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REVIEW&COLUMN

2016.09.07

雨宮 天『Various BLUE』レビュー

雨宮 天『Various BLUE』レビュー

ついに1stアルバムがリリース。様々なサウンド、様々な言葉で雨宮 天の今の姿を描き出した全12曲を収録。

近年、数々の主役級のヒロインを演じ、大きな躍進を続けている声優、雨宮 天。2014年8月には自身が主人公を演じるTVアニメ『アカメが斬る!』のOPテーマ「Skyreach」でソロアーティストとして音楽活動をスタート。同年11月には2ndシングル「月灯り」、翌年9月には3rdシングル「Velvet Rays」をリリースしている。2015年から2016年前半にかけては、麻倉もも、夏川椎菜との音楽ユニット“TrySail”の活動を集中的に行っており、4枚のシングルと、2016年5月にはアルバム『Sail Canvas』をリリースし、8月には「Animelo Summer Live 2016 刻-TOKI-」にも参加をしている。

そして2016年9月7日、雨宮 天にとって1stアルバムとなる『Various BLUE』をリリース。今作には3枚のシングル及びカップリング曲、書き下ろし6曲を加えた全12曲を収録している。アッパーなロックや軽やかなポップ、穏やかなバラッドなど、様々なサウンドが並びながらも、全体を貫く共通のイメージが感じられる。どこまでも突き抜ける空のような青色。静かに深い想いをたたえる湖のような青色。どの曲にも雨宮 天のイメージカラーである青色が溶け込んだような、彼女の存在をそのままに描き出すような、そんな感覚が伝わってくるアルバムだ。

「Absolute Blue」

作曲・作曲・編曲は、「コバルト」などTrySailにも多くの楽曲を提供している谷口尚久。今作でも「ASH」「Silent Sword」「RAINBOW」を書き下ろしており、『Various BLUE』のサウンドの中核を担っている。映画『たまこラブストーリー』主題歌 「プリンシプル」では、ドラマチックで感動的なアレンジを聴かせた谷口尚久だが、このアルバムでも様々なタイプの楽曲を手がけており、雨宮 天のヴォーカリストとしての豊かな表現力、その幅の広さを引き出している。

アルバムのOPナンバーとなるこの曲は、デビュー曲「Skyreach」で披露したダイナミックなロックの発展系ともいうべきサウンドが展開されている。ハイレゾでは、静かに広がるクリアな空間に姿を現した雨宮 天の声を追いかけるようにギターが入ってくるイントロからも、解像感による音の鮮やかさが伝わってくる。次々と折り重なり巧みな演奏を聴かせるメインギターやサイドのギターも、それぞれの音色をきちんと耳で追うことができ、またその音数が多くなっても決してヴォーカルに被らない明瞭な分離感、バランスの良さを感じられる。弾むような電子音もアクセントを強く表わしており、クリアな空間にビートやリズムが強調されることによって、楽曲の持つ疾走感がさらに高まっている。

ヴォーカルは「Skyreach」の時よりも声量がいっそう増しており、前半ではややテンションを抑えぎみに、そしてサビでは声があふれるように開放感をうながしており、強弱のグラデーションによるニュアンスも豊かに感じられる。透明感のある高域部にもさらにツヤが加わっており、スパークするサウンドにたおやかに声が駆け抜ける、爽快なヴォーカルが実に魅力的だ。

「月灯り」

TVアニメ『アカメが斬る!』第2クールのEDテーマとなった雨宮 天の2ndシングル。作詞・作曲は、TVアニメ『キルラキル』EDテーマ「ごめんね、いいコじゃいられない。」や、TVアニメ『冴えない彼女の育てかた』EDテーマ「カラフル。」でもおなじみのシンガーソングライター・沢井美空。編曲は、池田綾子や石井竜也、中川翔子らの楽曲を手がけている“TATOO”こと多東康孝。沢井美空による『アカメが斬る!』第1クールのEDテーマ「こんな世界、知りたくなかった。」のアレンジも彼によるものだ。

