『ラブライブ!』μ’sの一員として、ミルキィホームズのメンバーとして、またソロアーティストとして、様々な舞台で多彩な活動を展開している三森すずこ。2015年の2ndアルバム『Fantasic Funfair』から、「Light for Knight」や「Xenotopia」などのシングルを挟んでリリースされた三森すずこの3rdアルバム『Toyful Basket』。
前作『Fantasic Funfair』は「期間限定で現れる“移動式遊園地”」がアルバムのコンセプトであったが、今回は“おもちゃ箱”がコンセプト。それは三森すずこの思い描くファンタジックなイメージの架け橋になっている。
太田雅友、前山田健一、PandaBoY、恩田快人、黒須克彦、蔦谷好位置の作曲陣が、“おもちゃ箱”にふさわしい個性豊かな楽曲を提供。また4sk、The LASTTRAK、y0c1e、kz(livetune)ら、アニソンとクラブの領域で活動するアーティストによる既存曲のリミックスも収録しており、新曲+リミックスという構成でアルバムを華々しく展開している。
作曲・編曲は、三森すずこのソロデビュー曲「会いたいよ…会いたいよ!」や、TVアニメ『マイリトルポニー』のオープニングテーマ「夢見る!信じる!未来叶えて!」などの楽曲を提供した太田雅友。三森すずこの2ndアルバム『Fantasic Funfair』と同様に、今作でもオープニングナンバーを手がけている。
この曲のイントロとなる「tra-intro」では、蒸気の噴出する音が臨場感を醸し出しつつも、走り出す車輪の音と汽笛の軽さがすぐさまにおもちゃの汽車を連想させ、今作のコンセプトである「おもちゃ箱」の世界へと誘なう、アルバムへの期待をさらに膨らませるオープニングを演出している。
そして続く「TINY TRAIN TOUR」は、ホーン・セクションが深みのある音色を豊かに響かせて、こちらの耳をぐっと引き寄せる。低域の量感を増しながら瞬発力のあるビートのキレもよく、スカパンクを思わせる前のめりになった演奏もよりパワフルに、「TINY TRAIN」と言えどもローラーコースターのように風切るスピードを感じさせる、ノリのよさもいっそう心地好い出来栄え。
ヴォーカルは高まる楽曲の勢いに飲み込まれることなく、安定した歌唱力で明るくはずむように、その表情も豊かに伝わってくる。伸びやかな歌声の抑揚もスムーズに、サビの“TINY TRAIN いつか乗ってみたくて” “TINY TRAIN 今日はね最高のチャンスよ”の語尾のアクセントにはうれしさがにじみでる、恋の冒険にときめく女の子の気持ちを清々しく描き出している。
ミルキィホームズでは「総天然色フルパワー」「ミルキィ100ワールド」を手がけている前山田健一による作詞・作曲・編曲。前山田健一ならではのカラフルでポップなサウンドが、まるでおもちゃ箱をひっくり返したようなにぎやかさで辺り一面に転がりだす、まさにジャケットそのもの、アルバムのコンセプトにぴったりなナンバーだ。
解像感がさまざまな音を鮮やかに照らし出し、ころころと目まぐるしく移り変わる楽曲の展開をさらに盛り上げる。ところどころで緩急のアクセントを付けるトイポップ的な音色もユーモラスに、間奏に入るお化けのような笑い声さえもハロウィンみたいに聴こえてくる華やかなアレンジは、“いいことも ヤなことも”も起こるこの世界を、“キラキラ”がたくさん詰まった“おもちゃ箱”になぞらえるぐらい前向きな気持ちの表われ。だからこそ、自信を持って素直に“FUTURE IS MINE”と言い切れるのだろう。
ポップな躍動感ではじけるサウンドにすっきりとした輪郭で清涼感を放つ歌声は、大人の女性としての落ち着いた雰囲気を丁寧な表現力から漂よわせつつも、この曲ではもうひとつのキーワードとなる“もふもふ”をギュッとする“オンナノコ”のキュートな表情がそれを上回ってあふれ出す、三森すずこらしさがたっぷりと感じられる。朗らかなヴォーカルが楽曲に瑞々しく映える、魅力的な仕上がりとなっている。
PandaBoYらしいアッパーなポップチューンが炸裂する「ドキドキトキドキトキメキス♡」、三森すずこが敬愛する恩田快人による「Shall we dance?」はまさに三森すずこ・ミーツ・JUDY AND MARYな好ナンバー、こだまさおりと黒須克彦が等身大の三森すずこをミディアムなテンポでしっとりと描き出す「My First Lesson」、ピアノがエモーショナルに疾走する、蔦谷好位置による「ヒカリノメロディ 」など、ほかの新曲もこれまでになかった三森すずこの一面を見せてくれる。
跳ねるリズムとダンスホール風味のベースラインも印象的な「せいいっぱい、つたえたい!(4sk’s ukiuki carnival remix)」、「せいいっぱい、つたえたい!」のリミックス同様、現代的なカーニヴァルサウンドの要素も盛り込んだ「ミライスタート(The LASTTRAK Happy Hard Soca Remix)」、原曲を時には刻み込み、時にはトランス的な昂揚感で拡張した「ユニバーページ (y0c1e remix)」、オリジナルにあったスカ要素を抜き取り、メロディを残しながら爽やかなポップサウンドへと作り変えた「純情 Da DanDan(kz remix)」と、オリジナルとは違った雰囲気が味わえるリミックスもまた楽しい。
ヴァラエティに富んだ楽曲を詰め込んだ今作のタイトルが『Toy Box』ではなく、持ち運びができる『Toyful Basket』となっているのも面白いところ。部屋の中で大好きなおもちゃに囲まれて過ごした日々を思い出すだけじゃなく、大人だからとそんな大好きを捨て去ることなくむしろ一緒に外に持ち出して、いやそれよりも世界をおもちゃ箱として自分色に塗り替えて楽しんじゃおう、といったポジティヴささえも伝わってくる。
遊び心満点なリミックスを積極的に取り入れているのも、そんな前向きなスタイルから生まれる余裕があってからこそ。明るい笑顔で次のステージへと進み続ける三森すずこの今の姿が、歌詞だけでなくサウンドからも浮かび上がってくる。
ポニーキャニオン
2016.09.07FLAC・WAV 48kHz/24bit
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1.tra-intro
2.TINY TRAIN TOUR
作詞:畑 亜貴 作曲・編曲:太田雅友
3.FUTURE IS MINE
作詞・作曲・編曲:前山田健一
4.ドキドキトキドキトキメキス♡
作詞・作曲・編曲:PandaBoY
5.Shall we dance?
作詞:三森すずこ 作曲:恩田快人 編曲:恩田快人・鳥海剛史
6.My First Lesson
作詞:こだまさおり 作曲:黒須克彦 編曲:黒須克彦、齋藤真也
7.ヒカリノメロディ
作詞:美音子 作曲・編曲:蔦谷好位置
8.せいいっぱい、つたえたい!(4sk’s ukiuki carnival remix)
作詞:大森祥子 作曲:サイトウヨシヒロ
9.ミライスタート(The LASTTRAK Happy Hard Soca Remix)
作詞:畑 亜貴 作曲:俊龍
10.ユニバーページ (y0c1e remix)
作詞・作曲:渡辺 翔
11.純情 Da DanDan(kz remix)
作詞:しほり 作曲:小松一也
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