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2016.06.01

花澤香菜「あたらしいうた」レビュー

花澤香菜「あたらしいうた」レビュー

ダイナミックに疾走するサウンドに歌が広がる。全曲の作詞を自身で手がけた意欲的な10thシングル。

空気公団のプロデュースによる「透明な女の子」に続く、花澤香菜の10枚目となるシングル「あたらしいうた」。ROUND TABLEの北川勝利が作曲・プロデュースを務めた今作は、花澤香菜が初めて全曲の作詞を担当。空気公団の山崎ゆかりとの出会いと、朗読とアコースティックライヴとの組み合わせで各地を巡った「かなめぐり」を通じて得たものが反映しているという歌詞。それが北川勝利によるエモーショナルなサウンドと絶妙な呼吸で重なる。今の花澤香菜の姿をそのまま映し出した曲になっている。

「あたらしいうた」

得意とするギターロックにいつもとは異なるアレンジを盛りこんだ北川勝利のサウンドは、アルバム『25』に収録されている「マラソン」や「Eeny, meeny, miny, moe」のような疾走感を今まで以上に高めた意欲的な仕上がりだ。
高域が弾ける刺激的なサウンドといったCDに比べると、タイトな低域によりサウンドがダイナミックに迫ってくるハイレゾ。この曲のポイントでもある疾走感を生み出す、やなぎなぎの「春擬き」でも卓越した演奏を見せた山本真央樹のドラムと、花澤香菜作品では「happy endings」「25 Hours a Day」「君がいなくちゃだめなんだ」などに参加している千ヶ崎学(KIRINJI)のベースがぐっと際立つ。後半からはファンキーさを醸し出し、またライヴでのソロのようなエネルギッシュな演奏を聴かせる松江 潤(SPOOZYS)のギターも鮮やかに、みずみずしい旋律を奏でるrionosのストリングス・アレンジとともに楽曲に色彩を加える。
左右で音が飛び交うエフェクトも効果的に作用しているのがわかる躍動的なサウンドに対して歌声はまっすぐに可憐な姿で映し出され、内省的な歌詞からやがて前に踏み出す決意を表わすサビの開放感と抑揚のグラデーションも深い。高く伸びゆく、透き通るようなヴォーカルが美しく広がる。

「今朝のこと」

昨日をめくって訪れる今日だから、あらためてこの気持ちを伝えたい……ラヴソングであり、また花澤香菜からリスナーへの感謝を記したメッセージのようでもある歌詞が印象的だ。ニューミュージックのマナーを感じさせるサウンドは、北川勝利も参加した『「たまゆら」主題歌コレクション~卒業写真~』にも通ずるものがある。レコーディングは、佐野康夫、三沢またろう、末永華子、sugarbeans、北川勝利らバンドのメンバーによる一発録りで、息の合った演奏の空気感がダイレクトに伝わってくる。シュガーベイブなどを思い出させる、流線形の山之内俊夫によるギタープレイも味わい深い。レコードのような温かみのある音像で、何処となく懐かしさを感じさせる。ヴォーカルはバンドとは別に録音しているが、そのサウンドになじむ柔らかな質感。高いキーも多く、天使の声が麗しく澄み渡る。バックのコーラスもいっそう甘い響きで魅惑的。

「Looking for your Smile」

流麗なメロディをA&M的な作曲家センスあふれるアレンジで仕立てたスタンダードなポップスは、エンディングへと向かう幸福感に包まれるような雰囲気に満ちている。ブラスやストリングスをふんだんに使用したゴージャスなタッチながら、花澤香菜の歌声を引き立てるすっきりとした音像。ゆったりと軽やかなリズムに心が弾む、明るさや清涼感をさらに増したハートウォーミングなサウンドが心地好い。“シナモンロールのまんなかのまる”など柔らかな語感の言葉が並び、歌声がふわっとと中央に浮かぶ。“Looking for your Smile” “It’s a Beautiful Day!”のコーラスも清々しく優しく伝わる。ラストのはにかんだ笑い声も実にチャーミング。

花澤香菜
あたらしいうた

Aniplex Inc.
2016.06.01

FLAC 96kHz/24bit

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mora

 収録曲

 1.あたらしいうた
   作詞:花澤香菜 作曲・編曲:北川勝利

 2.今朝のこと
   作詞:花澤香菜 作曲・編曲:北川勝利

 3.Looking for your Smile
   作詞:花澤香菜 作曲・編曲:北川勝利

 4.あたらしいうた(Instrumental)

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