくような勢い。高山紗代子のかっこよくてひたむきな一面をストレートに表現するステージングだ。凛とした表情と、間奏で何かをつかみとった振りでの「よし!」と言わんばかりの充実した笑顔のギャップがいい。歌声に翼が生えてどこまでも飛んでいくようなイメージで、ラストの“掴まえにいくんだぁぁぁぁぁ”の語尾を叫ぶように尻上がりに上げていく感じに、紗代子の感情のほとばしりを感じた。高山紗代子を体現するようなステージを終えて、駒形がほっとしたようにさわやかに笑う姿までが鮮やかだった。

浜崎奈々の「WE ARE ONE!!」。大のり子コールのなか生き生きとした表情で歌う浜崎の姿は、“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3rdLIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!!”幕張公演での彼女のデビュー戦を思い出す。観客が多ければ多いほど熱い試合を見せるのがのり子と浜崎。SSAいっぱいのコールと大合唱を受けてのステージングは輝くようだ。忘れてはいけないのがダンサーたちの存在で、彼女のステージはダンサーと一緒に試合しているように見える。「最強ののり子コール、聞かせてくれるよね!」の声に客席が全力で応えると、浜崎は高々と拳を掲げて“WE ARE ONE!!” “NUMBER ONE!!”の叫びでさらに客席のボルテージを上げていく。自身のパフォーマンスでも限界に挑戦しているかのようで、“まだまだあげろボルテージッ!!”は悲鳴のような、形を持たない熱量を形振り構わずぶつけていくような魂の叫びだった。ステージを一緒に走り抜けた超満員の伴走者たちからは、ざわめきと、拍手と、様々な形の高まりの余韻が長く放たれていた。

藤井ゆきよの「Hearty!!」は、所 恵美らしいキュートでいたずらっぽい歌唱が印象的。“みんなの幸せがなんだか嬉しい”のフレーズで客席を見回す眼差しから愛情の深さを感じる。“月も宝石も照らされて輝く”のフレーズからはより力強さ、想いの強さを前面に出した歌唱に。終盤のサビは最高音域ぎりぎりに挑戦しているからこその説得力があった。間奏で藤井が、会場からふーっと歓声が上がった瞬間に顔をくしゃっとさせて笑っていたのが印象的で、観客との感情のキャッチボールを随所に感じるステージだった。

渡部優衣の「Home is a coming now!」は、“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3rdLIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!!”大阪公演で伝説となった「765プロライブシアター新喜劇」を手がけたバラエティの巧・伊福部 崇氏が作詞を手がけており、横山奈緒と大阪、故郷への郷愁を詞に詰めこんでいる。スクリーンの古いテレビ画面に映し出された町並みの上には、太陽の塔や大阪城、お好み焼きのへらやタコ、飴ちゃんといった「大阪」イメージのモチーフが飛んでいく。間奏でダンサーとぴたりと動きを合わせたスタイリッシュなダンスから、マシンガンのようにフレーズを詰め込んだ早口ラッシュにつないでいく構成は渡部ならでは。明るくて楽しい楽曲なのに、だんだん郷愁を誘う、泣きたくなるようなニュアンスが濃くなっていくのが不思議な感覚だ。曲中には、ヒョウ柄ファッションにグラサン、ちりちり頭のおばちゃん(十三駅前あたりでよく見る)が自転車で乱入するアクシデント(?)も。ミリオン流、横山奈緒流のショータイムは「もうええわ!どうも、ありがとうございました!」の声で締めくくられた。

山口立花子の「Border LINE→→」は、本場のレビューショーを見ているようなゴージャスなイメージ。大階段で華やかに踊るダンサーたちが劇場のショータイムを演出する。ステージ全体に広がって演者とダンサーが距離をとって踊ると、細かいズレもごまかしは効かない。山口はダンサーとぴたりとシンクロした動きを披露していたが、レビューの主役にふさわしくあるために、ダンスの面でもかなり努力したのではないだろうか。ステージのすべてに恋をするような、莉緒の心情を感じるステージだった。

