fhána「ムーンリバー」レビュー

2017.04.26

エモーショナルなサウンドが月夜に想いを描き出す……TVアニメ『有頂天家族2』のエンディング主題歌となる11thシングルは、カップリング曲が異なる2つのヴァージョンでリリース。

森見登美彦の人気小説を原作としたTVアニメ『有頂天家族』。2013年7月より放送されたこのアニメのエンディングテーマ「ケセラセラ」で、fhánaはメジャーデビューを果たした。fhánaにとっては思い出の深いこのTVアニメの第2期となる『有頂天家族2』が2017年4月から放送されている。

前作と同じく今作『有頂天家族2』のエンディングテーマ「ムーンリバー」をfhánaが担当。「ムーンリバー」のシングルも『小林さんちのメイドラゴン』のオープニング主題歌となった「青空のラプソディ」と同じく、カップリング曲が異なる【アーティスト盤】と【アニメ盤】の2種類がリリースされている。

「ムーンリバー」

コメディ・タッチながらも、根底にあるテーマは深い家族愛であるハートウォームなドラマ『有頂天家族』。喜怒哀楽豊かなキャラクターが登場する今作の、それぞれが抱えるやるせない思いもふっと忍ばせたような、エモーショナルなナンバー「ムーンリバー」。今までもさまざまなアニメ作品の世界観を楽曲へと映し出してきた彼らだけに、今回もその映像が思い浮かぶような仕上がりとなっている。

それは林 英樹による歌詞も同様で、アニメに寄せて語れば、気まぐれでいたずらな彼女、“今また遠くへと ah 飛んでいく 君はほら彼方の人”は、自由奔放に今を生きるミステリアスな女性“弁天”で、それを見上げる“僕”はさながら主人公の下鴨矢三郎といったところだろうか。この歌詞のイメージや、また歌詞の中の、“未来”という言葉は、第1期のエンディングテーマ「ケセラセラ」とも共通するところでもある。

共通項といえばタイトルもそう。「ケセラセラ」がヒッチコックの映画『知りすぎていた男』(1956)の劇中で主演のドリス・デイが幾度と歌っていた「ケセラセラ」を想起させるように、「ムーンリバー」もまた、『ピンクパンサー』シリーズで有名なブレイク・エドワーズ監督による映画『ティファニーで朝食を』(1961)で主演のオードリー・ヘプバーンがアパートの窓辺にもたれ、ギターを奏でながら歌うシーンを思い出させる(ちなみにオードリー・ヘプバーンのお相手を務めたポール・バージャク役のジョージ・ペパードは、のちに『特攻野郎Aチーム』のリーダー・ハンニバルを演じている)。このように今回もまたスタンダードナンバーとなっている映画の主題歌をタイトルに用いている。たしかにアニソンのポップ・スタンダードを生み出しているfhánaのタイトルに似つかわしい。

そういえば、映画主題歌の「ムーンリバー」では、“Moon River”が「憧れの存在」であるように描かれているし、また、“two drifters, off to see the world”という歌詞のように、fhánaの「ムーンリバー」でも“漂流者”という言葉が登場しているところなど、なにか影響があるのかとちょっと深読みをさせる面白さもある。

作曲は、シングルのタイトル曲では初の担当となるyuxuki waga。これまで彼が手がけてきた楽曲のスタイルから、全編ギターに彩られたサウンドになるかと思いきや、まずはクールなエレクトリック・サウンドからスタート。序盤はリズミックなシンセがヴォーカルとともに情景を映し出し、サビでは想いが堰を切って溢れ出すかのようにギターが鳴り響く。このコントラストのついた構成が、サビでのエモさをより際立たせている。また中央から立ち昇るベースによるグルーヴがサウンドを引き締め、情感に流されすぎないよう楽曲のバランスを保っている。少し距離を隔てたふたりの関係を描くバンド・サウンドは思いの外、ダイナミックだ。

ビートとグルーヴは力強くありつつも、浮かび上がるような昂揚感が感じられるのは、弾けるシンセの音色とtowanaのヴォーカルのおかげだろう。ハイレゾでは高音域のたおやかな伸びをさらに鮮やかに描写。水面の月がときおり揺らぐように寂しさが宿る瞬間や、安らぎに満ちたラストなど、細かなニュアンスがよりいっそう伝わってくる。

弁天がジャケットに描かれた『ムーンリバー【アニメ盤】』には、アコースティックライヴのような編成で演奏された「ケセラセラ ~先斗町Ver.~」をカップリング曲として収録。ウッドベースの深い音色や軽やかなピアノ、グロッケンシュピールのアクセントなど、温かい空気感が伝わってくる。fhánaが先斗町(ぽんとちょう)にあるカフェなど、小さなスペースで演奏したならばこんな感じなのだろうか。ぜひオリジナル・ヴァージョンと聴き比べてみてほしい。

ムーンリバー【アニメ盤】

そして、メンバーが写っているジャケットの『ムーンリバー【アーティスト盤】』には、カップリング曲として佐藤純一が作曲した「Rebuilt world」が収録されている。

「Rebuilt world」

物語のそのあと、再生した「世界」のその先を描くこの曲の歌詞は、ある種、「セカイ系」も通ずるような世界観だが、ゲームやアニメ、ノベルスなどの世界構築の手法を用いながらも、常に現実世界の問題意識とを繋ぎ合わせる試みを行なってきた彼らだけに、物語世界に耽溺してそこに埋没するようなものにはなっておらず、選択することで得られる可能性のある未来や、それをせざることへの警鐘など、歌詞からは「現在」に対してのさまざまなメッセージが読み取れる。

ピアノの透き通った音色が、“終わりと始まりのループ”を続ける「世界」を指し示すかのように何度も繰り返され、その連なるフレーズが切なくも美しい。メロウさを帯びたシンセにファンキーなベース(「lyrical sentence」「Paradise Chronicle」「Critique & Curation」に続いてクラムボンのミトが演奏に参加)が絡むのもfhánaらしく、そのサウンドには2000年代前半のアニソンのような懐かしさも漂う。ハイレゾでは、空間をイメージさせる音の響きの繊細さや、それに留意した丁寧なミックスが感じられる。

ともすればシリアスなムードになりがちなテーマだが、だからこそ感傷に飲み込まれることなくサウンドはダンサブルに、そして、ひとつひとつの言葉を明瞭に伝えるヴォーカルが力強い。その澄んだ声は純粋さを映し出し、未来への希望を照らす灯火であるかのようだ。

TVアニメ「有頂天家族2」公式サイト

fhána
ムーンリバー【アーティスト盤】

Lantis
2017.04.26

FLAC・WAV 96kHz/24bit、WAV 96kHz/32bit

ハイレゾの購入はこちら

e-onkyo music
groovers
mora

 収録曲

 1.ムーンリバー
   作詞:林 英樹 作曲:yuxuki waga 編曲:fhána

 2.Rebuilt world
   作詞:林 英樹 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

 3.ムーンリバー -Instrumental-

 4.ムーンリバー -Instrumental-

fhána
ムーンリバー【アニメ盤】

Lantis
2017.04.26

FLAC・WAV 96kHz/24bit、WAV 96kHz/32bit

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groovers
mora

 収録曲

 1.ムーンリバー
   作詞:林 英樹 作曲:yuxuki waga 編曲:fhána

 2.ケセラセラ ~先斗町Ver.~
   作詞:林 英樹 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

 3.ムーンリバー -Instrumental-

 4.ケセラセラ ~先斗町Ver.~ -Instrumental-

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