ORESAMA「ワンダードライブ」レビュー

2017.05.24

レトロでモダンなフューチャーポップがカラフルに弾ける、TVアニメ『アリスと蔵六』のOPテーマ!

第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞した今井哲也のコミックを原作としたTVアニメ『アリスと蔵六』。「アリスの夢」と呼ばれる超能力を持つ少女・紗名と、「おれは曲がったことが大嫌いなんだ」が口癖の頑固な老人・樫村蔵六。ふたりの出会いから始まる、ちょっと不思議な物語を温かな雰囲気で描いている。

このオープニングテーマ「ワンダードライブ」を担当するのが、ヴォーカル・ぽんと、トラックメイカー・小島英也からなるユニット、“ORESAMA”。70~80年代のディスコを現代のクラブ・ミュージックに取り込んだサウンドを特徴とし、渋谷を中心にポップカルチャーとリンクしながら活動を行なってきた彼らの、再メジャー・デビューとなるこのシングルには、「ワンダードライブ」のほかに、昨年秋より公開されたミュージック・ビデオが話題となっていた「ねぇ、神様?」、メロウなバラード「SWEET ROOM」を収録している。

※制作やサウンド面でのこだわり、ルーツや影響源となった音楽など、「ORESAMAらしさ」の本質に迫ったインタビューはこちら

「ワンダードライブ」

流星ようなシンセが飛び交うイントロから、ORESAMAらしいポップでカラフルなイメージが華やかに広がる。80年代のディスコ/シンセブギーを現代へとアップデートさせたそのサウンドは、先人たちに敬意を払いつつも、単なる懐古主義に陥ることなく、洗練された今の音楽として再構築していく、フレンチ・エレクトロやモダン・ファンクのシーンにも通じている。

「懐かしくも新しい」現在進行形の音楽を作り出しているORESAMAだが、その音楽やヴィジュアル面に影響を与えているのが海外の音楽だけでなく、80年代の日本の文化、特にTVアニメであることも興味深い。たとえば、ぽんがフェイヴァリットにあげる『うる星やつら』の主題歌「ラムのラブソング」「宇宙は大変だ!」は、MiMiこと小林泉美が作曲・編曲を手がけたコズミックでファンキーなポップチューン。これらに代表されるように、「宇宙(あるいは宇宙人の来訪)」「未来/別世界」「魔法」など、SFやファンタジーの設定で作られた80年代TVアニメの主題歌や音楽には、シンセサイザーを使用し、グルーヴ感を強調したものが少なくない。この時期に作られたサウンドのイメージは今も強く残っており、ORESAMAのサウンドを初めて聴いたときに、どことなく既視感に似たものを感じた方もいるのではないだろうか。クラブ通過のポップチューンでありながら、アニメ主題歌としても高い親和性を持つORESAMAの音楽は、このような背景から生まれており、その特徴は彼らの大きな武器でもある。

そんな彼らの持ち味を遺憾なく発揮したナンバー「ワンダードライブ」は、懐かしい雰囲気を漂わせながら、突き抜けるサウンドの昂揚感が非常に心地好い。ハイレゾでは、ソフトと実機を的確に使いわけながら、思い描くイメージへ近づけたというモーグ・シンセの存在感のある音色や、敬愛するナイル・ロジャーズに影響を受けた歯切れのいいギター・カッティングが鮮明に感じられる。キラキラとしたSEやクラップ、四つ打ちのキックもくっきりとした立体的な音像で、楽曲のポップ感をさらに高めている。

小島英也と同じく原作から「疾走感」のイメージを受け取り、変化を求めて外の世界へと飛び出した主人公・紗名に自らの姿を重ねたと語るぽんの歌詞には、“曖昧な感情は 丸めて捨てていくよ”のフックや、繰り返される“鏡よ鏡”のフレーズの語尾が変化する瞬間に、ORESAMAの強い決意が宿る。ヴォーカルとして参加した“ONE Ⅲ NOTES(ワンサードノーツ)”の「Shadow and Truth」(TVアニメ『ACCA13区監察課』OPテーマ)では、当初「ORESAMAのぽん」が歌っているとは誰にも気づかれぬほどの、幅の広い歌唱力を披露したぽんだが、さらに磨きをかけた表現力も今回の大きな聴きどころ。ひとつひとつの言葉に対するニュアンスのつけ方が実に表情豊かで、歌う喜びが声からあふれだしている。

「ねぇ、神様?」

スマートフォンで歌声や楽器演奏を録音/投稿できる音楽アプリ「nana」。ORESAMAが最初のメジャーレーベルを離れたあと、ぽんは「nana」を使って、半年の間に400もの歌を投稿している。歌うことが大好きで、この気持ちを誰かに伝えたくて、ひたすら歌い続けた日々。それは、名前を伏せることで自分の歌がどれだけの人に届くかという挑戦でもあった。この活動を経てますます強くなった歌に対する想いが、「ねぇ、神様?」を生み出すきっかけとなっている。

得意とするディスコ・ミュージックにフィルター・ハウスなどの手法を取り入れた「モダン」なサウンドはダンサブルでキャッチー。そして、ともすれば「ポップ」という言葉のイメージのみが先行してしまいがちなORESAMAだが、サウンドの魅力が心に訴えかけるメロディの美しさにあることもよくわかる。

歌詞には「歌について思い悩んでいた」という、この時期のぽんの気持ちが反映されているが、明るい曲調がすぐにはそのことに気づかせない。だがしかし、サウンドにメロウな雰囲気が加わった後半からは、じわじわと切なさがにじみ出し、ローズ・ピアノと声だけの静けさから、ストリングスが鮮やかに奏でられるラストへのドラマチックな展開は、繰り返される言葉の意味をさらに際立たせる。歌詞を追って聴いてみると出だしの華やかさとはまた違った印象で、賑やかな場所にいるのになぜか余計に孤独を意識してしまうような、それは都会やネットに漂う一抹のやるせなさにも似ている。

ORESAMA
ワンダードライブ

Lantis
2017.05.24

FLAC・WAV 96kHz/24bit、WAV 96kHz/32bit

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mora

©今井哲也/徳間書店・「アリスと蔵六」製作委員会

 収録曲

 1.ワンダードライブ
   作詞:ぽん 作曲・編曲:小島英也

 2.「ねぇ、神様?」
   作詞:ぽん 作曲・編曲:小島英也

 3.SWEET ROOM
   作詞:ぽん 作曲・編曲:小島英也

 4.ワンダードライブ-Instrumental-

 5.「ねぇ、神様?」-Instrumental-

 6.SWEET ROOM-Instrumental-

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