フェアリースターズ組の挨拶MCコーナーは、千鶴として高笑いから咳き込む野村、こぶたちゃんたちに呼びかけて「ぶひー!!」の大合唱を受ける小岩井など、冒頭からフェアリー2日目組のキャラの濃さを感じさせる。田所が静香として「積み上げたものに無駄なんてない。その言葉を信じて私たちは前へ進んでいきます!」と宣言する姿には頼もしさを感じた。このコーナーでは藤井の発案で「セクシーをポーズで表現する」ことに。小岩井が照れまくってセクシーというよりはキュートになったり、田所が4年前のファーストライブ当時に撮った写真とほとんど変わらないポーズを見せたりしたのだが、個人的に印象的だったのが野村のセクシーポーズ。そこまでの流れと、彼女のキャラクター性と、本人にもちょっとおふざけのニュアンスがあったことから会場は笑うポイントとして受け取っていたが、実はポーズ自体は身体的なセクシー表現の基本をしっかりと押さえたもの。どう動けばアイドルらしさ、ゴージャスさ、セクシーさを表現できるか、鏡の前でしっかり研究した経験がないとできないのではないかと感じた。セクシーポーズでオチ(ラスト)を担当した藤井がなよやかに倒れこむ様子に、愛美たちが遠慮のない扱いをしていたのが、つきあいの長い仲間同士ならではに感じた。

エンジェルスターズのMachico、稲川、角元、桐谷、夏川、田村による「Angelic Parade♪」は、桐谷がいつもよりちょっと元気でいたずらっぽい美也を表現したり、稲川がくふふとした笑みを含んだ表現を見せたり。個性的なメンバーの中でもひと際目立ったのがMachicoの存在感。今日のMachicoは、髪色でも翼らしさを表現。白金っぽいカラーは現実に寄せた感じだが、金色のスポットライトを浴びるとさらに翼っぽさが増す。ビジュアルのちょっとした変化をきっかけに彼女のパフォーマンスに注目すると、改めてとんでもないクオリティであることを再認識する。ラスト、天使のパタパタポーズをきめる夏川が信じられないぐらいキュートだった。

ここでステージで始まったのは、渡部優衣、大関英里、上田麗奈、駒形友梨、浜崎奈々による聞き覚えのない謎のナンバー。初お披露目ユニット・“笑顔咲かせる”閃光☆HANABI団による新曲「咲くは浮世の君花火」だ。ミドルテンポの中に元気さとパッションがあふれる楽曲で、天井には花火のエフェクトが散る。花火を「ファイアーフラワー」と表現して歌う華やかさと力強さがいい。ソロパートでは渡部・浜崎はパワフルにこぶしを回す感じ、大関・上田は元気にまっすぐに、駒形は高らかに歌い上げる感じ、と表現の幅を感じた。大関の“ドカンと花火、咲かせてくださ〜い!”の煽りは美奈子らしさをすごく強く感じた。予想外のサプライズに、ざわめきが消えない会場だった。

夏川椎菜、角元明日香、田村奈央、Machicoによる「Good-Sleep, Baby」では、4人が自身のいちばんかわいい声色で優しい歌声を披露。Machicoと夏川が並んでこの曲調の楽曲を歌う姿はとても新鮮。夏川の無垢なかわいさの表現は新鮮だったがとてもハマっていた。各人の動きの個性が出たのがステージの上で腕をうわーっと回して翻弄されているような振付で、田村が本当になすすべなく翻弄されている感じに見えるのに比べると、夏川はどこかキビキビして見えるのが面白い。田村が“ここが銀河のまんなかみたいな”のワンフレーズを歌うと、それだけでステージの雰囲気が牧歌的な絵本の世界のようになるのが本当にすごい。歌声のいたずらっぽい魅力に共通点がある角元とMachicoの相性の良さ、Machicoのアクションの大きなキュートなあくびなども印象に残った。

「HOME, SWEET FRIENDSHIP」は駒形友梨、田所あずさ、稲川英里、愛美、山口立花子の組み合わせ。まず目を引くのはロングヘア仕様の稲川で、元々ステージでは環そのものに見えるほどキャラクター表現力に秀でた彼女が外見まで近づけたのだから、その再現度は素晴らしい。イメージは「同級生がステージで歌うアイドルの環を見てドキッとする時の大神環」みたいな感じだ。歌い出しの駒形→愛美→田所→山口という“歌がうまくてかっこいい女の子たち”による「HOME, SWEET FRIENDSHIP」という流れのなかで、稲川だけが環100%の元気さ、愛らしさなのが絶妙なアクセントになっている。間奏で写真を撮るために仲間たちを呼び集めるのは環の仕事。落ちサビでは4人がちょっとハスキー気味に、超実力派のボーカルで歌い継いで行くなか、やっぱり環は環らしくて本当に最高なのだった。

