μ’s(ラブライブ!)「Wonderful Rush」レビュー

2015.08.26

さらに高みに向かってパワフルに舞い踊る。『ラブライブ!』μ’sの5thシングル。

『ラブライブ!』は「みんなで叶える物語」を合言葉に2010年6月、電撃G’sマガジンの誌上企画から、そのプロジェクトをスタートさせた。同年8月には作品キャラクターの声を演じる声優 – 新田恵海南條愛乃内田 彩三森すずこ飯田里穂Pile楠田亜衣奈久保ユリカ徳井青空 -によって結成されたアイドルユニット、μ’sが1stシングル『僕らのLIVE 君とのLIFE』をリリースし、その活動を一歩ずつ着実に進めていくことになる。TVアニメ化が発表された2012年に開催された“μ’s First LoveLive!”をきっかけにその名前は多くの人が知るところとなり、デュオ/トリオシングルの連続リリースや“Animelo Summer Live 2012 -INFINITY∞-”などへの出演も相まって、大きな注目を集めることとなった。

2013年1月にはTVアニメ『ラブライブ!』が放送され、これ以降その人気を爆発的に加速させる。スマートフォン向けゲーム『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル(スクフェス)』の配信開始やTVアニメ2期放送によるファン層増大の相乗効果も伴って、シングルのオリコンチャート上位へのランクイン、さいたまスーパーアリーナでの2DAYSワンマンライヴ「μ’s →NEXT LoveLive! 2014 ~ENDLESS PARADE~」の開催、紅白歌合戦への出演など枚挙にいとまがないほどの目覚しい活躍をみせる。そして、2015年に公開された劇場版『ラブライブ! The School Idol Movie』は累計興行収入を20億円突破する記録を打ち立て、「夢が現実になる」その言葉をそのままに体現し続けた。

クオリティの高い楽曲に調和する美しい映像、圧倒的なライヴ・パフォーマンス、個性豊かなキャラクター/メンバー……μ’sの魅力を語るには幾ら言葉を費やしても足りないのだろうが、ひとつたしかなことは、周囲の期待に応えるべくこれまでを超える歌唱やパフォーマンスを自らに課し、プレッシャーと戦いながら歩み続けてきたメンバーとスタッフによるたゆまぬ努力に、ファンの熱い声援が結びつくことによって、これほどまでの結果を成し遂げることができたということ。『ラブライブ!』は、『ラブライブ!』に参加したすべての人によって叶えられた、夢の物語であった。

そんな彼女たちの軌跡をレコーディングそのままの音質で、ありのままの歌の姿で辿ることができるのがこのハイレゾ音源。

『ラブライブ!』のハイレゾ音源は2013年10月30日に、まず1st~5thシングル『僕らのLIVE 君とのLIFE』 『Snow halation』 『夏色えがおで1,2,Jump!』 『もぎゅっと“love”で接近中!』 『Wonderful Rush』が同時にリリースされた。『ラブライブ!』のハイレゾ化を待ち望んでいたファンのみならず幅広く多くのユーザーを巻き込み、大ヒットを記録。結果、『ラブライブ!』作品のハイレゾ化が続々と進むことになる。一連のリリースはアニソンのハイレゾ作品に対して多くの人々の関心や注目を向けることとなり、ほかレーベル/メーカーによるハイレゾ作品のリリースを促すこととなった。このように『ラブライブ!』初期5タイトルは、ハイレゾシーンの起爆剤となった記念碑的な作品である。

それら5タイトルのハイレゾ音源は、ランティスの音楽プロデューサー・佐藤純之介による監修の元、2回リリースされている。

1回目は、前述の2013年10月30日にリリースされた48kHz/24bitの「TRUE STUDIO MASTER」ヴァージョン。これはCDマスタリング前のデータをそのまま配信したものだ。

2回目は、2015年8月26日にリリースされた96kHz/24bitと96kHz/32bitの「HD REBUILD MASTER」ヴァージョン。こちらはマルチトラックデータから再ミックスを施し、名エンジニア・原田光晴がハイレゾ配信用にマスタリングし直したもの。前回の人気を受けて、さらに音質を追求するために手間を惜しみなくかけた、スペシャルなハイレゾ音源だ。当時の状況では叶わなかった本来あるべき姿が、機材とともに進化したサウンドで完璧に再現される、至高のハイレゾ作品となっている。

