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INTERVIEW

2017.05.24

TVアニメ『アリスと蔵六』OPテーマ「ワンダードライブ」ORESAMA インタビュー

トラックメイカーの小島英也とボーカリストのぽんによる2人組ユニットのORESAMAが、TVアニメ『アリスと蔵六』のOPテーマ「ワンダードライブ」で再メジャー・デビューを果たす。

70~80sディスコとクラブ・ミュージックの要素を掛け合わせたレトロでモダンなフューチャー・ポップを特色とし、TVアニメ『オオカミ少女と黒王子』のEDテーマ「オオカミハート」や、インディーズでの活動で支持を広げてきた彼ら。小島は作曲家/アレンジャーとして数多くのアーティストの楽曲を手がけ、ぽんはTVアニメ『ACCA13区監察課』のためのスペシャル・ユニット、ONE III NOTES(ワンサードノーツ)にボーカリストとして参加もしている。

そのように多面的な活動を展開する彼らのアーティスト像をより明確に捉えるべく、今回の特集では、制作やサウンド面でのこだわり、ルーツや影響源となった音楽、さらにORESAMA外のワークスといったトピックを中心にふたりへのインタビューを実施。ポップスの魔法を信じて新しい世界へと飛び込み続ける「ORESAMAらしさ」の本質に迫った。

なお、リスアニ!WEBではニュー・シングル「ワンダードライブ」に焦点を絞ったインタビューを掲載。本特集との連動記事となっているので、ぜひ併せてご一読いただきたい。

●リスアニ!WEBのインタビューはこちら

Interview & Text by 北野 創
at Lantis

ORESAMA『ワンダードライブ』のレビューはこちら

【アニメ・スリーブケース内のCDジャケット】

制作・サウンド面でのこだわりと「ORESAMAらしさ」

───ORESAMAは普段、どのようなプロセスで曲を作っているのですか?

小島英也 事前にコンセプトを決めることもあるのですが、基本的には僕が勝手に曲を作って、それをぽんちゃんに投げます。そこでぽんちゃんが気に入ったら歌詞を書いてくれるんです。

───ぽんさんがジャッジ権を握ってるんですね(笑)。小島さんからぽんさんに渡す音源はどの程度作りこまれているのですか?

小島 もうほぼ完成形というか、8割ぐらいは出来上がった状態ですね。仮歌を入れた段階でアレンジを歌に合うように変えて完成させるんです。

───ぽんさんは何を基準に曲を選ぶのですか?

ぽん 私は小島くんの曲のサビとイントロがすごく好きで。イントロで気持ちがワーッとなったら書きます。

小島 じゃあイントロがダメだと採用されないんだ(笑)。

ぽん (笑)。掴みって大事じゃないですか。小島くんはいつも「この曲を書きたい!」と思わせてくれるのがすごいと思っていて。書きたいと思った曲は聴いた瞬間からそう思いますし、小島くんにも「いい曲だねー!」って連絡します。

小島 そうじゃないと連絡が来ないんですよ(笑)。そういうときは「ダメだったかー」って悟りますからね。

───ぽんさんへのひとりコンペ状態じゃないですか(笑)。結成からずっとそのスタイルでやってこられたんですか?

小島 でも、僕がトラックを作り始めたのは4年ぐらい前からなんですよ。ORESAMAとしてふたりでやってきてもう4~5年になるんですけど、最初の1年ほどはアコギで活動してたので。PCで曲を作れる環境を手に入れて、何曲も素早く量産できるようになってから、この流れになりました。

───そのキャリアにしてアレンジの完成度は非常に高いですよね。曲はどのように制作していくのですか?

小島 何もないところから手を動かし始めるということはあまりなくて。大体映画を見たり散歩してるときに、頭にパーンと曖昧なイメージが出てきて、それを形にしようと思って曲を作り始めるんです。思いつくイメージは毎回違って、例えばサビのワンフレーズが浮かんだり、イントロのちょっとしたアイデアが出てきたり。そこからPC上で肉づけしていくんです。

───ORESAMAの楽曲はすべて小島さんが作曲/編曲されていますが、今回のニュー・シングルに収録された3曲すべてにおいても、ご自身で演奏やプログラミングをされたのですか?