諏訪彩花の「プリンセス・アラモード」は、スクリーンの演出が印象的で、まつり姫を演じる諏訪の姿を飾り立てるのはキラキラした王冠、ハートと水玉、ピンクで埋め尽くされた、女の子そのもののようなフレームだ。夢の世界にいざなうように、キュートさが弾けるように、ワルツの調べに乗せて、さまざまな表情で歌って踊るリアルまつり姫を、会場の「ほっ!ほっ!」の大合唱が盛りたてる。ハイテンションの楽曲がノンストップで続くなか、“まつり姫”を貫く諏訪の姿は、水面の上の優美な白鳥の姿を想起する。本当に大変な曲だと思う。楽しい時間が終わることを惜しむフレーズでは徳川まつりの素の心情をふっと感じさせつつ、最後はやっぱり最高にハッピーに。ぐーんと上体を傾けたキメポーズにいたるまで、最後の最後までまつり姫らしさにあふれたステージだった。

大関英里の「満腹至極フルコォス」は中国拳法のような、ゆったりした動きのオリエンタルな振り付けが魅力的。早口で畳み掛けるような歌唱は底抜けにハッピーで、見ているだけで幸せに、聴いているだけでなんだか空腹になってくるような気がする。ダンサー4人と繰り広げる演武のような振りもあり、ステージ上でなぎ倒される木人の姿が見えるようだった。動きだけでなく、大関が会場を盛り上げる「はいっはいっ」の響きがいつも以上に歯切れよくテンポよくて気持ちいい。攻めた音域のボーカルとハイテンションの持続で、体力的にも演者の限界に挑戦していくのはミリオンソロ曲3周目あるあるだが、ノンストップソングに若干へたばりながらも、大関がこんにゃろーと絞り出していくエネルギーが、なんともいえず美奈子らしいのがライブならではの面白さだ。どんなにきつくても最後までかわいく元気に笑顔で、を絶対にキープしていたのは流石だった。

稲川英里の「たんけんぼうけん☆ハイホー隊」。ステージにちょこっとあらわれる稲川の姿が本当に環そのものでびっくりする。小気味良い動きに合わせて、長い髪の毛が自由に軽快に暴れる姿を見ていると、環のステージってこんな感じなのかな、という思いが強くなる。さいたまスーパーアリーナという広大なステージで、どこまでも森の中を進んでいく映像を背景に歌っている姿を見ていると、新しい発見とドキドキワクワクに満ちた環の毎日の楽しさが伝わってくるようだ。「親分、ちゃんと環のあとについてきてね!」の声に続いて、“ハイドウドウ!”“ゲロゲログワー!”のコール&レスポンス。森を抜けた先には広々としたきれいな草原が広がり、環が見つけた宝物を分けてもらったような気持ちになった。最後は環の喜びと楽しさにあふれた「みんなみんな友達だ!」の叫びで、会場全員が友達になったのだった。

強烈なインパクトの「前腕筋! 上腕筋! 背筋! 腹筋! 大胸筋!」の叫びと共にステージに飛び出したのは上田麗奈の「スポーツ!スポーツ!スポーツ!」。底抜けに明るく人生の楽しさ、運動する喜びを歌い上げる、高坂海美イズムを体現するような楽曲だ。身も心も高坂海美になりきることで天井を突き抜けた上田のテンションが、会場全体の温度を急上昇させていく。上田曰く「体力しか必要じゃない曲」。頭上に掲げた手の高速クラップで肩を鍛えさせたりと、会場はリアルにフィットネスをしている状態で熱気が渦巻く。熱すぎるステージを終えた上田が、仲間を呼ぶときの「はーーーーい」ののんびりしたひと声でぱっとキャラクターの魔法が解けるのが興味深かった。