ピアノの音色は硬質なクリスタルといった輝きを放ちながら、しなやかに旋律を奏でており、うっすらと漂うようなストリングスのシンセとともに寂寞とした情景を繊細に映し出す。楽曲に神秘的な雰囲気を加える鐘の音や、右から左へと風のように通り抜けるウィンドチャイムも、深い音空間の中でその存在感が際立ち、誰にも触れられない心の奥底から鳴り響いているかのような気高ささえも感じられる。
“どんな闇も照らして”ゆくことができる“静寂に漂う月”に、何度もくじけそうになり消えそうになった、でも強い情熱によって支えてきた信念を象徴する“心に宿した灯”を、たとえたタイトル「月灯り」そのもののように、音もまた重なった情景を静かに浮かび上がらせている。

歌声はシャープな輪郭で凛とした姿を表わし、サビでは左右からのコーラスとのハーモニーや、またDメロでの切ないファルセットも美しい。ダイナミクスが広がることにより、抑揚の強弱、微細な変化を感じ取ることができ、声が表わす陰影も濃くなる。己に言い聞かせるような強い言葉に反して、芯のある歌声からは感情が揺れ動くさまも感じ取られ、曲が進むにつれ次第に隠していた心の叫びが少しづつ露わになる。ラストの“….今日だけ 泣いてもいいかな?”は、掠れるように絞り出す可憐な声に深い哀しみが帯びる。

メランコリックさも淡く漂うギターポップ「夢空」、落ち着いた大人の雰囲気をワルツに乗せる、洒脱な室内楽曲「羽根輪舞」、夏の日曜日の何処かやるせない気持ちを表わした、いつもとは違った歌声も印象的な「Glitter」、タイトなビートが躍動的に楽曲を引っ張る「ASH」、明るく輝くようにはじけるポップチューン「チョ・イ・ス」、雨宮 天の新境地とも言うべきデジタルサウンドによる「Silent Sword」、壮大な世界観で繰り広げられるロック「Velvet Rays」、優しさが満ちあふれるバラッド「After the Tears」、雨のち天(そら)に虹がかかる、といった清々しさが一面に広がるラストナンバー「RAINBOW」

タイトル通り様々なサウンドが展開され、希望や願いから憂いや迷いまでも歌声の表情も豊かなこのアルバム。心の内を率直に誠実に表現する、自分や音楽に対して真摯に向かい合う姿勢が感じられる。刻々と変わり続ける彼女の今、この瞬間を封じ込めた、1stアルバムならではのみずみずしさがハイレゾではいっそう伝わってくる。

1bSMCL440_BN1A_H1-4_prep.pdf雨宮 天
Various BLUE

Music Ray’n
2016.09.07

FLAC 96kHz/24bit

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e-onkyo music
mora

 収録曲

 1.Absolute Blue (アルバム新曲)
   作詞・作曲・編曲:谷口尚久

 2.夢空
   作詞:花衣 作曲・編曲:伊東大和

 3.Skyreach (TVアニメ『アカメが斬る!』第1クールオープニングテーマ)
   作詞:古屋 真 作曲:伊藤 翼 編曲:古川貴浩

 4.羽根輪舞 (アルバム新曲)
   作詞・作曲・編曲:KOUTAPAI

 5.Glitter
   作詞・作曲・編曲:近藤ひさし

 6.ASH (アルバム新曲)
   作詞・作曲・編曲:谷口尚久

 7.チョ・イ・ス
   作詞: LOOK 作曲・編曲:友永香鈴

 8.月灯り (TVアニメ『アカメが斬る!』第2クールエンディングテーマ)
   作詞・作曲:沢井美空 編曲:TATOO

 9.Silent Sword (アルバム新曲)
   作詞・作曲・編曲:谷口尚久

10.Velvet Rays (ゲームアプリ『ヴァリアントナイツ』テーマソング)
   作詞:仰木日向 作曲・編曲:伊藤 翼

11.After the Tears (アルバム新曲)
   作詞:佐藤舞花 作曲:KOUTAPAI 編曲:谷口尚久

12.RAINBOW (アルバム新曲)
   作詞・作曲・編曲:谷口尚久

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