小島 カップリングの「SWEET ROOM」では、初めて生のピアノを中西康晴さんにお願いして弾いていただきましたが、それ以外はすべて自分でやっています。今回は、ランティスのサウンドプロデューサーさんに機材をお借りして、ミックスのときにビンテージのモーグを使ってベースを重ねたり、TR-808やTR-909の実機でキックにボトムを足したりもしました。音にもこだわりのある3曲ですね。

中西康晴 70年代よりスタジオ・ミュージシャンとして活躍するキーボード奏者。関西ブルース・シーンに出自を持ち、ソウルフルな演奏を得意とする。

モーグ 60年代にアメリカのロバート・モーグによって開発されたアナログ・シンセサイザー及び発展製品の総称。

TR-808、TR-909 電子楽器メーカーのローランド社が80年代に発表したリズムマシン。主にテクノ、ハウス、ヒップホップなどで重用されている。

───それはすごいですね!アナログ機材ならではの魅力といったものを実感されましたか?

小島 これまでも808のPCソフト版を使っていたので、使う前は「そんなに変わるかな?」と思っていたんですが、その予想を遥かに超える違いがありましたね。どこか温かくて、骨董品のようないい艶があるんです(笑)。音にもこういうものが表われるんだなあと思いました。

───「ワンダードライブ」の間奏の部分でモーグのような音色が使われていますが、あちらも実機での演奏ですか?

小島 あれは実はソフトなんですよ。PC上で演算を使ってモーグの音を再現するソフトがあって。

───なるほど。ソフトシンセと実機を混ぜ合わせている点は、レトロな音楽をモダンにアップデートする「ORESAMAらしさ」にも繋がりますね。

小島 そうですね。ソフトにしか出せない冷たさや鋭さというものが絶対にあるので。そこはモダンな音楽の要素のひとつだと思うので、必ず混ぜています。

───その一方で、先述のように「SWEET ROOM」では初めて生ピアノを導入するなど、あらたに人間的な生っぽさを追求した部分もあります。今後そういった曲が増えていく可能性はありますか?

小島 もちろんPC上で完結する良さもあると思いますが、例えば今回のピアノであったり、ヴァイオリンやベース、ドラムといった楽器を実際に人間に演奏してもらう良さもあると思うので、今後はそういったエッセンスをもっと入れていきたいと思っています。そうすることで、何十年経っても色褪せない、むしろときが経つごとにいい色のつく曲ができるんじゃないかと思っていて。今後はいろんな人と一緒にやっていきたいですね。

───「ORESAMAらしさ」で言うと、基本的に曲調は明るいタッチのものが多いですが、歌詞は必ずしもそういった内容ではなくて、曲によっては切ない雰囲気のものも多くありますよね。

ぽん 歌詞に関してはたぶん、私の内面が出ています。私はそんなに根は明るい人間じゃないので(笑)。でも、そこに小島くんが明るくて楽しい曲をつけてくれるので、結果として私の好きな「笑い飛ばそう」「歌い飛ばそう」といった感じのポップスになるんです。

───そこの切なさをポップに昇華していく感覚は、「ORESAMAらしさ」であり、ある種のエモさを感じさせる部分でもあると思います。そこはユニットとして心がけてきた表現なのでしょうか?

小島 僕は、沈んだ気持ちも曲の力で明るくしたり、みんなで楽しんで乗り越えていくのが、ORESAMAのポップスという思いでやってきたんです。最初にORESAMAで曲を作ったときも、僕は明るい曲が作りたくて、ぽんちゃんは少し暗いところのある歌詞を書いてきた。それを何曲も続けるうちに、そこがORESAMAの色になって。だから、あまり深く考えたことはなくて、自然とそうなりました(笑)。

ぽん ORESAMAという名前は、私たちが普段は前に出るタイプの人間ではないので、舞台上では堂々としていようという思いがあってつけたんです。なので、落ち込んでも次に繋がるような、また頑張ろうと思ってもらえるような曲をもっと作っていきたいですね。

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