プリンセススターズの挨拶では、同じ属性でも初日と2日目でまったくカラーが違う面白さを感じた。元気でエネルギーに溢れていて、こんなプリンセスの形もあるのかと思ったのだが、これについては駒形の「脳筋だらけのプリンセスですが」のひと言が言い得て妙だった。見せ方や表現は千差万別だが、会場全体を巻き込むようなオリジナルなエネルギーが2日目の姫たちの共通点だろうか。この組み合わせだと大関が「おしとやかなのもみせとく?」などと、フリーダムにボールを投げこむ無茶振り担当になるのは面白かった。そんなネタっぽい振りにも関わらず、種田がスカートの裾をつまんで見せるとものすごく絵になる。種田が挨拶に立ったときの、会場が揺れるほどの歓声が記憶に残った。

小岩井ことりの「Sister」は、小岩井自身が作詞作曲仮歌までを手がけるという「アイドルマスター」シリーズ初のチャレンジをした楽曲。小岩井は紫の妖しい光と燃え上がる炎のエフェクトが照らし出すなか、ラテンのリズムに合わせて情熱的に歌い上げる。間奏では自前のおさげを鞭のようにふるい、妖艶に舞う。パフォーマーとしての小岩井ことりが今やれること、表現したいこと。演じ続けてきた朋花の内面と世界観をいちばん知っている本人だからこそ創り出せた楽曲とパフォーマンスだ。このとても難しく奥が深い楽曲を、作り手であり表現者でもある彼女が、朋花と共にどんなふうに育てていくのかが楽しみになった。

桐谷蝶々の「ふわりずむ」は、ちょっと舌っ足らずなくらいキュートな歌声の、底抜けにとろけるような甘さがとても魅力的だ。最初のリリースイベントの頃のとても緊張していた姿を思い出すと、その何十倍もの大観衆の前でふわりとゆるりとしなやかに、自分らしさ、美也らしさを存分に出している姿には眩しさを覚える。桐谷が「さいたまスーパーアリーナは初めてなのに、意外と顔が見える」とMCで語っていたのも心に少し余裕があればこそだろうか。ライブビューイングの向こうにいる観客が目の前にいるような親しげな語りかけは、自身もライブビューイングに足を運んだりする彼女ならではかもしれない。激しく動くダンスではなく、ゆったりした動きのなかで優美さ、美しさを出せるのは彼女の強み。ゆったりと自分らしく、SSAという大舞台を泳ぎきるようなステージだった。

田村奈央の「スノウレター」。歌い出しの「はー……」という深い呼吸が、SSAの心地よい静寂を満たしていく。ステージには季節外れの、雪が舞う。しっかりと想いを込めた歌声は芯の強さを感じさせる清冽な表現だ。雪の下で地味でも力強く、大地に根を張って春にはあらたな芽を出す植物のような、しなやかな強さ。田村が最高音でピーンと歌声を伸ばす響きがこんなに清冽で伸びやかで心地よいことが、作曲者にはなぜわかったんだろう?と不思議に思ったほどだ。高音の中にもしっかりひなたらしい味があって、表現に想いを込めるほどに力強さを増していく歌唱。雪の下に隠されていた宝物を見つけたようなステージだった。最後は右の耳元で両手を合わせて、おやすみなさい。

夜想令嬢-GRAC&E NOCTURNE-(藤井ゆきよ、小岩井ことり、山口立花子、野村香菜子)の「昏き月 遠い星」は、「ミリオンライブ!」の数多くの楽曲の中でももっとも物語の世界に寄せた楽曲だ。ヴァンパイアと人間たちの哀しくも美しい物語を歌劇のような表現で描き出す。スクリーン全体に描かれた古城と月。リリイベでも披露した楽曲だが、大舞台の演出がこれほどハマる楽曲もないだろう。殺陣で斬り結ぶシーンのために、4人がヘッドセットを着用しているのもこの曲ならでは。ソロでの藤井の表現がキュートさ全開だったぶん、歌い出しからの少年のような凛々しい表現の新鮮さが際立つ。話題になることが多い「どうして俺たちを殺そうとするんだ!」の台詞は、痛切な感情がほとばしるようだった。小岩井と山口の浮世離れした空気感と、野村の等身大の人間らしさの対比もいい。ラストの山口の、絞り出すような切ない独白は圧巻だった。歌い終えた4人を、巻き起こった万雷の拍手が包み込んでいた。

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