三月のパンタシア「はじまりの速度」レビュー

TVアニメ『キズナイーバー』EDテーマ「はじまりの速度」を収録したメジャーデビュー・シングル。

ヴォーカル“みあ”を中心としたクリエイター・ユニット、三月のパンタシア。2015年8月に鹿乃作品でもおなじみのすこっぷによる楽曲「day break」にてその活動をスタートさせた。ネット上で次々と楽曲を発表し話題を集める中、「リスアニ!」Vol.24にてbuzzG作曲の「イタイ」を収録した付録CDと共に誌面デビュー。そして、TVアニメ『キズナイーバー』のEDテーマに「はじまりの速度」が起用され、この曲を含む3曲入りシングル「はじまりの速度」にてメジャーデビューを飾った。幻想的な世界を描く作風から一歩踏み出したサウンドが繰り広げられる今作。ハイレゾでは青春の痛みや焦燥感といったものが躍動感豊かに奏でられ、みあによって語られる物語にいっそう没頭できる仕上がりとなっている。

「はじまりの速度」

作詞を『キズナイーバー』のシリーズ構成・脚本の岡田麿里、作曲・編曲をやなぎなぎ、羽多野渉などに楽曲提供を行っているARCHITECTが手がけている。
感傷的なピアノの旋律が絡むエモーショナルなサウンドと、痛みを抱えながらも駆け出す姿を描き出すヴォーカルの切なさが胸を打つ。TVで流れていたヴァージョンはギターが刻む音とヴォーカルから始まるが、フルヴァージョンでは清々しいピアノのイントロを導入部としてその前に差し込んでいる。少しずつ楽器が加わり、一体となったテンションを保ちながらサビへとなだれ込む展開は演奏の生々しさと躍動感が増してダイナミックに、鮮やかなピアノの音色と優美なストリングスが昂揚感をうながす。
CDよりも音像が引き締まることによってヴォーカルの存在、この曲では声の孤独感が浮かび上がってくる。心に秘めた感情の発露だけでなく、それを声に出すことよって生じる“痛みを表わすことによる痛み”までも伝わってくる歌声と息づかい。こらえていた気持ちがあふれ出しそうになるサビでは、こみ上げる今の想いを未来の希望へと託すヴォーカルのニュアンスが繊細に表われている。

「花に夕景」

三月のパンタシアでは「青に水底」も手がけているボカロP、n-buna(ナブナ)によるバンドサウンドの疾走感が高まるハイレゾ。低域とグルーヴがぎゅっと凝縮したような音像でその勢いが増しており、ヴォーカルを囲む定位にあるスネアの跳ねやギターのキレも鮮やかに、夕暮れに重なるやるせない心の風景をスリリングにくぐり抜ける。翻弄される風景に苛立っているようで、諦観めいた言葉を投げかけるようで、その全てが“水圧のような愛”へと辿り着く、波打つ感情を映すヴォーカル。自身により踏み込んだきりりとした歌声がここでは感じられ、ささくれた熱っぽさが語尾に帯びるさまも伝わってくる。

「キミといた夏」

みあが敬愛するGARNiDELiAのメイリアとtokuのふたりが手がけたセンチメンタルに彩られたバラッド・ナンバー。季節を重ねても消えることのない想いを綴った歌詞があまりにも切ない。ハイレゾでは夏の情景を描くストリングスが壮大に広がり、よりドラマチックなサウンドに。それぞれの音の輪郭がくっきりと表われ、“キミのかけら”を映すエレクトリック・ピアノの音色が闇の中に灯されるように静かに伝わる。思い出をいとおしく語る歌声が、湧き上がる想いが止まらなくなるサビではさらにその陰影を濃くする。哀しみに屹立するヴォーカルの力強さが胸に深く響く。

三月のパンタシア
はじまりの速度

Sony Music Labels Inc.
2016.06.01

FLAC 96kHz/24bit

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e-onkyo music
mora

 収録曲

 1.はじまりの速度
   作詞:岡田麿里 作曲・編曲:ARCHITECT

 2.花に夕景
   作詞・作曲・編曲:n-buna

 3.キミといた夏
   作詞:メイリア(GARNiDELiA) 作曲・編曲:toku(GARNiDELiA)

 4.はじまりの速度 -Instrumental-
   作詞:岡田麿里 作曲・編曲:ARCHITECT

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