 

第1期のTVアニメ放送を控えた2012年9月5日にリリースされた5thシングル「Wonderful Rush」。これまでの活動を一旦総括するような位置にありながらも、守りには入らずその勢いはむしろ加速するばかりで、ヴォルテージが沸点に達するサウンドを歌声は魅力全開で駆け抜ける。μ’sでしかなし得ない領域を大胆に切り開く、彼女たちの冒険は止まらない。

「Wonderful Rush」

「ススメ→トゥモロウ」「No brand girls」の河田貴央による怒涛の展開に、爽やかさはじけるアイドル・マッシヴ。もはや何に挑戦してもμ’sとして完成させてしまう、揺るぎない自信がメンバーやスタッフの間に感じられる。

ハイレゾではアレンジの細部まで見通せるような解像度の高さを実感できる。イントロではブレイクビーツに乗った“Dan-dan ココロ Dan-dan アツク”のフレーズが音をこもらせたエフェクトで再生される部分があるが、今までの音源では例えれば「(昔の)AMラジオのようなこもりかた」が、新しいハイレゾ版では「モノラルのFMラジオのようなこもりかた」まで解像感が向上したとも言うべきか。そんなLOWな質感の部分さえそうであるならば、Hi-Fiであるメインのサウンドもその変化は顕著。低域が叩きつけるようだったメリハリ感に充実した肉付けを与え、芯がありつつも弾力性に富んだアタックの強さをもたらす。中盤のフランジャーがかったエフェクトの空間作りも効果的に作用しており、楽曲への没入感がいっそう強まる。ビートやリズムギターのキレも良く、はち切れんばかりのエネルギッシュなサウンドへと仕上がっている。

ヴォーカルの瞬発力の高さも特筆すべきところで、力強い“Hi hi”のかけ声や差し込まれる合いの手や、矢継ぎ早にたたみかけるラップパートの目まぐるしさが痛快。それぞれの位置から瞬時に声が飛び交う鮮やかさ、スピード感あふれるサウンドに9人の楽しそうな声が転がる遊び心満載、心地よい刺激を増したハイレゾ版となっている。

「Oh,Love&Peace!」

「それは僕たちの奇跡」を手がける黒須克彦によるカップリング曲は、ハイテンションな「Wonderful Rush」とは好対照な王道のアイドル・ポップス。「愛してるばんざーい!」同様、スタンダードたる美しい旋律と何処となく物語のエンディングをイメージさせるようなアレンジが絶品だ。

ビートやリズムが押し出され、強いメリハリを感じるCDに比べ、それら芯の強さを残しながらすっきりとした音像で展開されるハイレゾ版。ギターやシンセの音色が華やかに浮かび上がり、μ’sの楽曲ではおなじみのウィンドチャイムのキラキラとした音の粒子感も向上している。そんな鮮やかさを深めつつも、何処か懐かしい思い出のような雰囲気も感じさせる、柔らかな質感の仕上がりとなっている。

全体的に透明度が上がっており、それはヴォーカルにも反映。コーラスがますます清々しく響き渡る。ラスト前の花陽・絵里・海末によるパートでは、それぞれの声にかかったリヴァーヴの淡さと消えゆく微かなディレイの繊細さも美しい。優しさがふくらみ、ちょっぴり漂う切なさが愛おしくなるような、心が安らぐ温かさに包まれる。

LACM4979_Wonderful Rush_メインジャケμ’s(ラブライブ!)
Wonderful Rush

Lantis
2015.08.26

FLAC・WAV 96kHz/24bit WAV 96kHz/32bit

購入はこちら

e-onkyo music
groovers
mora

 収録曲

 1.Wonderful Rush
   作詞:畑 亜貴 作曲・編曲:河田貴央

 2.Oh,Love&Peace!
   作詞:畑 亜貴 作曲・編曲:黒須克彦

 3.Wonderful Rush(Off Vocal)

 4.Oh,Love&Peace!(Off Vocal)

©2013 プロジェクトラブライブ!

この記事を書いた人